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2009年01月26日

【稽古場レポート】メジャーリーグ『ちっちゃなエイヨルフ』01/22都内某所

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タニノクロウさん

 『野鴨』に続いて、庭劇団ペニノのタニノクロウさんがイプセン戯曲(Wikipedia)を演出されます。少数精鋭の豪華キャスト公演『ちっちゃなエイヨルフ』の稽古場にお邪魔しました。タニノさんへのインタビューあり!

 幕ごとに途切れつつ第3幕まですべて拝見したのですが・・・ものすごく面白かったです。本番2週間前の時点でこの完成度ですから、初日に大いに期待!

 メジャーリーグ『ちっちゃなエイヨルフ』02/04-15あうるすぽっと
 ⇒公式サイト
 ⇒笹部博司のイプセン宣言
 ⇒CoRich舞台芸術!『ちっちゃなエイヨルフ

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより一部抜粋。(役者名を追加)。
 ノルウェーの片田舎。
 この町の有力者の娘リタ(とよた真帆)と学校の教員でもあり、作家でもあるアルメルス(勝村政信)には、足がビッコの9歳の息子エイヨルフ(星野亜門or田中冴樹)がいる。2人は、息子の家庭教師を、アルメルスの腹違いの妹アスタ(馬渕英俚可)に頼んでいる。また、このアスタの事を好きな近所の土木技師ボルクハイム(野間口徹)は、アスタに会うため、よくこの家に顔を出す。
 ある日、鼠ばあさんなる、ネズミ駆除を請け負う老婆(マメ山田)が、「厄介ものはいないか、厄介ものは、あたしが駆除してさしあげよう。」と、この一家を訪れる。一家は気味悪がるが、エイヨルフは、まるでハーメルンの笛吹きのように、この老婆について行き、海でおぼれ死んでしまう。
 かくして、このドラマは、ベールがはがされ、一気にそれぞれの内面が露出していく。
 ≪ここまで≫

 戯曲を緻密に読み込んで丁寧に立体化する、すごく落ち着いたムードの稽古場でした。プロの俳優の集中力はすごい。
 タニノさんは、子役の男の子たちをはじめ全ての出演者に、おだやかな口調で演出をしています。勝村政信さんはタニノさんによく話しかけ、熱心に色んな提案をしてらっしゃいました。休憩中は野間口徹さんと冗談を言い合って楽しそう。

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『ちっちゃなエイヨルフ』のチラシや台本

 メインの登場人物は2組の男女。アルメルスとリタという若い夫婦と、アルメルスの妹アスタと彼女に想いを寄せるボルクハイムです。1対1の対話から、嵐の海のように荒れ狂う心が目に見えるようでした。言葉の中に、裏に、こんなにも激しい気持ちが隠されているなんて・・・!
 実物大の装置は建て込んでありますが、衣裳も仮のものだし、照明も音楽もない状態のお稽古で、笑いが止まらなくなったり、静かに涙が流れたり、すっかり純粋な観客になって物語にのめり込んでしまいました。

 本番2週間前の時点で、演技の完成度はかなり高いところまで来ているように思いましたが、言葉のニュアンスをさらに明確に表現しようと、タニノさんが細かい指摘をされていました。
 本番では、戯曲の力と俳優の力とが合わさり、人間が語る言葉から生まれる無限の広がりを体感できそうです。イスを活用した美術(朝倉摂)も見どころになる予感! 

 ■タニノクロウさんへのインタビュー

 しのぶ「ぴあ(09/01/22号)のインタビューでタニノさんは、『言葉に興味を持つようになった』とおっしゃっています。それは『ちっちゃなエイヨルフ』との出合いからですか?」

 タニノ「笹部(博司)さんにイプセンの『野鴨』を紹介していただいて、初めて戯曲というものを読みました。それまではシェイクスピアも読んだことがなかったんです。自分は台本のないところから創作していたので、特に台本が必要だとは思っていなかったし、かえって制限されるのではないかとも思っていた。でも『野鴨』が非常に面白かったので、戯曲に興味が沸いて。そして初めて台本から創作したのが『笑顔の砦』でした。」※『笑顔の砦』は第52回岸田國士戯曲賞最終候補作となった。

 しのぶ「既存の戯曲、しかも古典に取り組むのは、庭劇団ペニノでの創作方法とは違うアプローチになるのですね。」

 タニノ「とにかく読んで、読んで、読む。詳細にイメージをして、穴が開くほど読む。稽古開始から1週間は、ずっと本読みとディスカッションをしていました。そこが肝だと思っています。」

 タニノ「イプセンの戯曲は、細かい心理描写によって人間の深い心層の興奮を描いています。無意識を読み解いているという点で、フロイト(Wikipedia)が参照していたほど。『ちっちゃなエイヨルフ』は『野鴨』と同じく素晴らしい戯曲です。『ちっちゃな・・・』には男と女の無意識のやりとりが描かれており、ト書きや、詩的で短い言葉のひとこと、ふたことで、意識をつないでいく。そして、さらに深いところをえぐっていく。構成もすごいし、とにかく面白いんですよ。」

出演:勝村政信、とよた真帆、野間口徹、馬渕英俚可、マメ山田、星野亜門(Wキャスト)、田中冴樹(Wキャスト)
作:ヘンリック・イプセン 上演台本・プロデューサー:笹部博司 演出:タニノクロウ(庭劇団ペニノ) 美術:朝倉摂 照明:山口暁(あかり組) 音響:天野高志(OFFICE my on) 衣裳:友好まり子 ヘアメイク:武井優子 演出助手:伊藤栄之進 舞台監督:加藤保浩 宣伝写真:園田昭彦 宣伝美術:采澤聰 営業:大島佳奈(メジャーリーグ) 制作:千葉裕子(る・ひまわり)プロデューサー:笹部博司 共催:(財)としま未来文化財団 主催:メジャーリーグ 
【発売日】2008/10/25 全席指定 6,500円(税込み) *未就学児童のご入場はご遠慮下さい。
http://www.majorleague.co.jp/stage/eyolf/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2009年01月26日 13:45 | TrackBack (0)