裁判員制度が始まった日本では法廷劇が旬。『十二人の怒れる男』(⇒Wikipedia)を蜷川幸雄さんが演出されます。蜷川作品常連の渋い男優ばかりそろった豪華キャストですね~。
12人それぞれの人間像が立ちあがり、それらがからみ、弾け合う、人間の世界の縮図を見せてもらったように感じました。上演時間は約2時間30分(途中15分の休憩を含む)。
⇒CoRich舞台芸術!『十二人の怒れる男』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
蒸し暑い夏の午後、父親殺しの罪で一人の少年が裁かれようとしていた。
審理は終わり、いまや少年の運命は、事件のために無作為に選ばれた12人の男たち=陪審員に委ねられている。提出された証拠と証言は、少年に不利なものばかり。劣悪な環境で育った少年には逮捕歴もあり、陪審員の多くは有罪を確信していた。
陪審員室に移った12人は、予備投票を行う。有罪11票、無罪1票。唯一の無罪票は陪審員8号によるものだ。室内に満ちる苛立ち。周囲の敵意に怯むことなく、8号は陪審員の責務の重さと審理への疑問点を語り、討論は白熱していく。裁かれるのは誰か、そして判決の行方は・・・。
≪ここまで≫
有名な法廷劇ですが、実は人間を描いた戯曲だったんだと気づくことができて良かったです。セリフにもあったとおり、殺人事件について個人的な感情をはさまずに論理的に考えることは難しいですよね。人はトンチンカンな思いこみをするし、ひどい偏見を持っているし、悲しみから生まれる怒りは、簡単におさめられるものではありません。あれは私のことだなーと感じることが多々ありました。
役者さんはさすがに華のある方ばかりで、派手な演出や場面転換もないのに、長時間、退屈せず観られました。ただ、演技についてはまだまだこれから精度が上がる余地があるように見えました。
柳憂怜さんが絶妙のタイミングですっとぼけるのがとっても可笑しかった♪
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
途中休憩の区切りはあの場面で良かったのかしら。音楽も含めてちょっと違和感がありました。
「合理的な疑問は安全装置」という言葉がもっとも胸に響きました。私たち人間は流されるまま漂ってぼんやりしてると、とんでもない事をしてしまうことがあります。でも、ちゃんと自分の意志で止まることができるんですよね。
自分の「なぜ?」を大事にしたいし、それを受け入れない(受け入れたくない)誰かの意志も大事にしたいものです。
Bunkamura20周年記念企画
出演:中井貴一(無罪を主張する最初の1人。建築士。) 筒井道隆(スラム育ちの若者) 辻萬長(論理的に思考するメガネをかけた紳士) 田中要次(コロコロ気が変わる広告代理店社員) 斎藤洋介(東欧からの移民。時計職人) 石井愃一(委員長) 大石継太(野球ファン) 柳憂怜(ひょうひょうとした男。飴を所持。) 岡田正(丸いお腹が出てるペンキ職人) 新川將人(守衛) 大門伍朗(偏見しがちの工場経営者) 品川徹(陪審員の中で一番年老いた男) 西岡德馬(息子と2年会っていない一番頑固な男)
脚本:レジナルド・ローズ 翻訳:額田やえ子 演出:蜷川幸雄 美術:中越司 照明:大島祐夫 音響:鹿野英之 衣裳:小峰リリー ヘアメイク:鎌田直樹 演出補:井上尊晶 演出助手:大河内直子 舞台監督:中瀬古靖 劇場舞台技術:伊集院正則 野中昭二 営業:加藤雅弘 中川未来 票券:川上詠子 制作助手:斎藤努 今井信人 武藤香織 制作:佐久間友規子 プロデューサー:加藤真規 松井珠美 主催・企画・製作:Bunkamura
【発売日】2009/09/13 S席[ベンチ/椅子]\9,000 A席\7,000 コクーンシート\5,000 (税込) ※S(ベンチシート)は舞台を挟む仮設のお席となります
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/shosai_09_12angrymen.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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