今年の春に全128ステージを上演し、延べ6万人を超える集客を達成した「フェスティバル/トーキョー(F/T)09春」。早くも「F/T09秋」のラインナップ20演目が発表されました。
開催期間は10/23(金)~12/21(月)の約2ヵ月間。「F/T09春」と演目数は同じぐらいですが、期間はおよそ2倍の長さ。春は公演日程が被っていることが多く、ハシゴ観劇がけっこうハードだったんですよね。秋は余裕をもって、より多くの作品を観られるかも♪
■「フェスティバル/トーキョー09秋」⇒公式サイト
期間:2009年10/23(金)~12/21(月)
メイン会場:東京芸術劇場、にしすがも創造舎、あうるすぽっと、シアターグリーン、世田谷パブリックシアター
■チケット代は一般3500円~6500円。
学生は全演目3000円、高校生以下は全演目1000円!
入場無料のイベントや1時間500円の公演もあります。
大人気のセット券は今回もすぐに完売しちゃいそう。
3演目(10,000円)/5演目(15,000円)/10演目(27,000円)
※『Cargo Tokyo - Yokohama』『個室都市 東京』『神曲』三部作は対象外
■発売日:2009年9月5日(土)
※F/Tオンラインチケットに登録すれば、9/1(火)からの先行予約が可能!
※『神曲』三部作は10/8にセット券発売。10/18に個別演目券発売。
フェスティバル・ディレクターの相馬千秋さんと、参加アーティストの生のコメントをまとめました。写真もありますのでどうぞご覧ください!
⇒演劇情報サイト・ステージウェブで動画が見られます。(2009/08/30加筆)
維新派の松本雄吉さんへの単独インタビューあり!
【相馬千秋さん】
相馬「4か月前に終わったばかりの「F/T09春」は、全体としては“東京を代表するフェスティバルを立ち上げる”という要請に応え、はじめの一歩を踏み出すことができたと思います。春のキャッチフレーズは“新しいリアルへ”。さらにそれを進化させていきたいと思い、秋は“リアルは進化する”としました。F/T主催の16演目の内、新作世界初演が5作品、劇団や劇場、海外フェスティバルとの共同制作が7作品、既存の作品を新たに創造するリクリエイションと日本バージョン制作が3作品。新しい作品を生み出す場として、フェスティバルの本来的な機能をより充実させていきたいと思っております。」
相馬「アートにはリアリティの幅を広げる想像力や、リアルなものを探求していく意志の力があります。参加アーティストそれぞれのリアルの追及の中にこそ、舞台芸術の未来を見出したい。F/Tはその探求を目撃するだけの場ではなく、その探求をともにやっていく場でありたい。私たちが生きている社会の現実、“今、ここである”というリアリティに対して、演劇はどう向き合っていけるのか。アーティストと一緒に問いかけて行く場にしたい。」
【左から松井周、高山明、クリス・コンデック、天児牛大、黒田育世、松本雄吉、タニノクロウ】
【超越的なイメージの力によって、我々の日常を遥かに超えて行く作品群】
■山海塾『卵を立てることから―卵熱』演出・振付・デザイン:天児牛大
相馬「天児牛大さんには今回からF/Tの組織委員にご就任いただきました。F/Tに対する期待もこめて、今回の抱負をお願いいたします。」
【天児牛大さん】
天児「春には古い(昔の)作品をやらせていただきました。今回も26年前の作品ですが、今も踊っている作品です。
F/T開催時期が春から秋に変わるのは、とてもいいことだと思います。秋(特に10月)はどんな国でも盛んに作品を発表している時期。日本で発表した作品を違う都市でも上演できるよう、ネットワークを構築してほしい。経済的な効率を考えるのもカンパニーにとって大事。何がともあれバジェット(予算)です。(芸術団体の活動は)経済的な基盤を支えて維持することが大前提。東京都や文化庁は豹変せずにぜひ持続してほしい。」
■維新派『ろじ式』作・演出:松本雄吉
相馬「維新派にとっては6年ぶりの東京公演。にしすがも創造舎の体育館のみならず、校庭も大胆に使う新作世界初演となります。大胆な構想や野望をお聞かせください。」
【松本雄吉さん】
松本「今年3月のニュージーランド公演中に訪れた、ニュージーランド博物館に感銘を受けました。1階はオセアニア先住民の民族博物館、2階はヨーロッパの歴史館、3階と4階は戦争記念館でした。とりあわせの面白さもありますが、驚いたことには、太平洋戦争中に不時着した日本の零戦が展示されていたのです。演劇がやるべき仕事がその空間に凝縮されていると直感しました。
維新派は野外の風景を借景するのが基本なので、室内空間でやるのには戸惑いもありますが、一辺60cmの立方体の標本箱を600個ほど作って、その中に色んなものを入れて積み上げ、博物館の状態にすることで、にしすがも創造舎の空間に挑戦したい。」
■「『神曲』地獄編、煉獄編、天国編」 演出:ロメオ・カステルッチ(イタリア)
写真©LUCA DEL PIA
相馬「ロメオ・カステルッチによる、ダンテの『神曲』に着想を得た三部作。今回のフェスティバルの目玉作品になるかと思います。地獄編には現地で集めたたくさんのエキストラが出演します(イメージ写真)。
煉獄編は世田谷パブリックシアターとの共同制作です。一般家庭の普通の日常生活の中で、魂が浄化されていくプロセスが描かれます。ハイパーリアルで大がかりな舞台装置も見どころのひとつです。
天国編はライブ型のインスタレーション。展示を見るような感覚でお越しいただければと思います。天国というものに我々が持っているイメージとはかけ離れた、カステルッチなりのメッセージをぜひご覧になってください。」
■『4.48サイコシス』作:サラ・ケイン(イギリス) 演出:飴屋法水
相馬「前回『転校生』を手掛けられた飴屋法水さんには、F/Tの方からサラ・ケインの遺作に取り組んでいただきたいと提案しました。飴屋さんは客席と舞台を反転させて、会場となるあうるすぽっとの空間を大胆に使いたいと希望されていました。作品のイメージ画像は、かつて彼が作ったインスタレーションの創作過程の写真です。」
■庭劇団ペニノ『太陽と下着の見える町』作・演出:タニノクロウ
相馬「にしすがも創造舎という大きな空間を手に入れて、どういう形でご自身の妄想、イメージを広げて行こうと思ってらっしゃるのか。自由な構想をお聞かせください。」
【タニノクロウさん】
タニノ「昔からやりたいと思っていたコンセプトなんですが、うまくパンチラを見せたい(会場で笑いが起こる)。僕みたいなクルクルパーをこんなフェスティバルに参加させていただいて光栄です。迷惑だけはかけにないようにしたい(会場でさらに笑いが起こる)。自分はとにかく、死ぬほど演劇が好きだからという理由だけで、演劇をやっています。こういったフェスティバルに参加すると別の欲も湧いてくるので、いい作品ができると思います。努力します。」
【現実のドキュメンタリー性を利用していく作品群】
■『デッド・キャット・バウンス』演出:クリス・コンデック(アメリカ/ドイツ)
相馬「ロンドンの株式市場と劇場をリアルタイムに接続し、ある種の投資ゲームの中に観客をいざなっていく作品。演出のコンデックさんに、日本バージョン制作のリサーチも兼ねて来日していただきました。」
【クリス・コンデックさん】
コンデック「コンセプトはとても簡単です。我々はパフォーマンス中に、観客のためにお金儲けをするのです。チケット代を元手に劇中で株の取引をして、利益が出たらお客様に還元します。自分がインターネットで株を買った時の経験がもとになっています。5分ごとに「儲かった!」「損した!」と興奮しました。損したことの方が多かったんですが(笑)。」
コンデック「使うのはお客様のお金なので、意見も逐一聞きます。インターネットの画面で値段が上がったり下がったりするのを見て、一喜一憂することになります。株のやり方をお客様に教えるのではありません。株の取引をする自分たちが、株の動きの一部になるような感覚です。舞台上で起こることのコントロールが不可能になり、パフォーマンスがひとりで走り出す形になるでしょう。」
写真©Can Mileva Rastovic
相馬「日本バージョンはどういう形になりますか?」
コンデック「日本の経済関係者に、日本の株式市場で何が起こっているのかを、彼らの経験を引き出していく形でインタビューをします。株の価格が上下する表面的なことの中に、彼らのインタビューの抜粋を挿入することで、経済のより深まった部分で何が起こっているのかを、お見せできると思います。」
■Port B『個室都市 東京』構成・演出:高山明
相馬「既存の演劇の枠組みそのものを更新していくPort B(ポルト・ビー)。今回は池袋西口公園で24時間・7日間ずっとオープンしている“場”のプロジェクトです。500円で1時間滞在できます。観劇の合間に長居していただけたらと思います。」
【高山明さん】
高山「誤解を恐れずに言ってしまうと、個室ビデオ店を池袋西口公園に作りたいと思っています。24時間オープンのビデオ型インスタレーションです。池袋西口公園にはいろんな方々が集まっていて、すでにコミュニティーがある場なのですが、その中にあつかましく、仮設のビデオ店を建ててしまう。どういう反発があるのか、僕の中にどういう戸惑いが生れるのか、まずはそこから考えることしかできない。色んな方に迷惑をかけるかもしれませんが、とにかくやってみたい。僕は常にその場に居るので、お客様にはいつでもいらしていただきたい。そこが議論の場になればいいし、何か問題が起こったらそれはそれでいいと思っています。」
■リミニ・プロトコル『Cargo Tokyo - Yokohama』
構成:シュテファン・ケーギ(スイス)/演出:イェルク・カレンバウアー(ドイツ)
写真©Nada Zgank/memento
相馬「前回の『資本論』が大きな話題を呼んだリミニ・プロトコル。今回はいよいよ劇場を飛び出して、野外でのイベントになります。観客はトラックの荷台を改造した客席(50名ほど)に座って、街をめぐります。運転手も本物のトラック運転手です。今回のテーマは物流。ヨーロッパ30都市で上演されており、今回はじめてトラックごと海を渡って日本にやってきます。どのエリアを走るのかは未定。ただいまスタッフが様々な手続きに奔走中です。」
■『フォト・ロマンス』構成・演出:ラビア・ムルエ リナ・サーネー(レバノン)
相馬「ラビア・ムルエは東京国際芸術祭で2回、昨年はSPACにも招聘されました。今回はつい先日アヴィニオン演劇祭で世界初演された新作をご紹介いたします。
イタリア映画のパロディ映画を作製したアーティストが、検閲官に対して自分の作品をプレゼンテーションするという設定です。当然その背後には、レバノンで現実にある検閲が控えています。それを痛烈に批判するアイロニカルで政治的な作品です。」
■サンプル『あの人の世界』作・演出:松井周
相馬「演劇そのもののドキュメント性を利用した作品群を紹介してきましたが、松井さんはあえてご自身の劇作と演出で、物語にこだわってらっしゃいます。新作のコンセプトを含めてお話をお願いします」
【松井周さん】
松井「作品のタイトル中の“あの人”とは、「あの人ってさー」と雑談をしている時の“あの人”です。“あの人”という言葉を発するそれぞれの人が“あの人”に貼り付けたイメージ(思いこみ)が、僕にとっての物語をはじめるきっかけになるんじゃないかと思いました。“現実は思いこみでしかない”といったマイナスのイメージではなく、偏見の中にでも共有できる偏見はあるという、肯定的なイメージで作品を作っていきたい。」
【ダンス作品】
■BATIK『花は流れて時は固まる』構成・演出・振付:黒田育世
相馬「黒田さんが2004年に朝日舞台芸術賞を受賞された代表作を、リクリエーションして発表していただきます。」
【黒田育世さん】
黒田「私はよく倒れるまで踊るんですが、30分ぐらいたつと「もう立てない(もう踊れない)」と思うようになります。それでも踊り続けると「立てない」という言葉を思い浮かべることすらしなくなる。その言葉を失った瞬間から、次の一瞬を乗りこえるためだけに体が勝手に舞い始める状態になる。運動の連続と次の一瞬という時間の連続の境目が、徐々に消えていき、体が人の間に溶けだすような、人の中に溶けるような感覚です。それを持てた時が“今”だと思っています。『花は流れて・・・』はそれをやんちゃに切り取ったような作品です。3回目もやんちゃに行きます。」
■グルーポ・ヂ・フーア『H3』演出・振付:ブルーノ・ベルトラオ(ブラジル)
写真©Bruno Beltrão
相馬「ブルーノ・ベルトラオはヨーロッパで大変注目されているブラジル出身のダンサー。ヒップホップのボキャブラリーでシークエンスを解体し、コンテンポラリーとして再構成するという振付を考案した人です。ヒップホップ・ダンサーの圧倒的な身体能力と、哲学的な振付がぶつかって、我々がまだ見たことのないような、新しい振付を垣間見ることができるのではないかと思っています。」
【その他】
■『演劇/大学09秋』(桜美林大学、京都造形芸術大学、近畿大学、多摩美術大学)
相馬「“今どきの演劇は大学でも生まれる”ということで、昨年に続いて大学の演劇をご紹介します。」
■F/Tステーション(おやじカフェ、快快)
相馬「春のF/Tステーションには約2万8000人にご来場いただきました。今回は西口公園ではなく東京芸術劇場の前に設置されます。」
昨年のおやじカフェ↓ 写真©蓮沼昌宏 Masahiro Hasunuma
相馬「おやじカフェはさらにレベルアップし、毎週金曜日には若手パフォーマンス集団・快快(ファイファイ)が、お客様参加型のイベントを催します。池袋に新しいポップな風を吹き込んでくれるのではないかと期待しています。」
快快のメンバー↓ 写真©加藤和也 Kazuya Kato
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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