ドイツのブレーメンで現在ロングラン中のミュージカル『マリー・アントワネット』の演出を手がけられた、栗山民也さんにインタビューをさせていただきました。
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『マリー・アントワネット』は、小説「王妃マリー・アントワネット」(遠藤周作著)をもとに、ミヒャエル・クンツェさんが脚本・作詞、シルヴェスター・リーヴァイさんが作曲をした東宝のオリジナル・ミュージカルです。2006年初演関連記事⇒1、2、3、
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日本初の快挙となった記念すべき公演の創作現場や、ドイツのミュージカル俳優について、そして、栗山さんのこれからについて語っていただきました。
栗山「ドイツの話をすると、2日間ぐらいしゃべりっぱなしになるかもしれない(笑)。今でも目をつぶると、一瞬の内にあのブレーメンの稽古場の中に居るような気持ちになる。それぐらい、僕にとって熱い振動だったんですよ。強烈な体験でした。」
■ミュージカル『マリー・アントワネット』について ※少々ネタバレあり。
―『マリー・アントワネット』世界初演は、2006年11月に帝国劇場で幕を開けました。東京、福岡、大阪をまわって再び東京凱旋公演もあった、大きなプロダクションでした。
栗山「この作品は小説の忠実なる舞台化ではありません。タイトルロールのマリー・アントワネットだけでなく、マルグリッド・アルノーという、マリーとは全く違うタイプの女性も主軸になります。最高位の女と最底辺の女をもうけて、最後には2人が同じ地平に並ぶという。原作からいかにインスピレーションを拾い、広げるかが重要でした。」
―最後は「自由!」という言葉で終幕しました。私はとても感動したのですが、同時に意外でもありました。ミュージカルによくある大団円ではなかったし、たしか音楽も不協和音でしたよね。⇒「ハイライト・ライヴ録音盤CD」は購入可能
栗山「これに関してはクンツェさんともかなり議論しました。フランス革命とは、人間がいかに自由を獲得するかという歴史だった。だから最終的に“自由”という言葉で終わろうと決めたんです。人間の歴史の中で繰り返される普遍的なるものとしての、いわゆる“自由”なんですよね。それはイラク戦争であってもいいし、アメリカの貿易センタービルの崩壊であってもいい。ある歴史において人間が獲得するのは、人間としての権利、つまり自由である、と。だからそんなにハッピーに終わるわけはなくって。いろんな問題を山積みにしたままの、その中での“自由”ですから。」
■ドイツ版と日本版との違い
―ドイツ公演が実現することになった、最初のきっかけを教えてください。
栗山「東京初演の初日に、テアター・ブレーメン(ドイツ・ブレーメンの公立劇場)の総芸術監督ハンス・ヨアヒム・フライさんがいらしていたんです。終演後のパーティーで、彼がクンツェさんと一緒に僕の方に寄ってきて、勢いよく話しかけてきたんですよ。英語で『やるからね、これ、ヨーロッパで!』と。初日が開いたばかりだったし、最初は『本当なの?』と半信半疑だったんですが(笑)、ドイツではしっかりと準備が進められていた。その後、東宝からどんどんと進捗状況の連絡が届きました。」
―ドイツでの上演に向けて、脚本や演出などは変更されたのでしょうか。
栗山「この2年の間に、僕は日本での仕事の合間を縫ってドイツのクンツェさんの家にも行って、台本の直しをしました。だから大きく変わりましたよ。たとえばボンマルシェはほとんど出てこない。カリオストロはもっとひょうきんな男になって(笑)、狂言回しも1人でがんばってもらっています。マリーの歌も2曲ぐらい増えたかな。脚本変更にともなう音楽の変更ももちろんあるし、新しいスタッフ(美術、衣裳、照明など)ですからね、全てに手が入っていますよ。」
■初日翌日には54もの劇評が出た
―多数の劇評が出たそうですね。
栗山「ええ、その量と早さには驚きました。初日だけ観て日本に帰ってきたら、クンツェさんからメールが届いていて、件名に『勝利』って書いてあったんです(笑)。『とにかくメディアの反応がものすごくいい』と。初日翌日に54の劇評が出て、『自分の今までの演劇体験でもこんなことはなかった。ほとんどが絶賛である』と。」
―初日の翌日に、そんなに沢山の劇評が出たんですか?
栗山「そうです。新聞や、その他のさまざまな小冊子などを含めて計54個。その内のある劇評を、200ほどの地域に配信したみたいです。あの初日にはベルリン、ハンブルク、ミュンヘンなどの多くの地域から、大勢の劇評家が観に来ていたんだと、その時に知りました。劇評のことなんて全く頭になかったですからね。前日のプレビューでも大変なことが起こったし・・・(苦笑)。」
栗山民也ロングインタビュー②につづく!
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★インタビュー実施日:2009年3月1日 写真撮影日:2009年3月2日
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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