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2009年05月18日

【写真レポート】SPAC「Shizuoka春の芸術祭2009」記者発表05/18東京日仏学院エスパス・イマージュ

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チラシ

 静岡舞台芸術センター(SPAC)主催「Shizuoka春の芸術祭2009」は、今年で10年目を迎える国際的な舞台芸術の祭典です。

 今回は世界8カ国から新作を含む9演目(演劇、ダンス、映画)が上演されます。テーマは「帰りなんいざ古典へ!世界まさに荒れなんとす!」。シェイクスピア、モリエール、紫式部、グリム兄弟が揃ったチラシが素敵ですよね♪

 芸術総監督の宮城聰さんが、9演目をひとつずつ詳しく紹介してくださいました。どれもすっごく面白そう!皆さん、6月の週末は静岡でお会いしましょう♪
 ※早々に完売した演目もあります。ご予約はお早めにどうぞ!

 ●SPAC「Shizuoka春の芸術祭2009
  2009年6/6(土)~7/5(日)
  会場:静岡芸術劇場、屋内ホール「楕円堂」、
     野外劇場「有度」、稽古場棟「BOXシアター」

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宮城聰さん

 宮城「世の中にはありとあらゆる情報が大量に溢れていて、いつでもどこでもすぐに情報が流れ込んでくる状況にあります。でもそれらはマスメディアによってフィルターにかけられ、咀嚼しやすく加工されたものです。
 『Shizuoka春の芸術祭2009』のラインアップには、日本ではあまり紹介されていないものを選びました。フィルターから漏れているものを紹介することで、世界にはもっと色んな人がいるんだということを観客にわかってもらいたい。そう簡単には咀嚼できなくて、飲み下す途中で止まってしまうような違和感こそが、自分を変えてくれる契機になる。それが“他者”の良さであり魅力だと思います。」

 宮城「かまびすしく“100年に1度の不況”“未曾有の不況”などと喧伝するものいいには、少々鼻白む気持ちがします。こんな大変な時にこそ、素晴らしい戯曲が書かれてきたのです。
 人間がかつて危機に対面した時、どんな風にあえいで、どうやって戦って、乗り切ったのか。今回の芸術祭では古典を通じて、人間が戦った痕跡、傷跡を観ることになるでしょう。人間は昔も今と同じように戦い続けてきた。そんな演劇を観て勇気や元気をもらって欲しい。」

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■『ふたりの女~唐版・葵上~
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 宮城「唐十郎さんの戯曲は日本の奇跡といえるものがたくさんあります。世界の観客に唐さんの戯曲を紹介したい。だから日本語上演ですが英語の字幕付きです。この作品は野外劇場で上演します。原始の森の中で、唐さんの戯曲の幻想性を楽しんでいただきたい。」


■『プ・レ・ス
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 宮城「ピエール・リガルさんのダンスは、何もかもやりつくしてしまったような、いわば大きな壁にぶつかった状態のコンテンポラリー・ダンスの世界で、その壁を突破できるのではないかと思わせてくれた。彼の作品はメッセージがとてもはっきりしています。これから先、(雄弁なメッセージ性は)とても大切なことだと思います。」


『半人半獅子ヴィシュヌ神』『シータ姫、大地に還る』 ※前売り完売!
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 宮城「踊り手のカピラ・ヴェヌさんは、2000年前に書かれたインドの演劇舞踊書のすべてを、20代で獲得された世界の宝のような方。カピラさんの師匠が亡くなったばかりなので、名実ともに世界の頂点と言えるでしょう。」


■『ブラスティッド
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 宮城「サラ・ケインの戯曲の中でも設定やストーリーなど、具象性の有る作品です。フランス人演出家のダニエル・ジャンヌトーさんが静岡に滞在して、オーディションで選ばれた日本人俳優とともに製作してくださっています。」

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ダニエル・ジャンヌトーさん

 ジャンヌトー「『ブラスティッド』は1995年に書かれて初演された、イギリスの劇作家サラ・ケインの処女作です。もう10年以上経っていますが、生き生きと現在を映す傑作であり、重要な作品です。ホモセクシュアルや死を正面から語り、人間を追求していきます。イギリスでの初演時はスキャンダルだと言われました。卑俗で暴力的でシンプルだと解釈されがちですが、実は教養があって構造的な戯曲です。複合的で、深くて、色々な意味を持っています。
 シェイクスピア、ベケット、ブレヒト、イプセンなどの引用も含まれており、サラ・ケインは25歳でそんな戯曲を読んでいた知性のある女性でした。教養の豊かさ、人間の豊かさがこの作品には盛り込まれている。インテリの読み方もできる、臓物(ぞうもつ)に響く作品です。今回は新キャストを迎えた新製作で、劇場も違いますので、演出も全く違うものになるでしょう。」


■『マルコ・ポーロ~東方見聞録のヒミツ~
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 宮城「台湾の指人形劇です。指人形劇は中国の福建省から台湾に伝わったという文献を読みました。100年かけて台湾で洗練されて、今では伝統芸能と言っていい境地に到達しています。
 マルコ・ポーロがイタリアから中国に来て恋をするというストーリーで、東方見聞録の成立の裏話が描かれます。オランダ人が戯曲提供していますので、作品自体も東洋と西洋が出会ってできたものなのです。」


■『じゃじゃ馬ならし
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 宮城「オランダで一番人気の劇団の大ヒット作です。アムステルダムでは上演が決まるとすぐにソールド・アウト。今のベルギー人ディレクターが就任してから、海外でも有名になりました。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで、ヨーロッパでひっぱりだこになっています。
 リアリズムの演技手法ではありますが、英国とは違って、途方もなくエネルギッシュ。すさまじい熱量を使った、まさに体当たりの芝居です。しかも洗練されていて、かっこよく決まる。R-18にした方がいいかもしれない場面もありますが(笑)、誰が観ても面白い作品だと思います。」


■『オリヴィエ・ピィのグリム童話
 「少女と悪魔と風車小屋」「いのちの水」「本物のフィアンセ」の計3作品を上演。
 ※「少女と…」「いのちの水」は前売り完売。「本物の…」は6/28(日)13:00の回のみ前売り完売。
 ↓画像はプロモーション映像より。
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 宮城「フランス・オデオン座の芸術監督であるオリビエ・ピィさんが、今年も来てくださいます。昨年は2作品上演されましたが、どれも非常に好評でした。
 『本物のフィアンセ』は昨年12月に発表されたばかりの新作で、現サルコジ政権への批判がたくさん入っています。演劇的な演出と気のきいたセリフをお楽しみいただけると思います。」


■『スカパンの悪だくみ
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 宮城「コメディア・ディラルテのように様式的でありながら、身体の面白さでみせてくれるスイスの仮面劇です。Shizuoka春の芸術祭にはこれで5度目の参加で、毎回観客の爆笑を呼んでいます。」


■『タイタス解剖―ローマ帝国の落日
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 宮城「ドイツの劇作・演出家ハイナー・ミュラー氏が亡くなって10年。もしご存命なら80歳になっているはずでした。『タイタス解剖』はミュラー生誕80周年記念として製作された映像作品です。監督のブリギッテさんはミュラー氏のプライベートでのパートナーで、この作品には娘のアンナ・ミュラーさんも出演されています。」


●京都におけるフランス演劇月間●

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渡邊守章さん

 京都造形大学・舞台芸術研究センターの所長である演出家の渡邊守章さんが、「京都におけるフランス演劇月間」について紹介されました。『ブラスティッド』は静岡公演を経て、7/11(土)に京都芸術劇場・春秋座でも上演されます。⇒『アヴィニョン演劇祭の60年』上映会、⇒コメディ=フランセーズ・プレゼンツ『神の曲芸師』

 渡邊「フランス人は日本の舞台芸術というと、能・歌舞伎などの古典芸能にしか興味がない。日本の現代演劇も知ってもらいたい。実はフランスのパリで演劇を上演したことがある日本人演出家は、宮城聰さん、平田オリザさん、そして私だけなんですよ。」


出演:宮城聰、ダニエル・ジャンヌトー、渡邊守章 主催:静岡舞台芸術センター(SPAC) 写真提供:SPAC
SPAC「Shizuoka春の芸術祭2009」チケット料金[一般大人]4,000円[同伴チケット(2枚)]7,000円[学割]大学生・専門学校生 2,000円/高校生以下 1,000円
『タイタス解剖』一般大人 2,000円/大学生・専門学校生・高校生以下 1,000円
☆お得な週末劇場ハシゴ券☆同じ週末の3劇場の公演をご予約いただくと、1演目あたり3,500円でご覧いただけます。4,000円×3枚=12,000円が10,500円に!7/4・5の週末は、4,000円×2枚+2,000円=10,000円が9,000円になります。なお、学生料金など他の割引券との併用はできません。※週末劇場ハシゴ券は電話予約と窓口販売のみのお取り扱いとなります。※ハシゴ観劇ツアーバス from トーキョー(無料・要予約)あり!!
http://www.spac.or.jp/
http://www.k-pac.org/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2009年05月18日 22:48 | TrackBack (0)