ケラリーノ・サンドロヴィッチさんが脚本・演出を手掛ける劇団ナイロン100℃の第34回公演。カフカおよびカフカの小説を題材に、脚本がないところから稽古場で作り上げた作品だそうです(チラシ等より)。
作り方からしてそうですが、劇団だから出来ること(劇団じゃなきゃできないんじゃないかと思われること)を見せていただけたように思います。劇団の価値はここにあるって信じてもいいんじゃないでしょうか。こちらで野田秀樹さんが劇団について語ってらっしゃいます。上演時間は約3時間5分(途中15分の休憩を含む)
⇒CoRich舞台芸術!『世田谷カフカ』
カフカの小説が舞台で上演されるのはもちろんですが、カフカ自身も出てくるし、劇団員も劇団員本人として登場します。つまり作品が入れ子構造になっているんですよね。凄いのは、観客ごと、劇場ごと、街ごと、入れ子になっていると感じられたこと。
色んな演出があったな~・・・思い出せないぐらい色んな種類の。笑ったり怖くなったり、1つのシーンの中で伝わってくる感覚も七変化。でも常に冷静に眺める状態ではありました。夢を見られそうだなと思ったところで、スパっと裏切られるからかも(笑)。
白い壁の部屋(ハコ)がくるくる回って転換していくのはいかにも演劇らしい仕掛けで、走馬灯のようでもあり、ハコの中身は誰にもわからない(いつでも中身は変化する)という意味のようでもあり。小さなハコが出てくるのも可愛いです。
なぜ“世田谷”なのかしら。会場が東京都世田谷区にあるからかしら?真相はわからないですが、劇団も観客も、紛れもない世田谷に居ることでこの芝居が存在しているから、「今の世田谷でカフカをやる(観る)」っていう意味のタイトルなのかなと思いました。
実は、上演時間が長いせいではなく、個人的に腰痛のピークが来てた日に拝見したため、後半は集中しづらくなったりも(涙)。年齢(トシ)っすね・・・。
私は恥ずかしながら、カフカは小説「変身」しか読んだことがありません(とても面白かった)。短編アニメ「田舎医者」は観ました(絵が幻想的。怖いけど面白かった)。読んでなくても全く心配はありませんが、この舞台は小説を読んでいる方がずっと楽しめるようです(読んでいる方の感想より)。
わ。こんな装丁なんだ↓
短編アニメ映画で賞を取ってる監督の作品ですね↓
ここからネタバレします。
冒頭から村岡希美さんが村岡さんご自身として登場し、ざっくばらん(な風)に観客に話しかけてこられました。正直、驚きました。どこまでが実話なのかはわかりませんが、実体験にもとづいた話を本人がしてくれてるという感覚は信じられるもので、その体験談から物語が派生していき、カフカの人生・小説とも重なっていくのが面白いです。
別々の小説の主人公が3人一緒に現実世界に出てきて、ある劇場(?)に面接を受けに行くのですが、その面接場面はカフカの小説の中の出来事なのです(そうだと思うんですが)。ギュルンと虚構と現実が裏返って、再び迷宮に入り込んでいく感覚。測量師はやっぱりどこにも辿りつけないという結末も素敵。
白い衣裳に映像が当たって、服を着たように見えるなんて。映像と演技を一体化させる技術の極地なんじゃないでしょうか。大事なのはその技術じゃないってこともわかります。
客席通路に役者さんがずらりと並んで「雨ニモマケズ(まがい)」(⇒Wikipedia)を群読したのが面白かった。
ナイロン100℃34th SESSION~フランツ・カフカ「審判」「城」「失踪者」を草案とする~
出演:三宅弘城、村岡希美、植木夏十、長田奈麻、廣川三憲、新谷真弓、安澤千草、藤田秀世、皆戸麻衣、喜安浩平、吉増裕士、杉山薫、眼鏡太郎、廻飛雄、柚木幹斗/猪岐英人、水野顕子、菊地明香、白石遥、野部友視、田村健太郎、斉木茉奈、田仲祐希、伊与顕二、森田完、中村靖日、横町慶子
脚本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ 美術:BOKETA 照明:関口裕二(balance,inc.DESIGN) 音響:水越佳一〔モックサウンド〕 映像:上田大樹 大鹿奈穂 衣裳:畑久美子 ヘアメイク:武井優子 振付:横町慶子 ステージング:長田奈麻 演出助手:坂本聖子 相田剛志 舞台監督:宇佐美雅人(バックステージ) 演出部:山中由佳 鈴木輝 照明操作:瀬戸あずさ 大道具:櫻井敏郎(C-COM舞台装置) 唐崎修(smile stage) 映像助手・操作:芹田有希子 映像助手:横山翼 冨田中理 ドイツ語訳・指導:山下結穂 記録スチール:引地信彦 大道具製作:C-COM舞台装置 美術工房拓人 小道具:池上三喜(高津映画装飾) 運搬:マイド 宣伝美術・写真:坂村健次(C2design) コラージュ:マグマジャイアンツ 画:玉野大介 宣伝美術強力:unseal contemporary プロデューサー:高橋典子 制作:仲谷正資 北里美織子 太齋志保 佐々木悠 杉上紀子 広報宣伝:米田律子 製作:北牧裕幸 企画・製作:シリーウォーク キューブ
8月1日発売開始 6,800円(全席指定・税込)
http://www.sillywalk.com/nylon/info.html
http://www.cubeinc.co.jp/stage/info/setagaya.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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