タニノクロウさんが作・演出される庭劇団ペニノの新作です。「F/T09秋」はこれで10作品目(⇒1、2、3、4、5、6、7、8、9)。
タニノさんが記者発表で「うまくパンチラを見せたい」と公言されてたとおり、パンチラは大盤振る舞い(笑)。もちろん目玉はそれだけではなく。幸せな夢とおぞましい悪夢が混ざる、大がかりなインスタレーションのようでした。お子様にはエッチ度が高すぎるかも(笑)。上演時間は約1時間30分。
5分間の劇団紹介動画↓が超カッコイイ♪
⇒CoRich舞台芸術!『太陽と下着の見える町』
黒い幕が上がって開幕。何を書いてもネタバレになるのでストーリーなどは控えます。スタイリッシュで、アーティスィックで、冷静で、でもいたずらな遊び心があって、スケベ(笑)。刺激も強いし意味もわかりやすいとは言えないので、お好みは分かれると思います。私はすっごく面白かったです♪後半はプチ興奮(笑)。
作品全体が変態見本市のようで、そこはサンプル『あの人の世界』に似てるように思いました。天地がぐちゃっとくっついて、ごちゃまぜの、めちゃくちゃになるカオスな感覚も。
人間を変態と非変態に分けるのは実は不可能で、おそらく私も他人から見たら変態なのだろうと思います。同様に、精神病患者と健常者の区別というのも容易ではないのかもしれません。
計算して作られた舞台美術には見る者・見られる者、行動を起こす者・傍観する者を対比する効果も含まれており、無数の箱庭に展示された現代日本人の標本を眺めているようでした。見世物小屋みたいな感覚も。
客席に向かってまっすぐに語る役者さんは、その人自身のように生々しい時もあれば、ルールどおりに動く人形のようでもあり、出演者全員の存在感がそろっていて素晴らしかったと思います。
ここからネタバレします。
舞台は2階建ての無機質な白い建物。1階は白い業務用ベッドがあるだけの殺風景な小部屋が並んでおり、おそらく精神病院のデザインです。10代から80代まで幅広い年齢層の男女が、部屋の中で、それぞれに望むことを自分から進んでやっています。ハイヒールを履いて落語をする女(内田慈)や、性欲を抑えられない受験生(山田伊久磨)など、変態度高い目。
2階は会議室と広めのテラス。男女2人ずつの計4人は、テニスのユニフォームのような白くて清潔そうな衣裳を着て、優等生なムード。でも女性のスコートがわざと風でめくれてパンチラ三昧。彼らは1階の住人の行動を傍観して、批評するばかり。自分たちがやってるのは、どうやらごっこ遊びのようです。
自ら行動を起こしているとはいえ、1階の人間はお膳立てされた娯楽(SMプレイ、萌え系アニメなど)を楽しんでいます。パンチラもどんどんわざとらしさが強調されてきます。マーケティングされた娯楽が溢れかえる現代社会を表してるように思いました。2階の人間は自分からは何もせず、噂話に興じて他人の欠点をあげつらって楽しんでいます。これもまたインターネットというメディアで、誰もが批評家気どりになっている今のことではないでしょうか。
交通事故だろうが老衰だろうが、やがて誰にも死が訪れ、土に帰すことになる人類。帰るところは排せつした糞尿と同じ場所です。風船を持って50代の男(久保井研)がテラスから飛び降りると、下手上方の丸い窓にトイレのマークがあらわれました。1階の住人たちが部屋の外に出て、ベッドにみんなで腰かけて彼を見つめていたのも良かったな~。
最後は2階にいた女の1人が、言葉が通じない者同士の絵を通じた会話について語りました。意味が全く通じないのも、期待した答えが返ってこないのも、人間のコミュニケーションの常だと思います。
庭劇団ペニノ18th "The Town where the Sun and Underwear are seen"
出演:久保井研(唐組) 山田伊久磨 佐野陽一(サスペンデッズ) 間瀬英正(ユークポイント) 大久保宏章(自己枇刺ショー) 森準人 マメ山田 高橋ちづ 内田慈 五十嵐操 坂倉奈津子 寺田ゆい 笹野鈴々音
作・演出:タニノクロウ 構成:タニノクロウ 玉置潤一郎 山口有紀子 吉野明 美術:田中敏恵 照明:今西理恵(LEPUS) 音響:中村嘉宏 衣装:中西端美 小道具:横川奈保子(Y's factory) 演出助手:森準人 舞台監督:矢島健 大川裕 舞台監督助手:大地洋一 音響操作:佐藤こうじ(Sugar Sound) 演出部:井上悠 衣装部:正金彩 安田美路加 大道具:C-OOM 櫻井敏郎 小道具:高津映画装飾 佐田丘仁子 井佐みずほ 照明協力:ART CORE 制作:中山静子 制作補:三好佐智子 【F/Tスタッフ】制作:武田知也 板橋薗恵 制作補:坂田厚子 インターン:荒川真由子 【F/Tクルー】上野智美 大和田愛 岡崎由子 川村美幸 郷淳子 清水美里 竹澤ひさみ 野中さやか 三橋俊平 製作:庭劇団ペニノ 共同製作:フェスティバル/卜-キョー 助成:財団法人セゾン文化財団 主催:フェスティバル/卜-キョー
【発売日】2009/09/05 3,500円
http://festival-tokyo.jp/program/penino/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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