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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2009年06月10日

東宝『ゼブラ』06/09-29シアタークリエ

 劇団ONEOR8(ワンオアエイト)で2度上演された人気作品(⇒初演レビュー)が、商業演劇のシアタークリエに登場。作・演出もONEOR8の田村孝裕さんです。上演時間は2時間休憩なし。

 檀れいさんが初日直前(5/31ごろ)に病気で降板され、代役に星野真理さんが抜擢されました。私は初日翌日のマチネを拝見しましたが、ヒロインにふさわしい、堂々たる演技を見せてくださったように思います。作品も素晴らしかったです。ブラボー!

 ⇒出演者休演のお詫びと新配役のお知らせ
 ⇒CoRich舞台芸術!『ゼブラ

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を一部追加。
 これは、母の手ひとつで育てられた四姉妹のおはなし。長女(斉藤由貴)と四女(大沢あかね)は既に嫁ぎ、三女(山崎静代)も近々結婚を控えている。次女(星野真里)はひとり自家に残り、家を切り盛りするばかり。母親(和田ひろこ)は現在入院中で、生死の境をさまよっている。三女の引越しの準備と母親の見舞いをかねて、四人全員が久々に顔を合わせた。
 久々というのは、なにかが起こる前兆に過ぎない・・・。
 姉妹が幼いころに家を出て行った父親の存在。突然現れた葬儀屋の兄弟(村杉蝉之介&野本光一郎)。互いに隠していたことが次々と明らかになったその日、一本の電話がかかってくる…。
 ≪ここまで≫

 向田邦子作「阿修羅のごとく」をモチーフにしたというキャッチコピーに大いに納得できる、密度の濃い、一筋縄ではいかない家族ドラマでした。でも深刻になったり悲しくなったりし過ぎることはなく、トボけた笑いが満載!田村さんならではのしつこいギャグも(笑)、クリエの奥様方に大いに歓迎されていたようでした。

 どんなにダメな親でも、子供は親のことを信じたいと思ってしまいます。自分を捨てた人でも、美化して愛してしまうんですよね。宿命ともいうべき親子のつながりが、素直に発せられた言葉から痛いほどに伝わってきました。

 出演者は全員で12人で、誰もが独特の個性を持っていて、それぞれに魅力的。四姉妹は子供の頃と現在(20~30代?)を演じますので、パジャマ、ランドセル、セーラー服姿も込みで、現代日本の大人の女性として見つめました。誰もが愛らしい。
 次女以外は結婚(もしくは婚約)しています。長女の夫(入江雅人)、四女の夫(是近敦之)、三女の婚約者(今井ゆうぞう)は三人三様で、嫁の実家での居住まいのぎこちなさがとっても面白いです。幼なじみの文房具屋(矢部太郎)と三女の婚約者は、登場するだけで笑いを誘うこともありました(笑)。

 昭和の香りがする家屋が、物語の主役に見えてきたのが感動的。えらそうな言い方になって恐縮ですが、田村さんは、大劇場で大人が満足できる娯楽演劇を作ることができる、作・演出家になられたのだと思います。

 ここからネタバレします。

 長女(斉藤由貴)と愛人(江口のりこ)のバトルは、初演より火花バチバチで迫力アップ。次女(星野真里)に向かって「そんなに簡単じゃない」と言い返す長女のセリフに説得力あり。斉藤さん、かっこいい!

 長女の夫(入江雅人)が入院中の母から聞いた言葉から、父が家を出たのは母の浮気が原因だったかもしれないとわかります。このどんでん返しで劇の空気が突然変容しました。向田作品の香りがします。

 告別式が終わって親族が帰ると、次女(星野真理)は広い家にたった1人になり、昔を回想します。小学生の頃、中学生の頃、そして自分の絵(タイトルは「ゼブラ」)が金賞を受賞して、母が大喜びしてくれたこと。家の中に家族の思い出が充満して、壁に、柱に染み込んでいるように見えました。

 母の容態の悪化および死をきっかけに、ずっと音信不通だった父と姉妹との間で連絡が取られるようになりますが、次女だけはかたくなに父を拒否していました。でも次女が1人で実家にいる時に父から電話がかかってきます。一度はつっぱねるのですが、すぐにまたベルが鳴り、次女が電話を取らないのでベルが鳴りつづけたまま、暗転して終幕。このすっきりしない、曖昧な幕切れが良かった!何でも白黒つけられるわけがないし、人は迷い悩んで、怒って泣いて、一生じたばたし続けるしかないんだと思います。それに人の気持ちなんてすぐに変わりますから、先のことなんて誰にもわからないんですよね。

出演:斉藤由貴 星野真理 山崎静代(南海キャンディーズ) 大沢あかね 入江雅人 今井ゆうぞう 是近敦之 矢部太郎 村杉蝉之介 野本光一郎 和田ひろこ 江口のりこ ※檀れいが急病で降板のため、代役に星野真理
脚本・演出:田村孝裕 美術:香坂奈奈/照明:中川隆一/音響:本間俊哉/衣裳:小峰リリー/ヘアメイク:武田千巻 舞台監督:田中力也/演出助手:岡本栄策/企画協力:Bunko 向田和子/プロデューサー:小林香 製作:東宝
【発売日】2009/05/02 S席:9,000円/A席:7,500円(全席指定・税込)
http://www.tohostage.com/zebra/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2009年06月10日 22:01 | TrackBack (0)