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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2008年09月27日

カミナリフラッシュバックス『死刑について』09/24-28劇場MOMO

 カミナリフラッシュバックスはニシオカ・ト・ニールさん(役者名は西岡知美さん)が作・演出する劇団です。今回は特別企画ということで、作・演出にSpaceNoidの御笠ノ忠次さんを迎えています。カミナリフラッシュバックスは初見です。

 タイトルどおり、死刑についてがっつり取り組んだ、社会派演劇でした。あの映像は衝撃的。上演時間は約2時間。

 ⇒CoRich舞台芸術!『死刑について

 概要をネタバレしますが、読んでから観に行かれても大丈夫だと思います。
 当日パンフレットに、劇中に出てくる事件についての補足があります。開演前に読んでおかれると良いと思います。

 ≪あらすじ≫
 「劇場MOMOの舞台にはかっこいい奈落があるため、それを使って死刑執行シーンを上演したい」というアイデアから、カミナリフラッシュバックスの次回公演は“死刑についての物語”に決定。劇団員および出演者たちは“笑って泣ける死刑モノ”芝居を作るべく、死刑についてのリサーチを始める。
 ≪ここまで≫

 公演に関わる若者(役者が本人を演じる)が、死刑について調査したことを稽古場で発表していきます。よく取材されていて感心しました。何より私自身が「死刑制度に賛成か、反対か」を本気で考える機会になったことが良かったです。非常に難しい問いですが、まずは自分に関係あることとして考えることですよね。

 登場人物が死刑について調べていきますが、誰もがゼロ(先入観や前知識が少ない素直な状態)から出発しているので、わかりやすいし身近に感じられます。映像や写真も劇場の壁に大きく映し出されるので、わかりやすいどころか、つきつけられた事実から目を背けられなくて、息苦しくもあったり。演劇ならではの効果だと思います。

 照明がフェイドアウトして暗い目のブルーの照明の中で場面転換します。いつもその繰り返しになるのは単調な気がしました。時にはカットアウト、時には照明の色を変える、音楽を鳴らすなど、流れていく会話の時間にリズムが欲しかったです。

 残念ながら演技でしっかり見せてくださったのは、“被害者”の男性を演じた方だけだったかも。役者さんはもっとがんばってもらいたいな~と思いました。

 ここからネタバレします。

 冒頭にリアルな絞首刑シーンがあったのが良かったです。刑務官もちゃんと居て、怖かったですし。
 その後、奈落からは天使の格好をした西岡知美さんが登場して、宙に浮きながら「いつもとは違う特別企画です~云々~」と前説。きっとこういうのがカミナリフラッシュバックスらしさなのでしょうね。いつもは野菜を手に持って戦ったりしてるそうです。ん~それって面白いのかな。観てみないとわからないけど。鉄割アルバトロスケットみたいなのかしら・・・などと想像。

 東京拘置所の取材、刑務官、障害事件の被害者へのインタビューなどは、おそらく実際に行ったことをお芝居にされたのではないでしょうか。映像に上祐史浩さんが登場するのは衝撃的です。「本当のところは、どんな人でも、一つ間違えば、どちらの立場にもなるのが、人間なのかもしれません。」とブログにも書かれていますが、映像で発言されていた「殺す側になるのも殺される側になるのも、実は紙一重である」という考えには私も同感でした。私だって、誰かを殺すかもしれない、殺されるかもしれない。“死刑囚”という立場は、他人事ではない。

 最初は死刑賛成が多数でしたが、調査を進める内に反対の人も増えていきます。作・演出の西岡(西岡知美)は悩みすぎて、とうとう脚本が書けなくなってしまいました。最後は西岡が「死刑についての演劇は、やめにします!」と方針転換して、稽古場にいた役者さんは全員が「はい!」とすんなり同意。「今度は古典、シェイクスピアをやろう」という展開になって終演しました。「はい!」の前にせめて、「えーーっ!こんなに必死で取り組んだのに!?」が欲しかったですね。

出演:西岡知美 大内涼子 加藤伸之丞 村上ロック 村上典子 田口英明 三好雅人 寿々木智之
脚本・演出:御笠ノ忠次 舞台美術・監督:大竹篤 照明:たなか一絵(あかりやん) 音響:源田和樹(KG.Project) 映像制作:ワタナベカズキ 映像オペ:佐々木友美 宣伝美術:ぶん 演出助手:清水洋介(SpaceNoid) 制作:榊山康介(赤堤ビンケ) 製作:カミナリフラッシュバックス
【発売日】2008/09/02 前売り2500円、当日2800円
http://kaminari-fb.main.jp/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年09月27日 23:16 | TrackBack (0)