めぐろティーンズプログラムが改称してパーシモン・パレット・プログラムとなりました(過去記録⇒1、2)。発表会を鑑賞するのは今年で3度目。講師は柴幸男さん(青年団演出部/青年団リンク・ままごと)です。
柴さんがで昨年6月に上演して大好評だった『あゆみ』を、上演時間約20分の中高生用に作り変えた『あゆみ めぐろパーシモンREMIX』を拝見。予想だにしなかった素敵なことが起こり、人間が大勢いる時に起きる事件(奇跡)の現場に居合わせた幸せを感じました。
⇒柴幸男さんのブログにワークショップの記録あり!
ここからネタバレします。
開場時刻(14:00)に客席に入ると、出演者と演出家がまだ舞台に。というか、そこが稽古場なんですよね。徐々に客席が埋まっていく中、そのまま開演時刻(14:30)直前まで稽古。そして本番との区切りがあまり明確にならないままに開演。衣裳はセーラー服など、普段着ている私服のようです。
生まれて初めて1歩踏み出す幼児、お母さんとスーパーに買い物、にぎやかな学校生活、捨て犬との出会い、優しいおばあちゃんとのワケありの散歩、大好きな先輩と一緒の満員電車・・・。1人1役ではなく、主人公の少女あゆみ、お母さん、お父さん、おばあちゃん、クラスメイト、犬などを、代わる代わる演じて行きます。
私は『あゆみ』(⇒wonderland劇評 by 松井周)を拝見していたのもあってか、純粋な観客としては観られなかったですね。何より、普通の中高生が演劇(しかも『あゆみ』)という、自分1人だけでは絶対に作れないものを作っている、その現場に居合わせていることに意識が集中していました。
『あゆみ』は、役割分担はされているものの、1人1役ではないので、出演者全員が気持ちを通じ合わせていなければ作品としての完成度が落ちてしまう、やっかいな作品だと思います。逆に言えば、技術のありなしよりも、カンパニーのチームワークや一体感がものを言うんですよね。過去2回の発表会と比較すると、参加者たちのコミュニケーションは格段にスムーズにだったように感じました。何より、とっても楽しそうだった!
≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
覚えていることのメモです。発言は完全に正確というわけではありません。
出演:柴幸男、出演した中高生16名
柴さんが今回のワークショップの意図および発表会までの流れについて、観客(保護者?)に向けて詳しく説明してくださいました。
「彼ら(出演者)は現代口語で即興で劇を創作することは上手くできる。だからそれは止めた。制限をつけて、不自由な中で自由にすることをやってもらおうと思った。」
「自分1人で頑張っても良いものができないのが演劇。この作品は特に、誰か1人欠けただけでも成立しない。今日、誰かが休むことが一番怖かった(笑)。」
観客からの質疑応答の時間は、保護者からの感想も含め、舞台にいる中高生と観客の大人との間に豊かなコミュニケーションが生まれていました。“自称・柴さんのおっかけ”の女性もいらっしゃいました。たしかにこの公演を観たら、追っかけになる気持ちもわかりますっ!
30分ほどのトークの後、なんと時間が余っているとのことで、もう一度本番をやることに!!!これにはものすごく驚きましたし、すっごく嬉しかった!劇場職員の方(?)の英断でしょう!!
2度目の本番は出演者はもちろんのこと、客席が全く違っていました。たぶん1度目は意味がわからなかった人が多かったんじゃないかしら。詳しいトークを経て、何を見るべきかを知った観客の集中力たるや!空気の重ささえも変わっているように感じました。
初めての体験をして、体験後に解説を聞き、もう一度同じ(全く同じではないが)体験をするというワークショップを受けたことになったんですよね。この発表会で、観客も育てられたと言えると思います。
[出演]公募による中学生・高校生(16名・50音順):市川萌夏 木﨑千温 井上春香 斉藤茉夕 井上みなみ 佐藤麻央 植草ゆりこ 関口佳 大森唯 中野義之 長田咲紀 宮本周平 小座間遼子 矢野夏帆 菊地尚輝 若林潤
[演出・指導]柴幸男(劇作家・演出家) [協力]有限会社アゴラ企画 [アシスタント]黒川深雪 [区民ボランティア]朝吹弓子/梶実千枝/徳永美穂子/中村美秋/福島豊/松本照代/山本郁子[主催]財団法人目黒区芸術文化振興財団
7/26(日)14:30(開演) 全席自由・当日券300円
http://www.persimmon.or.jp/event/98.php
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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