『プルーフ/証明』に続いて『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』も初日に伺いました。28歳で自殺したイギリスの劇作家サラ・ケインの遺作『4.48サイコシス』を、谷賢一さんが翻訳・翻案・演出し、ご自身が出演する男女2人芝居。
谷さんは行きつくところまで行きついたんだなと感じ、劇団活動を休止されることに心から納得しました。上演時間は約1時間25分。
『4.48サイコシス』は来月、飴屋法水さんが演出される公演もあります(⇒「F/T09秋」記者発表)。サラ・ケイン作品レビュー⇒1、2、3
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下手にベッド、上手にはパソコンのあるデスク、本棚など。ベッドはサラ(堀奈津美)が死ぬ前に入院していた病院の一室で、デスク周辺は谷さんご自身のお部屋でしょう。つまり、サラと谷さんが対話をするという構造になっていました。原作のセリフもありますが、新たに書き加えられたものも多く、いわば私演劇のジャンルに入る作品になっていました。心が痛くて、ヒリヒリします。生々しい傷口に自分で塩を擦りこむようなこと、よくできるな・・・と思います(恐ろしい!)。
谷さんが本気でサラと対話をしたんだと信じられました。絶対に会えないはずの2人が出会うファンタジーを通じて、サラの痛み、苦しみに共感できました。絶望の底に居る2人が手を差し伸べ合い、心に触れようとするのだけれど、やはりすれ違っていく様に、人間の孤独と愛への渇望が表されているように感じました。
ちらばる紙、服などでどんどん汚されていくステージ。あぶなっかしいですが、刺激的です。
演技は巧みであるとは言えないですが、その人自身として舞台に居ようとする姿勢は本物で(谷さんはご本人だし)、目が離せませんでした。
終幕の暗転の深い味わい。カーテンコール後もしばらく座席に座って余韻にひたりました。
※劇団活動は休止ですが、劇団員の皆さん全員が演劇活動を続けられます。
ここからネタバレします。
谷さんは谷さんご自身とサラの担当医、堀さんはサラと谷さんの恋人を演じます。1人で2役を演じるのですが、役の切れ目はわざと曖昧になっています。もしかすると役は固定ではないのかもしれません。
パソコン画面を舞台奥の壁に大きく映し出し、谷さんのデスク(=プライベート))そのものが丸見えの状態。おもちゃのピストルの球をまき散らす(ゴキブリや錠剤の隠喩)、風船をライターの火で割る、手紙(サラと谷さんの戯曲の一部など)を紙飛行機にして飛ばすなど。
谷さんが谷さんご自身として直接サラに話しかけたところで、グっと盛り上がりました。たしか開幕から1時間ぐらい経った時だと思います。もうちょっと早めにそのシーンがあっても良かったんじゃないかしら。
27歳で自殺したアーティストって多いんですってね(ロックスターなど)。全然関係ないんだけど、私にとっても27歳は大きな契機だったので、ちょっとシンクロ。
『プルーフ/証明』『心が目を覚ます瞬間~4.48サイコシスより~』交互上演
第9回本公演/活動休止記念作品
出演:谷賢一、堀奈津美
原作:サラ・ケイン 翻案・翻案・演出:谷賢一 演出協力:小栗剛(キコ) 吉田小夏(青☆組) 舞台監督:塚越健一/舞台監督補:佐野功、小林慧輔、鮫島あゆ/照明:松本大介、朝日一真/音響:長谷川ふな蔵、井出"PON"三知夫(La Sens)/美術協力:土岐研一、宣伝美術:谷賢一(a.k.a.鮫島あゆ)/演出助手:高橋浩利、酒井一途/演出舎弟:永岡一馬/模型製作:小松崎友理/制作:北澤芙未子(DULL-COLORED POP)、池田智哉(feblabo)、鮫島あゆ/協力:enjin-light、和田東史子、石綿大夢、田中知寛
前売:2,500円、当日:3,000円 学割:前売・当日共に500円引き(受付にて学生証提示) リピーター割引:1,000円引あり(受付にて半券提示)
http://www.dcpop.org/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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