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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2008年12月26日

コロブチカ『proof』12/25-29 王子小劇場

 柿喰う客に所属する女優コロさんがプロデュースするユニット、コロブチカの旗揚げ公演です。演目はデイヴィッド・オーバーンの『proof』。私はこれで4度目になります(過去レビュー⇒)。あぁ、今回もすごく面白かった♪

 初日は割引価格で前売2800円のところ2000円でした。「こんなに上質の芝居を観られるなんて、2000円では申し訳ない」とおっしゃるお客様もいらっしゃいました。そんな作品に出会えるから、王子小劇場は魅力的。上演時間は約2時間半(途中休憩10分を含む)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『proof

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 シカゴのとある寒い冬、天才数学者・ロバート(鈴木浩司)は、彼にとって二度目の世紀の大発見である偉大な「証明」をノートに書き続けていた。それほどの「証明」を、彼は誰にも見せようとしなかったし、誰もそれを見ようともしなかった。なぜなら彼は、気が狂っていたから。
 たった一人で彼の身の回りの世話をしていたロバートの次女・キャサリン(コロ)は、遺稿の整理に訪れた若い数学者・ハル(小谷真一)と、ノートの持ち出しを巡って激しく争う。父の書斎をそのままにしておきたいキャサリンと、埋もれているかもしれない新たな業績を発掘したいハル。
 やがてキャサリンは、彼女にとって最も重要な一冊のノートを父の書斎から持ち出し、ハルに託す。なぜなら彼女は、……。
 ≪ここまで≫

 舞台上で心を開放して、嘘のないコミュニケーションをしている俳優たちを観られて、戯曲を深く味わうことができて、とても充実した幸せな観劇になりました。最初のシーンはちょっと固さを感じましたが(初日ですしね)、キャサリン(コロ)とキャサリンの姉クレア(こいけけいこ)ののびのびとした会話のあたりから、私も生き生き、のびのびと味わえるようになりました。ほんと、この戯曲、ステキ♪

 キャサリンが父ロバート(鈴木浩司)の介護をしていた約4~5年間が、会話の断片や回想シーンから少しずつ明らかになっていきます。人間ドラマとしてはもちろん、推理小説を読み進めるような楽しみもあると思います。私のようにてん末を知っている者にとっては、1つの事実が見る者によって幾通りにも解釈(誤解)できることを、緻密に例証してくれているようにも見えました。

 衣裳がおしゃれでした。いかにもアメリカ人なコーディネートも良かったし、何度も着替えて時間の経過を表してくれたのもわかりやすかったです。
 ムードのある美術でしたが(ブランコって動きがあっていいですよね)、柱のせいでせっかくの表情が見えないのと、何かと手狭そうだったのは残念。

 翻訳をされたのは谷賢一さん(DULL-COLORED POP)。前回よりも私自身にとってなじみのある言葉が多かったように感じました(正確にはわかりませんが)。最後の方のあのセリフ、良かったな~。

 ここからネタバレします。

 『proof』といえば、やっぱりキャサリンとハルのキスシーン。何度もキスするのですが、その1つ1つがとても大切に演じられていました。ハルがキャサリンの魅力(引力)に吸い込まれていく表情が可愛いです。仏頂面のキャサリンが、少しずつハルに心を開いていくのがつぶさに感じ取れました。

 キャサリン、クレア、ハルはそれぞれに熱いケンカをします。誰もが本気だし必死だし、良かれと思って発言・行動しているけれど、すれ違ってしまうんですよね。それも絶望的なほどに。そんな様子にいらいらしたり、共感したり、かわいいな~と温かい気持ちになって眺めたり。

 人間は1人1人があまりに違いますよね。だからお互いに共感したり、共鳴した時、幸せを感じるんだと思います。キャサリンが、自分が成し遂げたノート40ページ分の“証明”について、ハルに説明をし始めたところで終幕します。あれは彼女に初めて友達ができたことの証明だし、人間の幸せって、自分のことを認めてくれる(愛してくれる)誰かと一緒にいること、それだけだよねってことの証明にもなるんじゃないかと思いました。ロバートもただキャサリンと一緒にいたかった。それだけなんですよね。

 カットアウトの暗転は効果的だったと思います。ただ、最後は私の気分的にフェードアウトが好みかも。
 シカゴの冬は恐ろしく寒いんですよね。細かいことですが、父ロバートが、寒いと自覚するまで震えもしていないのが少々気になりました。“パスタ”の話題で笑いが生まれたのはすごく良かったです。

 ※“最後の方のあのセリフ”とは、ハルの「(この証明は)ナウい!」です。

柿喰う客コロのやったるで企画、「コロブチカ」旗揚げ公演
ピュリッツァー賞、トニー賞の受賞歴を持つ、デイヴィッド・オーバーンの傑作戯曲。
出演:コロ、こいけけいこ(リュカ.)、鈴木浩司、小谷真一
脚本:デイヴィッド・オーバーン  翻訳:谷賢一(DULL-COLORED POP) 演出:黒澤世莉(時間堂) 舞台美術:近藤麗子 照明:富山貴之 音響:角田里枝 宣伝美術:立花和政 宣伝写真:立花和政 チラシヘアメイク:増田加奈 写真モデル:コロ 演出助手:佐伯風土 原田優理子 制作:塩田友克
日時指定・全席自由 前売 2800円 当日 3000円 学生券 2500円(学生証の提示を願います。要予約) 団体券 6900円(3名でご来場のお客様対象。要予約) クリスマス割引 2000円(初日の25日は前売当日共に2000円!)
http://korobuchika.blogspot.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年12月26日 01:16 | TrackBack (0)