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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2009年09月21日

新国立劇場演劇研修所『朗読劇 少年口伝隊一九四五』09/18-20新国立劇場 小劇場

 2008年2月の初演より、新国立劇場演劇研修所のレパートリーとなった『朗読劇 少年口伝隊一九四五』(過去レビュー⇒)。2期生に代わって3期生がヒロシマの人々の心を伝えてくれました。“花江さん”が登場するまではやはり涙が流れっぱなし。

 上演時間は約1時間。短いですが緊密かつ重厚です。A席2,000円/B席1,500円というお値段も嬉しい。来年(7月下旬に公演予定)は4期生にバトンタッチです。ご家族とぜひ。

 ⇒CoRich舞台芸術!『朗読劇 少年口伝隊一九四五

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 昭和20年8月6日、一発の原子爆弾が広島の上空で炸裂した。一瞬にして広島は壊滅、そして多くの孤児が生まれた。かろうじて生き延びた英彦・正夫・勝利の三人の少年は、やはり運よく助かった花江の口利きで中國新聞社に口伝隊として雇われる。新聞社も原爆で何もかも失ったため、ニュースは口頭で伝える外なかったからだ。三人の少年は、人々にニュースを伝えながら、大人たちの身勝手な論理とこの世界の矛盾に気がついていく。やがて敗戦。しばらくすると正夫が原爆症を発症、ひょんなことから手榴弾を手にした勝利はある決意をする。そこへ戦後最大級の台風が広島を襲うことになる。
 ≪ここまで≫

 井上ひさしさんの戯曲が素晴らしいのはもちろん、栗山民也さん演出も見事です。台本を持ってセリフを語るという点では“朗読劇”ですが、俳優の動きや照明、音響などのスタッフワークはストレートプレイと変わらぬ緻密さです。朗読とギターの生演奏(宮下祥子)と朗読とのコンビネーション、照明の色や切り替わるタイミング、おさえた色使いで舞台を染める映像など、何度も観ている演目なのにハっとさせられます。

 2期生と比べると3期生は大人しい印象。静かに心を合わせて、全員で1つのものを生み出している感覚がありました。声もどちらかというと小さめですが、聞こえないということはなく、感情を抑えた語り口で正確に言葉を伝えてくれます。群読部分も息が合っていました。

 中國新聞社の花江さんを演じた辻村優子さんは、第一声からはつらつと輝いていました。健康的な身体から晴れ晴れとした陽気が感じられます。
 3人の少年たちもとても良かったです(下手から勝利:米川貴久/英彦:長元洋/正夫:宇髙海渡)。終盤に近づくに従って感情表現がより豊かに、激しくなり、3人の少年の憤り、悲しみ、悔しさが迫って来て胸が痛みました。

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 原爆が落とされてすぐに枕崎台風(Wikipedia)がヒロシマの地を襲います。2000人以上が亡くなったそうです(セリフより)。“悪魔に魅入られ、神様に見捨てられた町が水たまりになった”なんて、悲しすぎる。

 今回もっとも心に刺さったのは空のこと。空から恐ろしいものが降ってくる、それが戦争なんですね。狭い東京の空を見上げ、広い青森の空(写真↓三内丸山遺跡)を思い出し、戦時中を生きた人々の気持ちを想像しました。
aomori_iseki.JPG

出演:岸田茜、熊坂理恵、鈴木良苗、辻村優子(花江さん)、野村真理、吉田紗和子、渡邉樹里、宇髙海渡(正夫:原爆症で亡くなる少年)、金成均(哲学じーたん)、香原俊彦(手榴弾を持っていた日本兵)、竹田桂、長元洋(英彦:20代まで生存する少年)、米川貴久(勝利:手榴弾を握りしめたまま台風で亡くなってしまう少年)、若菜大輔
※今回は3月に修了した2期生に変わって3期生が出演し、気持ちも新たに取り組みます。 どうぞこの機会にご覧ください。
作:井上ひさし 演出:栗山民也 ギター:宮下祥子 音楽監督:後藤浩明 模型作製:尼川ゆら 照明:服部基 衣裳:中村洋一 音響:秦大介 映像製作:小林倫和 方言指導:大原穣子 ヘアメイク:林節子 演出補:田中麻衣子 舞台監督:田中伸幸 米倉幸雄 舞台・照明・音響操作:新国立劇場技術部シアターコミュニケーションシステムズレンズ(舞台:小林正人 照明:塩沢しのぶ 音響:黒野尚 映像:鈴木大介 調整:久村泰代 大道具:古矢晃) 宣伝画:徳永明美 宣伝美術:松吉太郎 撮影:落合高仁 制作:新国立劇場 研修所長:栗山民也
【発売日】2009/07/29 A席2,000円 B席1,500円 *料金は税込みです。*各種割引のご利用はできません。*Z席の販売はございません。
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000261_play.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2009年09月21日 12:13 | TrackBack (0)