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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2009年07月09日

メジャーリーグ『ヘッダ・ガブラー』07/08-14赤坂RED/THEATER

 稽古場レポートを書かせていただいた、メジャーリーグ『ヘッダ・ガブラー』初日を拝見いたしました。上演時間は約2時間。

 ちょっぴり驚くほどコメディ・タッチのドラマになっていました。でも、120年前から今も生き残っている戯曲ならではの、普遍性にも納得できました。5人の登場人物それぞれの本音(下心)が、セリフの裏側でむくむくとうごめき、戦う様にニヤリ。古典という先入観なしで観に行かれても大丈夫だと思います。

 ⇒公演公式ブログに豆知識がいっぱい。演出家のコメントもあり、作品理解の助けになります。
 ⇒CoRich舞台芸術!『ヘッダ・ガブラー

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより一部抜粋。(役者名)を追加。⇒人物相関図
 舞台は、ガブラー将軍の娘ヘッダ(小沢真珠)とその夫、学者のテスマン(伊達暁)の新居。
 新婚旅行から帰ったばかりの二人のもとを訪れてきたのは
 ヘッダに思いを寄せ、その微妙な関係を楽しんでいるブラック判事(山本亨)。
 そしてテスマンのライバルであり、ヘッダが唯一特別な感情を抱いた、レェーヴボルク(小野哲史)。
 そのレェーヴボルクを追いかけてやってきた、かつての友人、エルヴステード夫人(町田マリー)。
 彼らはみな、自分の思うがままに奔放に生きるヘッダにその運命を振り回されることになる。
 ≪ここまで≫ 

 黒い空間にクラシカルな家具を配置した抽象舞台。中央奥には大きなカーテン。額縁を寝かせて置いたような変形ステージに、草木(ぶどうの葉っぱ?)の装飾が施されています。赤坂RED/THEATERってこんなに広かったのかしら。

 大音量のポップな音楽とカラフルな照明で、いわゆる古典の堅苦しいイメージを払拭。現代のストレートプレイのようで、コメディの要素がとても強い作品になっていました。ボケ・つっこみのようにテンポが良くてわかりやすい笑いに乗っかって、ポンポンと弾む会話を楽に聴いてる内に、奔放かつ乱暴(良く言えば天真爛漫?)なファム・ファタール、ヘッダが起こす事件に引き込まれていきます。

 2人っきりでこっそり話すシーンが多く、シーソーゲームのように拮抗するスリルや、しっとり、べったりと共鳴して悪巧みへと発展する共犯感覚をじっくり味わえます。周囲で耳を澄まして会話を聞いている人たちの、背中や横顔から読み取れるものも面白いです。
 “衝撃の結末”にすっきりと納得できたのは大きな収穫でした。「そりゃそうだ、当然でしょう」とまで思いました。

 ヘッダを演じる小沢真珠さんは、欲望をむさぼるような大きな目が印象的。自分の首を絞める危機さえ前のめりに楽しむ、がつがつ・ギラギラした様が面白いです。ただ、体が小刻みにの動きすぎのような気がしました。あと、ヘッダの方から男性に近寄りすぎなんじゃないかしら。距離も近すぎるような。何不自由なく生きてきた将軍の娘で、男なら誰もが夢中になる危険な美女なので、堂々と立っている時の迫力が欲しいですね。

 山本亨さんが演じるのは、ヘッダに平身低頭つくす素振りを見せながら、実は彼女を自分のものにしようと企むブラック判事。山本さんが登場すると空気が引き締まりました。
 ヘッダの夫テスマン役の伊達暁さんは、堂々たるマヌケっぷりが可愛くて、可笑しかったです。女性に「いい人なんだけどね!」って言われちゃうタイプ(笑)。
 エルヴステード夫人役の町田マリーさんはとっちらかり具合が面白かったですが、まだまだ上を目指せそうな気がしました。
 噂の男・レェーヴボルクを演じる小野哲史さんは、箱庭円舞曲で拝見した印象と全く違う存在感でした。不気味なオジサンだったのに(言葉が悪くてすみません)、今作ではスラっと背の高いイケメンなんだもの!俳優の変貌が観られて嬉しいです。

 ここからネタバレします。

 ヘッダは(わざと)「こんな別荘に住めたらな~」とポロっと言ってしまったせいで、テスマンと結婚するはめになりました。「永遠に青春が続くわけじゃない」というシビアな自覚があったとはいえ、なぜテスマンと(セックスできたのかしら)? 彼女は「自業自得よ」とも言っているので納得づくなわけですが、私にとってはこのことが一番の謎として残りました。

 ヘッダはテスマンの妻になりましたが、ブラック判事と“大人の三角関係”を結んでおり、レェーヴボルクとは昔、特別な関係(レェーヴボルクは自分の“ご乱交”をヘッダに詳細に報告していた)にありました。でも、肉体関係を持ったのは結婚したテスマンだけなんですよね。自分のこめかみを銃で撃って命を終わらせるような人間が、なぜ耐えられたのかな~。もしかするとテスマンとは、まだ・・・?んなわけないか(笑)。

 暗転・明転のタイミングなど、照明には疑問が残りました。奥はあんなに明るくない方がいいんじゃないか、とか。
 冒頭でヘッダが羽織っていたストールが飛んで消えていくのがきれい。消えたストールが最後に空から降ってきて、床に落ちるのもいいですね。こういったイリュージョンにはわくわくさせられます。イントロダクションとしてとても効果的だと思います。

出演:小沢真珠 伊達暁 町田マリー 小野哲史 山本亨
作:ヘンリック・イプセン 上演台本:笹部博司 演出:古川貴義 美術:伊藤雅子 照明:工藤雅弘 音響:岡田悠 衣裳:友好まり子 ヘアメイク:大宝みゆき 演出部:須貝英/栗山佳代子 舞台監督:大島明子 宣伝写真:松本のりこ 宣伝デザイン:今城加奈子 WEB:新藤健/今城加奈子 制作助手:時田曜子 制作:斎藤努 プロデュース:伊藤達哉 主催/企画/製作:メジャーリーグ 後援:TBSラジオ/NACK5 提携:赤坂RED/THEATER 制作:ゴーチ・ブラザーズ
2009年5月23日(土)チケット一般発売開始 前売 4,500円(税込・全席指定)
http://www.hedda-gabler.net/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2009年07月09日 16:45 | TrackBack (0)