宮﨑あおいさんが主演する三人芝居は、脚本・演出がピチチ5の福原充則さん。会場が青山円形劇場というのも嬉しいですね。どの席からも舞台から近いですから。
ころころ、くるくるとスピーディーに役が変わるのが、躍動感もあってリズミカル。福原さんらしいチープでワイルドな味わいも生きていて、でも目の前にいるのは「篤姫」という(笑)、ちょっとオモシロな、いえ、とても面白い約2時間でした。
⇒CoRich舞台芸術!『その夜明け、嘘。』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
その漫画家は、環状七号線を走っていた!
締め切り前夜。
白紙の原稿をロバに積み、情熱の炎をランタンにして、
無能なアシスタントを従えた、そんな漫画家が走っていた!
月の砂漠の環七を、アイデアを求めて漫画家は、西へ東へ海底2万マイル!
西部の荒野の宇宙の果てで、スフィンクスと決闘しろ!
「あぁそんなストーリーじゃ、とても締め切りに間に合わない!」
そうしてその漫画家は、バス停のベンチに腰掛けて、目から水晶の涙をこぼすので、
王女の呪いは霧散して、代わりに村人全てがゾンビ化した!
深夜の環七を舞台に繰り広げられる、十数人の群像劇の三人芝居!
≪ここまで≫
中央に自転車。むくっと起き上がる電信柱、信号機、標識。完全円形になってもちゃんと仕掛けに凝ってる美術が嬉しいです。
3人の出演者が、舞台上で突然違う役に変わっていきながら、ゆるやかにつながった複数のエピソードが同時進行します。照明と音響の変化などでシーンが変わるのも鮮やか(きっかけ大変そうだ・・・)。
自分勝手で他人に迷惑をかけっぱなしの庶民たちの、開き直った内心の叫びが痛快でした。演劇ならではの演出が盛りだくさんで、全身手抜きなしの、見どころの多いお芝居だったと思います。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
アシスタント(吉本菜穂子)に追いかけられる漫画家(宮﨑あおい)が苦し紛れに考え出したのが、高円寺(実は野方)に暮らしながらシド・アンド・ナンシーにあこがれる若いカップル。シド(宮﨑あおい)は前橋に帰省して解体業に転職。ナンシー(吉本菜穂子)は瀬戸内海に面した実家に戻り、家族が経営するスナックに勤務。別れたけど文通でつながる2人の青春。
漫画家(宮﨑あおい)とアシスタント(吉本菜穂子)を追いかける編集者(六角精児)が、乳飲み子をだっこした妻(宮﨑あおい)と出くわすと、子供(吉本菜穂子)が巨大化してほぼ成人に。バイクに乗って自分の世界へと飛び出していく子供。
中華料理店バーミアの店長(六角精児)がアルバイトの高橋(吉本菜穂子)の二の腕をつかんで、いきなりフォーリンラヴ。店を天守閣に作り変えて環七を移動し、しまいには空を飛んじゃう無茶な展開。ミニチュアの町並みを壁のように立たせて、舞台中央に寝転がった店長が飛んでいるように見せる演出は、福原さんならではですよね。
床に仕込んだ板を持ち上げて、車との衝突シーンを創ったり、自転車の神様が登場したのも楽しかったです。照明の効果が印象に残ります。ラストのミラーボールが良かった。
「今さら全部自分のせいだなんて思ったら(つらくて)これから生きていけない。だから全部他人のせいだ!」
「(夜が明けたらマンガを描くと、自転車の神様に)約束しちゃったけど、自分の意思で、逃げる!」
≪東京、兵庫、神奈川≫
出演:宮﨑あおい 吉本菜穂子 六角精児
脚本・演出/福原充則(ピチチ5) 美術/加藤ちか 照明/関口裕二(balance,inc.DESIGN) 音響/高塩顕 衣裳/藤井牧子 ヘアメイク/李賢一 演出助手/田中麻衣子 舞台監督/原田譲二 宣伝/る・ひまわり 宣伝美術・宣伝映像/トリプル・オー 宣伝写真/永石勝(トリプルオー) 制作協力/恒吉竹成(ノックス) 制作/笠原健一(ハウフルス) プロデューサー/熊谷信也(TBSテレビ) 主催・企画制作/TBS
【発売日】2008/12/06 7,500円(全席指定・税込)
http://www.sonoyoake.com/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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