古川貴義さんが脚本・演出される箱庭円舞曲の新作です。意味深げなタイトルがいつも気になっていた劇団ですが、本公演は初見。古川さんが5月にイプセン作『ヘッダ・ガブラー』を演出されるという情報を得て、千秋楽に滑り込みました。
ポップな作風を想像していたのですが、意外にしっかり作られた社会派ストレート・プレイでした。メガネの話じゃなくて農家の話だった(笑)。たしかにチラシの写真は農道のようですね。
⇒CoRich舞台芸術!『メガネに騙された』
≪あらすじ≫
東京から栃木県のとある農村にやってきた若いカップル(棚橋建太・原田優理子)。移住して農業をはじめようと考えているのだ。神津兄妹(爺隠才蔵・片桐はづき)が暮らす一軒家の玄関は、そんな農業初心者を支援するセンターになっている。農協所有のそのスペースで、村民と来訪者の交流が始まる。
≪ここまで≫
少し古びた一軒家の具象美術。広い目の玄関と畳が敷かれた居間で、その集落の現実が暴かれていきます。
あつかましく他人の善意を期待していたら、面白いほどに裏切られたり。騙したつもりが騙されたり。
派手めの音楽と照明は私の肌にはあまり合わなかったけれど、最後まで軽快に観られたという点では効果的だったのかもしれませんね。
ここからネタバレします。
前説(古川貴義)の後に装置が動いて驚きました。小さな和室だけかと思っていたら、玄関がゴソっと現れた。面白かったな~。OFF OFFシアターの舞台上の柱が全く気にならない、工夫が凝らされた美術でした。
「私、河童なんです」ととんでもない身の上話をしはじめて、「だから浄水器が必要なの」と商品を売りつけようとする、ふてぶてしさ!(笑) 聞いてる方が「本当にこの人、河童なのかも・・・」と信じてしまいそうになるのが可笑しいです。でも人間って、明らかに嘘だとわかっていても信じたくなる性質がありますよね。
神津(兄)が農協の嘘(ネギを群馬産と偽装)を暴き、復讐を成し遂げます。もうこうなってきたら色々とドロ沼。役者さんの演技がポーズに見えることが多かったので、辛らつなストーリーの割りに、全体はゆるい目な気がしました(そういう演出意図かもしれませんが)。もっと深くどす黒くするとか、ポップに抽象化するとかが、私好みかも。
ミミズ入りの土を食べちゃう女を演じた、原田優理子さんの演技に魅かれました。そういえばこの女も、「何でもやる」と言ってた男(棚橋建太)に騙されたんだよな~。
【下北沢演劇祭参加作品】
出演:小野哲史 棚橋建太 須貝英 爺隠才蔵 村上直子(ホチキス) 片桐はづき 伊藤一将(メタリック農家) 高木充子(La compagnie An) 玉置玲央(柿喰う客) 原田優理子(トリのマーク) ヤナカケイスケ
脚本・演出・前説:古川貴義 舞台美術:稲田美智子 照明:工藤雅弘(Fantasista?ish.) 音響:岡田 悠(One-Space) 小道具:栗山佳代子 衣裳:箱庭箱 舞台監督:中西隆雄 野菜:山内翔 宣伝美術:Box-Garden House イラスト:須山奈津希 演出助手:陶山浩乃(劇団競泳水着) 制作:安田有希子 当日運営:伊藤静香(Karte)
前売:2,500円 / 当日:2,800円 18(水)の19:30の回、19日(木)、23日(月)、27日(金)の14:30の回は、初回割引/平日昼公演割引:前売:2,200円 / 当日2,500円
http://hakoniwa-e.com/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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