髙山さなえさんが作・演出を手がける青年団リンク・髙山植物園の4年ぶりの新作です。私は劇団公演は初見。以前に脚本提供された公演を観たことがあります。
女相撲の稽古場で、男と女の本音がじんわり吹き出してくる現代口語ファンタジー。終盤の意外な演出に泣いてしまった。上演時間は約1時間20分。
⇒CoRich舞台芸術!『天の空一つに見える』
≪あらすじ≫
体操着にまわしを付けた女たちが、土俵で相撲の稽古をしている。親方(小河原康二)とその妹たちが到着した。今日が、親方の妻、つまりおかみさんの四十九日が開けて始めての稽古なのだ。
≪ここまで≫
日常会話が続くいわゆる現代口語劇かと思いきや、役者さんはけっこう装飾のついたしゃべり方もしていて、じわじわと架空の世界の空気が満ちてきました。
ジェンダーの問題を焦点に置いた脚本でした。現代日本では女性の社会進出は著しいですが、女性蔑視は根強く残っているし、女性も「女の武器」を使っているし。女が上ることが許されていない土俵の上で、じたばた、ドタバタする男女の姿が、私にはとても身近に見えました。あの稽古場(空間)は、もろくて弱弱しい、いずれ消えてなくなるのであろう、柔らかいユートピア。もがく女たちが悲しくて、いとおしくて、涙が流れました。
よわっちい親方(小河原康二)が可愛い。ひげもじゃの夫(永井秀樹)がセクシー。
ここからネタバレします。
「口から血が出るのは不浄だ」という考え方が、仏教にあるんですね(脚本より)。つまり「女=不浄」ということで。女人禁制とかよく言いますものね。私は、古代の男が女を押さえつけるために考え出した悪知恵(というか苦肉の策)だと考えるタイプでして、「あぁ、そういう考えの人、今だにいるよね~」ぐらいに軽くとらえていました。でも内舘牧子さんが本に書いてるというのには驚き。信じる人いるんですねぇ。私が浅はかなのかな。
土俵で踊り出すのがすごく可笑しかった。男社会に乗り込んでいく女性ってあんな風に見えることがあるんだろうと思いました。実際、ああいうことやってる人、いますよね。
それぞれが本音とプライベートを露呈するはめになって、ひととおり話した後、いきなり演出が変わって驚きました。詩のようなセリフを大きめの声で叫ぶように語り出す、相撲取りたち。お好みは分かれるところだと思いますが、私には、ダメだとわかっててもすがりつく、不器用でわがままな人間の叫びが見えるようで、面白かったです。
親方に「もう親方を辞める」と言われて、相撲取りたちはたじろぎます。「おかみさん(=お母さん)がいなくなって、親方がいなくなったら、私たちは孤児になる」と。相撲部屋が胎内になったみたい。一人で立つことができない赤ん坊がだだをこねているようにも見えました。
出演:永井秀樹、たむらみずほ、小河原康二、木崎友紀子、兵藤公美、高橋緑、鈴木智香子、田原礼子、山本裕子、根上彩
脚本・演出/髙山さなえ 舞台美術/鈴木健介 照明/伊藤泰行 制作/増坂由夏 野村政之 宣伝美術/鈴木智香子 記録撮影/小口宏 ※チラシの写真は髙山さなえさんのお母様。
【発売日】2008/12/05 予約 2,000円/当日 2,500円(日時指定・全席自由・整理番号付)
http://takayamashokubutuen.blog60.fc2.com/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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