昨年の『大恋愛』から続いている企画の集大成。阿部和重さんの芥川賞受賞小説「グランド・フィナーレ」を岩井秀人さん(ハイバイ)が脚本化し、富永まいさんが演出されます。出演者は『大恋愛』同様にオーディションで選ばれました。上演時間は約1時間40分。
ロビーで戯曲本が販売されていました。岩井さんの脚本と、それをもとにした富永さんの上演台本の両方が収録されていて500円。チラシがブックカバーになるという優れモノでした♪同じく阿部和重作品を舞台化した『ニッポニアニッポン』とのつながりもあるんですよね(⇒チラシデザインを手がけた京さんのブログより)。
※2/11(祝)の夜にトークに出演させていただきました(⇒告知エントリー)。
⇒原作本の紹介
⇒グランド・フィナーレ座談会1、2、3 ※長い!読み応えあり!(笑)
⇒CoRich舞台芸術!『グランド・フィナーレ』
≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより一部抜粋
2001年。
あの同時多発テロののち、はじめて訪れたクリスマス。
日本。そして、「わたし」。
なぜ「わたし」はすべてを失ったのか? 「わたし」の異常な愛情? または「わたし」は如何にして心配するのを止めて二人の少女を愛するようになったか? それは、「グランド・フィナーレ」という名の終わりの始まり?
演劇界へ彗星にのって現れた映像作家富永まいの演出、演劇人に超新星が現れたと語られる岩井秀人の脚本という綺羅星なコラボにより、初の舞台化に挑む衝撃満載の芥川賞受賞作。
≪ここまで≫
情報量が多くて、シーンの密度が濃くて、処理しきれないままに次々と、富永さんならではの毒気のあるメルヘン世界が展開されました。上演時間は1時間40分だったのですが、私には2時間半から3時間の重みが・・・!(苦笑)
衣裳の脱ぎ着で演じる人物が変わったり、舞台を囲むプロセニアム(額縁)を使って現実と妄想を分けたり、演出は重層的。装置も衣裳もすごく豪華で、詳細へのこだわりが素晴らしい!⇒富永さんの映画「ウール100%」
原作を読んでいたので、岩井さんの大胆な脚色にも驚かされました。主人公の男・佐藤の分身(?)が大勢登場し、ずっと舞台上に居て内面を吐露したり、彼に罵声を放ったり、さまざまに刺激します。こんなお芝居(脚本)になるとは全く予想していなかったですね・・・。一人称で語られていた世界が分身によって多重多層になり、何が本当なのか嘘なのかわからない曖昧で不安定なもの(=現実)になりますが、最終的にはポイントとなるセリフ・出来事にギュっとしぼりこまれていきました。私は原作を読んで“佐藤”にムカついたりしていたのですが、なぜ私がムカついたのかがわかった気がしました。
富永さんは松田洋二さん演じる“佐藤”に対して嫌悪感や怒りを強く持っていらっしゃるようで(座談会のレポートより)、それらは冒頭からビシバシ伝わってきました。でも私としては、松田さんの可愛らしさをもっと利用してくれても良かったんじゃないかな~と思いましたね。「佐藤をあんなに苦しめるなんて佐藤の妻はどんな悪者なんだろう?」と思わせておいて、それをひっくり返してくれた方がインパクトがあったんじゃないかしら。原作もその狙いがあったと思いますし。
ここからネタバレします。レビューは後ほどアップ予定。
出演:松田洋治、上田遥、大本淳、加成しゅう、白神馨之、竹内萌佳、田中夢(遊園地再生事業団)、谷水朋花、夏目慎也(東京デスロック)、村島智之
原作:阿部和重 脚本:岩井秀人 演出:富永まい 振付アレンジ:益子あんな 企画・制作:富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ 主催:財団法人富士見市施設管理公社 助成:財団法人地域創造
前売・当日 一般2,500円 学生2,000円 プレビュー公演一律 2,000円(日時指定・全席自由)※未就学児の入場はご遠慮いただいておりますので、託児サービスをご利用ください。
http://www.city.fujimi.saitama.jp/culture/
http://kirarifes8.exblog.jp/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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