MONOの土田英生さんが劇団青年座に新作を書き下ろされました。演劇集団円『初夜と蓮根』も土田さんの新作で、2劇団が同時期に公演を行うため、“青年座⇔演劇集団円・往復切符きっぷ”という企画も実施されています。いいですね~こういうの。お祭り気分で嬉しくなります。・・・なのに青年座しか観られなかった(涙)。
のんびり平和な南の島にある、某大企業のお客様相談室(コールセンター)が舞台のコメディーでした。上演時間は約1時間45分。
⇒CoRich舞台芸術!『その受話器はロバの耳』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
東京から遠く離れた島、ヘソ島
そのはずれ、丘の上の元レストランここに「ミキマツ製菓」お客様相談室がある
広い空 青い海 輝く太陽
社員8人、リゾート気分の暇な部署
ところがある時電話が一斉に鳴り始める・・・・
『まずいだっちぃ』
思うようには生きられない
端っこの小さな島で繰りひろげられる
ホントと嘘、中心と端をめぐる物語
≪ここまで≫
ミキマツ製菓の大ヒット商品“なきまめちゃん”に有害物質が混入しているという噂がたち、暇だったはずのコールセンターに、ひっきりなしに電話がかかってくることになります。
虚言癖とか浮気とか不倫とか・・・やってることがあからさまにダメ過ぎる登場人物たち。「人間って、そういうものだよね」とも言えるますが、それにしても・・・(笑)。
役者さんはおトボケ気味の可愛らしい演技をされていたので、どんなにみっともなくても嫌悪感はゼロ。むしろ愛嬌があるので微笑ましかったです。ただ、起こった出来事に対する感情の動きが、全体的に軽快すぎたようにも思います。恐怖や不安、危機感を感じる瞬間がもっとあって、起伏が激しい方が私好みかも。
オフィスは目の前に海が広がる素晴らしいロケーション。美術のデザインが船のデッキのようなので、観客である私も彼らと一緒に、沈みゆく船に乗ってゆらゆら揺れているような心地になりました。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
嘘をつくのが心苦しくて、限界がやってきて、どんどん正直にぶっちゃけ発言をしていく社員たち。本土の社員たちが島の悪口を言っていたとか、2人で飲んだ後にお泊りしちゃってたとか、実は不倫関係だったとか、あなたがずっと好きだったとか(笑)。隠していたことが社員全員の前で暴かれていくのは痛快です。
次から次に考えなしに口から出てしまう嘘、命令されて仕方なくつく嘘、自分を守ろうと考えに考え抜いた末に編み出した嘘。自分の嘘のせいでがんじがらめになっていく私たち。でも、何でもかんでも正直にぶちまけることが、いつも正しいわけないんですよね。その時はすっきりするけど、先には困難が待っているのも確かです。
室長の愛人である入社2年目の若い女性が、とうとう正直にお客様に返答してしまいます。「有害物質は混入していたらしいです。でも会社からだまっているようにと言われています」と。登場人物だけでなく、私もスカっとして爽快な気分になりました。
結果、コールセンターは閉鎖。島で採用された社員はおそらくクビで、副室長の2人(五十嵐明&椿真由美)は自分から会社を辞めました。この不況時に。
「ま、いっか」というあきらめの言葉が、とてもさわやか。最後の「あきらめないよ!」というセリフには勇気と希望が込められていたように思います。でも、演出がサラっとし過ぎていてちょっと物足りなかったかも。
ヘソ島の名物は蓮根という設定で、レンコンの大きなクッション(?)が舞台に置かれていました。『初夜と蓮根』つながりかしらん。
劇団青年座第196回公演
出演:綱島郷太郎 五十嵐明 椿真由美 遠藤好 鈴木貴子 津田真澄 森脇由紀 山﨑秀樹
脚本=土田英生 演出=須藤黄英 装置=伊藤雅子 照明=宮野和夫 音響=中島正人 衣裳=半田悦子 舞台監督=今村智宏 製作=森正敏・紫雲幸一
【発売日】2009/04/23 一般 4,500円 ネット予約 4,300円 ゴールデンシート(65歳以上) 4,000円 学生券 ※当日受付清算のみ 3,500円 プレビュー・マンデー割引 3,000円 “円⇔青年座”往復切符あり! ※要予約。『初夜と蓮根』『その受話器はロバの耳』のチケット、またはその半券を持参すると一般券が500円割引き!
http://www.seinenza.com/performance/public/196.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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