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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2009年11月16日

パルコ『海をゆく者』11/14-12/08パルコ劇場

 『海をゆく者』はアイルランドの若手劇作家コナー・マクファーソンの戯曲です。2006年にローレンス・オリヴィエ賞“BEST PLAY”他にノミネートされ、2007年のブロードウェイ公演でもトニー賞”BEST PLAY”他にノミネートされたそうです(公式サイトより)。

 キャストは脂ののった、渋すぎる“百戦錬磨の”人気男優5人。演出の栗山民也さんをはじめ、美術、照明、衣裳などのスタッフも豪華!チラシや公式サイトの情報だけでも必見とわかるストレート・プレイです。

 そんな過剰なほどの期待を胸にプレビュー初日に伺い、期待どおりに満足させていただけました♪。あ~充実。あ~幸せ。これこそ大人の贅沢な観劇。誰にでもお薦めしたい上質の演劇です。笑いどころもいっぱいありますので、カップルやお友だちと一緒に、ぜひ。クリスマス・シーズンにもぴったりです!上演時間は約3時間弱(途中休憩1回を含む)。

 ⇒終演後のトークショーがたくさん開催されます!うーん、もう一回行きたい・・・(←無理・涙)。
 ⇒TICKETS@TOKYOで当日券の前日予約!
 ⇒CoRich舞台芸術!『海をゆく者

 ≪あらすじ≫
 数日前、シャーキー(平田満)は兄リチャード(吉田鋼太郎)が暮らす実家に戻ってきた。飲んだくれの兄とその友人アイヴァン(浅野和之)は、クリスマス・イブの朝もいつもどおり酔っ払っていた。夜はシャーキーが毛嫌いしているニッキー(大谷亮介)が、酒場で知り合った紳士ロックハート(小日向文世)を連れてやってきた。男たちはポーカーを始める。 
 ≪ここまで≫

 緞帳が上がり、匂いが漂ってきそうなぐらいリアルに作りこまれた具象美術に、まずうっとりとため息。その姿を見られるだけでも嬉しくなっちゃうベテラン舞台俳優らの演技は、立ち姿や歩き方、セリフの第一声(が出る前)から全身に気持ちが満ちていて、お芝居が始まるなりすぐにときめいちゃいました。
 そして気がつかない内にしのびこむように鳴っている音楽、さりげなく空間を染めて芝居の密度を上げる照明。出演者もスタッフワークもプロの中のプロ。あぁストレート・プレイの恍惚♪

 第一幕は、夢も希望もなさそうなタイプのおじちゃんたちが、飲んだくれてばっかり・・・(笑)。たわいないおしゃべりやケンカの中に、「そこまでするの?!」と驚くぐらいにベタな笑いがちりばめられています。アクションも派手で、物も投げるし水もこぼしまくり!でもある人物から衝撃のひとことが発せられ、突然、舞台に見えてくるものが変化します。
 ゾクっとして、わくわくして、現実にはありえない設定をノリノリで楽しめるようになり、極めつけはポーカー。のるかそるかのカードゲーム(=命がけの勝負)のスリルにどきどきする内に、ついには人間という生き物をかなしく、いとおしく見つめる視点へと誘われました。暗くて汚い(であろう)地下室が世界に見えました。

 5人の役者さんは皆さんがそれぞれに魅力的。考えに考えて、すみずみまで作りこんだ緻密な演技合戦にほれぼれ。
 浅野和之さんの小刻みな動作が面白すぎ(笑)。
 小日向文世さんが平田満さんのことを「シャーーーキーーーーーッ!」って呼ぶのが怖すぎ。でもめっちゃ素敵(笑)。

 ここからネタバレします。これからご覧になる方は絶対に読まないでくださいね!

 ロックハートはシャーキーが25年前に牢屋で出会った男でした。正体はなんと悪魔。シャーキーの魂を奪いにやってきたのです。でも彼は大のポーカー好きらしく、シャーキーにポーカーで勝ってから、彼を地獄に連れて行こうとします。
 最後はガクっと肩すかしをくらうような“奇跡”(?)が起こります。どん詰まりの地下室から、広くて深い世界の扉が開いたようでした。最後は地下室にも朝日が差し込みました。神様は見ているんですね。

 小日向さんが獲物であるシャーキー(平田満)に、速足で近づくのがチョー怖い!かがんだ姿勢で大きく足を踏み出して飛びついていくのは、まるで野獣。パリっとしたスーツでそんな風に動くもんだから目が離せない。CDデッキから流れる音楽に反応して(悪魔は音楽が苦手だから)がくがく震えるのも、自分の体を自分のものではないように触る(悪魔は誰かの体を“借りて”いるから)のも凄い。

 ロックハートのつづりはLockhart。hartはheartと発音が同じですから「錠のかかった心」なんでしょうね。ロックハートが座る下手のイスの近くのランプシェードには、鎖にからまったような赤いハートの飾りがついていました。美術、イカしてる~♪
 居間が地下室にあるのが暗くていいですね。玄関から地下へと降りる階段の壁にイエス・キリストの絵画が掛けられていて、そこに当たる照明の変化が素晴らしい。ロックハートが絵に反応するのも利いてます。

 ところで、キャッチコピーに「イヴの夜、悪魔が魂を奪いにくる」と書くのはやめた方が良かったんじゃないでしょうか・・・。私は読んでなかったので(←どれだけ鈍感?)、小日向さんの「悪魔だよ」というセリフにすごくドキドキできて良かったです~。

≪東京、大阪、新潟、愛知≫ The Seafarer by CONOR McPHERSON 
出演:小日向文世 吉田鋼太郎 浅野和之 大谷亮介 平田満
脚本:コナー・マクファーソン 翻訳:小田島恒志 演出:栗山民也 美術:松井るみ 照明:小笠原純 衣裳:前田文子 音響:高橋巌 ヘアメイク:佐藤裕子 演出助手:田中麻衣子 舞台監督:加藤高 宣伝美術:河野真一 宣伝写真:岡田貴之 プロデュサー:佐藤玄 毛利美咲 製作:山崎浩一
【休演日】火曜休演【発売日】2009/09/12 7,500円(全席指定・税込) 11月14日(土)・15日(日)プレビュー公演6,500円 ※プレビュー公演の学生券取扱はございません。 学生券4,000円(当日指定席引換・チケットぴあのみ取扱)
http://www.parco-play.com/web/play/seafarer/
http://www.parco-play.com/web/page/information/seafarer/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2009年11月16日 00:28 | TrackBack (0)