アトリエ・ダンカンがプロデュースする小説の舞台化第2弾(第1弾は残念ながら見逃しています)。初日に伺いました。
2007年の本屋大賞で第2位に輝き、第20回山本周五郎賞を受賞した森見登美彦さんの小説「夜は短し歩けよ乙女」(角川書店刊)を、劇団桟敷童子の東憲司さんが脚本化し、演出もされます。上演時間は約2時間35分(途中休憩15分を含む)。
と~っても楽しかった!!奇想天外な物語を演劇らしいにぎにぎしさで、元気いっぱいに立体化してくださっていました。オープニングから一気に幸せになって、途中休憩の時にロビーで販売されていた原作本↓を買ってしまいました。チラっと読む限りでは、原作にかなり忠実のようです。
⇒インタビュー(渡部豪太&田中美保)
⇒CoRich舞台芸術!『夜は短し歩けよ乙女』
≪あらすじ≫ 公式サイトより。改行を一部変更。
私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。吉田神社で、出町柳駅で、百万遍交差点で、銀閣寺で、哲学の道で、「偶然の」出逢いは頻発した。我ながらあからさまに怪しいのである。そんなにあらゆる街角に、俺が立っているはずがない。「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど繰り返す私に、彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。
「あ!先輩、奇遇ですねえ!」
…「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」。
二人を待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった。天然キャラ女子に萌える男子の純情!キュートで奇抜な恋愛模様in京都
京都でのある一年を、あるいは四季を通し語られる、いまどきの若者と程遠い、なんともじれったい恋の物語、そして、京都という不可思議な街と奇奇怪怪な登場人物達が物語りに花を添える。
≪ここまで≫
前知識ゼロで伺ったものですから、奇怪な登場人物に最初は少々戸惑いました(笑)。でもすぐに、アリエナイ妄想の世界に、迷いなくどしどしと突進していくことが出来ました。全身で演じてくださる役者さんと、手作りの演劇の楽しさを堂々と見せていく演出のおかげで、舞台上の人々としっかりと共犯関係を結ぶことができたからではないかと思います。
純粋なときめきに満ちた恋愛ファンタジーのど真ん中を進みつつ、怪奇小説のようなおどろおどろしいムードもあり、冒険小説にありそうなスリルやアクションもあり、“御都合主義”をケレン味たっぷりにやりきってくださいます。
照明が素晴らしかった~。ムービングや目くらまし(客席に向かって斜め下方向に光を当てて、スモークで舞台上が見えなくなる)が効果的で、色合いはパッと派手であると同時に、どことなく物憂げで恐ろしげでもありました。
美術はいかにも「セット」とわかるデザインで、役者さんの手で動かすダイナミックな演出が生きていました。
音楽も私にはツボでした。よく知られている有名な曲を、色んなバージョンで使っていらして、その曲の意味もフィットしていたと思います。
乙女の衣裳が素敵だな~と思ったら、衣裳協力にBEAMSがクレジットされているんですね。
語り部でもある先輩役の渡部豪太さん。明るくてひたむきで、冒頭からすっかり魅せてくださいました。
乙女役の田中美保さんは初舞台ならではの初々しさ。相当な“不思議ちゃん”を清純さを前面に出して演じ、ヒロインの役割を果たされていたと思います。
登場してくれるのが楽しみだったのは、学園祭事務局長役を演じた宮菜穂子さん。きびきびしたダンス的な動きが面白かったです。
ここからネタバレします。
春は夜の先斗町、夏は古本市(「深海魚」を連想させる緑色の照明が美しかったです)、秋は学園祭、冬は風邪が猛威を振るう町。
家やビルの絵が描かれた白黒のパネルを移動させて転換します。李白翁(ベンガル)の三階建てのバス(?)も具象で登場。
音楽はパッヘルベルの「カノン」が何度も流れました。繰り返す夢のイメージと重なりました。
男役を女優さんが演じるのがとても良かったです。例えば宮菜穂子さんが学園祭事務局長役を演じたおかげで、エッチなこともむやみに際立つことなく、世界の中にうまく溶け込んでいたように思います。
声をそろえてセリフを群読するのも好き。役者さんが気持ちと声を合わせているのって、やっぱりわくわくします。
李白翁(ベンガル)が振舞うニセデンキブランが飲みたくなっちゃった(笑)。
先輩と乙女の、月夜の飛行シーンは泣けました。鯉が泳いでいたのも可愛い。最後の花吹雪も大量で嬉しかったです。私の気持ちも大団円でした。
≪東京、大阪、仙台、京都、名古屋≫
出演:田中美保(黒髪の乙女)/渡部豪太(先輩)/ベンガル(李白翁)/辺見えみり(羽貫)/綾田俊樹(東堂)/高山都(少年・古本市の神様)/西村直人 (パンツ総番長)/宮菜穂子(学園祭事務局長)/原口健太郎(樋口)/板垣桃子(須田紀子)/工藤和馬/島守杏介/長友なつみ/伊原農/桑原勝行/深津紀暁/古味哲之甫/山本あさみ /新井結香/ヨネクラカオリ
原作:森見登美彦(「夜は短し歩けよ乙女」(角川書店刊)2007年本屋大賞2位・第20回山本周五郎賞受賞) 脚本・演出:東憲司(劇団桟敷童子) 美術:大津英輔 照明:相良浩司 音響:藤田赤目 衣裳 畑久美子 ヘアメイク:宮内宏明 音楽:川崎貴人 舞台監督:松下清永+鴉屋 演出助手:松倉良子 イラスト:中村佑介 宣伝小道具:高津映画装飾 宣伝写真:加藤孝 宣伝美術:立川明 運営:サンライズプロモーション東京 宣伝:る・ひまわり テレビ朝日:中村雪浩 吉原智美 票券:後藤まどか 制作:島袋佳 外山博美 アシスタントプロデューサー:佐々木弘毅 プロデューサー:池田道彦 企画協力:角川書店 衣装協力:BEAMS 主催:テレビ朝 企画製作:アトリエ・ダンカン
チケット料金:S席8,500円/A席5,000円(全席指定・税込)※未就学児童の方は入場をお断りする事がございます
http://www.duncan.co.jp/web/stage/otome/index.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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