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2009年07月30日

【情報】前川知大さん(イキウメ)原作の漫画『リヴィングストン』が週刊モーニングで7/30(木)より新連載開始!

20090730_livingstone.JPG
リヴィングストン

 イキウメの劇作・演出家の前川知大さんが、漫画原作にチャレンジされました!漫画を描かれるのは片岡人生さん。「交響詩篇エウレカセブン」は私も知ってる~。超有名な方ですね。
 いきなり表紙だし巻頭カラーだし。人気が出たらアニメ化されるかしらん♪

 ◎週刊モーニング
  『リヴィングストン~LIVINGSTONE
  原作:前川知大(劇団イキウメ)
  漫画:片岡人生
 
 イキウメの短編『ゴッド・セーブ・ザ・クイーン』(関連ページ⇒)が元になっているそうです。うおおお、アノ桜井と天野がっ!登場!! 第1話は導入って感じですね。これから毎週楽しみだな~♪

 あ、本谷有希子さんの連載『かみにえともじ』も初めて読みました!これ毎週書いてるのか・・・凄い。『来来来来来』は8月に行きますよーっ。

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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2009年07月29日

劇団、江本純子『常に最高の状態』7/28-8/2ギャラリーLE DECO 5F

 稽古場レポートを書かせていただきました、劇団、江本純子vol.2『常に最高の状態』初日に伺いました(⇒vol.0vol.1)。

 手の届きそうな(最前列なら絶対届く・笑)距離で、女優5人の爆笑演技合戦を堪能!笑いすぎました(笑)。上演時間は約1時間20分。

 演技スペースをぐるりと半円の形で囲む客席になっています。場所によって見えるもの(見えないもの)は全然違うと思います。どこに座っても見えないものはありますので、自分だけに見える何かを楽しめばいいんじゃないかしら。私は下手側最前列でした。整理番号順の入場なので開場時刻までにはぜひ到着を。

 ★全席完売でしたが、7月31日(金)14:00の回に追加公演決定!

 ⇒CoRich舞台芸術!『常に最高の状態

 ≪あらすじ≫
 前衛的な陶芸、絵画などのグループ展が催されている小さなギャラリー。その場の雰囲気にそぐわない中年女性が2人訪れ、ギャラリーにいた若い女性らとかみ合わないトークを繰り広げる。
 ≪ここまで≫

 稽古場にお邪魔したのが7/13(月)でしたので、あれからほぼ2週間。これほど変わるものなんですね~!会話とそれによって生まれる空気にさらなる工夫が凝らされ、大人VS若者、一般人VS芸術家、女VS女といった対立関係の密度も上がっていました。
 交わされる視線の間に生まれる気持ちのぶつかり合い、すれ違いから目が離せず、最前列で必死でキョロキョロ。女の愚かさをあけっぴろげにして、それを「馬鹿だね、でも可愛いよね」と慈しむように笑いに仕上げていく、江本さんの笑いのセンスが大好き。

 池谷のぶえさんと柿丸美智恵さんの、息の合った姉妹コンビにほっこり&にんまり。内田慈さんの暴れっぷりに仰天(笑)。内田亜希子さんは無表情と笑顔の切り替わりが可愛い(あんなキャラだったとは!)。安藤聖さんはいまどきのギャルらしい“天使”と“悪魔”の両面を見せてくださいました。

 表情が静止画のようにくっきりと記憶に残っています。バレエダンサーの熊川哲也さんが高いジャンプをした時に、空中でピタっととまったように見えたことがありまして、その瞬間に似ていました。芸達者で気骨のある女優の、気合の入った芝居が観られて、心底充実。こういう演劇を会社帰りに、友達と一緒にふらりと観られたらな~。贅沢すぎますかね。

 ここからネタバレします。

 ギャラリーでは現代美術のグループ展が開催中。可愛らしいクマの絵を展示しているのがリョウコちゃん(登場しない)。クマのキャラクターがハンカチにプリントされ量販店で販売されるなど、グループの中では一番の売れっ子アーティストです。その母親・靖恵(池谷のぶえ)と叔母・佳代(柿丸美智恵)がギャラリーに来たのですが、リョウコちゃんは不在。棺桶アーティストの美幸(内田亜希子)とその乱暴な友人しほ(内田慈)が、靖恵と佳代とトークバトルを繰り広げます。
 
 しほはグループの一員であるひーちゃん(ひとみ:安藤聖)に恨みがあるようで、なんと彼女の作品である陶芸の皿を、床に投げつけて割ってしまいます。脚本を読んで知ってたはずなんですが、ものすごく驚きました。だって目の前でコッパ微塵だし!ものすごい音だし!
 美幸としほに比べると、ずっと良い子(に見える)ひーちゃんに、靖恵さんはどうやら惚れてしまったようで(?)、積極的にアプローチ。“靖恵さんレズ疑惑”が取りざたされた後、リョウコちゃんとひーちゃんが恋人同士だという情報が暴露されて・・・。

 しほがひーちゃんに対して怒っていた理由が、なんとも・・・(苦笑)。池谷さんが「それ、レーズンでしょう」と深刻な面持ちで言うのに爆笑。レーズンはないでしょ、レーズンは(笑)。おんおん泣いていた内田さんの背中が、小さく丸まっていて可愛かった。

 終わりに流れたのはThe Cardigansの「Lovefool」。大好きな曲です。アンニュイな感じにアレンジされていて、酔っ払った女たちの喧騒を静めるにはぴったりでした。

劇団、江本純子 vol.2
出演:池谷のぶえ 内田慈 内田亜希子 安藤聖 柿丸美智恵
美術協力/【箱】牧かほり(http://www.k-maki.com) 南志保【ガラス】青木美歌(http://www.sing-g.net/)【クマの絵小さい額縁の方2つ】英保沙津紀【写真】安武はるか【イラスト】あべちほ(http://www.chihoabe.net/
作・演出/江本純子 美術/伊藤雅子 照明/吉岡靖 衣裳/中西瑞美 舞台監督/大島明子 宣伝美術/two minute warning チラシイラスト/辛酸なめ子 WEB/rhythmicsequences 制作/照井恭平 制作統括/樺澤良 企画製作/毛皮族
前売3,300円 当日券3,500円(整理番号付自由席)
http://www.kegawazoku.com/gekiemo/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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【オーディション』冨士山アネット「2009年秋冬新作公演・出演者/スタッフ募集」※8/18〆切(メール)

 長谷川寧さん率いる冨士山アネットが(関連エントリー⇒)、今年11月のアジア舞台芸術祭・参加短編、2010年1月の[EKKKYO-!](“芸劇eyes”に選出、⇒過去レビュー)参加短編、2010年3月上旬の冨士山アネット長編公演について、出演者とスタッフを募集しています。
 
 応募〆切は8/18(火)です。以下、公式サイトより。

■【冨士山アネット新作公演 WSオーディション開催 出演者/スタッフ募集】

冨士山アネットによるワークショップオーディションを行います。
俳優・ダンサー・パフォーマー等ジャンルは問いません。
身体表現に興味がある方を募集致します。

こちらは、2009年11月東京芸術劇場中ホールにて行われる
アジア舞台芸術祭の中での15分の短編作品と、
2010年1月東京芸術劇場小ホール1にて提携公演で行われる
[EKKKYO-!]の中の冨士山アネットの短編作品(11月と同じ演目)
及び2010年3月上旬都内会場での短編を元にした長編作品に
プロジェクト参加出来る方対象のオーディションとなります。

現時点で公演等が有りNGが有る方は事前に備考にお書き下さい。
1次はWSのみの参加も可。応募多数の場合書類審査が御座います。
リハーサルは9月より開始予定。
また、この作品は今後国内外のツアー向けの作品
(出演者5名前後を予定)としての制作を視野に入れております。

■WS日程(事前にNGが有る方はお伝え下さい)
・1次審査(AかBどちらかをお選び下さい)
A 8月21日(金)18:00-21:30 8月22日(土)13:00-21:30
B 8月21日(金)18:00-21:30 8月23日(日)13:00-21:30

・2次審査(1次審査通過者対象)
8月28日(金)18:00-21:30
8月29日(土)13:00-21:30
8月30日(日)13:00-21:30

■WS参加料
1次審査 2,000円 2次審査 無料 ※2日分込。当日お支払下さい。

■WS内容
テキストや記憶、それぞれの特徴から起こす動きの開発・シーンを
実際に作ってみます。

■WS会場
都内を予定。応募者に追って御連絡致します。

■本番日程(日程は多少変動する可能性があります)

2009/11/28-29
アジア舞台芸術祭 参加
短編上演 at 東京芸術劇場・中ホール

2010/1/14-17
冨士山アネットproduced[EKKKYO-!]
(芸術劇場提携公演「芸劇eyes」)
短編上演 at 東京芸術劇場・小ホール1

2010/3上旬
冨士山アネット新作公演[タイトル未定]
長編上演 at 都内会場

■応募方法
mailにて「証明WSオーディション希望」と件名明記の上、

1.名前(フリガナ)
2.住所
3.電話
4.連絡の着くアドレス(PC及び携帯電話)
5.年齢
6.履歴書・芸暦書(ダンス経歴等有る方はお書添下さい)
7.写真(バストアップ・全身)
8.応募理由・冨士山アネット観劇の有無(有れば作品名)
9.WS希望日程(A or B)
10.備考(現時点でのNG等)

を貼付の上、fujiyamanet(アットマーク)gmail.com迄お送り下さい。
書式は自由ですが、写真サイズは、合計2M以下でお願いします。

スタッフ希望の方はmailにて
「証明スタッフ希望」と件名明記の上、
お名前・住所・電話・アドレス・年齢・経歴・
希望職種(制作/演出助手/美術(大・小道具)/ボランティアスタッフ等)
を貼付の上上記アドレス迄お送り下さい。

御応募頂いた中から今後新作等にも御参加頂く可能性もあります。
御興味の有る方、奮って御応募下さい。


以上、冨士山アネット公式サイトより。
http://fannette.net/wanted/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 11:55 | TrackBack

2009年07月26日

【演劇教育】パーシモン・パレット・プログラム2009『演劇コース発表会』07/26めぐろパーシモンホール・小ホール

20090726_persimmon_entrance.JPG
演劇コース発表会

 めぐろティーンズプログラムが改称してパーシモン・パレット・プログラムとなりました(過去記録⇒)。発表会を鑑賞するのは今年で3度目。講師は柴幸男さん(青年団演出部/青年団リンク・ままごと)です。

 柴さんがで昨年6月に上演して大好評だった『あゆみ』を、上演時間約20分の中高生用に作り変えた『あゆみ めぐろパーシモンREMIX』を拝見。予想だにしなかった素敵なことが起こり、人間が大勢いる時に起きる事件(奇跡)の現場に居合わせた幸せを感じました。

 ⇒柴幸男さんのブログにワークショップの記録あり!

 ここからネタバレします。

 開場時刻(14:00)に客席に入ると、出演者と演出家がまだ舞台に。というか、そこが稽古場なんですよね。徐々に客席が埋まっていく中、そのまま開演時刻(14:30)直前まで稽古。そして本番との区切りがあまり明確にならないままに開演。衣裳はセーラー服など、普段着ている私服のようです。

 生まれて初めて1歩踏み出す幼児、お母さんとスーパーに買い物、にぎやかな学校生活、捨て犬との出会い、優しいおばあちゃんとのワケありの散歩、大好きな先輩と一緒の満員電車・・・。1人1役ではなく、主人公の少女あゆみ、お母さん、お父さん、おばあちゃん、クラスメイト、犬などを、代わる代わる演じて行きます。

 私は『あゆみ』(⇒wonderland劇評 by 松井周)を拝見していたのもあってか、純粋な観客としては観られなかったですね。何より、普通の中高生が演劇(しかも『あゆみ』)という、自分1人だけでは絶対に作れないものを作っている、その現場に居合わせていることに意識が集中していました。

 『あゆみ』は、役割分担はされているものの、1人1役ではないので、出演者全員が気持ちを通じ合わせていなければ作品としての完成度が落ちてしまう、やっかいな作品だと思います。逆に言えば、技術のありなしよりも、カンパニーのチームワークや一体感がものを言うんですよね。過去2回の発表会と比較すると、参加者たちのコミュニケーションは格段にスムーズにだったように感じました。何より、とっても楽しそうだった!

20090726_persimmon_park.JPG

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 覚えていることのメモです。発言は完全に正確というわけではありません。
 出演:柴幸男、出演した中高生16名

 柴さんが今回のワークショップの意図および発表会までの流れについて、観客(保護者?)に向けて詳しく説明してくださいました。
 「彼ら(出演者)は現代口語で即興で劇を創作することは上手くできる。だからそれは止めた。制限をつけて、不自由な中で自由にすることをやってもらおうと思った。」
 「自分1人で頑張っても良いものができないのが演劇。この作品は特に、誰か1人欠けただけでも成立しない。今日、誰かが休むことが一番怖かった(笑)。」

 観客からの質疑応答の時間は、保護者からの感想も含め、舞台にいる中高生と観客の大人との間に豊かなコミュニケーションが生まれていました。“自称・柴さんのおっかけ”の女性もいらっしゃいました。たしかにこの公演を観たら、追っかけになる気持ちもわかりますっ!

 30分ほどのトークの後、なんと時間が余っているとのことで、もう一度本番をやることに!!!これにはものすごく驚きましたし、すっごく嬉しかった!劇場職員の方(?)の英断でしょう!!
 2度目の本番は出演者はもちろんのこと、客席が全く違っていました。たぶん1度目は意味がわからなかった人が多かったんじゃないかしら。詳しいトークを経て、何を見るべきかを知った観客の集中力たるや!空気の重ささえも変わっているように感じました。
 初めての体験をして、体験後に解説を聞き、もう一度同じ(全く同じではないが)体験をするというワークショップを受けたことになったんですよね。この発表会で、観客も育てられたと言えると思います。

[出演]公募による中学生・高校生(16名・50音順):市川萌夏 木﨑千温 井上春香 斉藤茉夕 井上みなみ 佐藤麻央 植草ゆりこ 関口佳 大森唯 中野義之 長田咲紀 宮本周平 小座間遼子 矢野夏帆 菊地尚輝 若林潤
[演出・指導]柴幸男(劇作家・演出家) [協力]有限会社アゴラ企画 [アシスタント]黒川深雪 [区民ボランティア]朝吹弓子/梶実千枝/徳永美穂子/中村美秋/福島豊/松本照代/山本郁子[主催]財団法人目黒区芸術文化振興財団
7/26(日)14:30(開演) 全席自由・当日券300円
http://www.persimmon.or.jp/event/98.php

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 23:17 | TrackBack

2009年07月25日

JACROW『明けない夜』07/17-26サンモールスタジオ

 中村暢明さんが作・演出されるJACROWの新作公演。CoRich舞台芸術!の評価が大変高いので久しぶりにお邪魔しました。

 残念ながら私には面白みは感じられず・・・。上演時間は約1時間40分弱。

 ⇒CoRich舞台芸術!『明けない夜

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。
 舞台は1963年、裕福な家庭の一室。
 平和な日常を壊す一本の電話から始まる。
 誘拐事件の果てに浮かび上がるねじれた人間ドラマ。
 ≪ここまで≫

 舞台は60年代の高度成長期の東京の、ある実業家宅の応接間。ソファやランプ、ステレオ、テレビなどの家具・電化製品をはじめ、食器類や置物までそろえた具象美術です。

 テレビのサスペンスドラマのようなストーリーでした。1曲目の音楽(M1)が鳴ったとたん、何かのパロディーなのかなぁと思ったのですが、そうではなく。選曲のセンスは全体的に私には合わなかったみたい。

 役者さんは胸から上だけを使って、なんとなくそれらしい演技をしているような印象。腹から声が出ていないというか、地に足が付いていないというか。残念ながら最初から最後まで入って行けなかったです。

 ここからネタバレします。

 社長夫妻の娘(小学生)が誘拐されます。警察は近親者の犯行である線が濃いと判断し、社員や家政婦らを取り調べて行きます。取り調べ中の緊迫感がわざとらしく感じ、取り調べ内容にもあまり納得できず。

 真犯人は社員として働いている社長の愛人でした。社長にこっぴどくフラれて、しかも「娘がいるから簡単には妻と別れられない」とか言われちゃうし、社長が奥さんに「お前が一番だよ」ってつぶやくのも盗み聞きしちゃうし。衝動的に娘を連れ去って自宅で殺しちゃったんですね。
 社長がありもしない誘拐事件をでっちあげたことが、最後の最後にわかります。一応、愛人を守ろうとしたってことなのかな。

 現在と並行して、3ヵ月前、2ヵ月前、1ヵ月前という順番に、過去のシーンが間に挟まれます。過去のシーンでは薄白い紗幕の向こう側で演技をするのですが、事件当日については、演技の最中に徐々に紗幕が上がっていくという演出になっており、それが面白かったです。
 音楽については「見上げてごらん夜の星を」(Wikipedia)はフィットしました。確かこの曲だったと思うんですが・・・。

JACROW#12
出演:狩野和馬(InnocentSphere) 仗桐安(RONNIE ROCKET) 今里真 祥野獣一(獣劇隊) 立浪伸一(はらぺこペンギン) 橋本恵一郎  田中まこと 前田彩子 堀奈津美(DULL-COLORED POP)  岡本篤(劇団チョコレートケーキ) ヤナカケイスケ 蒻崎今日子(JACROW)
脚本・演出:中村暢明 舞台美術 吉川悦子 照明:清水朋久 音響:岡田 悠(One-Space) 衣装:セオキョウコ 小道具:湯田商店 映像:三浦英蔵(QUOIT) 宣伝美術:川本裕之 題字:盛隆二 舞台監督:吉田慎一(Y's factory) 演出助手:メトロ=サスケ(ポリタン煉瓦亭) 井原謙太郎 制作:黒田朋子 吉水恭子(芝居屋風雷紡) C★chan 企画:JACROW
【発売日】2009/06/01(日時指定・全席自由)◎本編「明けない夜」 一般 前売3000円 当日3300円 四十割引 前売2700円 当日3000円 早期割引 前売2700円 当日3000円 平日昼間 前売2700円 当日3000円
◎外伝「外伝~それぞれの事情」全て 前売・当日共1500円※ただし『外伝~それぞれの事情』のみのチケット販売はありません。本編の料金にプラスして一律1500円でご覧いただくカタチになります。
※四十割引…業界初?大人の方が安い料金設定。40歳以上の方は前売・当日共300円値引きいたします。(要証明証提示)※早期割引…17金~19日の計5ステージは前売・当日共300円値引きいたします。(四十割引は適用されません)☆平日昼間…22水15:00/24金17:30の回は前売・当日共300円値引きいたします。(四十割引は適用されません)
http://www.jacrow.com/

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Posted by shinobu at 23:58 | TrackBack

モダンスイマーズ『血縁~飛んで火に入る五兄弟~』07/17-08/02赤坂RED/THEATER

 モダンスイマーズの劇団10周年記念公演です。岸田戯曲賞を受賞したばかりの座付き劇作・演出家の蓬莱竜太さんも、役者として出演されます。

 劇団の人気作『赤木五兄弟』を下地、に劇団員5人で脚本を作ったそうです。開演前には「蓬莱戯曲の繊細なセリフ、見事な伏線は期待しないで」というアナウンスも(笑)。

 劇場入り口から客席まで、劇団員総出で観客を迎えてくれました。上演時間は約1時間30分。

 ⇒CoRich舞台芸術!『血縁~飛んで火に入る五兄弟~

 赤木家の2009年の春夏秋冬を描きます。長男の淡い恋心やご近所の人とのバトルなど。

 長年活動している劇団は、作・演出・主宰を兼ねる人材ばかりが目立っていくことが非常に多いんですよね。この公演が、そんな流れを拒否するという劇団の意思表明であるならば、一演劇ファンとしてとても嬉しいです。モダンスイマーズというのは男5人の劇団なのだなと、改めて認識しました。

 客演の古川悦史さんの七変化(3役?)が可愛らしかったです。古川さんは小劇場劇団へ客演が多いですよね。

 ここからネタバレします。

 五男(蓬莱竜太)がハワイから帰る飛行機の中で、「帰りたくないよ~」と肩を震わせて泣くところが面白かったです。しみじみしました。

 ハワイから帰ったら、家に「出て行け!」「金かえせ!」などと壁に描かれていました。“被害者の会”の仕業だと決めつけ、食事当番の五男以外は仕返しに出かけます。その場に居合わせた近所の住人・栗林(古川悦史)が警察に通報したため、おそらく仕返しは未遂。でも4日間拘留されたらしいので、警察とはケンカしたのかな(笑)。
 クリスマス・イヴには「ご迷惑をおかけしました!」と言いながら、5人全員で町にお菓子をばらまくサンタとトナカイになります。これで赤木五兄弟は杉並(ですよね?)からおさらば。

 最後のエピソードは蓬莱さんが書かれたのかしら。ずいぶんうまくまとまったエンディングだったので、10周年の歌とお餅つきはオープニングだけでも良かったかも。

出演:西條義将 小椋毅 古山憲太郎 津村知与支 蓬莱竜太(以上モダンスイマーズ) 室伏ひかり 古川悦史
アンサンブルメンバー:ウォーレン・リウ 海ノ幸子 梅本淳 角島美緒 久住翠希 寒河江有似・色城絶・しゃなちひろ でく田ともみ 永田歩 種本考世 平石祥子 前田朝子・真山カコ 矢ケ部哲 山増圭 吉川綾美 有賀安由子 岩崎愛 末冨真由 和田成正
脚本・演出:モダンスイマーズ 美術:伊達一成 照明:森脇清治(東京舞台照明) 照明OP:相沢大輔 音響:今西工 小道具:高津映画装飾 オプジェ製作:Kazushige Date 題字:Peco 映像制作:株式会社ムーンファクトリー 記録写真:Yoshizo Okamoto 太鼓レンタル&指導:山田貴之 衣裳:小原敏博 宣伝美術:西山昭彦 制作:神野和美 提携:赤坂RED THEATER 企画製作:モダンスイマーズ
【発売日】2009/06/13【前売】¥3,500- 【当日】¥4,000- 全席指定①M10割引 【前売】¥3,000- 【当日】¥3,500- 7/17、24のみ②M10パス 【前売】¥10,500- 全公演共通パス(5回まで観劇可)③学生割引 【前売】¥2,500- 【当日】¥3,000- 24才まで、要学生証②、③の取扱いはHabaneraのみ※M10パスは5回の公演が観劇できる共通パスです。
http://www.modernswimmers.com/

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2009年07月24日

青年団国際交流プロジェクト2009・コロン企画『キョウトノマトペ』07/16-26アトリエ春風舎

 青年団の国際交流プロジェクト『キョウトノマトペ』は、オノマトペ(擬声語・Wikipedia)を多用し、声・顔・からだをフル活用した擬音語劇。青年団初のボイスパフォーマンスとのことです。上演時間は約1時間弱。

 青年団劇団員の方々とフランス演劇人とのご縁は、どんどんと広がっているようですね。チラシのビジュアルが内容に合ってる気がします。

 ⇒CoRich舞台芸術!『キョウトノマトペ

 3脚の譜面台と、立って乗れる小さな木箱が1つ。装置はそれだけです。3人の役者さんが体を動かし声を出す、短いシーン(章)で積み上げる1時間。 
 言葉は日本語、英語、仏語が聞こえてきました。言語は他にも使ってそう。

 ん~・・・何か面白そうな世界の入口を垣間見たっていう感覚かも。

 ここからネタバレします。

 人間が人間ではなく、役者でもなく、音を出す物体として見えてきた“最終章”は面白かったです。

≪東京、京都≫
青年団国際演劇交流プロジェクト2009 Projet de Collaboration Internationale de Seinendan 2009
『Kyôtonomatopée』Texte/mise en scène: Laurent Colomb
出演:古屋隆太 二反田幸平 鈴木智香子
脚本・演出:ロラン・コロン 照明:西本彩 通訳:斉藤チカコ 宣伝美術:京 チラシイラスト:ロラン・コロン 日仏コーディネート:横山優 制作:西山葉子 制作統括:鈴木智香子 芸術監督:平田オリザ
【発売日】2009/06/01 日時指定・全席自由席・整理番号付き。予約・当日共 一般=2,000円/学生・シニア=1,800円*学生・シニア(65歳以上)の方は、当日受付にて学籍、年齢を示す証明書をご提示ください。*本公演は、芸術地域通貨ARTS(アーツ)がご利用いただけます。(1ARTS=1円。ARTSとは、桜美林大学内の演劇施設で施行されている地域通貨です。)
http://www.seinendan.org/jpn/info/info090529.html

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アトリエ・センターフォワード『一条家サロン アラブルカゼニクツオトガタカナル』07/23-29シアター風姿花伝

 矢内文章さんが作・演出(出演も)されるアトリエ・センターフォワードの第2回公演です。矢内さんはTPT公演などに頻繁に出演される俳優さんなので、脚本・演出もされる方だとは知りませんでした。

 青年座、文学座などの新劇老舗劇団で人気の役者さんが出演されており、客席の年齢層は高い目。衣裳、美術などもガツンと豪華なストレート・プレイでした。上演時間は約2時間。

 ⇒CoRich舞台芸術!『一条家サロン

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。改行を変更。
 昭和十年末。
 政商の父親を満州で亡くした三人姉妹は傷心を癒すべく東京の屋敷に。
 だがそこは放蕩三昧の長男とその友人たちがたむろするサロンと化していた。
 軍人も民間人も、はては屋敷の女中までが享楽をともにする一条家サロン。
 軍国主義が高まるなか、人々はそれぞれに「痛み」を抱えながら
 必死で自らの未来を描こうとするが…。
 ≪ここまで≫

 登場するのはエレガントなスーツ、ワンピース、そして軍服に身を包んだ人々。下手にはいい感じに汚しの入ったガラス窓のある壁。中央奥には頑丈なドア。上手奥には階段が少し。クラシックな西洋家具がぽつんぽつんと並んでいます。布製カーテンが緞帳にも舞台奥の壁にもなっており、材質が半透明なので、照明の加減で奥が透けて見えるようになっています。シアター風姿花伝でこんなシックな作品を観られるとは。

 古典戯曲をもとに、舞台を昭和11年頃の東京に置き換えた物語でした。名作の勘所をしっかり心得て引用されていることに感心しつつも、できれば矢内さんの完全オリジナル作を観たいと思いました。第1回公演がそうだったようなので、見逃したのは残念。

 ここからネタバレします。

 主にチェーホフの『三人姉妹』と『桜の園』を下地にしたストーリーでした。チラシにもちゃんとそのように告知されています(チェーホフを下地に戦争前夜を懸命に生きた名もなき若者たちの群像劇)。

 4人姉弟の父親が一代で財を築いたのは、中国でのアヘンの流通を独占していたから。そして父親は関東軍による中国人の人体実験にも援助をしていました。そのおかげで自分たちが贅沢に暮らしてきたことを知っていた長男(矢内文章)は、放蕩することで財産をわざとゼロにしたのです。だから谷水(五十嵐明)の「屋敷をビルヂングにして貸し出す」という提案を受け入れませんでした(屋敷を競売にかけられるままにした)。
 このことを知らなかったのは末っ子の涼子(佐藤麻衣子)だけ。だから長男はもちろん、長女・松子(椿真由美)は頭痛が治らないし、次女・光子(立原麻衣)は何についても投げやりな様子だったんですね。

 一条家につどっていた人々は皆ちりじりになり、自ら選んだ道とはいえ、さらに困難な人生を歩むことになってしまいます。「それでも生きていく」ことが描かれるのは『三人姉妹』ですが、この作品には、日本(日本人)が戦争中にした起こした事件・行為をクローズアップし、人間の責任を厳しく見つめる視点がありました。それが素晴らしいと思いました。せめて忘れないで、生きていかなければ。

アトリエ・センターフォワード第2回公演
出演:椿真由美 立原麻衣 佐藤麻衣子 矢内文章 五十嵐明 原扶貴子 眞藤ヒロシ 井上裕朗 高松潤 吉田智則
作・演出:矢内文章 演出助手:カトウシンスケ 高本愛子 美術:宇野奈津子 美術協力:松岡泉 照明:深瀬元喜 音響:上野雅 音響操作:野中裕里 ヘアメイク:梅澤裕子 ヘアメイクアドバイザー:鎌田直樹 衣裳:本多あゆみ(東京衣裳) 衣裳協力:砂田悠香里 舞台監督:鈴木暗香 制作:松本恵美子 プロデューサー:冨士山和夫 主催:アトリエ・センターフォワード OPTLAND ENTERTAINMENT JAPAN
【発売日】2009/06/16 全席指定 前売3800円/当日4000円
http://www.centerfw.net

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 14:46 | TrackBack

2009年07月23日

【稽古場レポート】劇団、江本純子『常に最高の状態』07/13都内某所

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「常に最高の状態」

 劇団、江本純子は、毛皮族の江本純子さんが新たに立ち上げた演劇プロジェクトです。vol.0vol.1に続き、3ヶ月連続で新作を発表します。

 江本「9年間やってきた毛皮族はめちゃくちゃな、そしてアナーキーな娯楽です。毛皮族の手法に逆行するように、色んな要素を削(そ)いでいったのがこのシリーズ。娯楽を意識しないで、サービスじゃないことをやりたい。」

 『常に最高の状態』には、大劇場と小劇場を自在に行き来し、多彩に活躍する実力派女優が勢ぞろい。客席数70席のギャラリーでこのメンバーを見られるなんて、とっても贅沢♪

 作・演出の江本さんの提案に5人の女優があ・うんの呼吸で応える、笑いの絶えない稽古場でした。
  
 ■劇団、江本純子『常に最高の状態』⇒公式サイト
  2009年7/28~8/2ギャラリーLE DECO 5F
  ⇒CoRich舞台芸術!『常に最高の状態

 ≪あらすじ≫
 前衛的な陶芸、絵画などのグループ展が催されている小さなギャラリー。その場の雰囲気にそぐわない中年女性が2人訪れ、ギャラリーにいた若い女性らとかみ合わないトークを繰り広げる。
 ≪ここまで≫

 出演者が女優ばかりの稽古場に伺ったのは初めてでした。空気がさらっと澄んでいて、なんだかキラキラしてる♪

 まずは脚本に新たに書き加えられた部分の確認から始まり、さっそく立ち稽古へ。江本さんは自分で演技をして例を見せつつ、言葉の語気やイントネーションなどを細かく提案していきます。
 江本「そのセリフは相手に対してすっごい明瞭に」「うつつを抜かすように、『口にしてみただけ』って感じで」「例えば(台本の)この2行のセリフは言わないで、その2行分ぐらいをその気持ちで、うなづくだけとか」「生々しい視線でお願いします」

 セリフの言い方や会話のテンポ、ニュアンスなどは、脚本に書かれた時点で具体的なイメージがあるようです。でも演じている最中に、江本さんがその場で新しいセリフを追加していくこともありました。そのセリフがあまりに絶妙で、思わず吹き出してしまうほど面白い!

 【写真左から】池谷のぶえ、江本純子(作・演出)、内田慈、柿丸美智恵
2gekimo2_retsu.JPG

 セリフを増やす以外にも、セリフの順番を入れ替えて会話の構造を作り変えるなど、新しいアイデアを即座に試して採用していきました。江本さんの提案に素早く、柔軟に対応する、女優さんたちの適応能力の高さに驚かされます。
 
 江本「これまでは2人芝居が続きましたが、今回は成熟した人たちと未成熟な人たちがちゃんと会話をする芝居にしたいと思って、5人の女優さんに出てもらうことにしました。成熟した大人の女性役は、上手にコメディーができる池谷のぶえさんと柿丸美智恵さん。のぶえさんはシニカルな感じでイケる!と思って。柿丸さんはずっと一緒にやってきた仲間です。
 この2人と対峙する未成熟な若者を演じるのは3人のイケイケの女優さん。まずは年々パワーアップしてる内田慈さん。彼女はポツドール『愛の渦(再演)』で共演した“ソウルメイト”なんですよ。内田亜希子さんは商業演劇の世界からやってきたサラブレッド的な“姫”みたいな(笑)。そして安藤聖さんは“天使”。他の4人とはまた違うタイプですね。」

 【写真左から】内田亜希子、柿丸美智恵、安藤聖、池谷のぶえ
4gekimo2_odoroki.JPG

 通し稽古が最後まで終わったところで、江本さんの「質問ありますか?」の問いかけに、池谷さんの手が上がりました。脚本に新しく加わった部分が、演じる人物の立場・性格を変える要素になったようです。
 江本「なるほど、どこからその気持ちになるのか、その人物にとっての辻褄を検証していきましょう。」

 芝居の中で女同士がおしゃべりをしている感覚が、フィードバック(ダメ出し)中もシームレスに続いているようでした。張りつめた緊張感はなく、のびのびとしたコミュニケーションが生まれています。

 【写真左から】安藤聖、柿丸美智恵、内田亜希子、内田慈、江本純子(作・演出)、池谷のぶえ
3gekimo2_shitsumon.JPG

 江本さんは気さくで、正直で、饒舌で、情熱的で、とてもサービス精神旺盛な方だとお見受けしました。すらすらとよどみなく、流れるようにつむぎ出される言葉は、くめども尽きない泉のよう。
 これらの要素がそのまま凝縮され、てんこ盛りになっているのが(笑)、このお芝居だと思います。つまり“劇団、江本純子”はその名のとおり“江本純子”そのものなんですね。

 女優5人がひっきりなしにしゃべり続けて、みっともなくも愛らしい女の本性をさらけだします。江本さんは「娯楽やサービスを意識しないで」とおっしゃっていましたが、毒の効いた笑いが満載のコメディーに仕上がりそうです。
 江本「私は女性は誰もが“魔界”だと思っていて。いくら“天使”でも本質は“魔界”。5人の魔界を観に来てください(笑)。」

劇団、江本純子 vol.2
出演:池谷のぶえ 内田慈 内田亜希子 安藤聖 柿丸美智恵
作・演出/江本純子 美術/伊藤雅子 照明/吉岡靖 衣裳/中西瑞美 舞台監督/大島明子 宣伝美術/two minute warning チラシイラスト/辛酸なめ子 WEB/rhythmicsequences 制作/照井恭平 制作統括/樺澤良 企画製作/毛皮族
前売3,300円 当日券3,500円(整理番号付自由席)
http://www.kegawazoku.com/gekiemo/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 15:26 | TrackBack

2009年07月22日

ペンギンプルペイルパイルズ『cover』07/17-26本多劇場

 倉持裕さんが作・演出されるペンギンプルペイルパイルズの新作は、第14回公演にして劇団初の本多劇場進出公演。劇団員がすでに大劇場でご活躍の方々ばかりなので、ちょっと意外な気も。

 ほぼ反射的に吹き出しちゃうような力強い、だけどサラッと通り過ぎていく笑いがツボ。カーテンコールが終わった後に、舞台に静かにたたずむ装置を見つめて、しみじみと作品全体を振り返りました。帰り道の味わいが深かった。上演時間は約1時間50分。あ、パンフ買い忘れた!(涙)

 ⇒チケットぴあ「cover」特設ページ
 ⇒CoRich舞台芸術!『cover

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 姉は三十年前に姿を消した。
 二人の弟(玉置孝匡&吉川純広)はすでに諦めていた。
 ある日孤独な漁師(谷川昭一朗)がタコを釣る。
 タコの背に手紙が張り付いていた。
 姉が子供の頃に風船で飛ばした手紙。
 弟達は手紙を引き取りに漁師を訪ねる。
 差出人が死人だと聞いて漁師は落胆する。
 電話が鳴り、受けた漁師は飛び出して行く。
 お返事お待ちしています、と女の声は言った。
 ≪ここまで≫

 ゴムの木(と家政婦は呼ぶ)が、つたの幹のようにからみついた装置。おとぎ話や怪談を想像させます。
 姉が出した手紙を取り合いながら、漁師と兄弟がたどりついたのは、今まさに朽ちようとしている古い小屋。奇妙な縁に結ばれて、出会うはずがなかった“きょうだい”たちが、ともに一夜を過ごすことになります。

 倉持さんが作る笑いのシーンでは、役者さんが人形劇の人形のように見えることがあり、そのしたたかな計算や精巧な動き(演技)が魅力的。人間が人形に見えることで、風刺性が高まる効果もある気がします。

 鈴木砂羽さん演じる千都(ちづ)の行動に「なぜ?」と疑問符がついたまま、次々に起こる不思議かつ不可解なことを眺めていました。最後にその理由が明かされて・・・ハァ、とっても切ないです。

 ここからネタバレします。これからご覧になる方は絶対読まないでくださいね。

 冒頭のカーチェイスのシーンで爆笑。車がガードレールにぶつかって火花が飛び散ってるヨ!鹿が飛んでくるヨ!

 鳥塚勝(とりづか・すぐる:玉置孝匡)とその弟・信樹(のぶき:吉川純広)が出会った千都(ちづ:鈴木砂羽)は、小学5年生の時に突然姿を消し、そして父と母宛てにお詫びの手紙を書いた姉本人だったとわかります。でも、千都はなぜ美野家にとどまっているのか、なぜ勝らに本当のことを言わないのかが全くわからないままでした。

 最後の最後に、漁師の万田(谷川昭一朗)がつぶやいた「あの子(隆輝:近藤智行)は君たち(千都と慎平:小林高鹿)の子供なんだろう?」というひとことで、やっと全ての疑問が解けました。
 11歳の時に“キチガイ”の長兄によって、むりやり美野(みの)家にさらわれてきた千都は、次男の慎平との間に隆輝を生んだんですね。2人とも若すぎたから、年の離れた三男として隆輝を育ててきた。離れの小屋に並んだ3つの勉強机は、本当は夫婦とその一人息子が使っていたものだったのでしょう。

 大金持ちだったのが今や落ちぶれてしまった美野家。母と兄がいなくなって、家も土地も借金のかたに取られるというのに、まだ家政婦(ぼくもとさきこ)を雇っている姉弟たち。千都は「斜陽」『桜の園』を例に出していました。
 30年前から今までに美野家で起こった出来事を、自分の頭の中で勝手に想像してしまいます。金持ちならではのエゴや、世間体・体裁を最優先にする家庭の事情、傲慢で臆病なおぼっちゃんたち・・・。隆輝が知的障害児(?)なのは、何が原因なのかしら・・・。千都、慎平、隆輝の3人で勉強部屋にいる景色が、おのずと浮かんできて、とても切ない気持ちになります。洋服ダンスからつながった地下の池での魚釣りは、隆輝が本気で楽しんだ幸せな思い出になるのでしょうか。

 車に跳ねられたけれど、まだ虫の息をして生きている鹿を楽にさせようとして、隆輝が撃った銃の音が響いていました。『かもめ』『三人姉妹』の最後に鳴る銃声、『桜の園』の最後に響く、桜の木を切り落とす音を思い出しました。

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PenguinPullPalePiles #14「cover」
出演:鈴木砂羽 小林高鹿 ぼくもとさきこ 玉置孝匡 近藤智行 吉川純広 谷川昭一朗
脚本・演出:倉持裕 舞台監督:橋本加奈子(SING KEN KEN) 舞台美術:中根聡子 照明:清水利恭(日高照明) 音響:高塩顕 衣裳:竹之内康宏 音楽:SAKEROCK ヘアメイク:栗原由佳 演出助手:相田剛志 演出部:武藤晃司(SING KEN KEN) 山松由美子 金子晴美 前田雅洋 越野ありさ 衣裳部:胡桃澤真理 記録スチール:引地信彦 宣伝美術:坂村健次(C2デザイン) 宣伝写真:江隅霊志 宣伝衣裳:竹之内康宏 宣伝ヘアメイク:山本絵里子、浅沼靖 パンフレット編集:石井美幸 大道具製作:C-COM舞台装置 小道具:高津映画装飾 制作助手:新貝美奈子 市川美紀 制作:土井さや佳 企画・製作・お問い合わせ:ペンギンプルペイルパイルズ
料金(全席指定) 前売 4,700円 当日 5,000円 劇団サイト限定「初日プラスリピート割引」9,400円→8,900円!
http://penguinppp.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 23:11 | TrackBack

ひょっとこ乱舞『旅がはてしない』07/17-21東京芸術劇場 小ホール1

 広田淳一さんが作・演出されるひょっとこ乱舞の第21回公演『旅がはてしない』は、1日限りの「サナギ版」(5/13)を経た本公演でした。しかも再演作なんですね。

 カラフル・ポップな80年代っぽいカジュアルな衣裳で、大勢の若い役者さんが踊り、走ります。上演時間は約2時間30分休憩なし。

 ⇒CoRich舞台芸術!『旅がはてしない

 ≪あらすじ≫
 地上30cmから90cmの間にある「ミネストローネ」という空間。住人は周期的にやってくる「シャッフル」によって任意にグループ分けされていく。そこでは体を自由に取り替えることができるのだ。
 ≪ここまで≫

 「神様が“世界”を作った。色んな生物が生まれて繁栄する“世界”がだんだん面白そうに見えてきて、神様は自分も地上の生物(たとえば人間)に変身して、“世界”にもぐり込んだ。神様は次第にそこでの暮らしに夢中になり、自分が神様であることを忘れて、子子孫孫、“世界”に住み着いてしまった」という話を本で読んだことがあります。そのイメージにぴったりでした。

 下手奥から上手手前へのびる道を走り、ぐるぐるを右回りに円を描いたり、同じリズムで上にジャンプし続けたりする動きは、細胞、血液、鼓動(胎動)などを思い起こさせました。ダンスのシーンは動き自体も観ていてとても楽しいです。 宇宙、生命といった壮大でつかみにくいものを、舞台空間で人間の体によって表現しているのが面白いと思います。

 体を自由に取り替えられるなら、人間とは一体何なのかという問いかけに、先日観た『現代能楽集 鵺』も思い出しました。
 核心をつくセリフに現代社会に対するメッセージも込められている気がするのですが、枝葉の(といってもいいであろう)部分にも、核心部分と同じ力量が込められているため、肝になる部分が見えづらくなっているのではないでしょうか。

 ここからネタバレします。

 「ミネストローネ」を作った3人が、「希望と絶望」「忘却と再生」「記憶と問いかけ」(たぶん)であったのが面白かった。

ひょっとこ乱舞第21回公演 ※7月21日17時 追加公演決定!
出演:チョウソンハ 中村早香 橋本仁 笠井里美 松下仁 根岸絵美 齋藤陽介 コロ(柿喰う客) 平舘宏大 青木宏幸 梅澤裕介(梅棒) 鶴田祐也 田邉恵弥 新美要次 池亀三太 荒木昌代(ノーフューチャーズ) 板橋駿谷(掘出者) 松尾英太郎(劇団スパイスガーデン) 北島大獅(ビビプロ) 右手愛美(トップコートエージェンシー) ※今回出演を予定しておりました舞香は、健康上の理由により出演を見合わせる事となりました。
【脚本・演出】広田淳一 【舞台監督】宮田公一(Y's factory)【舞台美術】大泉七奈子【照明】三浦あさ子(賽【sai】)【音響】平井隆史(末広寿司)【制作】柏戸綾
■前売 一般3,200円 学生2,000円 高校生以下1,000円 平日昼間2,700円 ペア5,400円 タダ観でゴー!0円(枚数限定)  ■当日 一般3,500円 学生2,300円 高校生以下1,300円 平日昼間3,000円  ■リピーター割引 1,000円  
http://hyottoko.sub.jp/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 16:45 | TrackBack

【写真レポート】新国立劇場演劇『ヘンリー六世』制作発表07/21オペラパレス・ホワイエ

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『ヘンリー6世』メインキャスト

 新国立劇場演劇2009/2010シーズンの幕開けを飾る、『ヘンリー六世・三部作一挙上演』の制作発表が行われました。演出は、新国立劇場・演劇部門の芸術監督である鵜山仁さんが自ら手がけます。キャストが30名以上勢ぞろいした豪華な会見でした。
  ⇒会見動画あり!「演劇情報サイト・ステージウェブ」(2009/07/24加筆)

 全三部作・9時間を一挙に上演するのは、翻訳の小田島雄志さんいわく「皆既日食を見るよりも難しい」ほど珍しいことだそうです。私も初めてなので、ラインアップが発表された時からすごく楽しみにしていました!

 毎回好評の<シアター・トーク>(11/3マチネ開催)をはじめ、<シェイクスピアとヘンリー六世展>、<新国立劇場のシェイクスピア作品の公演記録映像の一挙上映>、そして<シェイクスピア大学校・6回連続講座>の開講など、無料で楽しめる企画も盛りだくさんです。

 ●新国立劇場演劇2009/2010シーズン『ヘンリー六世』⇒特設サイト
  2009年10月27日(火)~11月23日(月・祝)
  第一部 「百年戦争」⇒CoRich舞台芸術!
  第二部 「敗北と混乱」⇒CoRich舞台芸術!
  第三部 「薔薇戦争」⇒CoRich舞台芸術!

 【チケット】
  一般発売日:2009年7/26(日)
  S席7,350円 A席5,250円 B席3,150円 Z席1,500円
  三部特別通し券(S席セット)は19,500円(定価22,050円のところ)
  ※劇場会員向けの前売りは始まっており、通し上演の日が人気だそうです。

■鵜山仁さん
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 鵜山「『ヘンリー六世』は取り澄ました王族の話ではなくて、ひとことで言えば「人間はなんて馬鹿だったんだろう」という三部作(笑)。人間の悪戦苦闘を描くことで、これから多少なりとも賢く生きていく知恵を実感できたら。私にとっては30年ほど芝居をやってきた蓄積の総決算、そしてこれからに向けての再出発になる作品にしたい。」

 鵜山「この劇場はひとことでいえば“みんなの劇場”。だから我々は、みんなに利用していただくためのサービスをしていきたい。稽古は8月から始まり、それから11月にかけては“開かれっぱなしの劇場”にします、“シェイクスピア大学校”など、無料でアクセスしていだけける仕掛けも準備しています。一人でも多くのお客様に足をお運びいただきたい。」


■小田島雄志さん
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 「私は『ヘンリー六世』を今までに一度しか観ていません。シェイクスピア・シアターの全作上演以来です。あの時の衝撃は今でも覚えている。翻訳している間は(Henry、Elizabethら同じ名前の登場人物が多い等、訳をすることが困難なので)よくわからなかったが、舞台を観ている内に、ものすごく面白い芝居だと気づきました。ざっと50年にわたる歴史のうねりが綿々と出てきて、登場人物がそれぞれのドラマをはらんで持ってくるのです。私は来年80歳になりますが、『ヘンリー六世』を観るのは2度目。皆既日食を見るより難しいんです(笑)。ぜひ多くの皆さんにご覧頂きたい。」


■浦井健治さん
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 「大先輩方に囲まれて、『ヘンリー六世』のタイトルロールをやらせていただけることを光栄に思い、同時にものすごくプレッシャーを感じています。9時間という壮大な演目であることも含め、初めてのことばかりで、何もかもが未知数です。今日までの数ヶ月は、鵜山さんにマンツーマンで稽古をつけていただきました。やればやるほど自分が不甲斐なくなり、これはヘンリーの気持ちにも通じるのかなと思っています。ぶちあたって、挫折しながら、そして皆さんのお力を借りて精進していきたいです。」


■中嶋朋子さん
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 「私はシェイクスピアもほとんどやったことがなく、しかも大作で、これだけの諸先輩方とご一緒させていただいて。とてつもない大海原に、小さなボートで漕ぎ出していくような気分です。楽しんでやれたらと思っていますが、まずは楽しんでやれる余裕ができるところまでいきたい(笑)。小田島先生がおっしゃるように、なかなか観られる作品ではないので、皆様に面白かった、観て良かったと言っていただけるものにしたい。」

■渡辺徹さん
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 「ある本に、生き物のサイクルとして、今の人間はそろそろ進化しなきゃいけない段階に来ていると書かれていました。進化とは欠点を補うべく先に進むこと。そして今の人間の欠点はというと、争いがベースになっていることらしいのです。争わないのが人類の進化した形態だというならば、『ヘンリー六世』は争いの話なので、むしろより人間的で、人間のいとおしさも哀れさも詰まっていると言えると思います。旧態然とした人間の魅力の総決算のような話。逆説的に言えば、これをやることによって進化していけたらいいのかなと。
 この作品は欲をむき出しにする芝居です。実は、去年の暮れに役作りのために痩せたんですが、また太ってしまったんです。欲を抑えきれなかったんですね。自分のそんなところを生かして(笑)、役に臨みたいと思います。」


■村井国夫さん
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 「私が俳優を志してから色んな舞台で観てあこがれたり、好きだったり、“こんな俳優になりたい”と思って見ていた諸先輩方が、(共演者の中に)沢山いらっしゃいます。『るつぼ』『美しきものの伝説』『薮原検校』など数多くの名舞台を作った先輩と、一緒にできることを光栄に思っています。自分も年を重ねておりまして、9時間という芝居で体力や精神力が持つかどうか、セリフをおぼえられるかどうか・・・ねえ○○さん(←壇上の共演者に話を振って。場内で笑いが起こる)。がんばっていきます。」


■ソニンさん
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 「ジャンヌ・ダルクを演じさせて頂きます。出演のお話をいただいた時にすごく惹かれたのは、私にとって初のシェイクスピアであること、3部作であること、そして大先輩に囲まれてお芝居ができること。また、ジャンヌにとって対戦国であるイギリスを舞台にした作品で、ジャンヌを演じられることに、すごく魅力を感じました。今の時代に伝わる、ジャンヌのメッセージを込めて演じることができたら。稽古場で足を引っ張らないようにがんばりたい。」


■上杉祥三さん
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 「今は亡きグローブ座カンパニーで、多い時は年間6~7本のシェイクスピア作品をやらせていただきましたが、この10数年はずっと機会がなかった。もう一生お呼びがかからないかもと思っていたら、鵜山さんおよび新国立劇場に呼んでいただき、しかもシェイクスピアの処女作ということで、心から感謝します。シェイクスピアのセリフは長いですし、覚えるのも大変。舞台上で1人でしゃべっている時のあの孤独感、寂しさ、苦しみたるや、俳優にとってこんなに大変な芝居はないんじゃないかと思ってます。でも、達成感も大変なもの。それをもう一度やらせてもらえることに感謝しています。」


■木場勝己さん
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 「芝居が3本分あるので・・・長いです。私の役は途中で死ぬのですが、稽古中に戦死しないように、生き延びようと思っています。ここのところ、(お芝居をやる際の)カンパニーでは自分が最年長のことが多くて、年取っちゃったな~と思ってたんですが、(周囲を見回して)ここではまだ若手でした(笑)。どうぞよろしくお願い致します。」


■岡本健一さん
 「私が演じるリチャードは生まれながら、というか、母親のお腹にいる時から神にも愛にも見放されたような役。残忍で残酷で、戦って上にのしあがっていくことにしか、喜びを感じないんじゃないかというぐらいに。今の世の中のすべての悪人や怪物等の原点のような気がします。リチャードはたくさん人を殺します。チラシの裏面にある全キャストの顔写真を見ながら、今回はこの人だ、次はこの人だ、残酷な殺し方をするのはこの人だ、とか(笑)。今は“草食系男子”とか言いますけど、リチャードは肉食。肉しか食べてないですね、もうひどい(奴)です。
 共演者に、客席で観て刺激を受けた人たちがいっぱいいて、本当に楽しみにしています。先ほど控え室では、膝が痛い、腰が痛い、剣が振れるのか、歯が取れた、とか・・・(笑)。そんな話を耳にして、なんて平和なんだろうと思って。でも、平和であるからこそ残酷なことができるし、復讐にも燃えられるんだと思います。稽古場では仲良く平和でいきたいと思います。」

 【出演者と演出家ら、登壇者の集合写真】
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■演出家への質問

 質問「今の観客にとって受け入れられる(受け入れやすい)点、面白い点とはなにか?」
 鵜山「出演者は合計37人ですが、2~3役やっていただく方も多いので、登場人物はもっともっと多くなります。それらの一人ひとりのものの見方、考え方が群像的に重なってひとつの世界をつくっている。ひとつの物事が、ある角度から見るのと別の角度から見るのとでは、全然違う世界になっているように。そういった多様性やバイタリティは、いつの時代も、より良く生きていくための力になるんじゃないかと思う。」

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 質問「演出において一番苦労してる、もしくはこれから苦労しそうな点は?」
 鵜山「僕は、自分の考え方や見方と全然違う表現に出合うと、カタルシスや快感を感じることがあります。『ヘンリー六世』には、今までの殻をやぶっていくような、ものの見方・考え方が、毎ページ毎ページ、1行1行のセリフにあふれている。一行一行でものの見方がひっくり返されていくのは、楽しいというか、途方も無いというか。それをどういう風に整理していったらいいのかが大変だと思う。一人で机の上で本を読んでいるのはそろそろくたびれてきたので(笑)、一日も早く稽古を始めて、×(かける)37以上の色んなものの見方、考え方を、ぜひ楽しみたい。」

 質問「時代設定や衣裳、装置などについて、演出面で決まってることは?」
 鵜山「中劇場をフルに使います。手前に池があって奥に平原が広がっている、世界そのもののミニチュアのようなセットの中で、今まで我々が蓄えてきた翻訳劇や芝居のイメージみたいなものを、色んな異相で示したい。ある意味ごった煮というか、トータルにイメージできるような世界にしたい。別の言い方をすれば、“ゴミの山の上でやっている『ヘンリー六世』”。歴史の積み重ねというのは視覚的に考えると、ある意味“ゴミの集積”であり“宝の山”であるという、矛盾したところがある。そういうものが積み重なって肥沃な土になったり、我々の精神を形作っている。時代をどう設定するかは、今、すったもんだしている最中です。」

 【写真左より:木場勝己/ソニン/村井国夫/中嶋朋子/浦井健治/渡辺徹/上杉祥三】
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 シェイクスピア、3部作連続、9時間上演・・・という難題に難題が上乗せされた、日本演劇界における世紀の大イベント。
 出演者、スタッフの皆さんと、9時間(休憩を含むと10時間以上?)の旅をぜひ共にしたい気持ちはあるのですが、私は恥ずかしながら体力が無い方ので、各部の初日を3連夜で鑑賞(10月27日、28日、29日)したいと思っています!

 シェイクスピア作品の公演記録映像は、演劇の中で唯一見逃している『リア王』(1998年上演/演出:鵜山仁/主演:山崎努)が観たい!日程は劇場サイトで発表されます。シェイクスピア大学校も無料なんて驚き!開講スケジュールは、上演とあわせて連続で参加できるようになっています(平日開催)。

【出演】浦井健治/中嶋朋子/渡辺徹/村井国夫/ソニン/木場勝己/中嶋しゅう/上杉祥三/立川三貴/木下浩之/久野綾希子/鈴木慎平/今井朋彦/金内喜久夫/菅野菜保之/勝部演之/鈴木瑞穂/岡本健一/吉村直/水野龍司/青木和宣/渕野俊太/那須佐代子/浅野雅博/小長谷勝彦/石橋徹郎/清原達之/城全能成/古河耕史/内田亜希子/前田一世/(記者発表欠席:関戸将志/篠原正志/小田悟/川辺邦弘/松角洋平/津村雅之)
【作】ウィリアム・シェイクスピア【翻訳】小田島雄志【演出】鵜山仁【美術】島次郎【照明】服部基【音響】上田好生【衣裳】前田文子【ヘアメイク】馮啓孝【アクション】渥美博【演出助手】保科耕一【舞台監督】北条孝【芸術監督】鵜山仁【主催】文化庁芸術祭執行委員会/新国立劇場
S席7,350円 A席5,250円 B席3,150円 Z席 1,500円 ●お得な三部作特別割引通し券S席セット:19,500円(正価22,050円)※お申込:新国立劇場ボックスオフィスのみ
※11月9日(月)、17日(火)は学生団体が入ります。
http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/20000543.html
http://www.atre.jp/henry/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 14:01 | TrackBack

2009年07月20日

新国立劇場演劇『現代能楽集 鵺(ぬえ)』07/02-20新国立劇場小劇場

 鵜山仁芸術監督が坂手洋二さんの新作を演出する、新国立劇場・演劇2008/2009シーズンの締めくくりの1本です。世阿弥の謡曲をもとに妖怪“鵺(ぬえ)”を描く、三部構成の戯曲でした。

 出演者は歌舞伎俳優の坂東三津五郎さんをはじめ、田中裕子さん、たかお鷹さん、村上淳さんという、経歴も個性もさまざまな4人の役者さん。

 第一部で違和感に戸惑い、第二部でなるほどと納得し、第三部で再び奇妙キテレツな世界に連れて行かれました。そしてラストが・・・もの凄かった。強烈なお芝居でした。

 ⇒演劇「現代能楽集 鵺」お客様の声
 ⇒CoRich舞台芸術!『現代能楽集 鵺

 あまりに、何が何だかわからなくて、観ている時も、観た後も、頭の中で何もまとまらなくて、言葉が出ないことがあります。久しぶりにそんなお芝居に出くわしてしまったな、と(笑)。でも決して「面白くない」「つまらない」とは思いません。実際、舞台からずっと目が離せなかったですし。

 鵜山さんの感性というのか、世界観というのか・・・私には到底ついていけないところにあるのだろうなと思いました。来シーズンの『ヘンリー6世』三部作連続上演で再チャレンジします!(笑)

 ここからネタバレします。

 転換の時に流れるロマンティックなピアノ曲も、ものすごく不思議でした。日本およびアジアのお話なので、ぴったり合っているとは思えず(合う必要はないですが)。なぜあんなにムーディーな音楽だったのかしら。今となってはそのミスマッチが狙いだったのかもと思いますが。

【1.頼政と鵺】
 -源平合戦中の宇田川の縁。奇妙な鳴き声が聞こえる。すると、面をつけた女(田中裕子)が船にのってやってきた。

 源平時代の日本語がわかりづらく、村上淳さんのセリフが聞き取れなくて、ほとんどセリフが耳に入ってこない状態で鑑賞。でも誰が敵で、誰が困っているのかぐらいはわかりました。老武者・頼政(たかお鷹)が殺したトラツグミが、鵺(坂東三津五郎)となって現れたんですよね?第1部は死んだ動物が鵺になって、人間を襲うお話・・・かしら。

 大きな透明ビニールに動画が映写され、その奥で鵺になった坂東三津五郎さんが暴れ(?)ます。頭が猿なので、目の周りに赤いメイクをしているのが、私には可笑しくて・・・。歌舞伎っぽいのを狙ったのかしら。とにかく、笑っていいのか怖がっていいのか(笑)、どうしていいのかわからないまま、凝視していました。面白いとか面白くないとかじゃないんですよね、こういう場合。

【2.川向こうの女】
 -舞台は現代日本。男(村上淳)がいなくなった飼い犬を探していると、昔つき合っていた女(田中裕子)と偶然に出会う。
 第2部は捨てられた女が鵺になって、男に復讐するお話だったのかな。

 「火の用心」と書かれたちょうちんを持って、夜回りのおじさん(たかお鷹)がやってきます。この川は三途の川で、夜回りは鬼なんだなと思いました。第1部でもそうだったように、水と死がつながってるんですね。ガイコツの絵が描かれた丸い石が転がってましたしね。

 たしか天皇についてのセリフが沢山あった気がするのですが、第三部があまりに強烈だったので(苦笑)、忘れてしまいました。
 男と女のエロティックなからみが良かった。でも船がぐるぐる回るのはどうなんでしょうか、あれは笑っていいのでしょうか。ぬー、わからない!

【3.水の都】
 -アジアのある国で行方不明になった夫(たかお鷹)を探す女(田中裕子)。夫の部下(坂東三津五郎)とガイドの若者(村上淳)とともに、異国の地下の水脈へ。夫は日本企業の海外支社で働く裏で、臓器売買、人身売買などに手を染めていた。

 冒頭で、たかおさんが何種類ものパスポートを持ってげらげら笑いながら1人でしゃべっていました。全然意味わかんない!でもすっごく面白い!(笑)
 水上パペットショーとか、激しく動きまくる黒子とか、客席やロフト部分が演技スペースになったりとか。「一体どうしろっていうの!?」と戸惑いまくり。話に入っていけないんです。笑えないんです。でも、面白くないわけではないんです。こんな体験、なかなかできないです(笑)。

 最後の最後に、ものすごいシーンが用意されていました。なんと4人が物理的に合体するんです!体をくっつけて!肩車して!劇場全体がぐにゃりと曲がって、俳優と観客も合体し、すべてがべっとりとくっついて、“鵺”になったように感じました。

 第1部では動物が鵺になり、第2部では人間が鵺になり、第3部ではすべてが鵺になった、ってことかしら。他人の臓器を自分の中に入れたり、人間を売ったりしているんですものね。

2008/2009シーズン
出演:坂東三津五郎 田中裕子 たかお鷹 村上淳
脚本:坂手洋二 演出:鵜山仁 美術:堀尾幸男 照明:小川幾雄 音響:秦大介 衣裳:前田文子 演出助手:上村聡史 舞台監督:増田裕幸 芸術監督:鵜山仁 主催:新国立劇場
【発売日】2009/05/09 A席:5,250円 B席:3,150円 Z席:1,500円 ※料金は税込みです。
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000067_play.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 15:04 | TrackBack

2009年07月18日

ホリプロ『ブラックバード』07/17-08/09世田谷パブリックシアター

 内野聖陽さんと伊藤歩さんの2人芝居は、デヴィッド・ハロワーによる2007年度ローレンス・オリビエ賞最優秀作品賞受賞作。演出は栗山民也さんです。ハロワー作品は一度観たことがあります

 男女2人だけの密室劇。ラストは・・・少々ショックでしたが納得で、面白かったです。上演時間は約2時間弱。

 ⇒『内野聖陽が当惑する英国産「どうだみたか演劇」とは?』(by 岩城京子)
 ⇒CoRich舞台芸術!『ブラックバード

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 15年前に未成年者に対する行き過ぎた行為で有罪判決を受け、名前も住む場所も変えて人生をやり直した男レイ(内野聖陽)の元へ、ある日突然、一人の女が現れる。それは、その事件の被害者で、ずっと同じ町に暮らし、周囲から好奇の目でみられながら生きてきたウーナ(伊藤歩)だった。
 来訪の目的がわからず怯えるレイに、ウーナはこの15年間について、そして当時の‘こと’について話し始める。やがて明らかになるふたりの本当の関係と、意外な真実とは・・・
 ≪ここまで≫ 

 つるっとした灰色の壁に囲まれた事務室(従業員の休憩室?)。必要最低限の安っぽい事務用品しか置いていない部屋を、長細い蛍光灯の明かりがぎらぎらと照らします。雑なつくりでぬくもりがないのが一目瞭然。でもイスの色がカラフルなので、ちょっとおしゃれ。都会的でシャープな質感がドイツ演劇っぽいです。

 突然の“被害者”の来訪におびえるレイ。最初はけん制しあう2人ですが、ウーナがどうしても知りたかったあの日のこと、つまり2人を引き離した事件について語り、レイがそれに応える形で彼自身に起きたことを語ります。徐々に2人の心と体の距離は縮まり・・・。

 交わされるのは、なんてことのない、短くて簡単な言葉のようなのですが、声の大きさや間(ま)など、緻密に計算された演技で、言葉の裏にあるものを豊かに想像させてくれます。長い、長いセリフを1人で話すシーンもあり、役者さんにとってはかなりハードルの高い戯曲なんじゃないでしょうか。観る方は面白いんですけど(笑)。

 最初は、ウーナの攻撃に対してレイは防御をするばかりという構図でしたが、次第にクルクルと立場が入れ替わっていきます。最後は衝撃的。謎が解けたというか、皮が剥がれたというか・・・。
 できれば笑えるところがもうちょっと増えてもいいんじゃないかと思いました。テーマがテーマなので、観客も硬くならざるを得ないのかもしれませんが。体を大きく動かしたりするところは、それだけでも可笑しかったので。

 伊藤歩さんの衣裳が素敵でした。長い髪を頭の高い部分でくくって、きりっとした表情。鮮やかなオレンジ色の半袖シャツは、高い襟がシャープなデザインになっていますが、小さいちょうちん袖で女らしい甘い印象を付加しています。黒いミニのタイトスカートから、ものすごく細い足がすらーーーっと伸びていて、最初はセクシーだと思ったのですが、徐々に子供のような足にも見えてきたんです。衣裳の妙ですね!
 内野聖陽さんは白いシャツに薄いピンクのネクタイ、灰色のスラックス。白髪交じりの情けないおじさん風。シャツが濡れることや汚れがつくことも、メタファになっている気がします。

 ここからネタバレします。 これからご覧になる方は絶対読まないで下さいね!

 近所同士だったレイとウーナは恋に落ち、40歳と12歳という年齢差がありながら、肉体関係を持ってしまいます。ホテルでの逢瀬の後、たばこを買いに外出したレイと、彼を探しに出たウーナは出会うことができず、2人の関係はそれで最後となってしまいました。レイはウーナを誘拐してレイプした罪で刑務所に6年間入ることになり、ウーナは両親の教育方針で(?)、引っ越したり名前を変えたりすることなく、同じ町で暮らし、つらい青春時代を生きてきました。

 ウーナが確かめたかったのは、なぜ彼が彼女を捨てたのかということ。それに対してレイは、彼が彼女を朝まで探したこと、電話ボックスで警察に自首する電話した時に、ウーナを失うことがつらくてずっと泣いていたことを告白します。裁判では言えなかった、そして獄中からの手紙でも伝わらなかったこと(ウーナは手紙を受け取っていないので)を、2人は初めて知ることができたのです。

 2人は抱き合い、再び体を重ねようとしますが、レイは思いとどまります。ウーナが激しく求めても、彼は「できない」と必死で拒否するのです。そこに「ピーター!」という女の声が聞こえてきます。55歳になったレイは、1つ年上の女性と暮らしていると言っていましたが、夜遅くなって彼を迎えに来たのは小学生ぐらいの可愛らしい少女でした・・・!しかも少女は「ピーター!一緒にいたいの!」と、レイにぞっこんの様子。ウーナの表情がひきつります。ソファ(だったかな)で、もだえ叫ぶ伊藤さんが凄かった。

 「(このままじゃ)帰さないわよ」としがみつくウーナの手を引き離し、レイは外に逃げます。そしてウーナが「レイ!」と彼の本名を叫び、部屋から出て彼を追いかけて・・・終幕。そうなんですよね、ピーターじゃなくてレイなんです。その真実がとうとう明るみに出るのでしょう。

 停電になるシーンがとっても素敵。レイが「動かないで、ここで待ってて。1分で戻るから」と言うのは、まさにあのホテルの夜と同じ。真っ暗闇で1人で心細くなったウーナは、一度は外に出て彼を追いかけようとしますが、気を取り直して、凛として部屋に戻ります。大人に、なったんですね。
 彼女が83人もの男性と関係を持ったというのは、悲しいし息苦しいことですよね。親に対する復讐、か。

 ピーターという偽名は・・・なんだか牧歌的でイラっとしちゃいますよっ(「アルプスの少女ハイジ」に影響されすぎ・笑)。ウーナという名前は、最後の最後に1度しか出てこなかった気がします(気のせいかも)。それが良かった。“少女なら誰でもよかった”という意味なのだろうと想像しました。
 あ、レイが「彼女は」「彼女のことは」等、何度も言っていた「彼女」って、奥さんじゃなくて、あの少女の方のこと!?

≪東京、富山、愛知、福岡、大阪≫ David Harrower's "BLACK BIRD"
【出演】レイ:内野聖陽 ウーナ:伊藤歩 少女:黒沢ともよ
作:デヴィッド・ハロワー 翻訳:小田島恒志 演出:栗山民也 美術:島次郎 照明:勝柴次朗 音響:山本浩一 衣裳:宇野善子 ヘアメイク:佐藤裕子 演出助手;豊田めぐみ 舞台監督:三上司
【発売日】2009/04/18 S席9,000円/A席6,300円
http://www.horipro.co.jp/ticket/kouen.cgi?Detail=126

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 23:31 | TrackBack

2009年07月16日

カニクラ『73&88』07/15-19アトリエヘリコプター

 カニクラは女優の川田希さんと宝積有香さん2人のユニットです。公演ごとに脚本・演出家を迎えるプロデュース形式で、今回の作・演出は柴幸男さん(青年団演出部&ままごと)。客演は坂本爽さんと玉置玲央さん(柿喰う客)という男優2人で、女2人・男2人の4人芝居です。

 優しいお話でした。『73&88』は「セブンティースリー・アンド・エイティーエイト」と読みます。上演時間は1時間10分。

 ⇒CoRich舞台芸術!『73&88』★CoRichでカンタン予約!

 あらすじを書くとネタバレになるので省略します。

 アトリエヘリコプターをそのままに使った四角い空間で、普段のまま(のように見える)役者さんが、ただ語っていくことだけで見せる非常にシンプルな現代口語劇。実現していたかもしれないもう1つの人生を語っていくことで、地続きのファンタジーにスルリと連れて行ってもらえました。

 役者×観客、役者×役者、登場人物×登場人物など、会話の組み合わせは何通りもありますが、会話をするという意味では行われることは同じなんですよね。人と人が出会って語らう時間はそれだけで楽しいし、そんな瞬間が生まれたこと自体が奇跡なんだと思わせてくれました。

 4人の役者さんと空間の四隅を使った演出にはなるほどと思いましたが、美術が何もないのはちょっと寂しかったかも。俳優そのもので勝負する作品ということですね。4人ともビジュアル的に目に嬉しい方々ばかりで眼福。・・・あ、テレビドラマになったら素敵なお話かも。ほんのりビタースイート。見てみたい。

 ここからネタバレします。

 役者さんが「川田希です。東京に来て○年になります・・・」とご本人として語り始め、“もし東京に来てなかったら”こうなったかもしれない人生についての物語が始まります。

 ある時突然、全く知らない人と頭の中で会話ができるようになった2人×2組。声だけしか聴こえないはずのコミュニケーションを顔を見ながら取ったり、「ゴハンを食べますね」と言いながら食べてなかったり。柴さんらしい演劇的なトリックが面白いです。
 東京、北海道、大分という具体的な距離が、目の前にいる役者さん同士の距離として自在に縮まったり広がったりするのを見て、人間の脳の可能性を感じたりも。

 北海道で暮らす姉(宝積有香)と、家を飛び出した弟(玉置玲央)の電話での会話には疑問が残りました。家族に一方的に怒られるのがわかっていたから、弟は怖くて電話しなかったわけで。姉があんなに怒っちゃったら、弟はゴメンとか言わずに切っちゃうんじゃないかと思いました。まあ弟が大人になったってことなのかな。私なら怒らないです、弱虫なので(笑)。

 最後は4人で輪になってたわいない話をして、そして「さようなら」と言い合い、4方向にちりじりに去っていきます。ビッグバンみたい。
 当日パンフレットによると『73&88』は、アマチュア無線用語で通信の最後に使う「さようなら」という意味だそうです。そういえば仮タイトルは「テレパス」だったよな~。

カニクラvol.2
出演:川田希 宝積有香 坂本爽 玉置玲央(柿喰う客)
脚本・演出:柴幸男(青年団演出部) 舞台監督:寅川英司+鴉屋 照明:森友樹 宣伝デザイン:青井達也(Northem Graphics) 宣伝スチール:松田直巳 映像撮影:百束尚浩 当日運営:也田智哉 制作協力/ZuQnZ 協力:tsumiki promotion 企画制作:カニクラ アフタートークゲスト:行定勲 上田誠
【発売日】2009/05/30 2500円(前売り・当日共に)整理番号付き自由席。16日14時の回は平日マチネ割引で2000円でご覧いただけます。
http://ameblo.jp/canicula88

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 09:53 | TrackBack

2009年07月15日

【お知らせ】「CoRich舞台芸術まつり!2009春」グランプリ発表!

 今年4月から6月まで開催されておりました「CoRich舞台芸術まつり!2009春」のグランプリが発表されました!
 ご参加くださった皆様、ありがとうございました♪

 ⇒グランプリ発表ページ 
 ⇒シアターガイド演劇ニュース

 審査員をつとめさせていただくのもこれで3度目。今年はグランプリに加えて準グランプリ、俳優賞が新たに創設されました。
 来年の開催が早々と決まっていてとても嬉しいです。ご興味のある団体の方は、ぜひスケジュールをチェックしてくださいね!

 ●「CoRich舞台芸術まつり!2010春」
  応募期間:2010年初旬~下旬
  開催期間:2010年3月~5月

Posted by shinobu at 22:55 | TrackBack

2009年07月14日

【オーディション】チェルフィッチュ「『三月の5日間』ツアー・出演俳優オーディション開催」※8/10(月)郵送必着

 岡田利規さん率いるチェルフィッチュが、代表作『三月の5日間』(過去レビュー⇒)の2010年ツアー(海外)出演者を募集しています。オーディション情報は下記をご覧下さい。
 
■申し込み締切
 2009年8月10日(月)必着

■オーディション開催概要
 第1次審査:書類選考 2009年8月10日郵送必着
 第2次審査:ワークショップ形式
  日時:2009年8月20日(木)~22日(土) 17時~21時(いずれか1日)
 第3次審査:オーディション・面接
  日時:2009年9月4日(金)・5日(土)

【『三月の5日間』ツアー 出演俳優オーディション開催!】 公式サイトより

 この度、2010年に予定している『三月の5日間』ツアーの出演俳優を募集いたします。
 募集内容」および「オーディション開催概要」をご確認のうえ、お申し込みください。たくさんのご応募お待ちしております。

■募集内容
1.公演日程
 2010年3月中旬 香港公演
    10月下旬~ オーストラリアツアー

2.稽古日程
 2009年11月を中心に、2010年1月~3月の間で調整
 急な坂スタジオ(横浜)にて

3.募集人数
 男性3名(「男1」「男2」「男4」役)

■オーディション開催概要
第1次審査:書類選考  09年8月10日必着

        ▼

第2次審査(第1次選考通過者対象):オーディション(ワークショップ形式)
・日時:09年8月20日(木)~22日(土) 17時~21時(いずれか1日)
・場所:急な坂スタジオ(横浜)

        ▼

第3次審査(第2次選考通過者対象):オーディション・面接
・日時:09年9月4日(金)・5日(土)
・場所:急な坂スタジオ(横浜)


■応募資格
・稽古(特に2009年11月)に全日程参加できる方
・上記公演/ツアーに必ず参加できる方
 ※選抜者には、今後チェルフィッチュのその他の活動(新作など)にもご参加いただければと考えています。

■申し込み方法
以下のものを、下記まで郵送願います。
・プロフィール  
・写真2枚(全身/顔)
・お名前、ご住所、お電話番号、携帯電話番号、メールアドレス(PCおよび携帯電話)
・これまで観たチェルフィッチュの作品名および、チェルフィッチュのどこに興味をもっているか。(400字以内)
※オーディション日程に参加不可能な日がある方は、申込時にお書き添えください。

■申し込み締切
 2009年8月10日(月)必着

■お申し込み・お問い合わせ先(担当:中島)
 プリコグ
 〒150-0001
 東京都渋谷区神宮前1-10-34-305
 Tel:03-3423-8669 mail: info(アットマーク)precog-jp.net

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 13:31 | TrackBack

2009年07月13日

世田谷パブリックシアター『奇ッ怪~小泉八雲から聞いた話』07/03-20シアタートラム

 イキウメの前川知大さんの新作。仲村トオルさん、池田成志さん、小松和重さんら豪華キャストが揃った世田谷パブリックシアターのプロデュース公演です。メルマガ号外を発行しました。

 怖い怪談も爆笑喜劇もある、5編からなる娯楽芝居。ストーリーがとても面白かったので記録を残しておこうと思います。以下はすべてネタバレ感想です。

 ⇒CoRich舞台芸術!『奇ッ怪

≪あらすじ≫ パンフレットより。(役者名)を追加。
 山の中、カーナビにも載っていない古びた旅館に、男が二人(池田成志&小松和重)やって来る。
 人気のないその宿は先客の男が一人(仲村トオル)いた。
 いつしか話し込んでいく三人。
 発端は、この土地に伝わる奇怪な言い伝えだった。
 物語が、語り部が変わるごとに、
 少しずつそれぞれの立場が見えはじめていく・・・。
 ≪ここまで≫

 ここからネタバレします。

<常識>
 【出演者】語り部:仲村トオル 猟師:池田成志 住職:小松和重 若い僧:盛隆二

 ある寺に毎夜、象に乗った菩薩様がやってくる。恐ろしくなって猟師が菩薩を撃つと、それは大きな狐だった。

<破られた約束>
 【出演者】語り部:池田成志 夫:仲村トオル 前妻:岩本幸子 夫の友人:小松和重 使用人A:浜田信也 使用人B:盛隆二 後妻:伊勢佳世 女中:歌川椎子

 病気で死んだ前妻との約束をやぶって、夫は後妻をめとる。前妻が眠る梅の木の下から鈴の音が。後妻は前妻の幽霊に首をひきちぎられて死んでしまう。

<茶碗の中>
 【出演者】語り部/ミヤジ:小松和重 タガミ:池田成志 青年:盛隆二 男:仲村トオル 警備員:浜田信也 女:岩本幸子

 ある夜、検死官の宮地(小松和重)の湯のみの中に、見知らぬ男の顔が映る。湯のみの中の男は宮地の目の前に実体となって現れ、そして遺体安置室から河野舞子(伊勢佳世)という17歳(18歳?)の少女の遺体が消えた。宮地が刑事の田神(池田成志)と生前の舞子について調べる内、黒澤(仲村トオル)という小説家の名前が浮かぶ。2人が旅館に黒澤をたずねたところ、彼は湯のみの中の男にそっくりだったのだ。
  
<お貞(てい)の話>
 【出演者】語り部:仲村トオル 祐吾:浜田信也 真琴/河野舞子:伊勢佳世 舞子の姉:岩本幸子

 黒澤には学生(浜田信也)の頃、真琴(伊勢佳世)という恋人がいた。真琴は、自分の描く絵は未来を予言すると語り、グレートフル・デッドのTシャツとロングスカートを着た自分の死体を描いた後、その格好で自殺した。18年(17年?)後、黒澤は旅館で舞子(伊勢佳世)と出会う。舞子はグレートフル・デッドのTシャツを着ていた。舞子は真琴の生まれ変わりなのか?

<宿世(すくせ)の恋>
 【出演者】語り部:歌川稚子 新三郎:仲村トオル 志丈:池田成志 良石:小松和重 伴蔵:浜田信也 お露:伊勢佳世 お米:岩本幸子 興隆:盛隆二

 仲居(歌川稚子)が「怪談牡丹燈篭」を語る。恋に落ちた新三郎(仲村トオル)とお露(伊勢佳世)は身分の違いから結ばれることができず、病弱なお露は死んでしまう。死んだお露が新三郎のもとに現れ、お露は生きていたのだと勘違いした新三郎は、死霊のお露と逢瀬を重ねる。死相が出てきた新三郎を助けようと、周囲の人々は彼を説得して死霊と引き離そうとするが、新三郎は地獄に堕ちようともお露と一緒になりたいと願い、自ら命を絶つ。
 新三郎と黒澤、お露と真琴が重なる。怪談と現実の境い目がなくなり、閉ざされていた扉が開かれるように舞台が変貌。田神(池田成志)と宮地(小松和重)が旅館だと思っていたのは廃墟となった古い寺で、ほこらの下には真琴の白骨死体と黒澤の腐乱死体があった。これも大きな狐(?)のしわざだったのか・・・。

【出演】黒澤:仲村トオル 田神:池田成志 宮地:小松和重 旅館の仲居:歌川椎子 女、他:伊勢佳世 男、他:浜田信也 男、他:盛隆二 女、他:岩本幸子
構成・脚本・演出:前川知大 美術:土岐研一 照明:松本大介 音響:青木タクヘイ 衣裳:伊藤早苗 ヘアメイク:宮内宏明 演出助手:河合範子 主催:財団法人せたがや文化財団 企画制作:世田谷パブリックシアター 企画協力:イキウメ/エッチビイ
【休演日】7月6日(月)、13日(月)【発売日】2009/05/23 一般=5,800円、高校生以下=2,900円(劇場チケットセンターのみ取扱い/要年齢確認)、SSS=2,900円(要事前登録/枚数限定) トラムシート5,000円(対象公演のみ、劇場チケットセンター電話・店頭のみ)
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2009/07/post_153.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 14:21 | TrackBack

【書籍】ベルンハルト・シュリンク著「朗読者」(新潮社クレストブックス)

 詩森ろばさん新潮社のクレストブックスを推薦されていて、映画化された有名な小説だとは知らずに1冊購入。
 素晴らしかった・・・!でも映画では見たくないかも。本で充分以上に満足です。

朗読者 (新潮文庫)
朗読者 (新潮文庫)
posted with amazlet at 09.07.05
ベルンハルト シュリンク
新潮社
売り上げランキング: 86

 ここからネタバレします。

 数年後にどうなったかを先にバラした後、その前の期間の出来事が書かれます。時間がギュっと収縮したみたい。アコーディオンの蛇腹部分を閉じて開くような感覚。
 私自身の過去と記憶、そして瞬く間に過去および記憶となっていく、私の現在と未来について考える、豊かな時間になりました。

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 14:11 | TrackBack

2009年07月12日

キリンバズウカ『スメル』07/04-12王子小劇場

 登米裕一さんが脚本・演出するプロデュース団体キリンバズウカの、東京移転後2作目です。登米さんは映画の脚本も手がけるシナリオ・ライターで(映画には出演も)、王子小劇場の職員でもいらっしゃいます。
 王子小劇場周辺で目立った活躍をしている人気役者さんを揃えたストレート・プレイでした。上演時間は約1時間45分。

 空調が寒すぎて集中できなくなることもありました。私が寒がりなだけかもしれませんが、できれば上演中に何度か室温をチェックしていただきたいですね。

 ⇒CoRich舞台芸術!『スメル

 ≪あらすじ≫
 東京都永住禁止条令が発令された。定職につかず納税もしていない者は他府県の郷里に帰らなければならない。だが法には抜け道があった。ボランティアで公に役に立つ仕事をしていれば、その期間は東京滞在の猶予が与えられるのだ。とある若者たちがありついた仕事は、地域でも有名なゴミ屋敷の掃除。家の主は一人暮らしのおばさん(稲川実代子)。ボランティアの若者たちが集まった週末に、十数年ぶりにおばさんの娘(黒岩三佳)が突然帰ってきた。
 ≪ここまで≫

 役に立っていないという理由で必要とされず、追い出されようとしている人々。追い詰められたら人間、何にでもしがみつこうとするものですよね。ただ生きているだけでは肩身が狭い、申し訳ないと思ってしまう感覚は、同じく東京で暮らす者としてよくわかります。

 役者さんの個性に立脚した演出で、シュールな笑いを交えつつ、重たいテーマをあえて軽やかに描いているように思いました。サラっとうわすべりしているように感じ、あまり入り込めず。
 私はゴミがなかなか捨てられないタイプでして(汗)、必要・不必要の判断について色々考えながら帰りました。

 ここからネタバレします。

 母親(稲川実代子)は祖母(自分の母親)の介護がしたかったから、離婚の時に小学生だった(かな?)娘(黒岩三佳)を捨てたということになっていました。娘は父親にひきとられて2人で暮してきましたが、2年前に父親が他界。自分も難病に冒され余命いくばくかになったことがわかり、田舎に療養しにいく前に母親に挨拶をしにきたのでした。母親は祖母に必要とされることが嬉しくて介護をしてきましたが、祖母が亡くなってからゴミを家に溜めるようになったのです。

 母親がカセットテープに録音した娘へのメッセージで「私は謝らない。だって謝ると母(祖母)を否定することになるから」という意味のことを言っていたと思います。謝っても祖母を否定することにはならないんじゃないかな~。最後にのりの缶から出てくる手紙では謝ってましたけどね。2人が謝るということに執着する気持ちがよくわからなかったです。

 必要じゃないというより、むしろ邪魔で、ない方が良くて、できればなかったことにしたいモノが「ゴミ」として象徴され、じゃあ役に立たない人間もゴミなんじゃないか、人間とゴミとはどんな違いがあるのか、と考えさせられます。

 ゴミ屋敷に産業廃棄物を置き捨てに来る若者もいて、それに触れると匂いを嗅ぐだけでも鼻血が出るようになってしまいます。かなり毒性の強いゴミなんですね。不法投棄の恐怖。全部自分に還って来るんだよなーと思ったエンディングでした。

出演:稲川実代子 黒岩三佳(あひるなんちゃら) 永山智啓(elePHANTMoon) 折原アキラ 浦井大輔(コマツ企画) 深谷由梨香(柿喰う客) 永島敬三 河西裕介(国分寺大人倶楽部) 遠藤友香理(カムヰヤッセン) 花戸祐介 細野今日子(劇団競泳水着)
脚本・演出:登米裕一 舞台美術:稲田美智子 音響:天野高志 照明:吉村愛子(Fantasista?ish.)  衣裳:飯田裕幸 演出助手:入倉麻美 北川大輔(カムヰヤッセン) 佐賀モトキ 舞台監督:佐藤恵 宣伝美術:立花和政 制作:塩田友克(クロムモリブデン) 赤羽ひろみ プロデューサー:福岡祐美子
【発売日】2009/05/30 前売り 2800円/当日3000円◎早期割引 7/4(土)19:30、7/5(日)15:00/19:30の回は前売り¥2,500/当日¥2,800
http://kirinba.seesaa.net/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 18:19 | TrackBack

【オーディション】イキウメ「2009年冬公演/出演者・劇団員募集」※9/19(土)郵送〆切

 前川知大さんが作・演出される人気劇団イキウメの出演者・劇団員オーディションです。

 ●イキウメ「前川知大・新作」東京、大阪、福岡公演(2009年冬)
  実施日程:2009年10月4日(日)(予定)
  対象:28歳までの魅力的な男女。
  締め切り:2009年9月19日(土)(消印有効 持参不可) 

以下、折り込みチラシからの情報です。ご興味のある方はどうぞ。

【イキウメ冬公演 出演者・劇団員オーディション】

 イキウメでは新しい出会いを求めています。

●前川知大新作
 2009年12月 ⇒CoRich舞台芸術!
 出演:浜田信也 盛隆二 岩本幸子 伊勢佳世 他
 東京・紀伊國屋ホール~大阪・HEP HALL~福岡・西鉄ホール
 10月上旬発売開始
 お問合せ:イキウメ電話03-3715-0940
  http://www.ikiume.jp/

●実施日程:2009年10月4日(日)(予定)
●対象:28歳までの魅力的な男女。

●応募方法:以下3点をお送りください。
 ①履歴書(簡単な自己紹介文、経験のある方は出演歴を明記)
 ②写真(バストアップ・全身各1枚。裏面にお名前、身長、体重、3サイズを明記)
 ②80円切手を貼付した返信用封筒(ご住所・お名前を明記)

●送り先:
 〒153-0061東京都目黒区中目黒1-1-65-301 HB内イキウメ
 書類選考の上、書面でご連絡いたします。
 通過者は都内スタジオで10月4日(予定)に実技審査を実施します。
 内容は書面で通知いたします。(参加費 2、000円)

●締め切り:2009年9月19日(土)(消印有効 持参不可)

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 17:04 | TrackBack

メルマガ号外 『奇ッ怪~小泉八雲から聞いた話』

 世田谷パブリックシアター『奇ッ怪~小泉八雲から聞いた話』
 07/03-20シアタートラム
 ※公演詳細はこちら

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 ⇒CoRich舞台芸術!『奇ッ怪

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 “しのぶの演劇レビュー” 号外 Vol.41  2009.7.12 1,381部 発行

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   今、面白い演劇はコレ! 年200本観劇人のお薦め舞台♪


★★ 号 外 ★★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ◎世田谷パブリックシアター『奇ッ怪~小泉八雲から聞いた話』
  07/03-20シアタートラム
  ☆出演:仲村トオル 池田成志 小松和重 歌川椎子
      伊勢佳世 浜田信也 盛隆二 岩本幸子
   脚本・演出:前川知大
    http://setagaya-pt.jp/theater_info/2009/07/post_153.html
    http://setagaya-pt.jp/kikkai/


 ◎観劇後のコメント◎

  人気劇団イキウメの作・演出を手がける前川知大さんの新作です。
  小泉八雲の「怪談」をもとにした、ちょっと怖くて不思議な5つの短編を、
  達者な役者さんが劇中劇の形式で演じつつ、語りきかせてくれます。
  
  怖いお話は本当に怖いですが、爆笑が連続する場面も多く、
  ストーリーはぐうの音も出ない面白さ、と申しましょうか。
  美術、照明、音響、衣裳などのスタッフワークも贅沢で、
  老若男女問わず楽しめる娯楽作品だと思います。

  ご覧になった方のクチコミ↓もご参考にどうぞ!
   http://stage.corich.jp/stage_done_detail.php?stage_id=14330

  前売り券は、未確認ですがおそらく完売かと・・・。
  劇場の方に確認したところ、トラムシートには空席があるそうです。

  ※上演時間は約2時間(休憩なし)。


 【チケット情報】

  全席指定 一般:5,800円
  高校生以下:2,900円 TSSS:2,900円
  友の会会員:5,300円 世田谷区民:5,500円
  トラムシート5,000円(対象公演のみ)
  ※未就学児童の入場不可。

  ☆トラムシート発売中
   http://setagaya-pt.jp/news/2009/05/post_83.html
  客席最後部の壁に備え付けのバー形状の腰掛け席です。
  劇場チケットセンターのみ取扱い。オンライン販売はなし。

  トラムシート発売対象公演:
   7/12(日)14時
   7/18(土)14時&19時
   7/19(日)14時
   7/20(月・祝)14時

 【お問い合わせ】

  劇場チケットセンター 03-5432-1515
   http://setagaya-pt.jp/theater_info/2009/07/post_153.html


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ◆ 【編集後記】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ◎2009年4度目のメルマガ号外です。前回はこちら↓
   http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2009/0621003002.html
  2階連続でシアタートラム公演!
  7月の時点で号外4回目なんて、今年はハイペースかも。
  年間5本を目安にしています。


 ◎前川知大さんの次回作はパルコ劇場!こちらも新作で、演出もされます。
  PARCO presents「狭き門より入れ」08/17-09/06パルコ劇場
  ≪東京、岡山、大阪、広島、福岡≫
   http://www.parco-play.com/web/page/information/semaki/


 ◎「CoRich舞台芸術まつり!2009春」
   http://stage.corich.jp/festival2009/index.php
  グランプリ発表は7/15(水)!


 ◎「まぐまぐ大賞2008」にて、当メルマガが
  エンタメ部門約3000本中の15本に選ばれました!
   http://www.mag2.com/events/mag2year/2008/ent.html


 ◎「CoRich(こりっち)舞台芸術!」で
  いつ、どこで、何が上演されているのかを簡単検索!
  感想も書き込めますよ♪
   http://stage.corich.jp/
  メンバー登録はこちら↓
   http://www.corich.jp/stage/user_register.php
  携帯サイトもあります⇒ http://corich.jp/m/s


 ◎新聞・雑誌などに執筆する仕事をしています。
  2008年のお仕事のまとめはこちら↓
   http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2009/0106181111.html
  お仕事のご依頼はこちらへ↓お気軽にどうぞ♪
   http://www.shinobu-review.jp/contact/


 ◎「劇場に足を運ぶことが、日本人の習慣になって欲しい」
  それが私の望みです。
  これからもこつこつ、地道に進んで行きたいと思っております。
  皆様、どうぞよろしくお願いいたします♪

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 今回の配信は“号外”です。
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Posted by shinobu at 10:52 | TrackBack

2009年07月11日

【オーディション】アル☆カンパニー「出演者オーディシションをかねての『前田司郎ワークショップ』参加者募集」

 俳優の平田満さんと井上加奈子さんが主宰するアル☆カンパニーが、五反田団前田司郎さんのワークショップを開催します。2010年5月下旬~6月上旬の新作公演(作・演出=前田司郎)の出演者オーディションも兼ねたものだそうです。この顔合わせは一観客としても垂涎ものです!

 日時=2009年8月6日[木]・7日[金]13時~20時
 応募締切=2009年7月24日[金]必着(メールor郵送)

 下記、折込チラシからの情報です。ご興味ある方はどうぞ。

 ■アル☆カンパニー「出演者オーディシションをかねての『前田司郎ワークショップ』参加者募集」

 アル☆カンパニーでは、2010年5月下旬~6月上旬、新宿三丁目SPACE雑遊と新百合ケ丘川崎市アートセンターにおいて、前田司郎作・演出の新作を上演します。その出発点として、前田氏自身によるワークショップを企画しました。第52回岸田戯曲賞、第22回三島由紀夫賞受賞の前田司郎氏は、自ら「五反田団」の作、演出家、俳優として活躍する、現在最も注目される演劇人といえます。

 今回アル☆カンパニー(主宰=平田満/井上加奈子)は第7回公演に前田氏を招き、前田氏とアル☆カンパニーのコラボレーションで、今までにない発想や感覚に挑み、魅力的な舞台を創ろうと思います。そのために私たちは、さまざまな個性や、自由な発想を持つ方との出会いを求めています。

 新鮮な舞台づくりに参加してくださる方を募ります。

 今回の試みを来年の公演の台本に生かし、また参加者の中から、若千名の出演者を選ぶ予定です。このワークショップは俳優のトレーニングのためでも、演技システムの勉強のためでもありません。また、個別に審査をするものでもありません。

 私たちと一緒に前田司郎氏の世界で遊び、自由で豊かな演劇をともに楽しみながら見つけませんか?

 ●日時=2009年8月6日[木]・7日[金]13時~20時
 ●場所=五反田アトリエヘリコプター
 ●参加費=2,000円
 ●応募条件=18歳~65歳位まで、性別舞台経験不間。
  2010年4月中旬~6月初旬までスケジュールをあけられる方
 ●応募締切=2009年7月24日[金]必着

 ●参加希望者は応募用紙(ダウンロードもできます)に必要事項を記入し、写真を添付して下記に郵送またはメールで提出してください。応募多数の場合、書類選考させていただきます。結果は8月2日までにメールにてお知らせします。連絡がない場合は、3日以降に下記ヘメールにてお問合せください。
 HP=http://www.aru-c.com
 Mail=teamboogie(アットマーク)myab.jp

【郵送の場合】
 〒114-0023東京都北区滝野川6-26-7チームブーギー『オーディション係』


 アル☆カンパニー 平田満/井上加奈子

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 22:11 | TrackBack

2009年07月10日

ONEOR8『躾(しつけ)』07/09-26吉祥寺シアター

 田村孝裕さんが作・演出される劇団ONEOR8(ワンオアエイト)が、主演に山本裕典さんを迎え、吉祥寺シアターにて新作を発表しました。客席はギャルでいっぱい!東京グローブ座みたいでした。

 客層は違っても作品の質感はONEOR8らしく、親しみやすい笑いを散りばめながらも、苦味がバッチリ利いていました。上演時間は約1時間50分。

 ⇒CoRich舞台芸術!『躾(しつけ)

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 僕は母に殴られて育った。
 母は躾だと言っていた。
 いつかの授業でこの漢字を学んだとき、一目で覚えた。
 身が美しいと書いて“躾”。
 僕はその通りに育ったと思う。
 あの時、母を恨んでいた自分が嘆かわしい。
 僕は、誰かを躾けてみたくなった。
 母が僕を、虫けらみたいに育てたように。  
 ≪ここまで≫

 開演前に堂々と舞台の写メ撮ってる人が大勢・・・ビビりましたが、場内整理のスタッフの方がすぐに対応してくださいました。舞台鑑賞に慣れてないお客様が多いんでしょうね~。劇場に入るなり「近っ!」(←客席から舞台が近いという意味)って叫んでる人とかいたし(笑)。コンサートなどのイベントに比べたら至近距離ですよね。贅沢なんですよ、小劇場!(と、ここで宣伝してみる・笑)

 季節は夏。舞台はとある田舎の村。市内へ出るにも車が必要な、少々へんぴなところにある古い一軒家に、母(岡本麗)と息子の民生(山本裕典)が2人で暮らしています。母は腎臓病をわずらい、足(右足?)も悪いので、中卒の民生が働きながら母の面倒を見ているのです。実は母は、病気になる前までは民生をひどく虐待していました。母の暴力がおさまった今、民生の稼ぎで2人が食いつないでいる、独特のバランスが保たれた生活があります。そこに、数年前に家を出た長男が母に会いにくるという連絡があり・・・。

 意味や理由を知りたいとか、教訓を得たいとか、観客(私)は“自分にとって明らかに役に立つ具体的な何か”を求めがちですが、そう簡単には飲みくだせない内容でした。閉鎖的な田舎町で起きた、ある家族の事件を見た。まずはそれでいいんじゃないかと思います。

 中学時代の担任教師(冨田直美)、民生の雇い主である金魚屋の主人(金森勝)、デキない警官(恩田隆一)、民生の友人(伊藤俊輔)など、周囲の人たちが事件について語りますが、彼らの発言は事件の何も表していないと思いました。それは彼らのせいではないんですよね。当事者にしかわからない、いえ、当事者にさえわからないんだと思います。

 だったらこの世の中で確かなことって一体何なんだろう・・・それは、親から子供が生まれること、そしてDNAは確かに受け継がれ、子供は親に似てくるということなのでしょうね(当日パンフレットより)。でも親と子供は別人ですから、当然ながら全く同じというわけではありません。じゃあ人間って、どこまでが自分なのかしら・・・なんて、考えながらの帰り道でした。

 主役の山本さんは、まあイケメンですので眼福なのはもちろんのこと、自分をさらけ出して作品に没入しているように見えて、非常に好感度大。繊細そうなのも素敵でした。

 ここからネタバレします。

 民生が6歳の時に両親が離婚し、父と長男(当時高校生:野本光一郎)が家を出て行きました。原因は母の浮気。母はそのうっぷんを全て民生にぶつけ、民生は殺されるとおびえながらも、母に従順に生きてきました。

 母が民生から長男へと、コロリと鞍替えしたのに驚きました。あれは人をポイっとゴミみたいに捨てる行為。

 最初はかくまってあげていた家出少女・樹里(坂田梨香子)を、民生が「躾だ」といって殴るシーンには・・・プチ興奮(笑)。すみません、私ひどい人間で。樹里は嘘をついて民生を利用していました。だから彼女はその罰を受けたのだと考えれば、まあ筋が通っている気がしないでもないです。でも私が面白がってニヤリとしてしまったのは、民生が、樹里に裏切られたことを、彼女に対して振るう暴力の理由にした(暴力を正当化させた)こと。そして、彼が自分の衝動のままに、自分から行動を起こしたことが、美しくも見えました。

 ただ、当日パンフレットに田村さんが書かれているように、民生は母親に似ただけなのかもしれません。彼の意志なんてないのかもしれない。民生は本人が言ってるように、相手によって態度も発言も、気持ちだって変えるタイプですから。それは民生に限らずどんな人でもそうかもしれないですよね。でも、包丁を握るまでしたのに、お風呂に入っている母親を刺し殺せなかったのは、別な気がします。あそこでは確かに、民生の意志が働いたのだろうと思います。

出演:山本裕典 野本光一郎 和田ひろこ 恩田隆一 冨田直美 冨塚智 伊藤俊輔 坂田梨香子 金森勝 岡本麗
脚本・演出:田村孝裕 舞台美術・衣裳:伊藤雅子 照明:伊藤孝 音響:今西工 演出助手:城野健 舞台監督:村岡晋 演出部:藤林美樹 照明操作:鈴木泉 音響操作:飯嶋智 衣裳部:福田千亜紀 大道具製作:夢工房 小道具:高津映画装飾 運搬:帯瀬運送 宣伝美術:美香(Pri-graphics) 桑山慧人 宣伝写真:村尾昌美 宣伝衣裳:横尾早織 宣伝ヘアメイク:山本成栄 制作助手:保坂綾子 斉藤友紀子 制作:高田雅士 椎名浩子 企画製作:ONEOR8 主催:ONEOR8 / 財団法人武蔵野文化事業団
【発売日】2009/06/06【料金】3,800円(前売)/4,200円(当日)(全席指定・税込)※開場は開演の30分前。受付開始は開演の1時間前となります。※当日券の発売・ご予約のお引取りは開演の一時間前より劇場窓口にて。※未就学のお子さまはご入場いただけません。
http://www.oneor8.net/
http://www.oneor8.com/cn12/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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2009年07月09日

メジャーリーグ『ヘッダ・ガブラー』07/08-14赤坂RED/THEATER

 稽古場レポートを書かせていただいた、メジャーリーグ『ヘッダ・ガブラー』初日を拝見いたしました。上演時間は約2時間。

 ちょっぴり驚くほどコメディ・タッチのドラマになっていました。でも、120年前から今も生き残っている戯曲ならではの、普遍性にも納得できました。5人の登場人物それぞれの本音(下心)が、セリフの裏側でむくむくとうごめき、戦う様にニヤリ。古典という先入観なしで観に行かれても大丈夫だと思います。

 ⇒公演公式ブログに豆知識がいっぱい。演出家のコメントもあり、作品理解の助けになります。
 ⇒CoRich舞台芸術!『ヘッダ・ガブラー

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより一部抜粋。(役者名)を追加。⇒人物相関図
 舞台は、ガブラー将軍の娘ヘッダ(小沢真珠)とその夫、学者のテスマン(伊達暁)の新居。
 新婚旅行から帰ったばかりの二人のもとを訪れてきたのは
 ヘッダに思いを寄せ、その微妙な関係を楽しんでいるブラック判事(山本亨)。
 そしてテスマンのライバルであり、ヘッダが唯一特別な感情を抱いた、レェーヴボルク(小野哲史)。
 そのレェーヴボルクを追いかけてやってきた、かつての友人、エルヴステード夫人(町田マリー)。
 彼らはみな、自分の思うがままに奔放に生きるヘッダにその運命を振り回されることになる。
 ≪ここまで≫ 

 黒い空間にクラシカルな家具を配置した抽象舞台。中央奥には大きなカーテン。額縁を寝かせて置いたような変形ステージに、草木(ぶどうの葉っぱ?)の装飾が施されています。赤坂RED/THEATERってこんなに広かったのかしら。

 大音量のポップな音楽とカラフルな照明で、いわゆる古典の堅苦しいイメージを払拭。現代のストレートプレイのようで、コメディの要素がとても強い作品になっていました。ボケ・つっこみのようにテンポが良くてわかりやすい笑いに乗っかって、ポンポンと弾む会話を楽に聴いてる内に、奔放かつ乱暴(良く言えば天真爛漫?)なファム・ファタール、ヘッダが起こす事件に引き込まれていきます。

 2人っきりでこっそり話すシーンが多く、シーソーゲームのように拮抗するスリルや、しっとり、べったりと共鳴して悪巧みへと発展する共犯感覚をじっくり味わえます。周囲で耳を澄まして会話を聞いている人たちの、背中や横顔から読み取れるものも面白いです。
 “衝撃の結末”にすっきりと納得できたのは大きな収穫でした。「そりゃそうだ、当然でしょう」とまで思いました。

 ヘッダを演じる小沢真珠さんは、欲望をむさぼるような大きな目が印象的。自分の首を絞める危機さえ前のめりに楽しむ、がつがつ・ギラギラした様が面白いです。ただ、体が小刻みにの動きすぎのような気がしました。あと、ヘッダの方から男性に近寄りすぎなんじゃないかしら。距離も近すぎるような。何不自由なく生きてきた将軍の娘で、男なら誰もが夢中になる危険な美女なので、堂々と立っている時の迫力が欲しいですね。

 山本亨さんが演じるのは、ヘッダに平身低頭つくす素振りを見せながら、実は彼女を自分のものにしようと企むブラック判事。山本さんが登場すると空気が引き締まりました。
 ヘッダの夫テスマン役の伊達暁さんは、堂々たるマヌケっぷりが可愛くて、可笑しかったです。女性に「いい人なんだけどね!」って言われちゃうタイプ(笑)。
 エルヴステード夫人役の町田マリーさんはとっちらかり具合が面白かったですが、まだまだ上を目指せそうな気がしました。
 噂の男・レェーヴボルクを演じる小野哲史さんは、箱庭円舞曲で拝見した印象と全く違う存在感でした。不気味なオジサンだったのに(言葉が悪くてすみません)、今作ではスラっと背の高いイケメンなんだもの!俳優の変貌が観られて嬉しいです。

 ここからネタバレします。

 ヘッダは(わざと)「こんな別荘に住めたらな~」とポロっと言ってしまったせいで、テスマンと結婚するはめになりました。「永遠に青春が続くわけじゃない」というシビアな自覚があったとはいえ、なぜテスマンと(セックスできたのかしら)? 彼女は「自業自得よ」とも言っているので納得づくなわけですが、私にとってはこのことが一番の謎として残りました。

 ヘッダはテスマンの妻になりましたが、ブラック判事と“大人の三角関係”を結んでおり、レェーヴボルクとは昔、特別な関係(レェーヴボルクは自分の“ご乱交”をヘッダに詳細に報告していた)にありました。でも、肉体関係を持ったのは結婚したテスマンだけなんですよね。自分のこめかみを銃で撃って命を終わらせるような人間が、なぜ耐えられたのかな~。もしかするとテスマンとは、まだ・・・?んなわけないか(笑)。

 暗転・明転のタイミングなど、照明には疑問が残りました。奥はあんなに明るくない方がいいんじゃないか、とか。
 冒頭でヘッダが羽織っていたストールが飛んで消えていくのがきれい。消えたストールが最後に空から降ってきて、床に落ちるのもいいですね。こういったイリュージョンにはわくわくさせられます。イントロダクションとしてとても効果的だと思います。

出演:小沢真珠 伊達暁 町田マリー 小野哲史 山本亨
作:ヘンリック・イプセン 上演台本:笹部博司 演出:古川貴義 美術:伊藤雅子 照明:工藤雅弘 音響:岡田悠 衣裳:友好まり子 ヘアメイク:大宝みゆき 演出部:須貝英/栗山佳代子 舞台監督:大島明子 宣伝写真:松本のりこ 宣伝デザイン:今城加奈子 WEB:新藤健/今城加奈子 制作助手:時田曜子 制作:斎藤努 プロデュース:伊藤達哉 主催/企画/製作:メジャーリーグ 後援:TBSラジオ/NACK5 提携:赤坂RED/THEATER 制作:ゴーチ・ブラザーズ
2009年5月23日(土)チケット一般発売開始 前売 4,500円(税込・全席指定)
http://www.hedda-gabler.net/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 16:45 | TrackBack

2009年07月08日

【つぶやき】演劇情報サイト・ステージウェブで「野田秀樹芸術監督就任・記念プログラム発表記者会見」の動画公開!

 演劇情報サイト・ステージウェブで「野田秀樹芸術監督就任・記念プログラム発表記者会見」の動画が公開されました!すごっ! ⇒写真レポート

 野田秀樹さんの装置不着トラブル発表から大竹しのぶさんの“災い”コメント、岩井秀人さんの家族ネタから前田司郎さんへと続く、爆笑ラインは必見です(笑)。
 中井美穂さんの芝居通ならではの司会のおかげで、進行はとても和やか。松尾スズキさんの映像コメントも観られます。

 他にもTOKYOHEADLINE webにかなり突っ込んだ内容が!記者さん凄いな~。会見やインタビューって本当に勇気がいることなんですね。今さら実感。

Posted by shinobu at 11:07 | TrackBack

【雑誌】ザ・ビッグイシュー122号・特集「ドラマなき日常を生きる ─ 僕らの演劇生活」

 愛読している雑誌THE BIG ISSUE JAPANの122号(7/1発売)は演劇特集!今年からクロムモリブデンボクデスが取り上げられるなど、舞台の記事が増えてきました。美術作家・塩田千春さんの記事も偶然一緒に。あぁ、今月は金沢21世紀美術館に行きたいよ!(行けないよ!・涙)
 お近くの販売員さんから買ってくださいね。7/15には次号が出ますのでお早めに!

 ■「ドラマなき日常を生きる ─ 僕らの演劇生活」(最新号ページより)

 ・演劇を日常に引きつけ、刺激的なものにしたい。
   「チェルフィッチュ」岡田利規さん

 ・日常をそのまま舞台にあげたい。芝居は格好いいことじゃない
   「五反田団」前田司郎さん

 ・"あやふやさ" 、決められない "気持ち悪さ"を舞台に(⇒記事サンプル
   「魚灯」 山岡徳貴子さん

 ・おもしろいを追う日々。演劇を見つけた私たち
   4人の俳優たちの今(西田麻耶/南波圭/山崎ルキノ/下西啓正)

 最寄り駅の販売員さん、居なくなっちゃいました・・・。寂しいし、ちょっと心配。違う駅で家族が買ってきてくれました。

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 10:31 | TrackBack

2009年07月07日

七里ガ浜オールスターズ『向日葵と夕凪』07/07-12ギャラリーLE DECO 4F

 七里ガ浜オールスターズは、エロメール添削家・赤ペン瀧川先生としての活躍も有名な(笑)、俳優の瀧川英次さんが演出・出演されるユニットです。3年ぶりの公演は、瀧川さんが以前所属されていた劇団P.E.C.T.で上演された短編4人芝居。上演時間は約1時間弱。

 缶ビールなどのワンドリンク付きで1500円という超オトク価格の初日に伺いました。本日七夕ということで、願い事を書く短冊をもらいました。劇場内の笹に飾っていただき、開演前からほっこり嬉しい気分。

 ⇒CoRich舞台芸術!『向日葵と夕凪』★CoRichでカンタン予約!

 ≪あらすじ≫
 元高校教師の岩沢(山本佳希)が経営する海辺のバー。教え子の新井(瀧川英次)が告別式の帰りに立ち寄った。2人の共通の知人だった美術の名物教師が亡くなったのだ。思い出話をする内に、同じく告別式帰りの女(松本美香)が店に来た。彼女も新井と同じく岩沢の教え子だった。
 ≪ここまで≫

 もともと鉄パイプが組まれているギャラリーに、シンプルな家具や小道具を配置して小さなバーの一角が出来ていました。波の効果音と上手からさす照明で、東京から離れた田舎の静かな海辺が想像できました。
 私は喪服の人が登場するお芝居は得意ではないのですが、過剰にしんみりしたり深刻になり過ぎなかったので、先入観に邪魔されることなく観られて良かったです。

 男2人、女2人の4人芝居で、男の人がどう感じるのかはわからないですが、私は「そうそう、男って絶対わかんないよね~」とか(笑)、すっかり女の目線で共感しつつ拝見。10年以上経てば人はすっかり変わります。でも本気で恋したり悩んだり、人生を変える事件を経験した時の感覚は、誰にも言えないけれど確かにその人の体と心に刻まれているんですよね。

 藤子(とうこ)役の山崎ルキノさんの飾らない、自然な存在感がとっても素敵。黒いワンピースもおしゃれで、セクシーでした。理伽子役の松本美香さんと昔のことを語り合うシーンでは、女優さん2人が互いの気持ちを受け取り、投げかけてコミュニケーションしているように感じ、秘密の会談に参加(覗き見?)させてもらっていることを嬉しく思いました。

 ここからネタバレします。

 藤子は16歳の時に、1年先輩だった新井との間にできた子供を堕胎しており、悩む藤子を助けたのが理伽子でした。でも理伽子も同じ年齢の時に、岩沢の子供を堕胎していて・・・。考えてみたら2人の人間の命が喪われていたんですよね。それは痛い。苦しい。
 ぐちゃぐちゃで、みっともなくて、でも自分は幸せだと自覚できたら、生きていけるなぁと思いました。

 「いっぺん死んでくる!」と言って理伽子を追いかける岩沢が可愛らしかったです。
 最後の最後に“偶然”に、藤子と新井がバーで再会できて良かった。

祝!3年振りの復活公演
出演:山本佳希 松本美香 山崎ルキノ(チェルフィッチュ) 瀧川英次
脚本:日々野克己 演出:瀧川英次 舞台監督:吉川悦子 音響プラン:アラキマヤ(reset-N) 音響操作:廣瀬瞬(犬と串) デザイン:ネズヲ 照明プラン:松本大介 照明操作:富所浩一 制作:七里ガ浜オールスターズスタッフサービス
【発売日】2009/06/01 前売 2000円 当日2300円 前半割引 1500円(7日、8日の前半3ステージ)リピーター割引 お一人様1500円(半券持参で2人様まで有効) 全チケットにビールorジュースの1ドリンク付き。
http://blog.livedoor.jp/age_guts_go/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 22:53 | TrackBack

2009年07月06日

MODE『お前は誰にも似ていない』07/06-12ザムザ阿佐谷

 松本修さんが構成・演出されるMODE、初見です。個人的に「MODEはオトナに観てもらいたい。MODEはコドモには観てもらいたくない。」というキャッチコピーが苦手で・・・。

 フランスの男女2人芝居で泉陽二さんが出演されるので、勇気を出して伺ってみたところ、シックな具象舞台での正統派ストレート・プレイでした。面白かったです。上演時間は約2時間弱。

恋のメモランダム
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ジャン=クロード・カリエール
白水社
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 ⇒CoRich舞台芸術!『お前は誰にも似ていない

 ≪あらすじ≫ 劇場サイトより
 男は記録する
 関係を持った女の名前、年齢、体重、髪の毛……。
 昨夜の女は134人目だった。

 その朝、
 見知らぬ女がトランクひとつで訪ねてくる。
 男は女を追い出そうとするが、女は部屋に居座り続ける。
 女は男の留守にそのファイルを盗み読む。

 女はファイルに記録されているのか?
 これから記録されるのか?
 ≪ここまで≫

 少々ネタバレします。読んでから観に行っても問題ないかと思います。

 白いしっくい(っぽい)の壁にこげ茶色のクラシックな家具がそろった、清潔感のあるおしゃれな部屋。パリで1人暮らしをしている男(泉陽二)は、法律関係の仕事をする独身のイケメンです。毎晩のように女をとっかえひっかえして寝るプレイボーイなので、突然自分の部屋に居座りはじめた若い女(山田美佳)を追い出そうと躍起になります。
 でも、女は何を言われても動じずひょうひょうとしている、底抜けにあつかましいタイプ。言ってることが本当なのか嘘なのか、本気なのか騙すつもりなのかもわかりません。困った女に手を焼いている内に、男は女に惹かれ始めます。

 男女の恋愛はもちろん、結果的には人間の劇的な変化を描いた戯曲だったように思います。そこがとても好き。1時間半ほど経ったころ、男を手玉にとっていた(ように見える)女の心が、男のせいで揺れ動き始めます。ここでぐっと面白くなりました。やはり2人芝居はパワーバランスが激変するのがたまらない♪

 ただ、それまでの女優さんの演技が私には退屈で、ほかの女優さんだったらどうなってただろうな~と想像したまま、1時間半経ってしまいました。終盤は引き込まれたんですけどね。演技の種類が私の好みじゃなかっただけだと思います。男は、怒ったり、きどったり、冷静を装ったり、あからさまにあたふたしたり、別人のように変化するのがいいですね。2人とももっともっと、とっちらかるほどに変化する方が私好みですが。
 
 衣裳が素敵。スーツに帽子姿の男もいいけど、女のドレスもシンプルでいい。ハイヒールがかっこいい。

 初日に伺ったのですが、空調が寒すぎました。あと、わかってはいたものの階段席なのもちょっとつらかったです。でもわざわざ装置の床を高く設営してくださっていたのは、とても見やすかったです。そうなると劇場がザムザ阿佐ヶ谷である必要性があまりないとも言えるのですが・・・。
 fringe blogに書かれていることが何度か頭をよぎりました。うっとりとして刺激ももらえるような、大人向けのシックな男女2人芝居なので、こういう作品こそおしゃれな場所で、ゆったり楽しみたいですね。そして観た後はバーにでも飲みに行きたいです(笑)。

 ここからネタバレします。

 女が大阪弁を話すのは、男にとって異邦人であるという意味かしら。特に不快ではなかったですが、できれば同じ標準語(方言)で味わいたかったかも。

 男は早朝に女と初めて出会い、会社に遅刻させられ、夕方帰ってきたら、また合コンに遅刻させられ、その夜はずっと彼女のことばかり考えていました。人間は誰かのために何かをすると、その誰かのことを好きなのだと、脳が勘違いするらしいです(最近読んだ本に書いてありました)。納得。

 男は女にぞっこんになり、彼女をそばに置いておくために(彼女を部屋に閉じ込める状態で)、事務所もやめて仕事もやめてしまいます。女の気まぐれな言葉に翻弄された愚かな男の話・・・というところで終わるなら普通ですが、そうはいかなかったのがとても面白かったです。

 女は「早く帰ってきてほしい」などと言ったものの、このままずっと男が家に居つづけるのにはうんざりで、「やっぱり出て行く」と言いはじめます。なんと、そこで男の方が着の身着のまま出て行くのです。「必ず会いに来るから」と言い捨てて。女は部屋に残り、かなり居心地が悪そうに、いわば呆然として、終幕。
 “仕事をしない”という決断って、先のこと(つまりお金のこと)を考えると絶対に出来ないですよね。でも彼はそれをやり遂げたわけで。その激変振りに人間の可能性、豊かさを感じます。今度は女がドキドキ不安になりつつ男を待つのかしら。それも素敵。
 
 タイトル「お前は誰にも似ていない」はイヴ・モンタンの曲名だそうです。

【出演】山田美佳 泉陽二
【原作】ジャン=クロード・カリエール『恋のメモランダム』 【構成・演出】松本修 【美術】伊藤雅子 【照明】大野道乃 【音響】徳久礼子(ステージ・オフィス) 【舞台監督】大川裕 【企画・製作】MODE 【宣伝美術】山内哲也(SOUP) 【協力】にしすがも創造舎 【制作協力】ぷれいす
一般:3,500円、学生:2,500円(全自由席・整理番号付き) ※学生はぷれいすのみ取り扱い <前売り開始>  2009年6月5日(金)
http://www.laputa-jp.com/zdata/data/samsa/090706.html
http://www.place-net.co.jp/info/index.html#005

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 22:57 | TrackBack

2009年07月05日

城山羊の会+三鷹市芸術文化センター『新しい男』06/26-07/05三鷹市芸術文化センター 星のホール

 三鷹市芸術文化センターの“太宰治作品をモチーフにした演劇”第6弾は、CMディレクター・山内ケンジさんが作・演出される城山羊の会です。ずっと気になっていたんですが、やっとこさ初見。

 ごく近しい人々の恋愛(てゆーか不倫)関係のもつれが、てんこ盛り。スタイルは静かな演劇ですが、場内は爆笑の連続でした。悩みもだえる(本当にもだえる・笑)登場人物たちがとっても面白かった。上演時間は約1時間50分。

 ⇒作・演出の山内ケンジさんと出演者のインタビュー
 ⇒CoRich舞台芸術!『新しい男
 レビューは途中まで。続きが書けるかどうか不明。

 ≪あらすじ≫
 大学教授(古舘寛治)とその妻(石橋けい)が暮らす、東京郊外のこぎれいな一軒家。広い庭でガーデニングもできる、のどかな田舎の家のようだ。ただいま妻の妹(初音映莉子)がいそうろう中。なんでも彼氏(三浦俊輔)にひどいことをされたらしいのだが、その彼氏がわざわざ妹を訪ねてやってきた。教授の弟(岡部たかし)は売れない小説家。小さな子供を妻(山本裕子)の実家にあずけて、妻と2人で旅行がてら兄の家に顔を出した。
 ≪ここまで≫

城山羊の会+三鷹市芸術文化センターpresents
出演:三浦俊輔、石橋けい、初音映莉子、山本裕子(青年団)、岡部たかし、本村壮平、古舘寛治(青年団)
脚本・演出:山内ケンジ(※青年団の山内健司さんと同姓同名だが別人)/舞台監督:森下紀彦/照明:佐藤啓/音響:藤平美保子/舞台美術:原田恭明/装置:福田暢秀(F.A.T STUDIO)/衣裳:加藤和恵・平野里子/照明オペ:溝口由利子/宣伝美術:蛍光TOKYO+DESIGN BOY/宣伝写真:RIN/制作助手:本村壮平/制作:湯川麦子(E-Pin企画)/制作プロデューサー:城島和加乃(E-Pin企画) 企画・製作:城山羊の会 +(財)三鷹市芸術文化振興財団
【休演日】6/29は休館日です。【発売日】2009/05/27 一般前売3,000円 一般当日3,300円 高校生以下1,000円(前売・当日共/当日学生証拝見) 未就学児入場不可
http://e-pin.jp/shiroyagi/top.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 17:23 | TrackBack

プロペラ『ヴェニスの商人』07/02-12東京芸術劇場 中ホール

 『夏の夜の夢』につづいて『ヴェニスの商人』を拝見(⇒記者発表)。上演時間は約2時間30分(途中20分の休憩を含む)。終演後に野田秀樹さんと演出のエドワード・ホールさんとのトークがありました。

 野田さんがトークでおっしゃっていたとおり、『夏…』は戯曲に忠実で王道をいく演出、『ヴェニス』は演出家の解釈が大きく反映された演出でした。私は『ヴェニス…』の方がかなり面白かったです。戯曲に対して新たな視点ももらえました。イヤホンガイドも昨日より熱が入っていて聞きやすかったですね。

 ⇒「プロペラ・ブロガー募集」30名様初日ご招待
 ⇒野田秀樹さんからの直筆レター
 ⇒プロペラ公演に高校生を無料招待!(締め切られました)
 ⇒CoRich舞台芸術!『プロペラ「ヴェニスの商人」「夏の夜の夢」

 あらすじはホリプロのページにも。公式サイトも詳しいです。

 灰色の薄汚い制服を着た囚人たちが、監獄の中で演じるシェイクスピア。『夏…』の優雅さのかけらもありません(笑)。昨日オーベロンをやっていた人(Richard Clothier)がシャイロック!あぁ、レパートリーって偉大!!前日の配役を思い出しつつ、役者さんたちの変貌振りを存分に楽しめました。

 荒々しい暴力性が前面に出た演出でした。でもそれが意図的であることがわかりましたので(既に『夏…』を観ていたからかもしれませんが)、冷静に見ていられました。むしろ『夏…』とは全然違う質感であるのが面白かったです。もちろんユーモアもたっぷり。

 容赦せず、慈悲を与えず、かたくなに相手を拒否して攻撃することが、どんな悲劇をもたらすのか。人間の残忍さを目の当たりする一方で、人間にはゆるすことができる、そしてそれが素晴らしいのだと思えました。『ヴェニス…』は思い出せる限り、今までに2度は観たことがあります。でも以前はこんな残念な感想を持った私もいたわけで。やっとちゃんと出合えた気がします。ありがとうございました。

 ここからネタバレします。セリフはうろ覚えです。

 冒頭のシーン。舞台中央にアントーニオ(『夏…』ではボトム役のBob Barrett)とシャイロックが向き合って立っており、その間には白いスーツを着た黒人の公爵(『夏…』ではヘレナ役のBabou Ceesay)がいます。公爵が2人を指しながら言う「ユダヤ人か、クリスチャンか」というセリフでが幕が開き、同じセリフで幕が閉じました。このセリフは原作にはない創作ですよね・・・? 公爵はつまり国家権力を意味するとも考えられますし、白人2人の間に黒人がいることで人種差別を表しているようにも思います。物語を客観的に見ることができて、とても良かったです。

 シャイロックが彼をののしった男の目をくりぬくという、凄惨な暴力シーンがありました。その後、シャイロックは報いを受けることになります。シャイロックは、アントーニオに貸した元金も戻らない上に、財産を半分没収されるのです。「証文どおりに」と一歩も譲らなかったためとはいえ、裁判のシーンでシャイロックが集中攻撃を受け、地べたを這う様はなんとも苦々しいです。

 Kelsey Brookfieldさんはポーシャ役を演じる時、黒いハイヒールをはいており、お尻がキュっと後方に出るような体勢になるのが可愛らしい。ちゃんとしなを作って女性らしいか弱さが出ていました。判事役の時はトレンチコートに帽子姿で、すっかり別人に変身。見事だな~。

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:野田秀樹/エドワード・ホール/通訳

 野田「『夏…』はいわばマニュアルどおりというか、芝居に忠実にしたがった演出で、『ヴェニス…』は戯曲に従うももの、王道をゆるがすものを狙っているようでした。」

 ホール「おっしゃるとおりです。『ヴェニス…』は“人種差別的な芝居”ととらえられがちですが、実は“人種差別について考えさせる芝居”です。舞台を監獄におきかえることで、誰もが同じ制服を着て均一になる状況をつくり、社会的コンテキストを取り除いて、人がいかに暴力的であるかを伝えたかった。この舞台はヴェニスという名の牢獄なのです。劇中ではユダヤ人を犬やブタと呼んだりします。極端に暴力的なほうが理解しやすいし、道徳や教訓的なことに集中できると考えたからです。」

Propeller "The Merchant of Venice"
出演:プロペラ(Bob Barrett/Kelsey Brookfield/Babou Ceesay/Richard Clothier/Richard Dempsey/John Dougall/Richard Frame/Jonathan Livingstone/Chris Myles David Newman/Thomas Padden/Sam Swainsbury/Jack Tarlton/Jon Trenchard アンダースタディー:David Newman /Jonathan livingstone)
脚本:シェイクスピア 演出:エドワード・ホール(Edward Hall) 芸術監督:野田秀樹 技術統括:白神久吉 技術統括助手:白石良高 舞台監督:足立充章 舞台:雄弁会社リンペット(林正 河本昌洋) 尾中孝次 後藤順二 中込洋介 山田亮 機構操作:楳木涼子 藤田満 畠中陵 照明機材:株式会社共立(古瀬和義 副島直) 照明操作:島根政徳 山川剛 音響操作:石丸耕一 山本裕司 衣装スタッフ:坂本美和子 技術通訳:鈴木節子 松村佐知子 制作進行:佐野馨 栗原千波 票券:串田陽子子(東京芸術劇場チケットサービス) 票券協力:金子久美子(ぷれいす) 広報監修:徳永京子 宣伝美術:矢島健 佐藤真喜子(ライズデザインオフィス) オフィシャルサイト:栗原ハジメ(モガ) イヤホンガイド:株式会社イヤホンガイド イヤホンガイド吹替:人村朱美 ユリヤ 国際貨物輸送:Y.S.FREIGHT INC 国内貨物輸送:マイド 館長:福地茂雄 副館長:高萩宏 管理課長:松井真司 松崎昌義 勝優紀 橋爪綾子 企画・招聘・制作:東京芸術劇場(財団法人東京都歴史文化財団)
※本公演のイヤホンガイド制作にあたり、小田島雄志訳「シェイクスピア全集 ヴェニスの商人』「シェイクスビア全集 夏の夜の夢」(いずれも白水社1983)を使用しました。
【休演日】7月6日(月)【発売日】2009/05/16 S席6500円(65歳以上の方3250円) A席4500円 (25歳以下の方2250円)“オトコたちのシェイクスピアセット券”10,000円(2作品S席を同時購入の場合、特別価格でご提供します。13,000円のところ。)※未就学児童はご入場いただけません。※英語上演。イヤホンガイドあり(有料)
http://www.geigeki.jp/saiji_052.html
http://www.geigeki.jp/propeller/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 16:56 | TrackBack

プロペラ『夏の夜の夢』07/02-12東京芸術劇場 中ホール

 早速、野田秀樹・芸術監督就任記念プログラムのトップバッター、プロペラを拝見。プロペラはエドワード・ホールさんが演出を手がける、男優だけでシェイクスピア作品を上演するイギリスの劇団です。

 開幕数日前に舞台装置が届かないことが判明し(船便トラブルのため)、日本で新たに作ったということでした。超短期間で2作品交互上演用の装置ができるなんて・・・凄いですよね。何事もなかったかのように初日の幕が空いていました。

 有料(500円)のイヤホンガイドあり。上演時間は約2時間40分(途中1回の休憩を含む)。『ヴェニスの商人』は翌日に観に行きました。

 ⇒「プロペラ・ブロガー募集」30名様初日ご招待
 ⇒野田秀樹さんからの直筆レター
 ⇒プロペラ公演に高校生を無料招待(締め切られました)
 ⇒CoRich舞台芸術!『プロペラ「ヴェニスの商人」「夏の夜の夢」

 あらすじはこちらでどうぞ。公式サイトも詳しいです。

 『夏の夜の夢』は先月に新国立劇場で観たばかりだったので、色々と比べながら楽しみました。同じ脚本なのに、夜の森の深さ、色、空気が全然違うんですよね。当然といえば当然なんですが。

 立派な男性が白い下着(?)姿で、ほんわか歌ったり踊ったりするのが可笑しくて(だって、ももひきみたいなんだもん・笑)、冒頭は、シェイクスピア作品であることが、すっかり頭から飛んでいってしまいました。でも、いかにもイギリス的な英語で言葉が発されるようになると、背筋をピンとしたい気持ちにもなり。英語のセリフで語尾の音が伸びると、なぜか厳かなムードを感じるんです(私だけ?)。

 ジャンプしたり取っ組み合ったり、噂どおり身体表現はアグレッシブ。でも形式美は丁寧に残しているようでした。例えば日本の小劇場演劇のように、弾けて振り切れるようなことはあまりなかったですね。笑いは貪欲に盛り込まれていて、2組の恋人たちがものすごく乱暴で面白かったです(ヘレナとハーミアを男性が演じるので)。

 白人、黒人と、顔の色がはっきりと異なる役者さんが、全員白い衣裳を着て舞台にいることが新鮮でした。日本だと黄色人種だけのお芝居がほとんどだってことに、改めて気づきました。

 私が慣れていないだけかもしれませんが、できればイヤホンガイドじゃなくて字幕で観たかったですね。耳から聞こえる冷静な女性の声と、舞台で起こっている魔術的な出来事がアンマッチでした。

 ここからネタバレします。

 妖精の王オーベロンと王妃タイテーニアが素敵。最初から人ではない生き物に見えました。気高くて厳かな、そして恐ろしげな存在感。
 パックの最後の「お手を拝借」のセリフで、そのままカーテンコールになる演出がシンプルで良かった~。

Propeller "A Midsummer Night's Dream"
出演:プロペラ(Bob Barrett/Kelsey Brookfield/Babou Ceesay/Richard Clothier/Richard Dempsey/John Dougall/Richard Frame/Jonathan Livingstone/Chris Myles David Newman/Thomas Padden/Sam Swainsbury/Jack Tarlton/Jon Trenchard アンダースタディー:David Newman /Jonathan livingstone)
脚本:シェイクスピア 演出:エドワード・ホール(Edward Hall) 芸術監督:野田秀樹 技術統括:白神久吉 技術統括助手:白石良高 舞台監督:足立充章 舞台:雄弁会社リンペット(林正 河本昌洋) 尾中孝次 後藤順二 中込洋介 山田亮 機構操作:楳木涼子 藤田満 畠中陵 照明機材:株式会社共立(古瀬和義 副島直) 照明操作:島根政徳 山川剛 音響操作:石丸耕一 山本裕司 衣装スタッフ:坂本美和子 技術通訳:鈴木節子 松村佐知子 制作進行:佐野馨 栗原千波 票券:串田陽子子(東京芸術劇場チケットサービス) 票券協力:金子久美子(ぷれいす) 広報監修:徳永京子 宣伝美術:矢島健 佐藤真喜子(ライズデザインオフィス) オフィシャルサイト:栗原ハジメ(モガ) イヤホンガイド:株式会社イヤホンガイド イヤホンガイド吹替:人村朱美 ユリヤ 国際貨物輸送:Y.S.FREIGHT INC 国内貨物輸送:マイド 館長:福地茂雄 副館長:高萩宏 管理課長:松井真司 松崎昌義 勝優紀 橋爪綾子 企画・招聘・制作:東京芸術劇場(財団法人東京都歴史文化財団)
※本公演のイヤホンガイド制作にあたり、小田島雄志訳「シェイクスピア全集 ヴェニスの商人』「シェイクスビア全集 夏の夜の夢」(いずれも白水社1983)を使用しました。
【休演日】7月6日(月)【発売日】2009/05/16 S席6500円(65歳以上の方3250円) A席4500円 (25歳以下の方2250円)“オトコたちのシェイクスピアセット券”10,000円(2作品S席を同時購入の場合、特別価格でご提供します。13,000円のところ。)※未就学児童はご入場いただけません。※英語上演。イヤホンガイドあり(有料)
http://www.geigeki.jp/saiji_052.html
http://www.geigeki.jp/propeller/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 14:31 | TrackBack

ロハ下ル『セインツ・オブ・練馬』07/01-05赤坂RED/THEATER

 元スロウライダーの山中隆次郎さんの新ユニットが始動。ロハ下ルは「ろはくだる」と読みます。初日に伺いました。

 舞台は戦後間も無い日本ですが、セリフは今どきの口語です。嘘にすがり、嘘に飲み込まれていく人々の滑稽さを描いた群象劇、かしらと。達者な若い役者さんの個性を生かした緻密な演技を、目を凝らして耳を澄まして、つぶさに楽しみました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『セインツ・オブ・練馬

 ≪あらすじ≫ 
 財産があることを周囲の人々から嫉妬され、村八分になっている長尾家。もののけが憑いているという噂もたてられている。長男の贄蜜(にえみつ:町田水城)は父親に忌むべき者として育てられ、幼い頃からずっとひどいいじめに遭っており、今もひどい暴力を受けている。対してその妹・郁子(伊東沙保)は、父親から「お前は選ばれた人間だ」と溺愛されていた。父親は亡くなり、母親は病床にある。
 郁子に病気を治す超能力があることがわかり、兄妹は治療院を開業する。“神人(じんにん)”と呼ばれるようになった郁子の能力を検証したいと、東京から大学教授(古河耕史)が訪れ、透視実験がはじまる。
 ≪ここまで≫

 装置と音楽は少々おどろおどろしい空気。なのに冒頭から流行語も散りばめられた現代口語が語られ、密度の高い空気がプシュ~っとふぬけていくような感覚(笑)。役者さんの演技も“敢えて”仰々しく、戯画的に、または力を抜いたりと、緻密に作りこまれているよう。
 古河さん演じる福浦を“大学教授をかたる詐欺師”だと思い込むなどの誤読もしていましたが(本当の大学教授でした)、狙いにハマって、細かいところで何度もクスクスと笑わせていただきました。お隣の方にご迷惑だったのではないかと思うほど(笑)。
 
 お話全体としては、最初に期待したものとは違う方向に進んだことが意外であり、少しあっけにとられたりも。まあこれも私の誤読のせいかもしれません。

 郁子(伊東沙保)と新聞記者(遠藤留奈)の女の対決がスリリング。強者と弱者の立場がどんどん入れ替わります。遠藤さんの、今までに観たことのない演技に見とれました。

 ここからネタバレします。

 “神人(じんにん)”の研究結果を世間に発表して、下降気味の名声を再び上昇させることを狙う東大教授(古河耕史)の指揮のもと、郁子の超能力実験が行われます。兄の贄蜜が呼びよせた京大教授(梅里アーツ)や新聞記者のせいで、実験のずさんさが明るみに出てしまいます。
 主人公の長尾郁子は実在の人物なんですね(⇒千里眼事件)。恥ずかしながら全く知らなかったので、時代背景などは気にならずに楽しめました。ここは好みが分かれるかもしれませんね。

 郁子は「本物の超能力者がニセモノの神人の存在を消そう(殺そう)としている」という新聞記者の言葉におびえます。白衣を着て実験の助手をしていた、この物語の語り部でもある小松(シトミマモル)がその殺し屋でした。小松の検査機具で郁子が神人でないことが簡単にわかってしまうのが、あっけなくて、間抜けで、ちょっと残酷。

 自称助手(山縣太一)のギラギラした存在感は、病床の母親にとりいる野生の勘の良さも見事に表現。無様な実験結果が報道されて神人でなくなった郁子を“ご利益の在る売春婦”にしたてあげ、長尾家に居つきます。助手の次にホスト、そして女衒&ポン引きになったということかしら。恐ろしい。

 こうやって考えると、登場しない母親の存在をもっと強く感じたかったですね。結局、贄蜜も郁子も父親の呪縛から逃れられなかったわけで。贄蜜は奴隷気質のまま。郁子は小松が残した毒入りまんじゅうを食べて唖者になっても、預言者という特別な人間でい続けたかったようだし。特に郁子は、母親への憎悪(母親はおそらく父親に溺愛されていた郁子に嫉妬していた)がバネになっていたんじゃないかと想像します。

出演:伊東沙保/町田水城(はえぎわ)/古河耕史/山縣太一(チェルフィッチュ)/シトミマモル/梅里アーツ/遠藤留奈/數間優一/石澤彩美/芦原健介/岡村泰子(きこり文庫)/田中慎一郎
脚本・演出:山中隆次郎 舞台美術/田中敏恵 照明/伊藤孝(ART CORE design) 照明操作/三浦詩織 音響/中村嘉宏 音響操作/平井隆史 音楽/山野井譲・佐藤こうじ(SugarSound) 舞台監督/西廣奏 演出肋手/田中慎一郎 宣伝美術/上田大樹(&FICTION!) Web運営/栗栖義臣 記録・映像/トリックスターフィルム グッズ製作/YogurtWear 票券/スギヤマヨウ(制作集団QuarterNote) 制作協力/斎藤努(ゴーチ・ブラザーズ) 当日運営:塩路牧子 提携:赤坂RED/THEATER 企画・製作/ロハ下ル
【発売日】2009/06/06 割引料金:3500円/前売料金:3800円/当日料金:4000円
http://www.lohakudaru.net

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 14:08 | TrackBack

2009年07月04日

【オーディション】Studio Life劇団員募集オーディション開催09/07〆切(郵送のみ)

 男優集団Studio Lifeが劇団員募集オーディションを開催します。ただいま代表作の『LILIES』が紀伊國屋ホールにて上演中です(⇒記者発表)。

 2003年の『LILIES』に感銘を受けてStudio Lifeに入団した若い劇団員が、今回の『LILIES』に大きな役で出演しています。ご興味あるのある方は、『LILIES』をご覧になって、考えてみてはいかがでしょうか。劇団の特徴はもちろん、Studio Lifeが目指しているものや、ファンの層などもよくわかると思います。詳細は下記をどうぞ。

 【募集期間】2009年8月2日(日)~2009年9月7日(月)郵送必着
 【資格】~25歳までの健康な男性。(18歳未満の方は保護者の同意が必要)

 「あなたの手で あなたをあなたの手で あの人をデビューさせませんか・・?」
  ~私たちは、ニューフェイスとの出会いを求めています!~

【募集期間】2009年8月2日(日)~2009年9月7日(月)郵送必着
【資格】~25歳までの健康な男性。(18歳未満の方は保護者の同意が必要)
【応募方法】履歴書(身長、体重、3サイズを明記)、写真2枚(全身、顔アップ各1 枚=3 ヶ月以内に撮影したもの)、80 円切手を貼った返信用封筒(返信先を明記のこと)を同封のこと。

【選考方法】
 1次 書類選考後返信封筒にて連絡。
 2次 面接・実技  9月11日(金)・ 9月12日(土)
 3次 実技・歌唱  9月13日(日) 

【備考】
 オーディション合格者は、公演終了後話し合いによりスタジオライフに所属出来ます。
 オーディション料無料。入団費無料。チケットノルマなし。団費 3000 円/月
 週5日のバレエ、ジャズダンス、アクション、演技のレッスンがすべて無料で行われています。

 お問い合わせ 〒165-0026 東京都中野区新井1-38-10 サンフジビル1F
 TEL 03-3319-5645 FAX 03-3319-9867 スタジオライフ新人出演者募集係

【劇団紹介】
 1985年旗揚げ。男性のみで構成されている劇団であるが、脚本・演出は女性。
 男優のみという特徴を生かしながら、耽美色に包まれた文芸作品のみならず、東野圭吾原作「白夜行」 等様々なジャンルの作品を上演、好評を得ている。年間4~5作品、全国7都市で約150ステージの公演を行っている。主な代表作に萩尾望都原作「トーマの心臓」、皆川博子原作「死の泉」などがあり、2006 年9月にはシェイクスピア作「夏の夜の夢」、2009年 6月にはミシェル・マルク・ブシャール作「LILIES」を紀伊國屋ホールで一ヵ月間上演した。
 2008年6月より、劇団はホリプロブッキングエージェンシーと業務提携をしている。

by 劇団スタジオライフ/ホリプロブッキングエージェンシー
http://www.studio-life.com/audition/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 20:55 | TrackBack

2009年07月03日

【写真レポート】東京芸術劇場「野田秀樹芸術監督就任・記念プログラム発表記者会見②」07/01東京芸術劇場中ホールロビー

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中ホールロビーにて

 野田秀樹さんが芸術監督に就任した東京芸術劇場が打ち出すのは、オリジナル作品の発信と海外作品の紹介、そして小劇場での活躍が目覚しい若き才能への支援です。⇒記者会見①

 東京芸術劇場(略称:芸劇)が提携という形でバックアップする公演を“芸劇eyes(ゲイゲキ・アイズ)”と名づけ、選ばれた5団体が紹介されました。

 劇場は今、たくさんの日比野克彦さんの作品で飾られています。劇場前アトリウムに展示された巨大なヒノキ舞台は、自由に出入り可能(一般公開は13:00~18:00)。会見後には野田さんからさらに詳しいお話を聞くことができました。

 ⇒記者会見の動画(2009/09/28加筆)

≪芸劇が注目する才能たち、「芸劇eyes」≫

ハイバイ『て』09/25-10/12小ホール1
 作・演出:岩井秀人

【岩井秀人さん】
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 岩井「自分の身の回り2メートル四方を描く芝居を作っています。先ほど大竹(しのぶ)さんがおっしゃっていた、災いのパワーに興味のある方にはぜひご覧いただけたら。『』は僕の家族の話です。僕の家族に、どれだけ陰湿で大変な血が流れているのかが(笑)、おわかりいただけます。」

五反田団『生きてるものはいないのか』&新作『生きてるものか(仮)』10/13-11/01小ホール1
 作・演出:前田司郎
 ※新旧2作同時上演。『生きてるものはいないのか』は岸田國士戯曲賞受賞作。

【前田司郎さん】
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 前田「『生きてるものはいないのか』は18人の俳優が出てきて、次々に死んでいく芝居です。“俺たちはなぜ死んでしまうんだろう”と思いながら、ただ死んでいきます。常に死ぬことを考えて作りたい。
 東京芸術劇場が野田さんの就任で明るく素晴らしい場所にイメチェンして、今の時代に合った素敵な劇場になったことを嬉しく思っています。」

グリング『jam』12/09-23小ホール1
 作・演出:青木豪

【青木豪さん】
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 青木「グリングは東京芸術劇場小ホール1で旗揚げ公演をさせていただき、それから4回ほど使わせていただきました。『jam』は軽井沢のペンションの話です。ザ・スズナリでの初演とは違う演出でお見せしたいと思っています。」

富士山アネット『EKKKYO-!』2010年01/12-17小ホール1
 構成・演出:長谷川寧

【長谷川寧さん】
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 長谷川「戯曲をもとに俳優が演じたものをダンス(身体)に置き換えていくという、セリフがほとんどない舞台をやっています(⇒稽古場レポート)。いわばダンスと演劇の中間です。『EKKKYO-!』はジャンルを“越境”している団体を集めて、15分ずつパフォーマンスをするイベントです。色んな若い団体が、新しい東京芸術劇場に何かプッシュできたらと思っています。」

モダンスイマーズ『新作(タイトル未定)』2010年02/05-21(予定)小ホール1
 作・演出:蓬莱竜太

【蓬莱竜太さん】
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 蓬莱「『夜光ホテル』の続編を考えています(⇒稽古場レポート)。『夜光…』は、日暮里にいるハチガラスという悪僧たちの1人と知り合い、そこから書き起こしました。ある男がそのグループから決別しようとする様を描いたので、続編では決別とはどういうことなのかを、突っ込んで書いてみたいと思っています。演出面では、自分たちのやっていることを当てはめるよりは、この劇場の何かを借りた新しい表現にチャレンジしたい。」

日比野克彦アートプロジェクト「ホーム→アンド←アウェー」方式[But-a-I]07/01-09/06アトリウム前広場

 昨年、金沢21世紀美術館で作製、展示されたヒノキ舞台[But-a-I](バッツアーアイ)が劇場前に展示されています。中にも自由に入れます!⇒OPEN THEATER PROJECT
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【日比野克彦さん】
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 日比野「このヒノキ舞台では、多摩美術大学、東京藝術大学、地元池袋の立教大学などのカンパニーと一緒に、オープン・シアター・ミュージアムというタイトルで、稽古を見せながら週末に上演する見せ方を行っていきます。劇場の外の閉ざされていないオープンな空間で、広場、商店街、大学というものをつなげながら、より芸術の可能性を追求していきたい。」


≪記者懇談会≫

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会議室にて

 野田さんを囲んだ記者懇談会に参加させていただきました。ラインナップのテーマ性や“芸劇eyes”の選考基準などについて、野田さんから直接お聞きすることができました。

 野田「今年のラインナップをご覧いただいておわかりのことと思いますが、1つの言葉でくくることができるようなテーマ性はありません。スタイルから入るのは違うのではないか。テーマ主義はおそらく海外の真似ですよね。我々は我々の見せ方をしていいし、日本の文化状況に合う見つけ方をしてもいいと思う。」

 野田「“芸劇eyes”は毎年5団体というわけではないです。枠が枷(かせ)にならないようにしたい。今回選ばれた団体については、公演やDVDを観たり戯曲を読んで知っています。時間のゆるす限り、勧められた公演は観に行ってますよ。」

 その他、舞台芸術を通じた子供の教育にも興味があると、はっきりおっしゃっていました。学校教育に演劇が取り入れられることを望む一個人として、都立の劇場である芸劇には、ぜひとも取り組んでいただきたいです。野田さんが発信する“子供のためのお芝居”に、今からわくわくしています。

 ※芸劇の入口は現在、日比野さんの幕絵で装飾されています。夢の遊眠社公演『野田版国性爺合戦』『ゼンダ城の虜~苔むす僕らが嬰児の夜』の舞台美術として使用された貴重な作品です。カラフルで楽しい!
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 ⇒記者会見①はこちら

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 23:49 | TrackBack

【写真レポート】東京芸術劇場「野田秀樹芸術監督就任・記念プログラム発表記者会見①」07/01東京芸術劇場中ホールロビー

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中ホールロビにて

 野田秀樹さんが池袋にある東京芸術劇場の芸術監督に就任されました。芸術監督が采配を振るう公立劇場というと(順不同に→)、新国立劇場世田谷パブリックシアター彩の国さいたま芸術劇場静岡芸術劇場まつもと市民・芸術館といった名前がパっと頭に浮かびます。

 東京都立の劇場に初めての芸術監督が誕生したこと、それが野田さんであることは、日本の演劇界にとって大きな出来事だと思います。
 野田「まずは、“ここに劇場がある”ということを人に知らせること。“あそこにいけば面白いものが観られる”という劇場にしたい。」

 7/1(水)に発表された記念プログラムは、野田芸術監督ならではの色が、前面にくっきりと出た豪華なラインナップ。野田さん率いる東京芸術劇場が一般の観客の興味をぐっと惹きつけて、刺激的な舞台の水先案内人となってくれることを心から期待します。

 ⇒記者会見の動画(2009/09/28加筆)

プロペラ『ヴェニスの商人』『夏の夜の夢』07/02-12中ホール
 作:W.シェイクスピア 演出:エドワード・ホール 出演:プロペラ

【野田秀樹さん】
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 野田「実はプロペラ公演の舞台装置が、まだ日本に届いていないというトラブルが発生しまして、今回の公演はオリジナルの装置ではなく、日本で新たに作って上演することにしました。演劇は災いを福に変える力を持つ、数少ない芸術の1つ。芝居の底力を見せるチャンスだととらえています。」

【Bob Barrettさん(プロペラ出演者)】
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 Barrett「野田さんの記念すべきプログラムに呼んでいただき、何にも変えがたい光栄だと思っております。装置が行方不明になったことで、まさに今までとは違った、特別な公演ができます(笑)。プロペラは、その瞬間に立ちあう皆様に特別な体験をしていただきたいと思って活動しています。我々の力の全てを出す所存です。初めての日本、初めての東京で、役者にとっても忘れられない体験になりそうです。」

【Kelsey Brookfieldさん(プロペラ出演者)】
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 Brookfield「『ヴェニスの商人』で美女ポーシャを演じます。男の私が女役をやるというのも、演出家エドならでは。エネルギッシュに生まれ変わったシェイクスピアを楽しんでいただけるのではないかと思います。」

 野田「エドワード・ホールは、演出を手がけていたロイヤル・シェイクスピア・シアターから飛び出して、今は自分で水車小屋を借りて演劇を作っている。気心が知れた仲です。」


■NODA・MAP『ザ・ダイバー 日本バージョン08/20-09/20小ホール1
 作・演出:野田秀樹 出演:大竹しのぶ 渡辺いっけい 北村有起栽 野田秀樹
 料金6、500円 サイドシート3、000円(全席指定・税込)
 企画・製作:NODA・MAP 制作協力:世田谷パブリックシアター

 野田「英語と日本語は全く違うので、演出も変わります。あれだけいい(英語版の)演出も、敢えてあきらめる(笑)、そんな意気込みです。」

【大竹しのぶさん】
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 大竹「渋谷や日比谷にある劇場の舞台に立つ事が多く、池袋にはあまり来たことがありませんでした。新しい街で演劇を作り出していくことに意義を感じます。
 人生には災いがつきもの。そんな災いからも湧き出るエネルギーを伝えたい。こういう時代だからこそ、生の力を感じてもらいたい。演劇の力を信じて、みんなで作って行きたい。いい芝居を作ります。」

【渡辺いっけいさん】
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 渡辺「昔、小ホール2で『ゴドーを待ちながら』をやらせていただきました。その時に古田新太さんに紹介してもらった、小さいけれどとても美味しい蕎麦屋が、今はなくなっているんです。とてもさびしい。楽しいことをやっていれば、周囲も変わっていく。この劇場が『ここで楽しいことをやっているぞ!』という空気になればいいと思う。」

【北村有起栽さん】
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 北村「今日のこの瞬間が嬉しい。演劇に携わってきた者として、記念すべき1本に参加させていただくことを光栄に思います。この劇場を10年、20年と持続させていけば、いっけいさんのおっしゃるような美味しい蕎麦屋も見つかると思う。池袋にぜひ来ていただきたいです。」


■TSミュージカルファンデーション『ミュージカル「天翔ける風に」』8/21-30中ホール
 演出・振付:謝珠栄 原作:野田秀樹『贋作・罪と罰』 音楽:玉麻尚一
 出演:香寿たつき 山崎銀之丞 戸井藤海 今拓哉 阿部裕 ほか
 料金:S席9、000円 A席6、000円(全席指定・税込)

【謝珠栄さん】
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 「『天翔ける風に』は、野田さんの戯曲『贋作・罪と罰』をミュージカルにした作品です。野田さんから『天翔ける』というタイトルをいただき、その後に私が『風に』と付けました。『天翔ける』という言葉は、時代を変えようとした若い人の心意気、エネルギーを表しているのではないかと思っています。装置も衣裳も演出も変える、再々演です。」

【香寿たつきさん】
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 香寿「『天翔ける風に』は一番大好きで、もっとも感銘を受けた作品です。再々演に出演できるのが嬉しい。」

【山崎銀之丞さん】
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 山崎「自分はミュージカルは初めてなのですが、謝さんの個性とエネルギーに魅せられ、出演を決めました。お客様の期待を裏切らない作品になるよう、謝さんと香寿さんと一緒に作りたい。」


■松尾スズキ演出『農業少女』2010年2月→3月 小ホール1
 作:野田秀樹 演出:松尾スズキ 出演:多部未菓子 吹越満 山崎一 江本純子

【松尾スズキさん(映像出演)】
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 松尾「自分は芸術という言葉に抵抗がある。笑いが芸術にどれだけ貢献できるか、そこに焦点をあてます。芸術の中にも笑いという感情があるということを、知っていただきたい。」


■アジア共同制作「バンコク・シアター・ネットワーク 野田作品上演プロジェクト」
 『赤鬼 タイ大衆演劇“リケエ”バージョン』11/19-22小ホール2
 『農業少女 タイ現代演劇バージョン』11/20-23小ホール1
 作:野田秀樹 演出・出演:バンコク・シアター・ネットワーク   

 ↓タイの出演者・演出家の皆さんからの元気な映像メッセージが流れました。
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 野田「タイ人は身体性が強いです。戦前の日本人はこういう体だったんじゃないかと思うことも。新演出なので、全く違う作品になります。」
 中井美穂(司会)「バンコク・シアター・ネットワークの公演は上演期間が短いですので、どうぞ皆様お見逃しなく!」

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 ⇒記者会見②に続きます。

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