『スポーツ演劇「すこやか息子」』は三重県文化会館が劇団柿喰う客を招き、現地で作った作品です(滞在は2週間)。劇団員3人以外の出演者はすべてオーディションで選ばれた若い役者さんたち。東京公演は王子小劇場による招聘で実現しました。
“演劇とスポーツの融合を標榜する先駆的演劇作品”ということで、そういう心づもりで伺いました。確かにスポーツだし、演劇でした。とても面白く拝見しました。上演時間は約1時間20分と短めなので、1日3ステージあるのも納得です。ただ、役者さんはかなり疲労されるんじゃないでしょうか(笑)。
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漫画、アニメ、WEB動画などが大流行していて、「二次元の女子(男子)にしか萌えない」と公言する人ももはや珍しくない今、三次元の生命体である人間の身体の魅力を、文字通り真正面から堂々と見せてくれてました。元気であることって素敵。そんな当たり前がまぶしいです。
リズムに合わせてテキパキと振付をこなし、はつらつとセリフを発する役者さんたち。無機的に見える演技からドラマや笑いが豊かに生まれます。素舞台を大胆に色づけ&色分けする照明が映えました。音楽もかっこ良かった。
これが公共ホールの企画なのが凄いなと思います。劇団公演以外での中屋敷さん(今作品の作・演出)の活動にこれからも注目したいです。
ここからネタバレします。
赤ん坊(深谷由梨香)が世界に生まれおち、自分の目の前に居る家族、そして他人と出会い、連綿と続いていく家族関係が描かれます。役者さんの動作は基本的にずっとエアロビクス(に準ずるもの)で、客席を正面から見つめて感情を排したセリフを語るのですが、奥深いドラマを想像させる効果がありました。
主人公は“息子”(深谷由梨香)。息子には2人の姉がいて、嫁に行った長女がまだ実家にいる次女に「女は結婚して家を出なければいけない」と強く主張します。そのあたりの男女の立場(扱い)の違いが面白かったです。中屋敷さんは「東北地方(=中屋敷さんの出身地)の方には理解しやすいかも」とポスト・パフォーマンス・トークでおっしゃってたんですよね。東京暮らしが15年以上になる私は、婚姻制度や一般常識がますます実生活とかい離してるんだよな~と考えていました。
終演後のトークに続いてクリスマス会(?)がありました。一部ぐだぐだしてましたけど(苦笑)、見世物根性とサービス精神がいいなと思います。何しろ元気!一観客として嬉しくなると同時に、自分もがんばらねばと気持ちを引き締めました。
トークで中屋敷さんが「海外公演を見越しての創作」だったと告白されていました。家族という普遍的なテーマを選んでいたり、セリフの時制がすべて現在である(過去形などがない)ことなど、したたかさに感心しました。
≪三重、東京≫ 柿喰う客が三重県で仕掛ける、驚愕必死の挑戦作!
出演:玉置玲央(柿喰う客) 深谷由梨香(柿喰う客) 村上誠基(柿喰う客) 串田仁美 元山未奈美(劇団スマイルバケーション) 稲葉瑞希 from愛知 今津知也(オレンヂスタ) 右角81(劇団バッカスの水族館) 伊藤寛隆(オイスターズ/フ透明少年) 池田和佳美 大村亘 大西千保 吉田沙弥(劇団ひまわり) 川面紗織 富田文子(劇団ぎゃ。) 佐賀モトキ 右手愛美 伊佐美由紀
脚本・演出:中屋敷法仁 舞台監督:藤本志穂(うなぎ計画) 照明:富山貴之 音響:上野雅 衣装:飯田裕幸 宣伝美術:山下浩介 制作:赤羽ひろみ 主催:三重県/(財)三重県文化振興事業団 共催:王子小劇場
【発売日】2009/12/01 一般:2000円 学生:1500円 高校生以下:500円※学生・高校生以下チケットは共に要学生証提示
http://kkk-sukoyaka.seesaa.net/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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