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しのぶの演劇レビュー
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2009年03月20日

加藤健一事務所『川を越えて、森を抜けて』03/18-29本多劇場

 『川を越えて、森を抜けて』はアメリカに移住したイタリア系移民の家族3世代の、インターネットがまだ普及していない頃のお話です。2000年の日本初演で私はすごく感動したんですよね。観客が今の生活と容易に関連付られる、親しみやすくて心温まる作品だと思います。

 加藤健一事務所らしい、笑いどころが多い演出になっていました。大げさな演技には付いていきづらいこともありましたが、平凡な日常の喜び、悲しみを大切に伝えてくださっていて、戯曲への愛情を感じました。 幸せな時間でした。演出は文学座の高瀬久男さん。上演時間は約2時間15分(途中15分の休憩を含む)。⇒舞台写真

 ⇒CoRich舞台芸術!『川を越えて、森を抜けて
 レビューはアップできるかどうかわかりません。

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。
 アメリカ・ニュージャージー州の小さな町に住むフランク(加藤健一)、アイーダ(竹下景子)夫妻。2軒隣には娘の夫の両親ヌンツィオ(有福正志)とエンマ(一柳みる)夫妻の家があり、孫のニック(山本芳樹)も祖父母たちの近くで暮らしている。毎週日曜日には、みんなでいっしょにディナーを食べる仲の良いイタリア系の家族だ。
 ある木曜日、仕事の都合で遠くシアトルに引っ越すことになってしまったニックは、日曜日を待たずに祖父母たちに報告に来た。突然の発表におどろいたおじいちゃん、おばあちゃんたちは、ニックにシアトル行きを中止させるために“お見合い計画”を思いつく。
 数日後の日曜日、いつものようにディナーにやってきたニックは、エンマの知り合いの若い女性・ケイトリン(小山萌子)を紹介される。シアトルに行くか、町に残るかを決断できずにいたニックはディナーの後、発作で倒れてしまう。それから数日間、ニックはフランクの家で過ごし、今まで目にしたことのないような祖父母たちの姿を見る・・・。
 本当の家族の愛とは?絆とは何か。
 ニックの出した結論は・・・・・
 ≪ここまで≫

加藤健一事務所vol.71 "Over the river and through the woods"
≪東京・本多劇場、東京・カメリアホール、岐阜、石川≫
出演 加藤健一 竹下景子 小山萌子 山本芳樹 (Studio Life)  一柳みる (昴)  有福正志
作:ジョウ・ディピエトロ 訳:小田島恒志 平川大作 演出:高瀬久男 美術:倉本政典 照明:森脇清治 音響:松本昭 衣裳:竹原典子 ヘアメイク:馮啓孝 舞台監督:鈴木政憲
【発売日】2009/01/25 前売:5,000円/当日5,500円(全席指定) 高校生割引:2,500円(学生証提示・当日のみ)
http://homepage2.nifty.com/katoken/71index2.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 18:36 | TrackBack

さいたまゴールド・シアター『95kgと97kgのあいだ』03/18-29にしすがも創造舎 特設劇場

 55歳以上の俳優のみで構成されるさいたまゴールド・シアターは、彩の国さいたま芸術劇場芸術監督である蜷川幸雄さんの提案で2006年に発足した劇団です。私は初見。

 1985年に書かれた清水邦夫さんの戯曲『95kgと97kgのあいだ』を蜷川さんが演出されます。さいたまゴールド・シアターでの初演は2008年。劇団初の東京公演が実現されて嬉しいです。

 老人と若者の肉体を対比させて見せる演出に感動しました。もー涙流れすぎて泣き疲れた(苦笑)。上演時間は約1時間15分。前売りは完売のようですね。

 ★ネット販売は完売ですが、電話予約ができる日があるそうです(2009/03/23加筆)。
  電話予約:03-5468-8113(ぷれいす)
  25日(水)、26日(木)、27日(金)のみ。他日程は当日券を若干枚数販売予定。

 ⇒CoRich舞台芸術!『95kgと97kgのあいだ
 レビューをアップしました(2009/03/23)。

 開幕した時の雰囲気から、1本の筋がとおったわかりやすい物語ではなさそうだったので、セリフや行動の辻褄などは考えないように、ただ舞台を浴びるように鑑賞することに決めました。それが私には功を奏したようです。

 出演者はなんと約80名!いかにも役者然とした若い俳優は、ばねを感じさせるみずみずしい体に経験の浅さ(若さ)が見え隠れし、セリフにおぼつかなさが残る年配の俳優は、実体のあるぶ厚い歴史が体全体からにじみ出ています。その対比があざやか。

 まるで稽古場のような舞台(しかも会場は体育館)で、少々大仰なセリフ劇と、ワークショップ(稽古)のような場面が入れ替わり繰り出されました。若者を見る老人、老人を見る若者という劇中劇のような構図もしばしばあって、黒リノリウムが床に貼ってあるだけのシンプルな空間が、ダイナミックに変化していきます。
 お芝居はそもそもが作り事(嘘)ですが、そこに俳優がいて、目に見えて汗だくになっていく彼らの体には嘘はありません。虚構と現実が猛スピードで入れ替わる演出によって、ずっと気持ちが振り回されっぱなしでした。心と体ごと、大きな振り子になったような状態。

 蜷川さんは戯曲をできるだけ変えずに演出されるそうです。70年代の安保闘争が題材になっている20年前の戯曲が、これほどの普遍性をもった作品になっていることが凄いと思います。

 ここからネタバレします。誤読だらけかもしれません。セリフは正確ではありません。

 「並べば切符が買える」という噂を聞いて行列に並ぶ人々。列からはみ出すと機動隊に殴られて、どこかへ連れて行かれてしまう。自分の順番が来てもどうなるのかは実はわからない(切符はもらえるのか?先頭の人が入っていく上手黒幕の奥では叫び声が聞こえる)。それでも並び続ける人たちに向かって、青年(横田栄司)が乱暴に語りかける。

 国家の言いなりになって暮らす人たちと、それに反発する(行列を乱す)人たち。反発は警察権力によって押さえつけられ、何もなかったように再び日常がやってきます(行列がもとどおりに続きます)。青年の「行列の中で死んだ人間(国家に反発した人間)がいた」というセリフを合図に、客席後方から年配の俳優たちが、つらそうにうめきながら登場しました。本当に死者が現れたように感じてぞっとしました。
 その中には、学生運動に関わって命を落とした人もいたでしょうが、交通事故で昨日死んだおばあさんや、原始時代に死んだ遠い祖先もいたように感じました。さいたまGTの俳優が演じるので、今を生きる生活者と死者が重ね合わさったように感じ、体が震えました。どきどきして、涙が流れました。

 架空の砂袋をかつぐ演技練習(?)で、リーダーが砂袋の重さを変えていきます。50kgからいきなり100kgにすると、ばったり倒れてしまう老人もいたため、増やす重量を小刻みにすることにします。例えば95kgから97kgへと2kgだけ増やしてみるとか。そのわずかな差を慎重に、繊細に、演技で表わそうとします。その差を伝えることに命をかけるのだと、青年は言います。
 ○か×か、白か黒か、敵か味方かという両極端の選択肢しか許さないで、どちらか決めた方へと猪突猛進するのは、実は楽をしているんですよね。無数の選択肢の存在を認めて、その微妙な違いを命がけて伝えようとすること。それが人間が行うべきコミュニケーション(対話)なんだと思います。

 終盤で戦後のつらい体験を老人たちが語り始めた時は、演技がそれまでになく仰々しかったので少しがっかりしました。でも青年(横田栄司)が客席に走り上って、老人らに向かって「消えろ!思い出バカ!」(セリフは正確ではないかも。「うせろ」だったかしら。)と叫んだので、痛快で大笑いしてしまいました。

 賛美と嘲笑が入れ替わり、塗り替えられていくことや、死んだと思ったらまた生き返る演出は、人類の歴史そのものだと思います。最後は若者も老人も同じ1列の行列に並びました。地震なのか爆発音なのか銃の乱射音なのか、何かを破壊する音が大音量で降り注ぐ中、客席の方から吹きすさぶ嵐が、行列の人たちを舞台の外へと追いやっいきます。そこに赤ん坊の泣き声が聞こえていました。未来への希望が示されているように思いました。

「フェスティバル/トーキョー09春」参加作品
【出演】あの一群たち(さいたまゴールド・シアター):石川佳代、宇畑稔、大串三和子、小川喬也、小渕光世、葛西弘、加藤素子、神尾冨美子。上村正子、北さわ雅章、小林允子、小林博、佐藤禮子、重本恵津子、関根敏博、田内一子、高田誠治郎、高橋清、滝澤多江、宅端渓、竹居正武、谷川美枝、田村律子、ちの弘子、都村敏子、寺村耀子、遠山陽-、徳納敬子、中島栄一、中野富吉、中村絹江、西尾嘉十、林田惠子、百元夏繪、益田ひろ子、美坂公子、宮田道代、森下竜一、吉久智惠子、渡邉杏奴
行列たち(NINAGAWA STUDIO):秋山拓也、飯田邦博、市川なつみ、今村沙緒里、江間みずき、太田馨子、荻野美香、小田めぐみ、加藤亮佑、金子文、狩野淳、川﨑誠司、黒田龍矢、小石祐城、斎藤美穂、澤魁士、嶋田菜美、新川將人、鈴木重輝、清家栄一、高橋映衣子、高橋永江、田中結佳、中村千里、難波真奈美、西村篤、野辺富三、畑中研人、福田潔、古屋恭平、増田広太郎、松本昇大、茂手木桜子、本山里夢、谷中栄介、横田透、渡辺るみ
サックス:松延耕資 ヴァイオリン:桜野貴史 女O:奥村佳恵 青年:横田栄司
脚本:清水邦夫 演出:蜷川幸雄 演出補:井上尊晶 美術:安津満美子 照明:岩品武顕 衣裳:小峰リリー 音響:市川悟 演出助手:藤田俊太郎 舞台監督:山田潤一 スローモーション・マイム指導:清家栄一 荒川將人 制作:三崎カ、田中謙介、松野創
【F/Tスタッフ】にしすがも創造舎劇場スタッフ:弘光哲也 フロントチーフ:吉田直美 フロントスタッフ:三好佐智子 制作:樺澤良 製作:財団法人埼玉県芸術文化振興財団 主催:フェスティバル/トーキョー
【発売日】2008/12/18 一般 4,000円/3,000円(桟敷)/学生 3,000円(要学生証提示)、高校生以下 1,000円 自由席 F/T回数券(3演目/5演目)、F/Tパス、ペアチケットあり
http://festival-tokyo.jp/program/btween95-97kg/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 17:14 | TrackBack

新国立劇場演劇『アテンプツ・オン・ハー・ライフ』03/18、03/20、03/21新国立劇場小劇場

 メルマガ3月号でご紹介しました、シリーズ・同時代【海外編】のスペシャルイベントの1つ、番外連続リーディングの1本目『アテンプツ・オン・ハー・ライフ』の、初日を拝見しました。開演10分前ぐらいからパフォーマンスが始まっていましたね。

 「シリーズ・同時代【海外編】」の3演目(『昔の女』(⇒レビュー)『シュート・ザ・クロウ』『タトゥー』)のいずれかのチケットがあれば入場可(無料)。チケット1枚で複数作品が観られます。

 つまり『昔の女』のチケットがあれば、『アテンプツ・オン・ハー・ライフ』、『最後の炎』、『タロットカードによる五重奏のモノローグ』の3本のリーディングが観られることになります。超~お得!

 今思いついたんですが、5月上演の『タトゥー』のチケットで3月&4月のリーディングを観れば、『昔の女』と『シュート・ザ・クロウ』の舞台装置がタダで観られるますよね。←演劇オタクならではの発想かしら(笑)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『アテンプツ・オン・ハー・ライフ

 ≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
 英劇界の今四半世紀において最も重要な実験作との評価もある『Attempts on Her Life』(1997)は、マーティン・クリンプ(1956 -)の代表作。アン(あるいはアニー、アーニャ…?)という女性を軸にしつつも、一貫性のある登場人物やプロットが存在しないバラバラの17の断片は、グローバル化した資本主義経済下の世界を丸ごと描出しようとする果敢な試みだ。
 ≪ここまで≫

 2008年4月から新国立劇場で月1回のペースで開催されてきた「現代戯曲研究会」の成果ということで、計6本の海外戯曲が紹介されます。ありがたいことです。

 カジュアルな衣裳の若者たち。舞台中央奥の壁に映像が映されます。上下にはモニターも。イスに座って脚本を読むだけにとどまらず、歌ったり踊ったり楽器を演奏したり、演出は盛りだくさん。
 1本とおったストーリーがあるわけではないし、登場人物も固定ではなさそうだしい、自分で戯曲本を読んでも全然わからないだろうな~と思いました。こういう形で上演されるのは助かります。
 アンという1人の女が現代人全体を表す存在となっていくように感じました。「ポルノ」が面白かったです。

 ここからネタバレします。

1.すべてのメッセージを消去しました。
 開演前から留守番電話のメッセージが劇場内で放送されている。アンに向けた言葉。

2.愛とイデオロギーの悲劇
3.我等自身の信条
4.ご契約のお客様
5.カメラはあなたを愛している
 ラップで驚いた(笑)。アクセントになって楽しかったですが、楽器の音でセリフが聞こえないことがあったのは残念。

6.ママとパパ
7.ニュー・アニー
 ギター弾き語り(竹田桂)とフランス語(吉田紗和子)。エスプリが効いていて面白かった。

8.素粒子物理学
9.国際テロリズム(登録商標)の脅威
 ある単語について「登録商標!」と機械的な声で言うのが笑える。

10.笑える感じ
11.無題(百の単語)
 映像、ギター(竹田桂)、手話など。

12.奇妙なことに!
13.エイリアンと交信する
14.隣の女の子
 ラップ。だったような。

15.供述
16.ポルノ
 キャスターらしき女(熊坂理恵)が語る。日本語、フランス語(吉田紗和子)、韓国語(金成均)が混ざる。井上陽水の「最後のニュース」がすごく合ってる(ギターの弾き語り:竹田桂)。“1人の女”が、世界中の誰かになって、地球全体がぐっと舞台に凝縮された感じ。とても面白かった。グっときた。

17.新鮮/?


 どの短編だったか忘れましたが、金成均さんの1人語りが素晴らしかったです。
 声が澄んでいて、何をしゃべっても耳が嬉しくなったのは若菜大輔さん。
 辻村優子さんの太い声が素敵。歌(?)が良かった。できればもっとセリフが聞きたかったですね。
 長元洋さんが三味線(?)、岸田茜さんがバイオリンを演奏。他にも楽器が多用されていて、3期生の方々はとても芸達者だなと思いました。

新国立劇場2008/2009シーズン 
3月18日(水)7:00 20日(金・祝)6:00 21日(土)6:00
出演:新国立劇場演劇研修所研修生3期生(岸田茜/熊坂理恵/鈴木良苗/辻村優子/野村真理/吉田紗和子/渡邉樹里/宇髙海渡/金成均/香原俊彦/竹田桂/長元洋/米川貴久/若菜大輔
脚本:マーティン・クリンプ 演出:北澤秀人 映像:鳥井真央 手話指導:田中文 舞台・照明・音響操作:新国立劇場技術部 シアターコミュニケーションシステムズ レンズ 芸術監督:鵜山仁 主催:新国立劇場
※「シリーズ・同時代【海外編】」『昔の女』『シュート・ザ・クロウ』『タトゥー』のいずれかのチケットで入場可。シリーズ公演のチケット1枚で複数作品をご覧いただけます。
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000180_play.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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