プッチーニのオペラ『トゥーランドット』は、プロスケーターの荒川静香さんが楽曲「誰も寝てはならぬ」を使用したことでも、最近はよく話題になっているようですね。私はストーリーも音楽も大好きなので数回観ています(関連レビュー⇒1、2、3)。
久しぶりのオペラ鑑賞でしたが、私には演出の意図が汲み取れず・・・。初心者向けではないと思いますね。トゥーランドット役のイレーネ・テオリンさんは素晴らしかった!
⇒CoRich舞台芸術!『トゥーランドット』
西洋の街のどこかでお祭りの催しとして「トゥーランドット」が上演されるという設定でした。いわゆる劇中劇のスタイルです。舞台の周囲をぐるりと囲むように大勢のコーラスが舞台上にいて、オペラの豪華さを味わえました。でも次第にその印象は変化しました。
メインキャストが仮面を被って登場します。なぜ被るのか、なぜはずすのかがよくわかりませんでした。
道化のアクロバットがクローズ・アップされており、数人がピン、ポン、パンとセットになって活躍します。だからピン、ポン、パンが誰なのか終盤になるまでわかりませんでした(涙)。ソロで歌う女官も誰が歌っているのかわからず。出し物を見物する民衆、もしくは脇役として、コーラスの人々がずーっと舞台上にいつづけるのは、物語を理解することの弊害になっていたのではないでしょうか。どこを見たらいいのかがよくわかりませんでした。
カラフの狂気の愛、リューの命がけの献身、そしてトゥーランドットの改心といった劇的な要素そのものをたっぷり見せていただければ、それで充分以上だと個人的には思います。
トゥーランドット役のイレーネ・テオリンさんは、そこに居るだけで「女王」であることがわかる見事な佇まい。歌にも余裕が感じられました。リュー役は私が観た回については力不足だったように感じました。
ここからネタバレします。
幕開けはなんと5分間の無言劇でした。移動遊園地のようなセットで、綿菓子、アイスクリーム、駄菓子の屋台が並び、人々がお祭りを楽しんでいる演技を続けます。こんなのは(私は)オペラでは初めて!序曲が始まったときは興奮で鳥肌が立ちましたね。黒、灰色などのモノトーンから赤、黄色を基調とした中国風の明るい色彩にあっという間に変化したのもかっこ良かった。
“TURANDOT”の文字が塗られた豪華な山車が登場して、カーニバルの見世物としての歌劇が始まった時はなるほどと思いましたが、劇中劇として「トゥーランドット」を表現することで、世界がある箱の中に小さく収まってしまいました。装置がそのまま終幕まで進んでしまったのも物足りなかったです。でもそれも演出意図だったのでしょう。
新国立劇場eメールClubからのメールによると「幻想的な物語の世界と、プッチーニ自身の人生がオーバーラップするブロックハウスの斬新な演出に注目です!」とのこと。ヨーロッパで上演されるなら観客もすっかり成熟していることでしょうし、オーソドックスな上演はもう飽きられているかもしれませんから、問題なく受け入れられるのかもしれませんね(予想に過ぎませんが)。
こういうライブ映像(2008/10/14まで)を観る限りでも、日本との違いを身にしみて感じます。悲観的な気持ちは全くないですが、駅での無料ライブ・オペラを上品に楽しめるような状況は東京にはない気がします。
新国立劇場2008/2009シーズンオープニング作品“TURANDOT”
出演:【トゥーランドット】イレーネ・テオリン 【カラフ】ヴァルテル・フラッカーロ 【リュー】浜田理恵 【ティムール】妻屋秀和 【アルトゥム皇帝】五郎部俊朗 【ピン】萩原潤 【パン】経種廉彦 【ポン】小貫岩夫 【官使】青山貴 【クラウン】ジーン・メニング 【合唱】新国立劇場合唱団 【児童合唱】NHK東京児童合唱団 【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【作曲】ジャコモ・プッチーニ ※フランコ・アルファーノが補筆【台本】ジュゼッペ・アダーミ&レナート・シモーニ【指揮】アントネッロ・アッレマンディ【演出】ヘニング・ブロックハウス【美術・衣裳】エツィオ・トフォルッティ【照明】ヘニング・ブロックハウス【舞台監督】大澤裕【芸術監督】若杉弘【演出助手】田尾下哲 ほか
S席26,250円 A席21,000円 B席14,700円 C席8,400円 D席5,250円 Z席1,500円
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000054_opera.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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