REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2009年11月08日

渡辺源四郎商店『今日もいい天気』11/05-08こまばアゴラ劇場

 渡辺源四郎商店は畑澤聖悟さんが作・演出(たまに出演も)される青森の劇団です。『今日もいい天気』の初演は2003年。新キャスト、新演出の再演です。

 青森の男所帯の家庭での、平凡な日常に起こる奇跡。温かいお話でした。開演前からハンカチを用意しておいて正解。上演時間は約1時間30分。

 ⇒CoRich舞台芸術!『今日もいい天気

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 青森市郊外にある一軒の家。
 この家の太陽であったひとりの女は7年前、この世を去った。
 遺された4人の男たち(宮越昭司、田中耕一、山田百次、工藤良平)はそれぞれ喪失を抱えつつ、ひとつ屋根の下で日々を送ってきたが…。 
 ≪ここまで≫

 舞台は畳の居間。黒いペン(←おそらく)でパネルに家具の絵が描かれており、四角いはずの畳の部屋がまん丸い形になっています。縁側(廊下?)まで丸くなってるのが可愛い!絵本の世界のようですが、衣裳や小道具が具象なので、リアルとファンタジーの混ざり具合が楽しいです。

 ゆるやかに弧を描くような発音の方言、やわらかくて優しい声、そして一緒に居る相手に対する、おっとりしているようでいて実はとてもこまやかな心配り。そんな役者さんの在り方を目で見て、体と心で感じているだけで、涙がぼろぼろこぼれてしまいます。これは私が普段よく目にする東京(または首都圏)で生活している役者さんからは、受け取れないものだと思います。

 不器用ゆえに気持ちを言葉にできない状態がいとおしくて。目、口、肩、お腹、そして床に着いた足から、その気持ちがしみ出してきてしまう様が温かくて。役者さんがもぞもぞしてたり、だまっていたりする場面でも何度も涙が流れました。

 ここからネタバレします。

 家政婦と名乗る女性(工藤由佳子)は、登場した時から飼い猫のタマだとわかります。猫は今朝、死ぬために家を抜け出したばかり。一家の太陽のような存在だった長女の姿をして、4人の男たちの前に現れるのです。
 彼女の正体を見破るのは僧侶(牧野慶一)。でも長男で主夫(&アルバイト)をしている和也も、うすうす気づくのがいいですね。彼が猫のタマを一番愛してたから。

 彼女が作ったお昼ご飯(バターライス)をむさぼるように食べるシーンも良かったです。家族で一緒にご飯を食べるってことが、どれだけ幸せなことなのか、美味しいということがどれだけ人間にとって大切なことなのかが、ほんの数分(もしかしたら1分未満)であらわされていたように思います。カーテンコールでカレーの匂いが広がるのも素晴らしい。

 大学生の亨(工藤良平)は富平(宮越昭司)の孫で、万次郎(田中耕一)の息子ですよね。つまり交通事故で亡くなった長女(工藤由佳子)の息子ってことなんですが、そうは見えづらかったです。長男(山田百次)の弟ぐらいに感じてました。
 長男はサークルKでアルバイトをしていて、そこで出会った恋人(柿崎彩香)が家を訪れますが、恋人同士には見えなかったな~。もうちょっと色っぽいムードが欲しかったですね。

 『猫の恋、昴は天にのぼりつめ』よりも前に書かれているので、『猫の恋・・・』のもとになったのかしら。どちらも広い年齢層に受け入れられる、質の高いストレート・プレイだと思います。 

≪青森、東京≫ 渡辺源四郎商店第10回公演
出演:工藤由佳子 高坂明生(Wキャスト) 工藤良平(Wキャスト) 柿崎彩香 宮越昭司 田中耕一(劇団雪の会) 牧野慶一(劇団雪の会) 山田百次 吉田唯
脚本・演出:畑澤聖悟 照明:浅沼昌弘 音響:藤平美保子 舞台美術:山下昇平 装置:渡辺源四郎商店 舞台監督:三上晴佳 プロデュース:佐藤誠 ドラマターグ:工藤千夏 宣伝美術:木村正幸 制作:渡辺源四郎商店 制作補:西後知春、おりゅう 主催・企画制作:渡辺源四郎商店 東京公演提携:(有)アゴラ企画/こまばアゴラ劇場
【発売日】2009/09/15 前売一般3,000円、学生2,000円、高校生以下500円 当日一般3,300円、学生2,300円、高校生以下800円
http://xbb.jp/wgs/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガも発行しております。

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 2009年11月08日 00:07 | TrackBack (0)