「4x1h project(フォーバイワンエイチ・プロジェクト)」は“気軽に・すっきり楽しめる短編演劇”のプロジェクト。演出は黒澤世莉さん(時間堂)です。
5月に約30分の新作戯曲6本をリーディング上演し(⇒group A、group B)、全作品を鑑賞した観客の人気投票で、9月に上演する2本(都合により3本選ばれた中の2本)を決定しました。
上演プロジェクト第1回目となる今回は、中屋敷法仁さん(柿喰う客)の「ひとさまにみせるもんじゃない」と、篠田千明さん(快快)の「いそうろう」 の2本立て、90分公演(途中10分の休憩を含む)。
⇒CoRich舞台芸術!『4x1h Play #0』★CoRichからカンタン予約!
レビューはをアップしました(2008/09/23)。
「ひとさまにみせるもんじゃない」は、基本的に大声で怒鳴るようなタイプのしゃべり方でしたので、私には聞き苦しかったです。中には落ち着いてひとつひとつを大事に伝えて下さる方もいらっしゃいましたが、全体的に「まだ完成していない」印象。初日だったのもあるのでしょう。あと、オープニングの照明はもっと明るくてもいいんじゃないかと思いました。
「いそうろう」は、リーディング版とは配役が入れ替わっていて良かったように思います。衣裳が可愛かった。でも、もっともっと、ただの会話劇から逸脱した世界を感じさせて欲しいと思いました。
ここからネタバレします。
【1】「ひとさまにみせるもんじゃない」
感想をひとことで言ってしまうと、リーディングの時の方が面白かったのが残念でした。
私は柿喰う客のお芝居が結構好きで、中屋敷さんならではの言葉遊びや比喩、ギャグを楽しみたいと思っていたため、セリフが聞こえない(がむしゃらに怒鳴ったり、早口すぎて意味がわからなかったり、噛んだりする)だけで、最初から鑑賞意欲が減退してしまったせいもあると思います。あと、空間の小ささに対して声が大きすぎたのも私にはマイナス・ポイントでした。
オープニングは床に寝転んだスーツの男女が、暗い部屋で目覚まし時計のジリジリという音に起こされる演技。陰鬱なルーチン・ワークを思わせる朝。全員が「ジリジリ」「ジリジリ」と発声。徐々に声を大きくしていきながらスーツを脱いで、皆ほぼ黒タイツ姿に。なぜか一様に臨戦態勢。
舞台中央にある白くて細長ベンチの上に登った人が、優先的にセリフをしゃべるという設定のようでした。役者さんが突然あるきっかけでベンチから降りたり、先をあらそってベンチに上ってセリフを言い始めたりします。役は固定されません。
比較的小さな声で現代口語劇のように見せる演出がありました。声を張って演じていたシーンを、静かな演劇風に繰り返すのです。セリフがはっきり聞こえるのでそのシーンは普通に楽しめましたね。中屋敷さんの言葉を柿喰う客とは違うタイプの語りで聞きたかった、というのが、この企画に対する私の個人的な希望だったのかもしれません。
お芝居が終わってから関係者にお話を聞いたところ、なんと、出演者全員が脚本をすべて覚えており、セリフを間違ったところで入れ替わるというルールにのっとって、本気で役の取り合いをしていたそうです。私はこれに最後まで気づけませんでした。全部段取りだろうと思っていました・・・無念。
観客の中には最初からわかった方もいらっしゃったかもしれませんが、できれば開演前からそれが明快にわかる演出をしてもいいんじゃないかと思いました。まあこれも、役者さんのその時の状態によるのでしょう。
【2】「いそうろう」
可愛い女の子2人がおしゃれな衣裳&ヘアメイクで、等身大の現代口語で自然に会話をします。2人の息が合っているので、観客もそのリズムにのって鑑賞できる、柔らかな雰囲気。でもイスに関しては、劇場備え付けのものなのか、デザインが全体の雰囲気に合っていないように思いました。
舞台中央に設置したパネルに白い大きな紙を貼り、色マジックペンで絵を描きながら説明をします。セリフに出てくる部屋の様子やさまざまな小物の意味はわかりやすかったですね。
ただ、作品が行き着いたのが「ある若者の日常を見せた」というところまでだったように感じ、物足りなかったです。小さな部屋に住むちっぽけな女の子たちの取るに足らない出来事が、地下のマントルに届くぐらいのどん底の絶望へとつき落とすなり、宇宙のかなたまで飛んでいけるほどの喜びを生み出すなりして、観客の想像力を、ある垣根を超えた世界に連れて行って欲しかったです。
脚本:「いそうろう」篠田千明(快快)、「ひとさまにみせるもんじゃない」中屋敷法仁(柿喰う客)
「いそうろう」出演:大川翔子 / 百花亜希
「ひとさまにみせるもんじゃない」出演:石黒淳士 / 大竹悠子(ユニークポイント) / 菊地奈緒(elePHANTMoon) / 猿田モンキー / 星野奈穂子 / 三嶋義信
演出:黒澤世莉(時間堂) 照明:工藤雅弘(fantasista?ish.) 舞台監督・舞台美術:佐野功 衣装協力:juno-rii 宣伝写真:堀奈津美(*rism) 宣伝美術:村山泰子 当日運営:小山与枝乃 企画・製作:4x1h project プロデューサー:菊地奈緒 共催:時間堂+elePHANTMoon
【休演日】9/22【発売日】2008/07/30 学生 1,800円、一般 2,000円
http://blog.livedoor.jp/project4x1h
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。