サスペンデッズ(過去レビュー⇒1、2、3)の早船聡さんを作・演出に迎えた、Habaneraプロデュース『ロゼット』の稽古場に伺いました。
早船さんは今年6月の新国立劇場演劇『鳥瞰図』の脚本を手がけた、注目の若手劇作家・演出家です。座付き作家・演出家をつとめる劇団サスペンデッズは、シアター・トラム『ネクスト・ジェネレーション vol.1』の3団体に選出されました(来年1月に『片手の鳴る音』を再演)。
【公演情報】
Habaneraプロデュース『ロゼット』
期間:2008年12/11(木)~12/14(日)
会場:シアターグリーン BASE THEATER
⇒CoRich舞台芸術!『ロゼット』
≪『ロゼット』あらすじ≫
会社員だった典子(田口朋子)は、植木の通信販売を手がけるベンチャー企業を立ち上げた。気のいい植木職人の加賀(各務立基)と、幼なじみの主婦・真樹(中島佳子)を雇い、やりたい仕事に全力で取り組んでいる。しかし事業はいつも順風満帆に進むものではなく、幼い息子を持つ真樹との考え方の相違もあり、明るいオフィスで意見がぶつかり合うこともしばしば。そこに真樹と同じく高校の同級生だった祐二(芹沢秀明)がやってくる。
≪ここまで≫
イス、机などのセットが揃った状態で、1幕から順番に細かく止めて確認するお稽古が始まりました。稽古場のムードはとても穏やかで、早船さんは言葉少なに、ともすると遠慮がちに演出をつけていきます。
早船「体にちょっとだけ距離感を加味してもらってもいいですか」
早船「誰にも言えないことを言える嬉しさで、気持ちのスピードをつけてもらってもいいですか」
↓田口朋子さん(左)と各務立基さん
早船さんの演技についての演出は、「ある感情を持った体になっていれば、言葉が何であろうとそれは伝わる」という考えが基になっているようです。一方で、体の形を決めることで感情がついてくるという、いわば逆方向の指示もされていました。体に注目する演出というと、チェルフィッチュの岡田利規さんが思い浮かびます。
早船「指先が1本ずつ独立しているように動かしてもらえますか。意識的に、時間が細かくなっているように。時間を長くとってスローにするのではなく、ちゃんとコマ割りになった時間があるように。」
『ロゼット』はごく普通の日本人の日常生活の風景を、自然な演技で見せる現代口語劇です。衣裳はほぼ普段着ですし、ダイナミックな場面転換などもありません。でも役者さんのささいな動きや立ち位置の違いで、セリフの意味やその場の空気感ががらりと変わり、モノトーンのように見えた景色がカラフルに変わっていきます。
↓芹沢秀明さん(左)、中島佳子さん
タイトルの『ロゼット』とは、雑草が冬を越す時の姿の名称。地面に這いつくばるように葉を広げ、必死で日光を浴びて冬を越すたんぽぽやオオバコがそうですね。登場人物たちはそれぞれに問題を抱えながら、いつか来る春を信じて懸命に生きています。切実な思いがぶつかり、絡み合い、すり抜けていくのを、優しさから生まれる笑いが包みました。
過去作品でも感じたことですが、早船さんの脚本はセリフに無駄がありません。私たちが慣れ親しんでいる日常会話の一見平凡に思える言葉から、うねるように変化し続ける感情がよどみなく流れて出てきます。
↓加古みなみさん(左)、芹沢秀明さん(中央)、中島佳子さん(右)
早船さんは時おり「すぐに出来なくてもいいですから」「毎回違ってもいいんですけど」と付け足されていました。それは出演者への気遣いでもありますが、「演技をある形に決めると、そこで終わってしまう」という考えから来た、慎重を期した言葉でした。無理じいをせず、役者の持ち味をそのままに生かし、大切に抱きしめるようにつむぎだすお芝居『ロゼット』。コミュニケーションがとても良く取れている出演者たちの、揺れ動く感情の調和も楽しめそうです。
Habaneraプロデユース[女優のための芝居企画①]『ロゼット』
出演:中島佳子 加古みなみ 田口朋子 各務立基(花組芝居) 芹沢秀明
作・演出:早船聡 演出助手:佐藤亜美 美術:近藤麗子 照明:工藤雅弘(Fantasista?ish.) 音響:平井隆史(末広寿司) 舞台監督:大友圭一郎 チラシイラスト:鹿又広佑 企画製作]:Habanera
[チケット発売日] 11月10日 [チケット] (全席自由/整理番号付) 前売 ¥2800 当日¥2500 ※ 平日マチネ¥2500(前売・当日共)
[チケット取扱い]Habanera 電話 03-5489-3740(平日11:00~18:00)
http://www.habanera-pr.com/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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