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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2008年12月03日

Studio Life『パサジェルカ~女船客~』12/02-13天王洲 銀河劇場

 男優集団Studio Life(スタジオ・ライフ)の再演2本立て公演です。『パサジェルカ~女船客~』の初日(Siegfriedバージョン)に伺いました。『死の泉』は来週の予定。2作品・各2バージョン公演ですので、お目当ての役者さんがいる方はお早めに予定を立てることをお勧めしま~す。

パサジェルカ〈女船客〉―他 (東欧の文学)
ゾフィア・ポスムイシ 佐藤 清郎
恒文社
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 シアター1010での初演では「つらかったけど、観て本当に良かった」と思いました。今回も同様でしたね。2度目なので初演を思い出して比較したり、違った視点から考えることができました。上演時間は休憩1度を含んで約3時間(←すみません、うろおぼえです)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『パサジェルカ~女船客~

 東京にはイケメン芝居がたくさんありますが、耽美的で重厚な文学作品といえばStudio Life。人気少女漫画の舞台化にも定評があります。私は作・演出の倉田淳さんが選ぶ作品が好きで、小説を脚本に起こして演劇にするという熱意にも打たれます。海外戯曲を翻訳して本邦初演してくださるのもありがたいです。そして、若い役者さんたちが真面目に、真正直に取り組んでいるように感じるから、ついつい再演ものにも通ってしまいます。特に私は漫画や文芸作品の舞台化が好きですね。『パサジェルカ~女船客~』も観られたことに感謝したい気持ちになる作品です。

 ≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 アウシュヴィッツ体験者が描く現代ポーランド文学における珠玉の名作
 残忍で非人間的な収容所を回想する問題作!
 第二次世界大戦後16年。外交官の夫(ワルター:前田一世)と赴任地ブラジルへ渡る豪華客船で、リーザ(曽世海司)は遥か大陸へと想いをはせていた。しかし、次の瞬間、彼女の微笑みは激しい動揺に変わるー見覚えのあるひとりの女船客(舟見和利)。それは夫にさえ秘したアウシュヴィッツ収容所の過去を甦らせる、女囚の面影だった。
 名はマルタ。戦中、ナチス親衛隊員で収容所の看守だったリーザは、どんな狂乱にあっても毅然とふるまう彼女に一目置き、擁護するのだが…予期せぬ再会の船は心の闇へとすべっていく。
 ≪ここまで≫

 初演の時はリーザ(曽世海司)とワルター(前田一世)の関係があまりわかっていなかったのですが、今回は始まって早々にグサっと胸に刺さるほど伝わってきました。リーザ役の曽世さんはさすがの安定感。ワルター役の前田さんは今回の唯一の客演キャスト(青年団映画放送/新国立劇場演劇研修所の修了生)で、最初は劇団の雰囲気と離れているように感じましたが、隠されていたリーザの過去に触れて衝撃を受けるところから、ぐっと物語の回転数を上げてくださいました。

 強制収容所の縦ストライプの囚人服を着た人物の影が見え始める頃から、背筋がビクっと震えて、鉄条網が張られた柵が出てきたらもうアウト。それだけで胸が締め付けられて、涙が出そうになります。
 リーザに目を掛けられて倉庫の事務をすることになる囚人・マルタ役は、舟見和利さん。細い体に細い足は、凛とした健気な印象をさらに増します。感情をむやみに爆発させない落ち着いた演技が良かったです。

 看守のリーザに対して媚びることなく、堂々とした生き様を見せ付けるマルタとタデウシュ(高根研一)。彼らに少なからず感化されてリーザの心が揺れる様は、私自身の善意やプライドの脆弱さを見るようでした。
 リーザとワルターの夫婦関係に厚みがあり、彼らの未来、つまり私たちの現在に太くつながる線が感じられて良かったです。そこが初演よりも面白かったですね。

 ただ、演出については改善できることが多くある気がしました。例えば暗転になる場面転換が多く、その都度大道具を動かすのは少々退屈です。大道具の移動なし見せるシーンを増やしても良いんじゃないかと思いました(えらそうですみません)。

 ここからネタバレします。

 初演で良かったと思ったシーンやセリフは、今回もまた心に残りました。マルタの「人間は生きることに執着しすぎると奴隷になります」はやはり凄いですよね。

 マルタが白いドレスを着て船から降りるシーンは、下から見つめる青いドレスのリーザとの対比が美しいです。ただ、マルタがナチスの残党を追うグループの一員だった(んですよね?)ことが、伝わりにくかったように思います。マルタがリーザを(仲間に「彼女は戦犯じゃない」と嘘をつくなどして)かばったのを、もっとはっきり伝えるセリフがあってもいいんじゃないかと思いました。※ストーリーについては私の勘違いだったらすみません。

 マルタが船から去った後、リーザは船から降りずにワルターに寄り添います。ワルターがあんなに怒って取り乱して、リーザも「私には何も失うものはない。私は自由だ(夫ワルターのことはもう怖くない)」という境地に至ったのに、すぐに2人が仲直りしてハッピー・エンドになってしまった(ように見えた)のは腑に落ちませんでした。これから2人は、お互いに許せないと思うことを許す努力をして、共にいばらの道を歩むことになるのですから、苦しいけれど尊い決断をしたところが観たかったなと思います。

≪東京、兵庫≫
出演(Siegfried・ジークフリート版):曽世海司 前田一世(青年座映画放送) 青木隆敏 舟見和利 高根研一 奥田努 小野健太郎 深山洋貴 倉本徹 藤原啓児 山崎康一 関戸博一 山本芳樹 荒木健太朗 三上俊 仲原裕之 船戸慎士 牧島進一 篠田仁志 大沼亮吉 吉田隆太 ※河内喜一朗休演につき代わって大沼亮吉が出演。
原作:ゾフィア・ポスムイシ 脚本・演出:倉田淳 美術:松野潤 照明:森田三郎・森ll敬子 舞台監督:本田和男[ニケステージワークス] 清水浩志 音響:竹下亮[office my on] 衣裳:竹原典子 ヘアメイク:角田和子 アクション:渥美博 振付:TAKASHI 美術助手:渡辺景子 演出助手:平河夏・荒川真寿恵 宣伝美衛:田代祐子 宣伝写真:申村路人 小道具:高津映画装飾 大道具:俳優座劇場 デスク:大野純也・大谷吉弘・熊田美波・山崎みれい 制作:稲田佳雄・揖斐圭子・麻場優美・小山智子・瀬津丸砂織・若松美香 制作協力:東容子・縄志津絵・小泉裕子・ハ木美穂子 協力:舞台屋・ニケステージワークス 主催:テレビ朝日 Studio Life
【発売日】2008/10/12◇前売 S席¥5,900/A席¥4,900◇当日 S席¥6,300/A席¥5,000◇学割(前売・当日) A席¥3,000(要学生証・劇団取扱いのみ)◇「死の泉」+「パサジェルカ」セット券 (前売S席限定・劇団取扱いのみ) ¥11,200
http://www.studio-life.com/stage/si_pasa/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年12月03日 12:25 | TrackBack (0)