青年団の山内健司さんと兵藤公美さんの2人芝居です。こふく劇場の永山智行さんの戯曲『昏睡』を、岡崎藝術座の神里雄大さんが演出されます。
2005年に拝見した『昏睡』は7つの短編ごとに出演者が違いましたが、今回はすべての役を2人で演じてらっしゃいました。上演時間は約1時間30分・・・だったと思いますが曖昧です。
⇒CoRich舞台芸術!『昏睡』
≪キャッチコピー≫ 公式サイトより
世界が終わる。2人の俳優で描く7つの詩編。
≪ここまで≫
ほぼ何もないアトリエ春風舎で、山内健司さんと兵藤公美さんが全力で、あらゆる男とあらゆる女、つまりは人類を表現していました。演出はド直球ストライクと申しましょうか、非常に潔く、戯曲の世界そのものを素手で正面からわしづかみにしようとしているようでした。スポーツに例えるなら相撲とか(笑)?
役者さんの熱演は大いに見ごたえがありました。ただ、役者さんご自身のキャラクターありきの役作りや言葉はこびは、それ自体に面白さはありましたが、できれば形の定まらない、得体のしれない、例えば人間ではない謎の生命体のように見える瞬間がもっと欲しかった気がします。光とか運動とか、そういったものに見えるような。
ここからネタバレします。
(序)、7「戦場」、6「文明」、5「退屈」、4「接合」、3「時刻」、2「夢想」、1「遺骨」の順番に上演された・・・のかしら。転換の度に鳴ったサイレン(のような音)は不思議な音でした。あれは人が死んで生まれ変わるまでの時間で、新たな命をもらっているんじゃないかと想像していました。
「遺骨」は暗転したまま朗読が続きました。他者をいとおしむ優しい言葉でした。あの世の闇が際限なく広がり、私(観客)を温かく包んでくれたので、涙がぽろぽろこぼれました。性交したって男女はつながらないし、親子といっても孤独な他人同士だけれど、見つめ合って互いを求める意識があれば、その瞬間すでに一体になっているのかもしれません。そもそも私たちは1つなのかもしれません。そんなロマンスを信じられました。
オレンジ色の旅行鞄からねじれて生えてきた木が素晴らしかったです。緑色の筒状の網に造花をくっつけているんですね。人が絶滅しても静かにそこに立っている木が美しかった。
体がなくなっても、人の魂は地上をさまよっているかもしれません。今生きている私の心だって、すでに愛する誰かのもとに届いているかもしれないですよね。頭にパっと浮かんだ私の大切な人たちのことを、抱きしめたい気持ちになりました。
青年団若手自主企画vol.42
出演:山内健司(青年団) 兵藤公美(青年団)
脚本:永山智行(こふく劇場) 演出:神里雄大(岡崎藝術座) 照明:伊藤泰行 宣伝美術:京 画:神里雄大 制作:野村政之 企画:山内健司 兵藤公美 企画制作:青年団/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
【休演日】8月20日(木)【発売日】2009/06/20 予約:2000円 当日2300円
http://www.seinendan.org/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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