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Shinobu's theatre review
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REVIEW

2009年10月16日

劇団俳優座『渇いた人々は、とりあえず死を叫び』10/08-18あうるすぽっと

 グリングの青木豪さんが俳優座に新作を書き下ろされました。青木さんは劇団外にも多数脚本提供されている人気劇作家です。

 中村たつさん、岩崎加根子さんら大ベテランの役者さんが、大雨の被害に遭って一時的に避難所で生活することになった一般庶民を演じます。土田英生さんが文学座に書き下ろされた『崩れた石垣、のぼる鮭たち』を思い出しました。上演時間は約2時間。

 ⇒CoRich舞台芸術!『渇いた人々は、とりあえず死を叫び

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 茨城のとある山村に大雨が降った。床上浸水に遭った人々は、いつ止むとも知れぬ雨から逃れて、高台の廃校になった小学校へと避難して来ていた。小学校の音楽室では門倉家、花田家、逸見家が共同生活をしている。避難所生活を続ける人々の心にはストレスが溜まり、食料を巡っての小さな諍いも起こっていた。また、それぞれの家族が抱える問題が表面化しつつあった。
 癌の疑いがある門倉和重(小笠原良知)は、悔いなく人生を終えたいと思っていた。息子の弘巳(志村史人)と共に東京へ移住をしたいと思っている、和重の妻・文子(岩崎加根子)。一方、花田家ではリサ(中村たつ)が、夫・礼治(河原崎次郎)の浮気に悩んでいた。限界になったリサは礼治を問い詰めるが、礼治は浮気相手の元へと向かってしまう。
 そんな中、誰もいない音楽室で、和重はリサをダンスに誘う。二人は昔、駆け落ちした仲だった。死の可能性を前にした和重は、リサに二度目の駆け落ちを持ちかける。
 ≪ここまで≫

 舞台は廃校になった小学校の音楽室。避難所となったかつての学び舎には、家に帰れず仕方なく足止めされている老若男女ら、所在なくて落ち着かない様子の人ばかり。「まさかあの川が氾濫するなんて」というセリフは、“ゲリラ豪雨”という言葉が流行している今、他人事ではありません。

 いくつになっても、どこに居ても“惚れた腫れた”で四苦八苦する人間模様。熟年離婚どころか老年離婚に発展する可能性もある色恋沙汰を、はらはら眺めたり、他人事だと思ってクスクス笑ったり。本来なら自宅の居間で家族だけに打ち明けることを、避難所という共有スペースで話すはめになるから面白いんですね。

 住職(中吉卓郎)とその娘(小飯塚貴世江)が景気良くコミカルなムードを盛り上げてくれて気楽に笑えるのですが、全体的に空気が軽すぎるような気も。気持ちがギラギラして、そのせいで人間関係がぎすぎすして、そしてメラメラどっかん!・・・みたいな盛り上がりが欲しかったですね。私の思い込みかもしれませんが、青木さんの脚本にはもっとどろどろした感情や、うすら寒くなる恐怖が織り込まれているのではないかと思います。

 またもや俳優座公演のマチネに伺ってしまった私・・・。年齢層の高い客席でした。受付の対応も劇団の会員であろう観客に露骨に手厚い雰囲気で、アウェイ感、大。作品ももともとそういう観客向けに作られているのかもしれませんね。

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 こんなに簡単に離婚を言い出せるのって、時代が変わったからですよね。老後誰と暮らすか(誰の世話になるか)という切迫したテーマについて、歯に衣着せず具体的に話し合うのが痛快です。

 駆け落ちしたリサと和重のことを「死んだことにして逃がしてあげよう」と相談するのは、冗談めいた会話なんですが、実は怖いことですよね。
 
 リサの娘(浅川陽子)に新米自衛官(矢幡晃一)が一目ぼれします。娘は自動車メーカーで新型ロボットの開発をしている優秀な女性で、うつ病になって帰省した際にこの災害に遭ったのでした。自衛官が紳士的な態度で「今のあなたには誇りを持つことが必要だ」と、まっすぐ伝えるのが素敵。ボーイ・ミーツ・ガール的な可愛いエピソードですが、やはり恋のスパイスは効きます。
 いや、“恋”と言うより、“誰か(何か)を好き”という気持ちなんじゃないかな、人を動かす(人を変える)のは。んー、結局、誰を好きか、誰に好かれているかで人生は決まるのかも・・・なんてことを考えました。

 息子を事故で喪ったけれど、まだ生きていると信じている若い母親(瑞木和加子)がフラリと教室に訪れます。高齢出産、少子化が進む今、「息子は廃校になった学校の最後の子供なんです。」という言葉が重たいです。

 覚えている限りでは、音楽で「ラストダンスは私に」「テネシー・ワルツ」がかかったと思います。イントロを耳にしただけでちょっといい気分。

劇団俳優座創立65周年記念公演 NO.300
出演:岩崎加根子 中村たつ 小飯塚貴世江 浅川陽子 小笠原良知 河原崎次郎 中吉卓郎 志村史人 宮川崇 矢幡晃一
脚本:青木豪 演出:髙岸未朝 美術:田中敏恵 照明:石島奈津子 効果:小山田昭 衣裳:松本夏記(ミシン★ロックス)  演出助手:山田潤 舞台監督:関裕麻 制作:山崎菊雄 下哲也 武田明日香
【発売日】2009/09/01 一般:5250円、学生:3675円 ※学生の方は当日学生証をお持ちください。
http://haiyuza.co.jp/info/kawaita.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2009年10月16日 21:38 | TrackBack (0)