REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2009年01月25日

4x1h project『Play#2 「ソヴァージュばあさん / 月並みなはなし』01/23-30新宿シアター・ミラクル

 4x1h project(フォー・バイ・ワン・エイチ・プロジェクト)は、新作短編戯曲6本をリーディング上演し、その中から観客投票で人気の高かったものを本公演として上演する企画です(関連レビュー⇒)。

 6本中の2本が上演される予定でしたが、何らかの事情で3本が選ばれ、9月に2本(『ひとさまにみせるもんじゃない』&『いそうろう』)の上演が終わっています。今回は残りの1本である『ソヴァージュばあさん』に『月並みなはなし』を加えた2本立て公演です。

 『月並みなはなし』は『ソヴァージュ・・・』を演出される黒澤世莉さんの戯曲で、演出は『ひとさまにみせるもんじゃない』を書いた中屋敷法仁さんです。上演時間は約1時間40分(途中休憩15分を含む)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ソヴァージュばあさん / 月並みなはなし

 戯曲というのは生き物のようなもので、演出家や役者など、携わる作り手が変わると全く違う作品になります。それを実感できる意味では良い企画だと思います。

 両作品ともよく工夫されているな~と思いましたが、公演全体としては少々仕上がりが雑に見えました。初見の戯曲ではありませんから、自ずと私の気持ちのハードルが高くなっていたせいかもしれません。「この戯曲にはこの演出でなければならない」という強いこだわりが感じられなかったことが、私にとっては残念。与えられた環境でのベストを尽くした、というところなのではないでしょうか。

 ここからネタバレします。

■「月並みなはなし」
 脚本:黒澤世莉(時間堂)  演出:中屋敷法仁(柿喰う客)

 あらすじなどはこちらでどうぞ。

 自然な演技で見せる現代口語劇が、がっつり柿喰う客カラーに再構成されていました。
 月への移民候補となる6人を2グループ作り、2人の役者さんが1役を演じます。部外者の耳ちゃんや黒幕(?)のハナちゃんは1人1役ですので、役柄の位置関係がわかりやすいです。セリフを同時にしゃべったり、演技を少しずらしたりすることで、大事なポイントとなるセリフを際立てたり、意味を強調したりする効果がありました。

 ただ、2グループにした意味が出る演出が欲しかったですね。最後がぼやけて残念。
 あとは、いつも感じることですが、中屋敷さんはオープニングの演出(つまり導入部)をもっと考えて欲しいなと思います。最初につまづいた観客をとりこぼしてしまうのは、もったいない気がします。

 大勢の出演者の中で記憶に残ったのは、耳ちゃん役の百花亜希さん、ブラジャー姿になった佐野功さん、黄色い眼帯のコウドウを演じた熊川ふみさん。


■「ソヴァージュばあさん」
 原作:モーパッサン 脚本:谷賢一(DULL-COLORED POP) 演出:黒澤世莉(時間堂)

 あらすじなどはこちらでどうぞ。

 リーディングの時と同じキャストが揃っていたのが良かったです。演技が安定しているし、意図も確実に伝わります。ソヴァージュばあさん(菊池美里)が終盤で「おかしいじゃないか」と笑って言うのが良かったです。
 映像も効果的でした。徐々に家の輪郭が出てくるのは物語の進行にもぴったり。客席に向かってセリフを言うことへの違和感も少なかったですし、火事のシーンにも説得力がありました。
 
 モーパッサン原作のかっちりとした戯曲なので、人を銃に見立てて移動させたり、装置の壁がアクシデントで(?)はがれたりする、本編とは関係のない演出には疑問をおぼえました。私が「ソヴァージュばあさん」を観るのはリーディングも含めてこれで3度目になりますので(過去の2回⇒)、わざわざ余計なことはしなくてもいいのではないか、という気持ちが先に立ちました。感じ方には個人差があると思います。

「ソヴァージュばあさん」出演:上野友之(劇団競泳水着)、菊池美里(トリコ劇場)、坂口辰平(ハイバイ)、酒巻誉洋(elePHANTMoon)
「月並みなはなし」出演:浅見臣樹、石澤サトシ(オフィスインベーダー)、江原大介、太田幸絵、大竹悠子(ユニークポイント)、乙黒史誠、熊川ふみ(範宙遊泳)、佐野功、猿田モンキー、椎名豊丸(チェリーブロッサムハイスクール)、二階堂瞳子(バナナ学園純情乙女組)、林佳代、星野奈穂子、緑川陽介、百花亜希、山本真由美(舞夢プロ)
「ソヴァージュばあさん」原作:モーパッサン 脚本:谷賢一(DULL-COLORED POP) 演出:黒澤世莉(時間堂)
「月並みなはなし」脚本:黒澤世莉(時間堂)  演出:中屋敷法仁(柿喰う客)
照明:吉村愛子(Fantasista?ish.) 舞台監督:藤本志穂(うなぎ計画) 舞台美術:佐々木文美(快快) 衣装協力:juno-rii 舞台写真:松本幸夫 映像・ビデオ撮影:マキタカズオミ(elePHANTMoon) 宣伝美術:成川知也 当日運営:小山与枝乃 企画・制作:4x1h project プロデューサー:菊地奈緒(elePHANTMoon) 
全席自由 ・税込2,500円 学生割引 2,200円
http://blog.livedoor.jp/project4x1h/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガも発行しております。

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 2009年01月25日 19:15 | TrackBack (0)