俳優の三田村周三さんが主宰する三田村組は、公演ごとに脚本・演出・出演者を集めるプロデュース形式の公演を行っています。第16回公演はONEOR8の田村孝裕さんが新作を書き下ろし、演出されました(⇒過去レビュー)。
老人ホームの人間模様。年配の役者さんの愛嬌のある演技に微笑みつつ、苦味が利いた筋立てにも満足。上演時間は約1時間40分。
⇒江森盛夫の演劇袋「10月3日M「home」(作・演出:田村孝裕)三田村組」
⇒CoRich舞台芸術!『home』
明るい笑いの場面に、敵意などの不協和音がスっと入り込むのにドキっとしたり、ほんのり感動できるエピソードににんまりしたり。なにより登場人物がダメ人間ばかりなのが、私には痛快。スカっとします。
「何歳になっても人間は変わらないなぁ」「“この親にしてこの子あり”だなぁ」「因果応報だなぁ」などなど、ありがたい教訓を得るように拝見(笑)。それもこれも、登場人物の背景に説得力があるからだと思います。
三田村周三さん、金髪にジーンズでかっこいー!!モテるダメ男、お似合いでした。
ここからネタバレします。
阿部(三田村周三)は無断外出の常習犯。昔から女好きで、ホームでも二股をかけているし、賭け麻雀でいかさまをして友人のお金を巻き上げるし。妻はすでに他界しており、一人娘の霞(松永玲子)は阿部とは縁を切っているのですが、阿部が問題(女湯を覗き見)を起こしたためホームに呼び出されます。
しっかり者の霞ですが、実は詐欺まがいの商法で絵を売っている自覚があり、どうやら不倫の関係に悩んでいることも後からわかります。
阿部は動脈瘤の手術を受ける振りをして、ちゃっかり手術費用の金を騙し取り、40年前の愛人・佳世(大崎由利子)と一緒にホームから逃亡して終幕。ほんと痛快(笑)。阿部が猫で、佳世が金髪のライオンってのも巧い。猫は死にざまを見せないらしいですものね(死ぬ時は飼い主の家から出ていくそうです)。女湯を覗くために作ったハシゴを最後の最後に使うのも、また巧い脚本ですねぇ~。
以下、蛇足ですが。
自分の愛人の名前(源氏名?)を娘に名づけるなんて、ひどい話です。ひどすぎて笑ってしまう。
佳世が「(阿部と私が愛し合っていたのに)奥さんが別れてくれなかった」って言ってたけど、そりゃ無理だろって思いました。さらに「奥さんは意地で別れなかったんだと思う。だからお金を盗んだの」ってどういう飛躍!?「自分が子供を産めないのをわかって、(阿部は)娘に私の名前をつけてくれた。だから自分の子供ができたみたいに感じた」とかさー、めちゃくちゃですよね。さすがはライオン(笑)。
三田村組第16回公演
出演:松永玲子(ナイロン100℃) 大崎由利子 大西多摩恵 坂本あきら 土井道肇(元祖演劇乃素いき座) ヒロ植吉(植吉劇場) 水野あや 西條義将(モダンスイマーズ) 中島愛子 桜井昭子 三田村周三
プロデューサー:三田村周三 脚本・演出:田村孝裕(ONEOR8) 美術:香坂奈奈 照明:和田典夫(満平舎) 音響:小沢高史 舞台監督:古屋治男 宣伝美術:由比まゆみ(egg design) 制作:上田郁子(オフィス・ムベ)
【発売日】2009/08/08 前売:3,800円 学生:3,500円 当日:4,000円
http://www.mitamuragumi.com/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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