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2008年10月15日

【稽古場レポート】the company『1945』10/08都内某所

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『1945』稽古場

 演出家ロバート・アラン・アッカーマンさん(通称:ボブさん)率いるthe companyの、新作・世界初演『1945(イチ・キュー・ヨン・ゴー)』のお稽古を拝見させていただきました。

 静かな緊張に満ちた稽古場でした。ボブさんの英語と薛珠麗さん(通訳)の日本語が、ほとんど同時に飛び交う状態。初日が近づいているからでしょうね。東京公演は10/25(土)開幕です。11/5(水)には新潟公演があります。

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 ⇒CoRich舞台芸術!『1945』 

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休憩中のボブさん(右)とシュレイさん

 大きなセットで出演者も多いため、この日は稽古場のロフト部分から拝見しました。メインキャストも揃っており、アンサンブルも一部を除き集合しています。
 私が見たのは第2幕の中の1場面。おそらくのべ20分間ほどのシーンが、数時間の内に何度も繰り返されました。

 まず、トランペット吹きの若い男を演じる瀬川亮さんの元気な声が響きました。体全体から弾けるように飛び出すセリフは、登場人物の背景や物語の筋道を一瞬で伝えると同時に、お芝居全体のリズムを作り出します。それに動きが敏捷で、階段を駆け上がる動作ひとつでも目を引くんですよね。2人で対話をする高橋和也さんとも息が合っているご様子。

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高い階段のあるセット

 パク・ソヒさんと中村ゆりさんのシーンでは、対照的なお2人の姿にニヤリ。パクさんは筋肉隆々のハンサムでいわば野生的な魅力をお持ちの男優さんです。でも言葉からそろりとにじみ出るのはそのナイーブさ。素直な子供のような弱ささえ漂います。対して中村さんは、か細い体にこれまた華奢な手足がすらりと伸び、まっすぐのロング・ヘアーが背中に落ちて、悲劇のヒロインにもぴったりの美女です。でもお腹の底から出てきた声の恐ろしさに、体がビクっと震えました。なんと強靭で、残酷な声!
 ほんの数分間の短いシーンでしたが、男女の駆け引きの醍醐味を味わえました。強さと弱さ、善と悪といった相反するものが瞬時に入れ替わるのです。このギャップがたまらない!

 『1945』には多人数のアンサンブルが出演します。その数は70人以上!終戦直後の闇市(black market)を表現するのです。第2幕では大勢が穴倉に隠れるようにして、舞台の2階部分の下にじっと待機しています。もちろんその間も自分が演じる役柄として存在していなければなりません。
 ボブ「地下の皆さん、大丈夫ですか?死にそうになったら声を掛けてください(笑)。」
 な~んてジョーク(?)が出るほど、体力的にも精神的にもタフな現場です。

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闇市の人々

 稽古場は「待つ」場所でもあるんですよね。役者さんが自分の出番が来るまで待つというのもありますが、何度も繰り返し稽古が続く場合、舞台上にいて演技をしながら待つことにもなるのです。アンサンブルの方々がじっと静かに、動かずに暗闇に居ることで、空気の密度が高まっていたように思います。抽象的な言い方になってしまうのですが、空気が一段階上のレベルに届いていたというか、稽古場だけが建物からはずれて、ぽっこりと宙に浮かんでいるような錯覚をした瞬間がありました。

 山本亨さんの長いセリフはとても鋭くて、エロティック。簡潔な情景描写と、人物の感情をぐさりと刺すように伝える、濃厚な言葉を堪能しました。
 『1945』は芥川龍之介の「藪の中」を原作にした、“嘘”がうずまくロマンティック・スリラーです。登場人物のセリフでひとつ、胸にひっかかったのはこちら↓
 「死んでまで嘘つく奴なんていないでしょう。」
 さて、どうなのでしょうか。初日が楽しみです。

the company world premiere『1945』
【東京公演】10/25-11/03世田谷パブリックシアター 【新潟公演】11/05りゅーとぴあ劇場 
原作:芥川龍之介「藪の中」 脚本・演出:ロバート・アラン・アッカーマン 脚本・演出補:薛珠麗
http://www.thecompany-t.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年10月15日 22:13 | TrackBack (0)