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2009年12月13日

【写真レポート】Studio Life「劇団スタジオライフ『トーマの心臓』『訪問者』連鎖公演×萩尾望都原画展 製作発表会」11/27早稲田奉仕園スコットホール

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製作発表

 創立25周年を迎える劇団Studio Lifeが代表作『トーマの心臓』(過去レビュー⇒)を再演します。『トーマの心臓』の原作は漫画界の巨匠・萩尾望都さん。『トーマ…』のサイドストーリーである『訪問者』(⇒過去レビュー)も10年ぶりに再演されます。

 『トーマ…』は〈Grau〉と〈Blau〉の2バージョン公演で、主要登場人物でダブルキャストなのは3人だけ。『訪問者』はシングルキャストですから、両作品とも完成度の高さに期待できるのではないかと思います。私は原作漫画の大ファンなので連鎖公演は待ちに待った企画です♪

 萩尾さんのデビュー40周年を記念した初の個展「萩尾望都原画展」も今月開催されるとのことで、2つのイベントの合同制作発表会(⇒ご招待情報)に伺いました。Studio Lifeの記者発表⇒

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 ●Studio Life創立25周年記念『トーマの心臓』『訪問者』連鎖公演
  期間:2009年2月27日(土)~3月22日(月・祝)
  会場:紀伊國屋ホール他、名古屋、仙台公演あり
  チケット:全席指定 前売・当日共¥5,800
  ⇒CoRich舞台芸術!『「トーマの心臓」「訪問者」

 ●デビュー40周年記念「萩尾望都原画展
  期間:2009年12月16日(水)~23日(水・祝)
  会場:西武池袋本店 別館2階=西武ギャラリー
  入場料:一般700円 大学生・高校生500円 中学生以下無料

 ●男子校カフェ・エーデルシュタイン
  コラボレーションカフェ「シュロッターベッツ・ギムナジウム
  期間:2010年1月10日(日)~1月31日(日)
  ※12月26日(土)23:00より予約開始

 ●萩尾望都・倉田淳トークショー
 1996年に『トーマの心臓』を初めて舞台化して以来、原作者の萩尾望都さんと劇団スタジオライフは10年以上のお付き合い。劇団の全作品の脚本・演出を手掛ける倉田淳さん(↓写真左)が聞き手となり、萩尾さんからとっておきのお話を伺うことができました。

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 倉田「『トーマの心臓』制作秘話を教えてください。この物語を描かれたのには、何かきっかけがあったのでしょうか?」
 萩尾「吉祥寺で『悲しみの天使』という映画を見ました。男子校の2人の少年が愛し合うんだけれど、先生にばれて引き離されて、年下の少年が自殺してしまうんです。残された年上の少年はその後どうやって生きていくんだろう・・・と妄想モードに入ってしまって(笑)。ちょうどその頃に編集者さんから長編のお話をいただいて、(この題材を)提案してみたらOKが出ました。」

 倉田「『訪問者』についてはいかがですか?」
 萩尾「『トーマの心臓』にはオスカー、エーリク、ユリスモールという主要人物がいます。それぞれの人生について妄想が広がりまして(笑)。連載当時はオスカーのエピソードも入れたかったんだけど、メインストーリーも大変なのにサイドストーリーまで膨らむのはもっと大変だと思って。それに、いつまで連載できるかもわからないし(笑)。いつか時間ができたらと思ってました。
 ずいぶん経ってから、松本清張さんの小説「砂の器」が映画化されて、テレビで放送されているのを見たんです。子供が父と旅する風景が出てきて、『いいな~、オスカーもお父さんとあちこち旅をしたんだろうな~』と思って、突然描きたくなって。」

 倉田「『トーマの心臓』と『訪問者』では一人では生きていけない登場人物同士が、誰かにすがりたいと思って苦しみます。でも、なかなか(その思いを成就させることは)難しい。他者を理解しようとする時に、大事にしてらっしゃることはありますか?」

 萩尾「他者のことは本当にわからないですよね。親でも恋人でも相手のことがわかりづらい。人間って表に出しているのは氷山の一角のようにほんの一部で、9割は水の中に沈んでいるようなもの。その隠れている部分に興味があるんですよね。そこがわかればコミュニケーションが取りやすくなるだろうし、テレパシーとかで相手のことが理解できるといいな~と思うんですが(笑)。この年になっても勉強している最中です。」

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 ●Studio Life創立25周年記念『トーマの心臓』『訪問者』連鎖公演

 劇団代表・河内喜一朗「スタジオライフは1985年に新宿の小劇場タイニイアリスで旗揚げし、来年25周年を迎えます。ここまで劇団活動を継続できた、その原動力はひとえに、1996年に『トーマの心臓』を初演できたことに他なりません。あの公演以来、役者たちの演技が変わり、倉田の演出の方向性が定まりました。
 『トーマの心臓』に登場する少年たちの心の葛藤をより深く理解するために、劇団員はNYのアクターズ・スタジオの先生にメソッド演技を学び、フランスのジャック・ルコックの演技術を学ぶ者もありました。劇団でもワークショップを企画して、今も続けています。これからもより良い芝居を、高みをもとめて精進します。」

 倉田「『トーマの心臓』と『訪問者』はそれぞれに独立した物語ですが、共通する登場人物が出てきます。互いが独立しながら、後ろにもうひとつの世界があぶりだしのように浮上してくるのです。2つの世界を同時に追体験できるのは、とても贅沢なこと。上演できるのをありがたく思っています。
 『トーマの心臓』初演は劇団を立ち上げて10年目の年でした。1度目の連鎖公演は15年目、そして2度目となる今回は25周年の節目です。萩尾先生の40周年とも重なって個人的にぞくぞくしています。この思いを舞台に乗せたい。」

 ●主要キャストから意気込みをひとこと!

【『トーマの心臓』エーリク役:松本慎也】
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 松本「スタジオライフにとって『トーマの心臓』は代表作で、僕自身にとってもかけがえのない、本当に特別な作品です。前回2006年に初めてエーリクをやらせていただいて、人として、役者として、たくさんのことを学びました。今僕がこうしてここに役者として立っていられるのは、『トーマの心臓』、そしてエーリクに出合えたからだと思ってます。これまで役者として過ごして得てきたものをすべてを賭けて、全力でお芝居をします。」

【『トーマの心臓』〈Blau〉ユリスモール役:青木隆敏】
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 青木「『トーマの心臓』は僕の初舞台の作品で、(初舞台の後も)3度参加させていただきましたが、いつも5人組のイグー役でした。イグーにとってユリスモールとは、常にあこがれの存在でありヒーローでした。そんなヒーローをイグーだった僕が演じさせていただくのは感慨深いことです。漫画界やスタジオライフにとって『トーマの心臓』は聖域だと思います。そしてユリスモール役に挑戦させていただくことを、とても神聖なことに感じます。未熟な僕にとっては不安もありますが、萩尾先生、スラジオライフ、そして僕をここまでつなげてくれた『トーマの心臓』という作品だからこそ、きちんと向き合って真摯に取りくみたいと思っています。」

【『トーマの心臓』〈Blau〉オスカー役:岩﨑大】
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 岩﨑「僕は『訪問者』で初舞台を踏み、2000年の『訪問者』で少年オスカーをやらせていただきました。ものすごく苦しみ、悩みながら世界観を探して試行錯誤し、(オスカーと)父との愛、母への愛など色々なことを感じさせてもらえました。今回は『トーマの心臓』で、ちょっと大人になったオスカーをやらせていただきます。劇団25周年、萩尾先生の40周年という記念の年に、オスカー・ライザーとして舞台に立てる喜びを胸にがんばります。」

【『トーマの心臓』〈Grau〉ユリスモール役:山本芳樹】
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 山本「『トーマの心臓』ではユリスモール役一筋でやらせていただいています。この作品と出会い、この役を演じさせていただいていることは、僕の俳優人生ですごく幸せなことだと思っています。今の僕を形成しているものの中で、大きな割合を占めていると言っても過言ではありません。そんな大切な作品を、今回も精一杯つとめさせていただきたいと思います。」

【『訪問者』オスカーの母親ヘラ役:吉田隆太】
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 吉田「『トーマの心臓』と『訪問者』の連鎖公演をやる意味を、観ていただいた全ての方に味わっていただけるように精一杯がんばっていきたいと思います。『訪問者』は幸せを一生懸命に探した家族3人が、色んな事に悩み苦しみながら、最後に少年オスカーがシュロッターベッツ(『トーマの心臓』の舞台となる男子校)の門をくぐるまでのお話です。稽古や本番を通じて、幸せというものを追及していきたいと思っています。お客様には2作品両方を観ていただいて、萩尾先生の世界を深く深く味わっていただきたい。」

【『訪問者』オスカーの父親グスタフ役:高根研一】
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 高根「僕も『訪問者』が俳優人生での初舞台でした。今回グスタフ・ライザー役をやらせていただくと聞いて、とても嬉しく思いました。全力でやらせていただきたいと思っています。」

【『トーマの心臓』〈Grau〉オスカー役:曽世海司】
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 曽世「僕が『トーマの心臓』に初めて参加させていただいたのは、1997年の2度目の上演の時でした。それ以来、萩尾先生の作品にはすべて出演させていただいています。オスカー役は何度かやらせていただいていますが、オスカーを演じるにあたって『訪問者』という存在は、自分の役作りにとって必要不可欠なバイブル。『トーマの心臓』と同時に上演させていただけることを光栄に思います。役者人生すべてをかけて演じさせていただきます。」

 ●萩尾望都さんより劇団スタジオライフ、および今回の連鎖公演について

 萩尾「漫画や小説が舞台として立ち上がる時、演出家の意図が“全く別の作品に作り変えたい”というものである場合もあるんです。でも倉田さんの作風はとにかく原作のスピリッツを大切にして、それを壊さないで表現するということ。それに尽きるような製作をずっとやってらっしゃいます。作品をどう読むかは演出家の個性によるところが大きい。なのに(原作者の)私も及ばなかったようなところまで作品世界にどっぷりひたって、そこから全てをあらわすように具体的に構成してくださる。だから美しい倉田世界およびスタジオライフ作品はどれも信頼しています。」

 萩尾「舞台上にいるのは日本人なのだけれどドイツに居るような心地になる、そんなファンタジーと言いますか、魔法を何度も観せていただいて、原作者冥利に尽きると感激しております。私の方も舞台を観ながら学ぶことがたくさんあり、本当に感謝しています。
 今回の連鎖公演で新しいグスタフや少年オスカー、そしてエーリクやユーリ(=ユリスモール)をはじめ新しいシュロッターベッツの生徒たちに会えるのが楽しみです。公演ごとに色んなバージョンが生まれて、役者が違うとここまで違うのかと、見どころも尽きません。皆様にもそういったところをお楽しみいただけたらと思います。」

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 ●デビュー40周年記念「萩尾望都原画展」@西武ギャラリー(池袋)
  期間:2009年12月16日(水)~23日(水・祝)

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萩尾望都原画展の紹介

 萩尾望都さんのデビュー40周年を記念して、初の個展が開催されます。
 デビュー初期から現在に至るまでの、萩尾さんご自身が厳選した原画数百点をはじめ、白黒の原稿、作品のイメージに使用したお人形、雑貨類も展示されます。
 購入可能なグッズも盛りだくさんで、萩尾さんの出版書籍はもちろん、この展覧会の図録や『ポーの一族』をイメージした香水など、多種多様に充実しているそうです。

 スタジオライフの特設「舞台化コーナー」もあり、過去の萩尾作品『トーマの心臓』『訪問者』『メッシュ』『マージナル』の衣裳や小道具、パンフレットも展示予定とのこと。
 劇団員がシュロッターベッツの制服を着用し、日替わりでお客様応対するというのは、劇団ファンにとっては朗報ですね♪(※毎日16時~20時の間)
 週末にはサイン会やトークショーも開催されます(※「参加整理券」が必要です。詳細をご確認ください)。

 ・12月19日(土)劇団Studio Lifeキャストによるトークショーとサイン会
   出演:オスカー役を演じる曽世海司・岩﨑大・荒木健太朗
 ・12月20日(土)萩尾望都&倉田淳トークショー
 ・12月23日(水)萩尾望都サイン会

※『トーマの心臓』は〈Grau〉と〈Blau〉の2バージョン公演 ※『訪問者』は東京公演のみの上演
『トーマの心臓』【出演(東京公演)】ユリスモール:〈Grau〉山本芳樹〈Blau〉青木隆敏 オスカー:〈Grau〉曽世海司〈Blau〉岩﨑大 エーリク:松本慎也 レドヴィ:関戸博一 アンテ:植田圭輔(客演) バッカス:牧島進一 サイフリート:〈Grau〉奥田努〈Blau〉高根研一 シャール:〈Grau〉青木隆敏〈Blau〉山本芳樹 クローネ:〈Grau〉堀川剛史〈Blau〉平居正行(Fresh)  カイザー:荒木健太朗 ヘニング:〈Grau〉篠田仁志〈Blau〉原田洋二郎  リーベ:〈Grau〉仲原裕之〈Blau〉緒方和也 アーダム:吉田隆太 アル:石井昭裕 イグー:神野明人 ヘルベルト:冨士亮太 ミュラー:船戸慎士 ブッシュ:藤原啓児 シェリー:〈Grau〉岩﨑大〈Blau〉曽世海司 エリザ:藤原啓児 シュヴァルツ:山﨑康一  ヴェルナー:河内喜一朗 アデール:石飛幸治 ※出演者は都合により変更となる場合もございます。
『訪問者』【出演】グスタフ・ライザー:高根研一 オスカー・ライザー:荒木健太朗 ヘラ:吉田隆太 ルドルフ・ミュラー:船戸慎士 ニーナ:青木隆敏 シュテファン:植田圭輔(客演) バッハマン:河内喜一朗 アズ:仲原裕之 エンゲリーカ:関戸博一 ローレンツ:牧島進一 山本芳樹・曽世海司・岩﨑大・小林浩司・奥田努・篠田仁志・冨士亮太・石井昭裕・緒方和也・神野明人・原田洋二郎・堀川剛史・山﨑康一・石飛幸治・藤原啓児・他 スタジオライフ劇団員 ※出演者は都合により変更となる場合もございます。
原作:萩尾望都(『トーマの心臓』『訪問者』小学館文庫) 脚本・演出:倉田淳
前売・当日共¥5,800 【全席指定/税込】*未就学児童の入場はご遠慮ください。
http://www.studio-life.com/stage/toma2010_new/index.html
「萩尾望都原画展」主催:「萩尾望都原画展」実行委員会 共催:株式会社トラフィックプロモーション/株式会社リブロ 総監修:萩尾望都
http://www.hagiomoto-gengaten.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2009年12月13日 22:47 | TrackBack (0)