CASTAYA PROJECT(カステーヤ・プロジェクト)とは、公式サイトによるとエンリク・カステーヤという名前の演出家が率いる演劇プロジェクトです。その実体は非公開。旗揚げ公演は東京デスロック『演劇LOVE2008~愛の行方三本立て~』公演内の1演目『CASTAYA』。40分間、無名の女優が無言で立ち続けるという作品でした。
今回は8/10(月)、11(火)、24(月)、25(火)という変則的な日程の4ステージ公演。すべてが違う内容でした。私は2回目以外の3ステージを拝見。情報非公開にも関わらず、客席はほとんど埋まっていたようです。怖いもの知らずなお客さん、多いね!(笑)
⇒JNSK OFFICIAL DIARYにおける作品解説(2009/08/29加筆)
⇒CoRich舞台芸術!『 "Are You Experienced?" 』
1回目は10名以上の俳優による『マクベス』の稽古風景を見せてくれました。2回目は東京デスロックの『LOVE』を上演したようです(私は観ていません。伝聞です)。3回目は前田司郎さん(五反田団)の2人芝居『おやすまなさい』を、女優2人が全く違う演出で2度+α演じました。4回目は「演劇とは何か(これが演劇だ)」を文字通り“経験”する約1時間30分。最後は1人の俳優が舞台中央で無言で立ち続けました。
最後の演目は、演劇が私の目の前にあり、ついには私自身となって、その場、その時に存在したことが実感できる作品でした。じっと舞台上に居続けた俳優が素晴らしかった。自分を完全にさらし切って、すべてを受け止める覚悟をもって観客と向き合い、コミュニケーションをしていました。前回同様、涙が流れました。
こまばアゴラ劇場の夏のサミット2009参加作品なので、3回目の終演後にサミットディレクターの杉原邦生さんと、Enric Castaya & Experienceのメンバーである多田淳之介さんによるポストパフォーマンストークがありました。
CASTAYA PROJECTの実体を非公開にしたまま進行されましたが、最初にすべて明かしてしまった方が良かったんじゃないかと思います。チラシに書かれた文章から考えると、CASTAYA PROJECTには「演劇初心者にこそ見てもらいたい」という意志があるようですので、まずは全ての観客に平等に情報を与えて欲しいですね。
ここからネタバレします。
■8/10(月)①
10名以上の俳優による『マクベス』の稽古風景。いわば舞台裏そのもの。稽古自体が面白いのはもちろん、じわーっと暗転するだけで、目の前で起こっている本音の会話(脚本なし)もすべて芝居になるのがとても面白い。でも「わかる人だけにわかる」ことが多すぎる感あり。演劇フリークの私にとっては豪華キャストでした。
■8/11(火)②私は観ていません。
■8/24(月)③
前田司郎さん(五反田団)の2人芝居『おやすまなさい』を全く違う演出で2度(+α)上演。出演者は女優2人。1度目は客席を向いて立ったまま叫んだり。2度目は配役を逆にして小道具ありの現代口語演劇っぽく。3度目(+α)は1人の女優が両方の役を演じます。片方は布団に寝た(死んだ)まま。
2度目までは退屈もしましたが、3度目で一転。めちゃくちゃ面白くなって、終幕までにやにやしっぱなしでした。言葉の意味だけを聞いていると、寝られない人と寝たい人がうだうだ話すだけとも受け取れる戯曲ですが、布団が敷かれた小さな部屋が貝の転がる海底に見えてきます。テレビの砂嵐と荒々しい波の轟音が空間を満たして、砂漠のゾウと海のエイが出会ってしまいそうでした(そしてゾウはエイの毒で殺されるんだね)。2人が1人に合体したことで、私も劇場ごと1つの命になったような心地。
■8/25(火)④"Are You Experienced?"
出演者は女優2人と男優1人の合計3人。劇場に観客と俳優がいる。俳優が脚本家の書いた言葉を発する。俳優が演出家の指示で動く。観客はそれを見ている。そして時間が過ぎて行く。栗山民也さんが「演劇は時間の芸術である」とおっしゃっていたのを思い出しました。
脚本家・演出家・俳優である多田淳之介さんが「私が演劇です」等と言って、ポツンと1人で立って、そのまま無言になって立ち続けます。それはまごうことなき演劇でした。多田さんと観客を含む劇場全体が演劇であるのはもちろん、実は私という個人も演劇であるのだと感じました。つまり人間存在そのものが演劇なのです。私たちはセリフをつくって自分に語らせ、体を動かすように命令します。そしていつか自分から舞台を降ります(この世を去る)。物語があるか、面白いかどうかなんて全く関係なく、人生そのもの、人間そのものが演劇なのだと実感できたことが何よりの収穫でした。
タイトル"Are You Experienced?"を直訳すると「あなた(たち)は経験されましたか?」となります。最初は意味不明だったけれど、作品を観てわかりました(間違ってるかも知れませんが)。俳優は「私は観客です」と言って観客という役を演じます(脚本家や演出家も演じる)。つまり俳優が観客という立場を経験する(観客になる)ので、観客からすると「俳優に経験される」ことになるんですね。
私は劇場出入り口のドアが開いた時、この芝居を終わりにしてもいいと思ったので、すぐに退場しました。すがすがしい帰り道でした。私自身が演劇であることを、コンクリートと靴の裏が接する瞬間ごとに実感できました。軽やかながら一歩ごとにしっかりとした重みも感じられる足取りで。
退館時刻までずっと座っていた観客もいたようです。多田さんは2時間ぐらい立っていたのかしら。⇒CoRich舞台芸術!の感想(トラックバックしているブログも面白いです)
1点だけ難をいえば、こういった作品で上演時間が1時間30分というのは長すぎる気もしました。前半の女優さん2人のシーンを短くして、開演からドアが開くまでを1時間程度におさめても良かったんじゃないかと思います。
こまばアゴラ劇場夏のサミット2009にて悪夢再び。
出演:非公開 脚本:非公開 演出: EnricCastaya&Experience
In advance 2500yen At the door 3000yen All stage pass 8000yen
“Are You Experienced ?”is to be composed of some pieces created by the international members of the Enric Castaya & Experience. We hope you have a great experience.
http://castaya.exblog.jp/10310338/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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