横田修さんが作・演出される劇団、タテヨコ企画の新作です。宇宙ノ正体シリーズとは剃髪の修行僧たちが登場するシリーズ。タテヨコ企画の作品を拝見するのは今回で4度目になります(過去レビュー・記録⇒1、2、3)。
タテヨコ企画ならではの、期待どおりの空気が舞台に作り出されるのが嬉しい。誰もいない空間、暗転中の音に落涙。上演時間は約1時間50分。
⇒CoRich舞台芸術!『アメフラシザンザカ』
≪あらすじ≫
舞台は海辺の漁村にある寺。修行僧・永然(好宮温太郎)の実家だ。“アメフラシ”から、永然の姉・祥子(勝平ともこ)の息子を誘拐するとの脅迫状が届き、永然の同僚の修行僧たちと村人らが集まった。
≪ここまで≫
しっかりと建て込まれた(ように見える)木造の日本家屋で、坊主頭の僧たちが走りまわります。それだけで駅前劇場に分厚い空気があって楽しい。
口から言葉が発せられるごとに、人の優しさ、ずるさがぽろぽろとリズムよくはがれ落ちるように出てくるので、一言ひとことに深い味わいがあります。可笑しいやりとり中に、急に苦味が走ったり。
具象とフィクションの混ざり具合に、この劇団の個性があると思いますが、湧いた疑問がしこりになって残ってしまうことがあるのが少し残念です。個人差があると思いますが。
大きな波の音、激しい雨音に人知を超えた世界を感じ取れました。舞台に誰もいない数秒のシーンがすごく良かった。
ここからネタバレします。
全身緑色のタイツを着た妖怪が、開幕してすぐに登場していたのが良かったです。「妖怪がいる」ことを常態としてから始まるドラマの方が面白いですよね。
原発誘致派と反対派で争っているという設定が胸に痛い。その間に寺があるというのも皮肉が効いています。祥子の夫の部下・三浦(堀夏子)が、一目で愛人だとわかる演技だったのが素晴らしい(笑)。映画「阿修羅のごとく」での木村佳乃さんを思い出しました。この映画での木村さんはスゴイっす!
永然が昔の恋人・いくみ(舘智子)に向かって、蛇の目傘を広げて「一緒に行こう」と誘うシーンにうっとり。でも永然が「一緒にここから逃げよう」と言ったのにはがっかり(笑)。やっぱりダメ男だ・・・(苦笑)。横田さんは骨の髄まで正直で、真面目な方なんだな~と思いました。でも、個人的にはここでハッピー・エンドにしても良かったんじゃないかな~とも思いましたね。2人の前途が多難であることは明らかなので。
結局、舞台となった居間が本堂だったのかしら?だとするとお経を上げる対象となるものが見えなかったのは残念。最後の読経は魅力ではありますが、障子に向かって読むのには違和感が残りました。
10周年記念公演 第1弾
出演:青木柳葉魚、市橋朝子、大塚あかね、舘智子、ちゅうり、鶴川春男、西山竜一、久行しのぶ、藤崎成益、好宮温太郎(以上、劇団員)、青山麻紀子(boku-makuhari)、勝平ともこ(劇団M.O.P.)、小高仁、じょじ伊東、堀夏子(青年団)
脚本・演出:横田修 舞台監督/田中翼 照明/鈴村淳 音響/島貫聡 舞台美術/濱崎賢二(青年団) 宣伝美術・写真撮影/平地みどり チラシイラスト/糠谷貴使 制作/タテヨコ企画制作部+森佑介+大木孝司 製作/タテヨコ企画
【発売日】2008/12/17 前売3,000円(日時指定・全席自由) 当日3,300円 学生割引1,500円 (高校生以下/要予約/当日受付にて学生証をご提示下さい) ビデオ撮影日・平日マチネ割引 前売・当日共 2,000円
http://tateyoko.com/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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