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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2010年01月20日

Bunkamura/Quaras『血は立ったまま眠っている』01/18-02/16Bunkamuraシアターコクーン

 寺山修司さんが23歳の時に書いた処女戯曲を、蜷川幸雄さんが演出。V6の森田剛さん、窪塚洋介さんら有名スターが出演しています。当日券は抽選で販売。上演時間は約2時間30分(途中休憩15分を含む)。

 久しぶりに私の苦手ド真ん中の蜷川演出でした・・・しかもアングラですから、天敵(苦笑)。直球のデッドボールを何度も受けた気分。ボロ負けして帰ってきました・・・。森田さんのファンの人たちは大丈夫なのかな~、こんなに刺激が強くて。

 当日パンフレット(2000円)に蜷川さんと長塚圭史さんの対談が掲載。イギリスの演劇界について赤裸々に語ってらっしゃいます。

 ⇒舞台写真
 ⇒CoRich舞台芸術!『血は立ったまま眠っている

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 競馬場の裏に位置する港町。
 転がるドラム缶、どこかから、猫の鳴き声―。
 公衆便所の前では、いつも張(遠藤ミチロウ)の悲鳴のようなブルースが響いている。
 倉庫には自衛隊から盗みをはたらき革命を目論む若いテロリストがふたり住み着いている。良(森田剛)は尊敬する灰男(窪塚洋介)に何とか認められようと、落書きや窃盗など“破壊活動”に精を出す。殺伐としながらどこか牧歌的なふたりの時間が流れていた。
 寂れた床屋の主人(六平直政)は、仲間の一人、そばかす(柄本佑)がもってきた闇取引の話に加われず、いらだちを隠せない。集まるチンピラや娼婦たち。ペギー(蘭妖子)は張の弟、ドラマーの陳(丸山智己)を誘い、葉っぱ(江口のりこ)はインチキな占いを繰り返し、釘(金守珍)や南小路(冨岡弘)とぐずぐずとした日常をすごしている。
 詩人の夏美(寺島しのぶ)が現れる。彼女こそは、良が愛してやまない姉だった。灰男と夏美が恋に落ち、それまで平穏だった良と灰男の関係が歪み始める。そこにひとりの男(大石継太)が訪れる。ダイナマイトを見せ、英雄になりたくないか、とテロ活動をふたりに迫る。そしておこる悲劇―。
 ≪ここまで≫ 

 蜷川さんの演出がとにかく苦手だった頃(お芝居を見始めた1999年から2004年ぐらいまで)の記憶が、何度かフラッシュバックしました。蜷川さん(の演出)が変わったのか、私が変わったのかはわかりませんが、ここ数年はずっと大丈夫だったんですけど・・・。

 とりあえず目に飛び込んでくるのは便器、排せつ、性行為など。清潔感をわざと排除した空間でした。そういえば流山児★事務所がジァンジァンで上演した『血は…』でも、舞台中央に洋式便器がずーっと置いてあったなー・・・戯曲にそう書かれているんじゃないかしら。
 突然大音量で鳴る音響も、よく耳にする選曲も、頻繁に客席を白く照らす照明も苦手でした。上演中ずっと苦手要素のオン・パレード。・・・そういう時もありますよね!昨年の私的ベストテンには蜷川さんの作品が2本も入ってるんですがっ!(笑)

 大まかに書いてしまうと、登場人物たちは良、灰男、夏美のテロリストグループと、汚い散髪屋にたむろする闇取引グループの2つに分かれます。その2グループそれぞれの場面がセットチェンジとともに交互に現れるのですが、同時に進んだり重なったりして欲しかったですね。箱を積み上げるように順番どおりに進んでいくのは、物語が細切れになっているように感じてもったいない気がしました。戯曲自体がもともと“コラージュ”なのかもしれませんが。

 娼婦3人組は『マクベス』の魔女みたい。中でも体がとても細い茂手木桜子さんが魅力的でした。相手役とも観客とも素直にコミュニケーションを取ってくださっていたように思います。強烈な衣裳なんですが、可愛らしかった。茂手木さんは蜷川さんの舞台によく出演されていて、露出度が高い衣裳を着て個性的なルックスをよりきわどく見せることが多いのですが(演出意図だと思います)、そういうのではなく、例えば普通のストレート・プレイに出てくる女の子の役も観てみたいと思いました。

 森田剛さん。金髪がよくお似合いで。不良になりきれない純朴さがあるのが良かったです。やっぱりアイドルは光るものですよね。『IZO』も良かったですし。そう思うと出番が多くないのは残念。 
 窪塚洋介さんは、スローモーションなのかと思うぐらいセリフをゆっくりしゃべっていました。意図的なのかしら。もっとはじけてほしいなと思いました。
 パンフレットのキャスト欄を見たら、さいたまネクスト・シアターに所属してる役者さんがけっこう出てました(大橋一輝、手打隆盛、本山里夢、松田慎也、鈴木彰紀)。大舞台を経験して育っていってくださるといいですね。

 ここからネタバレします。

 何もないステージにどんどこと装置が運び込まれて、雑然とした狭い空間になるのが劇的。

≪東京、大阪≫
出演:森田剛、窪塚洋介、遠藤ミチロウ、金守珍、大石継太、柄本佑、冨岡弘、大橋一輝、江口のりこ、茂手木桜子、蘭妖子、丸山智己、マメ山田、日野利彦、澤魁士、手打隆盛、本山里夢、松田慎也、鈴木重輝、鈴木彰紀、三谷昇、六平直政、寺島しのぶ
脚本:寺山修司 演出:蜷川幸雄 音楽:朝比奈尚行/遠藤ミチロウ 美術:中越司 照明:服部基 音響:井上正弘 衣裳:小峰リリー ヘアメイク:鎌田直樹 振付:広崎うらん 演出補:井上尊晶 演出助手:大河内直子/藤田俊太郎 舞台監督:明石伸一 衣裳:グループ色 大道具:金井大道具 小道具:東宝舞台(布田栄一) 特殊小道具:ゼペット(福田秋生) 土屋工房(土屋武史) 特効:酸京クラウド(磯田壮一) ギミック(南義明) 電飾:コマデン(吉田有希) 劇場舞台技術:野中昭二 票券:岡野昌恵 制作助手:佐々木康志 金子文 制作:佐貫こしの(Bunkamura) 麻田幹太(Quaras) プロデューサー:加藤真規(Bunkamura) 松井珠美(Bunkamura) 松野博文(Quaras) 企画・製作・東京公演主催:Bunkamura/Quaras 大阪公演主催:関西テレビ放送 キョードー大阪
【休演日】1/20,27 2/3,10【発売日】2009/11/29 S¥9,500 A¥7,500 コクーンシート¥5,000
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/shosai_10_blood.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年01月20日 00:33 | TrackBack (0)