演出家の流山児祥さん率いる流山児★事務所が、創立25周年を記念してブロードウェイ・ミュージカルに初挑戦されました。杉並区の公共劇場である座・高円寺のオープニング公演でもあります。⇒囲み取材&稽古場見学レポート
総勢40人以上の出演者による歌と音楽、ステージングに興奮!テーマ曲がまだ頭に残っています♪それがユーリンタ~ウン♪(だっけ?) 上演時間は約2時間45分(途中休憩15分を含む)。
通常の劇場入り口ではなく、搬入口から客席へ。いきなりピチピチのセクシー警官に迎えられて、目がクラクラ(笑)。露出度高いッス!
土日は劇場内外で「ユーリンタウン祭」が開催されます。阿波踊りやエイサーもあるらしい!⇒出演日程表
⇒「トイレ」巡る恋と革命 ミュージカル「ユーリンタウン」遠山悠介、関谷春子(産経ニュース)
⇒CoRich舞台芸術!『ユーリンタウン』
≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
舞台は、地球上の干ばつにより、節水を余儀なくされた近未来のある街。誰もが有料公衆トイレの使用を義務付けられていた。“立ちション”などをすると警官ロックストック(千葉哲也)らに逮捕され、誰もが恐れている「ユーリンタウン」に送り込まれることになっている。全てのトイレを管理しているのはUGC社。この法律はUGC社長クラッドウェル(塩野谷正幸)が賄賂で作り上げたもの。
貧民街では今朝も、金がなくてトイレを使用できないホームレス達が大騒ぎ。しかし管理人ペニー(伊藤弘子)は容赦がない。そんななか、ペニーの助手ボビー(遠山悠介)の父親(大久保鷹)が“立ちション”をし、「ユーリンタウン」に送られてしまう。ボビーは失意の中、美しい娘ホープ(関谷春子)に出会い、自分が今何をすべきかに気づく。それは自由を求めて「革命」を起こすこと。街は大混乱。ボビーがついにクラッドウェルらと対峙した時、ホープが彼の愛娘だと知る・・・そして?
≪ここまで≫
『ユーリンタウン』は2002年に日生劇場で宮本亜門さん演出版を拝見しましたが、その時はなぜこのミュージカルがアメリカでヒットしたのかがわかりませんでした。でも今作はとっても面白かった!!
巡査部長ロクスッポ役の千葉哲也さん、ちびサリ役の坂井香奈美さんが、役を演じる以外に狂言回し的な役割も果たされます。劇の外側に居る立場から観客に話しかけたり、大胆なネタばらしをしてしまったり(このミュージカルの結末は・・・など)。観客は常に物語を外側から観る視点を持って、いわば冷静に登場人物たちの行く末を見守っていくことになります。
『ユーリンタウン』はつまり「ションベン街」って意味ですので、猥雑っていうか・・・下品!、なシーンもありますが(笑)、それもまたこの作品の味だよねって思える可愛らしさ。そもそも私が生きてるこの街こそ、汚物まみれだよねと納得させられました。
正方形のステージをL字型に客席が囲みます。私は会場に入って左側の2階(中2階?)席。上から下を覗くので、セクシー警官の女優さんの胸の谷間たちが次々と目に飛び込んできてですねぇ、女の私でも目がギラギラしちゃうよ(笑)。あ、でも2階からは生バンドが見えなくて残念。入り口から見て正面の席がいいな~。桟敷席の人は大迫力だったことと思います。
2階といっても舞台はとても近かったです。東京ではミュージカルといえば1000席以上の大劇場で観ること多いですから、この公演はチケット代も4500円とオトクで、贅沢だと思います。ミュージカル界のスターが出演してるわけではないので、歌唱力やアンサンブルのダンスなどに過度の期待はしない方がいいですが、大勢のキャストがステージを埋め尽くし、全員で踊って合唱するシーンは鳥肌もの。特に第1幕最後のシーンが素晴らしかったです。
公開オーディションで主役に選ばれた遠山悠介さんと関谷春子さんのコンビは初々しくて、恋に落ちた2人が見つめあうシーンの清純なムードに胸キュン♪ ただ、遠山さんは歌が得意ではないようでした。役者さんなのだから多くを求めてはいけないと知りつつも、関谷さんがお上手なのでどうしても比べてしまいました。長い公演ですので、がんばってもらいたいです。遠山さんは新国立劇場演劇研修所を修了したばかり。関谷さんは東宝ミュージカルアカデミーに所属されています。
休憩時間は劇場内ロビーをてくてく歩いて過ごしました。建物全体は、倉庫がパカっと開いたような開放的な印象。らせん階段の空間が広くて素敵!上の階から下を眺めるのが楽しかった♪
ここからネタバレします。
日本の政治家(麻生総理、中川大臣、小沢民主党元党首など)を登場させるシニカルな歌は、ラップ調だった気がするのですが、歌詞が聞こえなくてとっても残念。ステージングも音楽も楽しかったゆえ、意味をわかりたかった・・・。
「ユーリンタウン行き」とはつまり死刑のこと。UCC(うっしっし)社の高層ビルのてっぺんから突き落とされるのです。ビンボー(遠山悠介)も父親に続いて死刑になり、ビンボーの遺志を継いだホープ(関谷春子)は、自分の父親であるUCC社の社長クラウド(塩野谷正幸)を死刑にします。暴力の報復が連鎖しちゃうんですよね。
その場でホープがUCC社の次期社長に就任し、水を無料で自由に使えるようにします。するとすぐに深刻な水不足に見舞われて、街は崩壊してしまうのです。冷血クラウドは市民を搾取していたけれど、街を水不足から守ってはいたんですよね。愛と理想を朗々と説きながら、ホープは市民を自滅の道連れにしてしまいます。とても皮肉な結末です。
≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
出演:松本哉(素人の乱)、流山児祥、ほか
松本哉(まつもと・はじめ)さんはとても愉快で勇気がある方だと思いました。六本木で鍋パーティーをしようとして、最後はどうなったのか聞きたかったな~。
松本「街を混乱させるのが好き。」
松本「今の街には隙間がない。余裕がない。」
流山児「演劇で街を劇場化させたい。」
流山児★事務所創立25周年記念公演スペシャル「-URINETOWN The Musical-」/座・高円寺 春の劇場03
【出演】千葉哲也・大久保鷹・三ツ矢雄二・塩野谷正幸・曾我泰久・伊藤弘子・関谷春子(ホープ)・遠山悠介(ボビー)・栗原茂・石橋祐・坂井香奈美・植野葉子・有希九美・木内尚・横須賀智美・上田和弘・小林七緒・里美和彦・平野直美・木暮拓矢・武田智弘・諏訪創・阿萬由美・鈴木麻理・山下直哉・・青葉みちる・秋葉ヨリエ[燐光群]・石本径代・井上裕朗・井村タカオ[オペラシアターこんにゃく座]・奥山隆[オフィス3○○]・菊池祐美子・鈴木啓司[劇団銅鑼]・清水泰雄・滝香織・鄭光誠[新宿芸能社]・中山圭[イッツフォーリーズ]・箱田好子[劇団昴]・平野トン子・舩山智香子・松井亜紗美・茉莉以・森加織・横山央[江戸糸あやつり人形座]・渡邊亮・稲増文 【演奏】Reed:小藤田康弘 Tuba:古本大志 Drums:萱谷亮一 Piano:荻野清子
【脚本・詞】グレッグ・コティス 【音楽・詞】マーク・ホルマン 【翻訳】吉原豊司 【台本】坂手洋二 【演出】流山児祥 【音楽監督】荻野清子 【訳詞・演出補】浅井さやか 【振付】北村真実【殺陣】岡本隆【美術】水谷雄司 【照明】沖野隆一 【音響】島猛 【衣裳】胡桃澤真理 【舞台監督】廣瀬次郎 【演出助手】畝部七歩 【ユーリンタウン祭り演出】伊藤靖朗 【宣伝美術】アマノテンガイ Flyer-ya 【宣伝衣裳協力】宮村泉 【舞台写真】横田敦史 【起案・上演権取得交渉】吉原豊司 【制作】岡島哲也 米山恭子 【制作協力】ネルケブレインズアンドハーツ 【提携】座・高円寺/NPO法人劇場創造ネットワーク 【主催】流山児★事務所
全席指定 一般:4,500円 学生割引:3,000円 Ryu'sClub会員:3,600円
http://www.ryuzanji.com
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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