佐々木蔵之介さんご自身のユニットTEAM申(ちーむ・さる)と、パルコのプロデュース公演です。作・演出はイキウメの前川知大さん。東京公演の千秋楽前日にやっと伺いました。上演時間は約2時間。
それぞれに出自の違う6人の役者さん(男ばかり)が個性を生き生きと発揮しながら、息の合った演技で現実と隣り合わせのSF世界を盛り上げてくださいました。前川作品では先月の『奇ッ怪』でメルマガ号外を出したばかり。ハズレがないのが凄い!
⇒CoRich舞台芸術!『狭き門より入れ』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
人間は、いつの時代にも何か大きな存在に取捨選択を繰り返されていたら――。
それを知ってしまった人間は、どのように行動するのか――。
舞台は、ある街にあるコンビニエンスストア。
取捨選択される事実を知ってしまった男と、その周辺の人々は、
先にある道を自身たちの意思で選ぼうとする。
それぞれが思う「希望」とは……?
選ばれることが正しいことなのか、
生きる意味を賭けて、自分も人生の行く末を選ぶ、
より良い世界を目指し希望を求めてそれぞれの覚悟を見出すまでを描くSF劇。
≪ここまで≫
舞台はリアルなコンビニ。新国立劇場の『美女で野獣』(2001年)を思い出しました(あの装置は凄かった!)。映像と照明をわかりやすく効果的に使って、ごく身近な日常生活の表と裏を軽やかに実体化してくれます。コントみたいに笑わせてもらいつつ、究極の選択を迫られた登場人物に自分を重ね、私だったらどうなるか、どうするかと考えながら、物語の結末までわくわく楽しく拝見できました。
事情がわかっている人物と、全然わかっていない人物とが話す時のギャップがとても面白いです。一方は真剣に話しているのに、一方は意味がわからずトンチンカンな天然ボケをかましまくり。男ばっかりで遊び尽くして楽しそうっ!!(笑)
そして最後はグっと胸に迫る言葉もあって。充実のエンタメ演劇を堪能しました。
ここからネタバレします。
数十年かけてこっそりと“より良い世界”を作っておいて、あるタイミングで勝手にすり替える「世界の更新」が迫った地球。ただし新世界に移れるのは人類の6割。4割は崩壊する旧世界に残されてしまいます。同じ回を観ていた知人が「アセンション(Wikipedia)が題材になっているのかも」と教えてくれました。映画『FISH STORY』みたい。
『こぶとりじいさん』のたとえ話は少々唐突な気もしたけれど、わかりやすくて良かったです。私は共感しました。「仕方がないから」とか「○○のために」とか「誰かに頼まれたから」ではなく、ただ「好きだから」「楽しいから」「気持ちいいから」こそ起こる行動に、人は(世界は)動かされるのだと思います。もしかするとそんな気持ちこそが、信じるに足る唯一のものかもしれません。
手塚とおるさんがイスに登ってしゃがむのは『DEATH NOTE』のエルかしら(笑)。髪型もちょっと似てるし~。
「世界が欲しいのは願いではない。祈りだ。」
≪東京、岡山、大阪、広島、福岡≫
出演:佐々木蔵之介 市川亀治郎 中尾明慶 有川マコト 手塚とおる 浅野和之
脚本・演出:前川知大 [音楽]向井達也 [美術]土岐研一 [照明]原田保 [音響]原田耕児 [ヘアメイク]西川直子 [演出助手]長町多寿子 [舞台監督]林和宏 [宣伝美術]東學 [宣伝写真]谷敦志 [宣伝PR]ディップス・プラネット [制作協力]ケイファクトリー [製作]山崎浩一 [プロデューサー]松本あき子・尾形真由美 企画:Team 申 企画・製作:株式会社パルコ
【休演日】8/25(火)、9/1(火)【発売日】2009/06/13 7,500円(全席指定・税込)
http://www.parco-play.com/web/page/information/semaki/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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