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Shinobu's theatre review
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2009年03月04日

中野成樹+フランケンズ『44マクベス』02/18-23 d-倉庫

 中野成樹さんが誤意訳・演出される中野成樹+フランケンズ(略称:ナカフラ)の本公演です。ナカフラがシェイクスクピアの『マクベス』をやったらどうなるか?チラシ表面の漫画がすっごく面白かったので、期待が高まりました。それに出演者がいつもより大人数で、しかも豪華な面々なんですよね。

 『マクベス』の流れは残したものの、大胆に脚色されていました。上演時間が2時間以上あったのも意外。
 d-倉庫に初めて伺ったのですが、素敵な劇場ですね!ロビーもゆったりだし、劇場も天井が高いし、また行きたいです。

 ⇒wonderland「中野成樹+フランケンズ『44マクベス』(クロスレビュー)
 ⇒CoRich舞台芸術!『44マクベス

 舞台奥に2階建ての装置が建て込まれています。パっと見は大きな棚のよう。1階に4部屋、その上に4部屋で計8つの部屋が、将棋のマスのように並んでいます。棚の前方に四角く広がるステージ床には、鮮やかな緑色のマットが敷かれていて、ゴルフのグリーンみたい。よく見ると装置全体が真ん中で左右シンメトリーになっています。

 マクベスを演じるのは石橋志保さん。女優さんがマクベスを演じる時点で、幕開けからいわゆる『マクベス』を見ている気持ちではなくなりました。何が起こるかわからない、何が起きてもいい、という心構えができました。マクベスに予言する魔女の1人が男性(村上聡一)だったり、予言もなんだかいい加減だし(笑)。
 私の記憶の中にある、いかにもシェイクスピアらしい『マクベス』との違いを楽しみながら眺めていきましたが、自分がぐっとお芝居の中に入っていく感覚はあまりなく、少々退屈もしました。

 終演後のトークでやっと、今自分が観た作品と演出意図との接点がわかった気がしました。トークがなかったら、ぼんやりした印象になっていたかもしれません。マクベスやマクベス夫人の「王になりたい」という欲望が、今の私たちにはあまりに現実離れしたものであり、それを無視せずに、『マクベス』を自分たちの感覚に引き寄せて演出したのだと思うと、なるほどと腑に落ちました。

 ここからネタバレします。

 マクベスが篭城したまま自ら滅び行くのを、敵がじっと見守るというエンディングは意外でした。彼らはバーナムの森を切り倒して、どんどん切り開いて城へと進み、マクベスとマクベス夫人(野島真理)を土(緑色の床)の中に埋葬します。新たに開かれた更地に、彼らは一体なにを築こうとしているのか。ただ闇雲に“くさいものに蓋”をして、歴史を塗り込めていくように見えました。

 門番(中村たかし)のシーンがものすごく長くなっていて、一人でしゃべり続けるセリフがとても面白かったです。原作ではチラっとしか登場しない人物ですよね(笑)。

 増刷された新チラシは最後の妻のセリフが変わってますね(「ほな ウチがサクっとやろか?」→「は?今さら何をおっしゃてるの?」)。私は最初の方が好き。「おっしゃてるの?」は「おっしゃってるの?」の間違いかしら?

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:中野成樹 多田淳之介(東京デスロック) 司会:長島確

 初日のゲストが翻訳家の松岡和子さんだったそうで、その衝撃(?)が2日目も残っているようでした。松岡さんはシェイクスピアの専門家ですものね。下記は印象にのこった言葉です。

 中野「松岡さんが『シェイクスピアは、人間を書き分けている』おっしゃっていました。」
 中野「ドラマトゥルグの長島さんと3ヶ月かけて脚本を練ってきて、起承転結がちゃんとしてないなと思ったんだけど、松岡さんに『シェイクスピアはそんなの(起承転結なんて)狙ってないから』と断言されちゃって。」
 中野「王道をやることと、僕のやることとは、ルールが違うと思った。」

 多田「僕にとっては、脚本は設計図。やるべきことが書いてあるもの。」
 中野「多田くんはセリフを一切変えないけれど、設定は変えるよね。僕は設定だけをそのままにして、セリフを変えます。やり方はいわば正反対なんだけど、同じことをやっている人だと思った。」

 中野「マクベスの『王になりたい』という欲望が、今の自分にはわからない(そんな欲はない。しかも人を殺してまでの)。」

"Forty Four Macbeth"
出演:フランケンズ(村上聡一、福田毅、野島真理、石橋志保) 中村彰男(文学座) 永井秀樹(青年団) 伊原農(ハイリンド) ゴウタケヒロ(POOL-5) 篠崎高志(POOL-5) 坂しおり(メガデルヅ) 中村たかし(宇宙レコード) 金谷奈緒 北川麗 オオカミ男(竹田英司、斎藤淳子、中川春香)
脚本:W・シェイクスクピア「マクベス」より 誤意訳・演出:中野成樹 ドラマトゥルク:長島確 美術:細川浩伸(急な坂アトリエ)  音楽:大谷能生、竹下亮 照明:高橋英哉 音響:山下菜美子 舞台監督:山口英峰 宣伝美術:青木正(Thoms Alex) チラシマンガ:青山景 演出助手:田中佑弥 制作:渡辺美帆子、ゴ・フランケンズ 協力:にしすがも創造舎 特別協力:急な坂スタジオ 助成:財団法人 セゾン文化財団 主催:中野成樹+フランケンズ
【発売日】2009/01/07 ☆S席 3800円(当日4000円)なにはともあれステージの全貌が見えるお席です。 ☆A席 3000円(当日3200円)「見えたり見えなかったり」のナカフラ定番演出が堪能できるお席です。
http://frankens.net/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2009年03月04日 15:54 | TrackBack (0)