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2008年11月10日

【演劇教育】「Workshop on Workshop 2008 ワークショップの意味と仕組みを考えるワーク ショップ」11/09東京大学福武ホール内ラーニングシアター

 平田オリザさん、吉野さつきさんがパネリストとして出演されるので伺いました。チラシはこちらでダウンロードできます。

 ラーニングシアターってすっごい施設!!!参加者およそ100人が、一気にワークショップを体験・見学することができます。ワークショップ専用に設計されているということにも驚きました。
 下記は自分がメモしたことの記録です。

20081109_WSonWS2008.JPG

■第1部 パネルディスカッション「クロスオーバーしていくワークショップ」
パネリスト:
・平田オリザ(劇作家/大阪大学コミュニケーションデザイン・センター)
・吉野さつき(ワークショップコーディネーター)
・苅宿俊文(青山学院大学ヒューマン・イノベーション研究センター)
 司会:植村朋弘

 平田「1982~3年頃から劇団を初めて88年頃から新しい方法論の演劇を作り始めた。その手法を説明するために、ワークショップを自分で作ってきた。94年に高校生向けにワークショップを実施したところ驚くほど好評だった。90年代後半に全国の公共ホールにワークショップブームが起こったため、依頼が殺到した。2000年頃から桜美林大学で教えていたが、今は大阪大学のコミュニケーション・デザイン・センターで教授をしている。」

 平田「大阪大学では、コミュニケーション・デザイン・センターの授業を数年後には必修にする方向で動いています(おそらく医学部生について)。つまり演劇の授業を受けなければ医者にはなれないという、素晴らしい(笑)時代になる。ダンスも演劇もやります。最後は6人1組になって半年かけて専門領域を生かした演劇を作ることになります。その脚本は利害対立を含むものにする。」

 平田「ワークショップが子供の教育に良いということは、もうすでにわかっていることです。不登校の子が学校に行き始めたりもします。そんな例はもう山ほどあります。」
 平田「ワークショップをすることで『みんなそれぞれに違う(独特だ)』とわかります。金子みすずの『みんな違って、みんないい』ではありますが、それで終わるわけじゃない。世界の状況は『みんな違って、大変だ』なのです。」
 平田「人間はそれぞれに違うから、インプット(して感じること)は皆ばらばらです。でも(実社会では)アウトプットでは何らかの答えを出さなければいけない。」
 平田「フィンランドの国語教科書がよく例に挙がりますが、たった1つの正解を出すことが目的ではない。『誰が(ばらばらの意見を)まとめたか』が評価される。『どうにかする』能力が一番大事。」

 平田「(日本の)学校では努力すれば報われると教えがちですが、芸術は努力しても報われないことが前提です。人間は集団でしか生きていけない。でもなかなか気持ちが伝わらない。そのもどかしさや絶望を知った上で、どうにかしなきゃいけない、どうにかするんだ、ということを学ぶ(のがワークショップ)。」
 平田「演劇ワークショップと他のジャンル(美術ワークショップ、音楽ワークショップ)との違いは、『集団でどうにかして発表をしなければいけない』ということ。どうにかできなかった体験が、とてもつらいものであるのも特徴。その体験をすれば子供たちは『次は頑張る』のです。」

 平田「小・中・高と学校で学んできたことが、社会生活とは乖離していることを皆さんは実体験でわかっていると思います。私たちの受験勉強では、ある一定の情報をある一定期間で覚えることを競っていた。期末試験の時までしか残らない短期的な記憶に意味はない。『ただ覚えること』は、人間の能力に意味を成さない。そういった『記憶』ははもうコンピューターがやってくれます。」

 平田「短期的記憶についてはある程度わかっています(研究が進んでいます)が、実は私たちに必要な長期的な記憶については、まだほとんど解明されていないのが実情。ただ、複雑なさまざまな経験と、知識を組み合わせることで覚えると、長期的な記憶になる(ことはわかっている)。」
 平田「人間は複雑な動きをする時ほど、インプットとアウトプットを同時に行っている。例えば私たちは学校で習った植物の名前よりも、散歩の帰りに母に教えてもらった花の名前をよく覚えている。『よりよく記憶する』ことが大事。」

 平田「ワークショップ・デザイナーがワークショップをする時に大切なことは、参加者その人のそれまでの人生を大切にすること。」
 吉野「今私たちが直面しているさまざまな問題に、芸術が役に立つことをヨーロッパの人たちは気づいている。」

 平田「日本の学校の科目に音楽や美術はありますが、演劇はありません。芸大にも演劇学科がない。さらに音大、美大はありますが、演劇大学はない。職がないから学科がない、学科がないから職もないというのが現状。例えばカナダにはドラマ・ティーチャーという専門職の先生が各ハイスクールに配置されています。イギリスでは劇場が学校にアーティストを派遣したりしている。小学校の語学教師(ALT)と同じ位置づけです。世田谷パブリックシアターも世田谷の学校に派遣していますね。輸入して真似るのが上手い日本人ですから、この10年でワークショップのレベルはかなり上がっています。あとは意識の高い自治体が制度化するしかない。」

 平田「出会いの場を作ることが大切。大阪・中ノ島に『哲学カフェ』というものを作りました。演劇はこの2500年間、コミュニケーション・デザインをしてきた分野である。コミュニケーションの幅を広げる場を作りたい。」

 ※司会の方は常に「まとめると」「共通するところは」「ひとことで言うと」などとおっしゃっており、“ワークショップ”の意味をわかっていない方のように思いました。


■第2部 ミニワークショップ「まさにワークショップ オン ワークショップ」
ワークショップデザイナー:
・柏木陽(演劇ワークショップ/NPO法人演劇百貨店)
・高尾美沙子(メディアワークショップ/青山学院大学 ヒューマン・イノベーション研究センター)ほか
・ワークショップ解説:苅宿俊文/吉野さつき

 演劇ワークショップ参加者、メディアワークショップ参加者、それの映像中継を見る人の3つのグループに分かれて、約1時間のワークショップの後にグループディスカッションあり。


主催:特定非営利活動法人学習環境デザイン工房 担当:苅宿俊文 高尾美沙子
協力:青山学院大学ヒューマン・イノベーション研究センター 大阪大学コミュニケーションデザイン・センター
参加費:¥1,000(資料代として)
チラシダウンロード⇒URL http://www.heu-le.net/wonw.pdf

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年11月10日 15:27 | TrackBack (0)