風琴工房は詩森ろばさんが作・演出される劇団です。『無頼茫々(ぶらいぼうぼう)』は史実を題材に大正時代の新聞記者たちを描く、真摯で熱い芝居でした。プレビューを拝見。上演時間は約2時間。
風琴工房を観に行く時はいつも「勉強をさせてもらおう」という気になってます。今回もまた、その期待は裏切られず。
公演公式サイトは役者紹介から演出記録ブログ、稽古場ブログ、お悩み相談室、写真館など、とても充実しています。
⇒CoRich舞台芸術!『無頼茫々』
≪あらすじ≫ CoRich舞台芸術!より。(役者名)を追加。
時は大正。気骨のジャーナリスト陸羯南に憧れる堂海栄吾(浅倉洋介)は、理想を抱いて日の出新聞社の門を叩く。
しかし、そこで堂海が見たものは、「売れる新聞」であることを一義とし、政党のタイコモチ的な存在と成り下がった新聞の姿であった。
堂海は、創社精神を取り戻すべく立ち上がる。最初は孤軍奮闘を強いられた戦いも、下層労働者に深く関わる変り種記者・村嶋帰一(根津茂尚)や、女性記者・高村紅子(小山待子)などを味方に得て前へ進みだす。
上からの圧迫、発行停止処分など、言論の自由を脅かす社会的制裁に負けず堂海たちは、真の報道の意味とはなにかを求め、戦いはじめる。
≪ここまで≫
木目が美しい非常にシンプルなステージで、袴や着物姿の大正の人々が闊歩します。
プレビューだったので、役者さんの演技やアンサンブルについては、ぎこちなさも感じましたが、脚本に書かれたせりふに真剣に向き合って、腹の底から納得した状態で語ってくれる(ように見える)方も多く、自らの信念に従って行動を起こした大正の日本人の心意気を、肌で感じることができました。
着物の衣裳を贅沢に着替えてくださって眼福でした。「お芝居を観たな~」という実感が沸きました。
ここからネタバレします。
新聞は、報道は、言葉。言葉が死んだら報道は死ぬ。
詩森さんがパンフレットにも書かれていたことですが、「報道されなかったことは、なかったことになる」。けれど、「報道されたことが、事実だとは限らない」こともあり得るんですよね。私たちが学習してきた歴史だって、残念ながら不確かなものであることは否めません。
でも文字として残された言葉の中に、どのような形であれ、それを書いた人間の真実があるはずだと信じて、自分の力で読み取ろうとすることが大事だと思いました。劇中に出てきた大阪朝日新聞の謝罪文、堂海らが発行した白紙の号外が胸に残ります。
風琴工房code27
出演:浅倉洋介、津田湘子、渡邉真二、小山待子、多根周作(ハイリンド)、はざまみゆき(ハイリンド)、根津茂尚(あひるなんちゃら)、青木柳葉魚(タテヨコ企画)、洪明花(ユニークポイント)、地獄谷三番地(劇団上田)、前田暁彦、五十嵐勇、上野理子
【脚本・演出】詩森ろば 【音響】 青木タクヘイ(STAGE OFFICE)【照明】榊美香(有限会社 アイズ)【美術製作】福田暢秀(F.A.T STUDIO)【舞台監督】小野八着(Jet Stream)【舞台美術・衣装・宣伝美術・宣伝写真】詩森ろば【制作】森岡鞠子【票券管理】北村耕治(猫の会)【企画製作】ウィンディ・ハープ・オフィス
【発売日】2009/03/28 【全席指定】一般 前売3200円 当日3500円 障害者 1500円(前売・当日共) 学生 2500円(前売のみ) ペア券 5600円(前売のみ) プレビュー 前売2000円 当日2500円 ※一般前売・プレビュー以外は劇団での取扱いのみとなります。
http://www.windyharp.org/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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