早船聡さん(⇒新国立劇場に書き下ろし、稽古場レポート、メルマガ号外)が作・演出(たまに出演も)されるサスペンデッズの新作は、三鷹市芸術文化センターのMitaka"Next"Selection 10th.参加作品。チラシのイラストがいつも素敵。
劇場入口からびっくり、の美術です。これは気持ちいい!これまでとは作風がガラっと違った、大人のダーク・ファンタジーでした。上演時間は約1時間45分。
⇒詩森ろばさんのブログ
⇒CoRich舞台芸術!『夜と森のミュンヒハウゼン』
レビューをアップしました(2009/09/17)。
≪あらすじ≫
深い森の中に棲まうものたち。病気の妹と2人暮らしの兄。仲間はずれの帽子男。さびしんぼのバニー。フレンドリーな無差別殺人犯。旅行鞄を持った女が迷い込んできて・・・。
≪ここまで≫
星のホールは変幻自在ですね。開演前からとても心地よくて胸躍りました。
会話をする人物の背後にある森が深層心理の世界のようで、その深みと広がりが美しかった。
夢と現実が交差し、幻想的な空間に様々なイメージが浮かび上がります。看護師(石村みか)の物語には『ザ・ダイバー』と重なるところもありました。
ここからネタバレします。
劇場が森になっていました。入口側に大きな木が何本も立っていて、その林を抜けるとステージが広がります。客席はその奥に設置されていました。つまりいつも舞台になっている側に客席があります。奥行も幅も大きくとった贅沢な舞台空間でした。木は白く塗られている(?)ので、照明の色が映えます。
動物たちの幻想世界と看護師(石村みか)の現実が交互に描かれ、意外なところに接点が見つかり、重なっていきます。まさか早船さんの作品でウサギが登場するとは全く予想していませんでした(笑)。もうちょっと早くに全てが分かっても良かった気がしました
妹サキ(高畑こと美)は幼い頃に暴漢らに殺され、遺体となって森の中に捨てられていた少女でした。少女のかつての飼い犬クロ(佐藤銀平)が遺体を発見し、少女は何もかも忘れてしまった魂としてよみがえります。犬は少女を自分の妹として、森の中で十年暮らしてきました。
不倫相手の男(伊藤総)にひどい仕打ちをされて、お腹の子供も失って(堕胎か流産かは不明)、深く傷ついた看護師の魂と、少女の魂が共鳴したのでしょうか。2人は森で出会い、そして一緒に森を旅立っていきます。
得体のしれない無差別な暴力は時代のキーワードですよね。殺人犯(=ホワイトソックス)と不倫男を伊藤総さんが演じているのが怖いところ。また、ホワイトソックスは誰かに依頼されて殺人(動物殺し)を行っているのも、現代を暗示するものがあると思います。
最後は犬たちが火をつけて森が真っ赤に染まって終幕。問題が起こって、行き詰って袋小路に入ってしまったら、何もかもすべて壊して新しくやり直そうとする今を表しているようでした。
第7回公演 Mitaka"Next"Selection 10th.参加
出演:伊藤総(ホワイトソックス)/佐藤銀平(犬)/佐野陽一(一角獣)/富沢たかし(金田・マスター)/冠野智美(うさぎ)/高畑こと美(妹)/石村みか(看護士)
脚本・演出:早船聡 美術:袴田長武+鴉屋 舞台監督:大友圭一郎 照明:工藤雅弘(Fantasista?ish.) 音響:平井隆史(末広寿司) 衣裳:大野典子 イラストレーション:木村タカヒロ 宣伝美術:野島敏光 制作:石川はるか(ハイリンド) 上田郁子(オフィス・ムベ)
【休演日】9/14(月)前売2,500円 当日3,000円 全席自由 お問い合わせ:info@suspendeds.net TEL&FAX:042-727-8640 オフィス・ムベ
http://www.suspendeds.net
http://mitaka.jpn.org/ticket/0909110/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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