神里雄大さんが作・演出される岡崎藝術座の新作公演です。また朝公演もやってますね(⇒過去レビュー)。今月は朝公演は行けないかも・・・ちょっと忙しくなってしまいました・・・・。
神里さんの作品では、役者さん1人1人がとっても素敵に見えます。たぶん容量オーバーな負荷がかかっていて、その負荷に応える役者さんが素晴らしいからだと思います。上演時間は約1時間20分。
⇒CoRich舞台芸術!『ヘアカットさん』
≪あらすじ≫
昔からの友人3人組(目黒:坊薗初菜 大崎:酒井和哉 田端:武谷公雄)で久しぶりにカラオケに行く。カラオケ屋の店員(内田慈)が、なぜか部屋の中を覗いてくる。田端は昔よく通っていた散髪屋のおじさん(折原アキラ)のことを思い出していた。
≪ここまで≫
いきなり歌ったり踊ったり、なぜかステップ踏んでたり。演出家や出演者にとっては理由があるのかもかもしれませんが、私にはそれがはっきりとわかるわけではありません。わからないからこその意外性と、動く身体自体の面白さ、そして身体にひっぱられるセリフのゆらぎ。意味や理由がわからなくても舞台から目が離せません。女性陣は歌が上手いな~。
マイクがぶーらぶら揺れるライブ感も目が離せない要素の1つですよね。派手な色使いの蛍光灯がチープな味わいで面白いです。空間のチープさをはじめ、カラオケとかアルバイトとか本屋で立ち読みとか。貧困率の高い国・日本の現実が20代後半の若者の日常にあらわれているようにも感じます。
中盤まではとっても面白かったです。終盤は種明かし(?)から心温まるいい話になって、私としては物足りなかったですね。もっと観客のことを置いていってほしい。というより、先へ先へと導いて、見えなくなるぐらい遠くに飛び去ってほしい。そしてわけのわからない境地で私を泣かせてほしい。神里さんにはわがままな要求をしてしまいます。
チラシの原画(新宅睦仁・画)↓がロビーに展示されてました。
ここからネタバレします。これからご覧になる方は読まないでくださいね。
田端はバイクに乗っている時にゲリラ豪雨に遭い、スリップして転倒して車の下敷きになって死んでいました。その直前に見た散髪屋のことが頭にめぐります。カラオケ屋の店員・空桶寛子は作った料理がこげていたせいで、恋人の大崎が去ってしまったと思っています。目黒は田端の恋人で、彼の死を乗り越えるために引っ越しをして心機一転しようと思っていました。
でも、目黒と寛子は同一人物で、もしかしたら田端と大崎も同一人物・・・という展開に。最後は散髪屋(=ヘアカットさん)の魔法で死んだ恋人と再会し、みんなで幸せに歌を歌って終幕。でも幕が下りる時は目黒は一人っきりになっています。
特に行動にあらわしていなくても、心の中で誰かをいとおしく思ったり、その人に会いたいと思ったり、会えなくて寂しい、悲しいと思ったならば、それはちゃんと心の中で生まれたのだから、豊か(貧しくない)なのだという考えに共感しました。人間の感情は他人の目に見えなくても動いているもので、それも胸の中のかけがえのない光景(『組曲虐殺』より)なのだと思います。正体不明の有名ミュージシャン“マイク・ジャクソン”についての想像も可笑しかった。
『ヘアカットさん』/『朝焼けサンセット(朝公演:朝食付き)』
出演:内田慈 武谷公雄 折原アキラ 酒井和哉 坊薗初菜
脚本・演出:神里雄大 照明:黒尾芳昭(株式会社アザー) 制作:elegirl label 演出助手:岡崎誠二(岡崎藝術座座長) 映像制作:ワタナベカズキ(spacenoid) フライヤー画:新宅睦仁 制作協力:尾形典子(アゴラ企画) 芸術監督:平田オリザ 技術協力:鈴木健介(アゴラ企画) 企画制作:岡崎藝術座/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
挿入歌「目黒のうた」作詞:神里雄大 作曲:坊薗初菜 神里雄大 編曲:岡崎藝術座
挿入歌「空桶寛子のうた」作詞:神里雄大 作曲:内田慈
【発売日】2009/09/06 予約2,300円/当日券2,800円 [全席自由・日時指定] 両公演共通券3,800円 [予約限定・日時指定]
http://okazaki.nobody.jp/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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