ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの新作、ナイロン100℃の劇団本公演です。毎月のようにケラさんの芝居を観ているような気がします(←少々おおげさ)。
「こんなにハイペースで作品を発表されると、観る方だって結構大変なんですよ~!」なんて言いたくなる気持ちをすっ飛ばす、素晴らしい作品でした。上演時間は約3時間(途中休憩10分を含む)。
⇒CoRich舞台芸術!『神様とその他の変種』
≪あらすじ≫
三階建ての古い家屋に暮らすサトウ家の人々。ほぼ不登校になっている息子ケンタロウ(みのすけ)と、過保護な母親(峯村リエ)。義理の母(植木夏十)はボケはじめており、夫(山内圭哉)は見かけとは裏腹に、妻に従順なタイプのようだ。
向かいにある小さな動物園の飼育係(大倉孝二)と、隣に住むおしゃべりな主婦(長田奈麻)もたびたび家を訪れる。新しい家庭教師(水野美紀)が来る日、たまたまケンタロウの担任教師(藤田秀世)もやってきていた。
≪ここまで≫
不毛の荒野に建った、屋根のない牢屋のような教会で、不器用な神々がおろおろ、ヨロヨロと、なんとか踏ん張りながら生きていました。それぞれに夢を見て、挫折して。
私は何度も大笑いして、何度も涙を流しました。ケラさん、すごすぎる。とってもお勧めです。全席指定6,800円なら安いと思っちゃう。
オープニングも衝撃的でした。色々観てきたつもりですが、宇宙遊泳をしているような心地がしたのは初めて。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
ケンタロウ(みのすけ)はクラスメイトの鈴木幸男君の顔を木の棒で殴り、前歯を2本折る大怪我をさせました。幸男の両親(山崎一&犬山イヌコ)が乗り込んでくるのですが、サトウ家の夫婦(山内圭哉&峯村リエ)は息子は悪くないし謝る必要もないと言い放ちます。それも全く動じず、悪びれずに。
登場人物たちは、誰もがわがままでものすごく不器用で、笑っちゃうほどみっともない人々でした。それは私を含む現代日本人だと思います。
どうしたらいいかわからないから、謝る。ただひたすら、謝る。願いなんて叶うわけはないし、特に強い望みがあるわけでもないから、他人の言うことを全て聞いて、言うとおりにする。やられたらやり返さない。やられっぱなしにして、そのままやり過ごそうとする。他人はお金を渡せば言うことを聞いてくれるから、何でもお金で解決しようとする。それでも平穏に生きていけないなら、邪魔な他人を殺してしまう。
祖母(植木夏十)が死んでから言った遺言「またカレーかよ!」をケンタロウ(みのすけ)が言った時、なんとも言えない気持ちになって泣けてきました。人間はみんな絶望的に愚かなんだけれど、大勢でバカ話をして笑いあったりできるなら、それは単純に楽しいし幸せです。
何もかもが明るみに出てしまった後、皆は祈ります。生きている息子(ケンタロウ)に、自殺した息子(鈴木幸男)に、未来の自分に。祈りって誰に対してでも、何に対してでも、同じですね。だったら祈る対象はすべて神なんだと思います。
語り部で預言者でもある神様(廣川三憲)は、浮浪者で下着泥棒。
家の中にだけ、たたきつけるように雨が降り、誰もがびしょぬれになる中、終幕。
ナイロン100℃33rd SESSION "GODS AND FREAKS" ≪東京、愛知、大阪、広島、福岡≫
出演:犬山イヌコ、みのすけ、峯村リエ、大倉孝二、廣川三憲、長田奈麻、藤田秀世、植木夏十、水野美紀、山内圭哉、山崎一、猪岐英人、白石遥
脚本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ 音楽:朝比奈尚行 美術:BOKETA 照明:関口裕二(balance,inc.DESIGN) 音響:水越佳一〔モックサウンド〕 映像:上田大樹 荒川ヒロキ 衣裳:前田文子 ヘアメイク:武井優子 演出助手:相田剛志 舞台監督:宇佐美雅人(バックステージ) 大道具:唐崎修(smile stage) 音楽助手:鈴木光介 歌唱指導:安澤干草 ステージング:長田奈麻 映像助手:大鹿奈穂 記録スチール:引地信彦 大道具製作:C-COM舞台装置 テルミック 美術工房拓人 小道具:石﨑三喜(高津映画装飾) 特殊効果:糸田正志(特効) 宣伝美術:雨堤干砂子(wagon) 宣伝写真:江隅麗志 宣伝衣裳:堀口健一(フロムアップ) 宣伝ヘアメイク:山本絵里子 浅沼靖 宣伝ヘアメイク協力:MAKE UP FOREVER プロデューサー:高橋典子 制作:仲谷正資 北里美織子 太齋志保 佐々木悠 永田聖子 広報宣伝:米田律子 製作:北牧裕幸 企画・製作:シリーウォーク キューブ
全席指定6,800円
http://www.sillywalk.com/nylon/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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