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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2008年10月07日

劇団俳優座『スペース・ターミナル・ケア』10/04-12紀伊國屋ホール

 坂手洋二さんが俳優座に新作を書き下ろされました。演出は栗山民也さんです。お2人のコンビは『ピカドン・キジムナー』以来7年ぶり。タイトルはスペース・ターミナル(宇宙ステーション)とターミナル・ケア(終末期医療)をかけたものです。

 演技のスタイルはいわゆる“新劇”でしたが、私たちが今、生きているこの瞬間を、舞台と客席とが一体になって実感できる素晴らしいお芝居でした。上演時間は約2時間45分(途中1回の休憩を含む)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『スペース・ターミナル・ケア

 ≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
 ターミナル・ケア(終末医療)を行うホスピスを舞台にした坂手洋二の書き下ろし作品を栗山民也演出で俳優座が贈るこの秋の話題作
 「終末期医療」を受けることになった、ある夫婦癌と診断されてショックを受ける20代の女性、がん診断初期から積極的治療として「緩和ケア」を受ける少年、ケアの中心となる先輩医師と後輩の女医、彼らとともに働くチーム、医療過誤を疑う患者の姿などが描かれる中で判明する先輩男性医師の末期がん。人生の終末を意識しながら、本人と周囲の人たちがどのように生きるか、どのようにお互いに向き合うかを描く。
 ≪ここまで≫

 現代西洋医学では、がんを完治できる治療方法(特効薬)は見つかっていません。末期がんに侵された患者は、治る見込みがないまま予言された“余命”を生きることになります。ホスピスの舞台で、パジャマを着た役者さんが対話をして伝えてくれるからこそ、身になる知識が得られる気がします。

 少々くどく感じる説明ゼリフがないわけではありませんが、永井愛さんがおっしゃっていたように、人間の日常会話はほとんどが説明だったりするのです。それに、演劇はそもそも“嘘”ですからリアルである必要はないと思います。観客一人ひとりが、自分の中でリアルを受け取れば良いと思います。少なくとも私は、清潔なホスピスでもがく患者と医師たちの苦悩や小さな喜びを、自分のこと(自分の家族のこと)のように感じ取れました。

 患者の子役の薄衣峻平さんが素敵でした。元気な看護士役の森尾舞さんも魅力的。

 ここからネタバレします。

 余命を宣告された人と、介護をする人間がどうやって一緒に生きていくのか。介護する人へのアドバイスのひとつとして「問題が起こっても、許すこと」というセリフがありました。許せる人間になりたい。

 100年後はがんの特効薬ができているかもしれない。だからこの宇宙船(ホスピス)に乗って100年後に行こう。そしてがんを治したら、未来のタイムマシンに乗ってここに帰ってくればいい。夕陽が美しいたそがれの時間に出発して、同じ時刻に戻ってくれば、つまりこの夕陽は永遠なのだ。永遠の6時40分。時を越えて、今、ここに生きる。―永遠の一瞬が舞台にありました。

劇団俳優座・現代劇作家連続公演
出演:加藤佳男/田野聖子/川井康弘/若尾哲平/森尾舞/太田亜希/川口啓史/片山万由美/阿部百合子/田中茂弘/小澤木の実/薄衣峻平(劇団ひまわり)/佐藤あかり/星野元信/松島正芳
※高山真樹は体調不良のため、片山万由美に配役変更。
脚本:坂手洋二 演出:栗山民也 美術:松井るみ 照明:勝柴次朗 音響:小山田昭 衣裳:若生昌 演出助手:眞鍋卓嗣 舞台監督:関裕麻 制作:下哲也 高橋かずえ
【発売日】2008/09/01 一般5,250円 学生3,675円 ※11月公演「春立ぬ」との一般セット券9,200円 学生セット券6,500円(但し俳優座のみの取扱い)
http://www.haiyuza.sakura.ne.jp/info/200810.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年10月07日 15:03 | TrackBack (0)