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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2009年06月27日

西村和宏(青年団演出部)+ウォーリー木下(sunday)企画『ハルメリ』06/23-30アトリエ春風舎

 第13回劇作家協会新人戯曲賞を、審査員の圧倒的支持を受けて受賞した『ハルメリ』(作・黒川陽子)が、東京で初めて上演されます。リーディング公演を拝見した時にすごく面白かったので、本格的な上演の情報を知った時はとても嬉しかったんです。

 青年団演出部の西村和宏さんが、大阪の劇団sundayのウォーリー木下さんに演出を依頼し、この公演をプロデュースされました。やっぱり面白い戯曲でした~。

 チラシがかっこいいですよねー!デジタルで無機的なイメージが戯曲にぴったりだと思います。黒バージョンと白バージョンの2種類あるのも素敵。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ハルメリ

 ≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
 いま私はクラブ・ハルメリに来ています……またしても若者達の……学生運動や安保闘争は……抵抗……しかし今回は違います。見てください。ハルメリを合言葉に、若者達が年配の大人達と一緒に踊っています!!」 ――ハルメリは優しさの思想。つまらない競争をやめ、全てを受け入れ合う。相手も自分も大した人間でないことを知り、微笑みの中に自分の居場所を見つける。「……そういう、冗談なんです」
 現代社会を若い視点からするどく描き、審査委員の圧倒的支持をうけて第13回劇作家協会新人戯曲賞を受賞した『ハルメリ』(作・黒川陽子)を東京で初めて上演。
 ≪ここまで≫

 文字通り劇場全体を使ったショッキング・ピンク色の装置(戯曲の指定どおりですね⇒戯曲サンプル)。壁も床や道になっているのが楽しいです。舞台奥のテレビ画面(笑)と、舞台中央の大きなテーブル、そして壁面だけで、スムーズに多くの場面転換をこなしていくのは見事だな~と思いました。

 フィジカル・シアターとまではいかないものの、歩いて、走って、登って、飛んで、ぶつかって、体を存分に使う激しい演出は見ごたえあり。でも、終盤以降はリズムがあまり良くなくて、ラストシーンはちょっと物足りなかったかも。全員オーディションで選ばれた(んですよね?)からか、役者さんの力量もバラバラで、全体のまとまりが弱い気もしました。

 ここからネタバレします。

 流行に踊らされる大衆とメディア、薄まっていく個人、「みんな仲良し」という脅迫。夫婦や恋人といった枠組みも溶けて消え去り、体ごとべっとりとつながって互いに侵食しあっていくイメージは、アニメ「エヴァンゲリオン」と重なりました。

 結局「ハルメリ」とは何だったのか(何を象徴していたのか)が、最後にわかりたかったですね。いえ、答えがあるわけじゃないのでしょうけど、演出家がこの戯曲の最後に何を伝えようとしたのか(もしくは、匂わせようとしたのか)を知りたかったです。リーディング公演では、台本の代わりにパソコンの画面を見て朗読されていまして(演出:山本健翔)、ラストシーンはリーディング版の方が、雄弁で面白かったな~。

 アイドルを筆頭にハルメリ美女(熊澤さえか)や“妻”(年清由香)が、次々と「ハルメリの神(三原玄也)の子供を身ごもった」と嘘の告白をしていきます。その後、彼と交際していた女(境宏子)の妊娠がわかりますが、彼女は即座に堕胎を決心し、終幕。つまり、嘘の子供は次々に生まれるけれど、本当の子供は殺されてしまうんですよね。ハルメリという実体のないものに人間が支配されて、命まで奪われていく(自滅していく)という恐ろしい結末だと思います。しかも、それが現代を表しているから凄い戯曲だと思います。

 アイドル(長野海)が踊って歌う「恋のハルメリ」という曲は、本当に長野海さんが歌っているオリジナル曲だそうです。いい曲だし踊りも可愛い(笑)。思いっきりperfumeですよね。劇場でCDが300円で売ってます。

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演(下手より):西村和宏/わたなべなおこ(あなざーわーくす)/ウォーリー木下

 作品に関係のないトーク(関西と関東の習慣の違いなど)に終始してしまって、非常に残念。

出演:荒木香奈(クレイヅ・プロ)  大友久志 片倉裕介 菊池美里 熊澤さえか 斎藤萌子(エムズクルー)  境宏子(リュカ.)  サカモトワカコ(THE MILLIONS)  長島美穂(机上風景)  中村祐樹 長野海(青年団)  年清由香(sunday)  三原玄也(オフィスクロキ)  山岡太郎 由かほる 芳川痺(9-States) 若旦那家康(ROPEMAN(31))*出演を予定していた江ばら大介は急病のため降板いたしました。
脚本:黒川陽子(劇団劇作家) 演出:ウォーリー木下(sunday) プロデューサー:西村和宏 照明:岩城保 舞台美術:濱崎賢二 映像:深田晃司 宣伝美術:京 技術協力:鈴木健介(アゴラ企画) 制作協力:林有布子(アゴラ企画) 芸術監督:平田オリザ 企画制作:西村PRODUCE/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
【発売日】2009/05/24 予約・当日共 一般2800円 学生2300円 ※芸術地域通貨ARTS(アーツ)がご利用いただけます。
http://saladball.org

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2009年06月27日 00:03 | TrackBack (0)