朝比奈尚行さんが構成・演出・音楽を手がけるパフォーマンス集団・時々自動の公演に、初めて伺いました。海外でも活動されており、日本での新作公演は3年振りだそうです。
『うたのエリア』とは、20世紀の現代音楽家をフィーチャーして、完全自作の音楽・歌に、ダンス、パフォーマンス、演劇などを組み合わせた実験的なシリーズで、今回が三部作の第1回目です。
現代音楽家オリヴィエ・メシアン(Wikipedia)を取り上げ、「愛(性愛)」をテーマに様々なシーンをコラージュした約1時間30分でした。第2回では「政治」、第3回では「死」をテーマにするそうです。
最初はどう受け取っていいのかわからずオロオロしちゃったのですが(←演劇オタクは順応が遅い)、少しずつ空気に慣れて、終盤には歌と音楽にのって体を揺らせるぐらいになりました。楽器を演奏し、歌を歌い、演技もして、舞台上で楽しそうな出演者の方々(20名以上)が魅力的でした。
⇒CoRich舞台芸術!『うたのエリア-1』
音楽の知識が全くと言っていいほどない私ですが、コンサートで演奏を聴くように、サーカスの出し物を楽しむように、演劇を観るように、鑑賞できました。
終演後に関係者に質問したところ、メシアンの楽曲(メロディーなど)を真似したのではなく、メシアンの作曲手法を使って、時々自動のオリジナル曲を作られたそうです。これからご覧になる方はメシアンについて少し知識を仕入れてから行かれると良いかもしれません。でも、何も知らなくても単純に楽しめるとも思います(私が大丈夫だったので)。
テーマが(特に女性視点の)「性愛」で、歌詞の露骨な性描写にちょっと驚きました(当日パンフレットに歌詞が載ってます)。朝比奈さんの舞台上での解説によると、時々自動の女性メンバーらが書いた言葉をもとに作ったんだそうです。歌詞の内容が実話だとしても、創作だとしても、目の前で歌ったり演奏したりしている女性から出てきた言葉なんだと思ったら、急に親しみが湧きました。
音楽を作る手法はメシアンのものを活用していますが、作詞作曲、脚本演出、演奏、歌、踊り、演技などのすべてが手作りなんですよね。そしてそれらが目の前にある(目の前で動いている)んだと気付いて、この出合い自体に喜びを感じました。
演奏や踊り、演技などの技術の上手い下手については、観客それぞれに尺度があると思います。演技経験のない方が演技されたりもしていますから、少々雑なところが目につかないわけではありません。でも私は、ゼロから生み出されたものを、ライブを見せていただけたことが面白いと感じました。一般公募で集まった合唱隊が出演しているのも、素朴な雰囲気が生まれていて良かったと思います。
ここからネタバレします。
街を牛耳るボスの娘とそのフィアンセのギタリスト、1人の男を取り合った姉妹の放浪、入院中のバレリーナとその恋人との会話、ジャンクで作ったロボットとその作者、人間とまじわったメス猫たち・・・などの短編が演じられ、それと交互に音楽が演奏されます。
例えばボタン式アコーディオンを演奏している女性は猫の姿をしており、演奏をしない時は踊ったり演技をしたりします。全員が演奏者であり演技者であるという状態が楽しいです。
官能的な現代音楽というとマイケル・ナイマンが浮かびます。あとは映画「ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ 」のキューバ音楽とか。単調な繰り返しってセックスを連想させますよね。女性ヴォーカル2人で歌い上げるのがエロティック。
バレエって美しいですね~、バレリーナは問答無用に可愛いです。「纏足とトウシューズは似てる」という視点にはなるほどと思いましたが、でもトウシューズはやっぱりきれいだと思う(笑)。
出演:朝比奈尚行 今井次郎 宇佐美とよみ 鈴木光介 砂川佳代子 高橋牧 日高和子 渡辺直美 石川智子 笠原夏樹 国広和毅 坂本洋祐 柴田暦 紫竹あかね 鈴木美奈子 寺門文人 樋田佳美 藤田真砂子 +一般公募による合唱隊
構成・演出:朝比奈尚行 音楽:朝比奈尚行 今井次郎 鈴木光介 映像:宇佐美とよみ 砂川佳代子 振付:藤田真砂子 照明:斎藤茂男 音響:島猛 制作助手:西邨紀子 広報デザイン:大岡寛典 主催:時々自動 企画・制作:(有)ティコ・ディコ
【発売日】2008/12/01 日時指定 全席自由 前売り3500円 当日3800円(定員70人)
http://www.tokidoki-jido.com/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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