あと20日足らずで2009年が終わりますね。内閣府行政刷新会議「事業仕分け」は、私にとって今年一番の衝撃的な出来事となりそうです(関連エントリー⇒1、2、3、4、5)。
例えば仕分け人の評価コメントに「そもそも文化振興は国の責務か、民間中心で行うか、議論が必要。」(PDF)というものがあります。発言を短くまとめたものなので、文脈に沿っていない可能性もありますが、与党が行った会議の公式な結果としてインターネット上に公表されているので、どうしてもやり過ごすことができません。
芸術文化から生きるために必要なことを学び、助けてもらい、いま幸せに生きることができている一日本国民として、相変わらずたいしたことは書けないですが、今感じていることを言葉にしておこうと思います。
⇒「事業仕分けへの意見募集」〆切は12/15(火)です!※メールのみ
私は小学生の頃は漫画、中高生の頃は映画に夢中で、引きこもりにはならない程度ですが1人で家にいることが多く、学校が大嫌いでした。でも大学1年の時に学生演劇に出合い、はじめて本気になって友人と一緒に好きなことに没頭して、生まれ変わったように楽しくなりました。自分に変化をもたらし、人生を豊かにしてくれたのが、私にとってはたまたま演劇だったようです。
大好きな新国立劇場で上演された井上ひさし作品(東京裁判三部作⇒1、2、3)から、学校では教えてもらなかった戦争について、天皇制についての、自分の血肉になる知識が得られました。
⇒(財)新国立劇場運営財団は事業仕分けで「圧倒的に予算を縮減したい」(PDF)とまとめられている。
ジェニー・シーレイさんの演劇創作ワークショップを見学し、「人間は一人ひとりが平等で、それぞれにかけがえのない存在である」ことを体と心で確信できました。
⇒1年後に東京都世田谷区の公共ホールであるシアタートラムで上演。
青年団の本拠地であるこまばアゴラ劇場では国際交流が盛んに行われており、世界を新しい切り口で見せてくれる若い才能がどんどん輩出されています。私は非常に安いチケット代で気軽に彼らの作品を鑑賞し、ともに成長することができているように感じています。
⇒こまばアゴラ劇場は文化庁芸術拠点形成事業の支援を受けている。
勉強不足で申し訳ないですが、国が私たちから集めた税金が、文化芸術のためにどんな形で使われ、どのような経済効果を生んでいるのかを、私は正確には知りません。ただ自信を持って言えるのは、日本で生まれ育った私がこの国で鑑賞・体験した文化芸術は、私の人生を面白くしてくれて、今生きている喜びを実感させてくれる、世界中に自慢したいぐらい素晴らしいものだということです。
若者のホームレスが増加し、自殺者は毎年3万人を超え、被爆国だというのに核廃棄物による環境汚染が進んでいる・・・そんなニュースばかりを目に、耳にします。未来への希望が持てそうにないこの国を、今も愛していて、できれば死ぬまでここで暮らしたいと思っているのは、日本が大切にしてきた文化芸術が、私を生きさせてくれたからです。そしてできればこれからも、私の大切な家族や友人らとともに、それらを享受したいと切望しています。
最後に、元フランス文化大臣ジャック・ラング氏がシンポジウムでおっしゃったことを引用させていただきます。ニーチェの言葉だそうです。
「ブルジョワのエリートにとって文化は飾りだろう。でも文化は、国民の魂であり、1つのシステムの基礎。社会の基盤である。」
カテゴリー:【演劇教育】
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